IS学園 秘密の地下相談室 作:????
暗い廊下に溢れる光がある。その光の出処は一つの部屋であり、その部屋のトビラにはこう書かれていた。
IS学園相談室、と。しかし、残念なことに、廊下とても暗く、部屋から溢れる光も極々少量なため、めったに光を浴びることがない表示なのだ。
その部屋の中で、部屋の主こと
「あー、暖かい中でアイス食べるのおいしー」
アイスを貪り食っていた。いや、この表現は見目麗しき女性には似合わないので、書きなおすことにする。
アイスを食してなさった。この表現がぴったりであろう。といっても、麗しいのは文字通り見た目だけだが。
「あー、最近本職の方をしてない気がするなー」
彼女の本職は、カウンセラー、それも教職員用だ。その対象には生徒は含まれていない。
しかし、彼女の性格上と言うか主義的に、カウンセリングをさせてくれるなら誰でもいいような思考の持ち主であり、それ故に助かった(一部助からなかったが)生徒もいる。
「うーん、たまには教職員相手にカウンセリングをしたいなぁ……」
「そうか、なら私の相談を喜んで受け入れてくれるな?」
「バチコイッ! ってええ!?」
目の前にいつの間にか座っていた、ブリュンヒルデこと
ちなみに、カウンセラーという性質上、誰にでも対等に話す月崎はブリュンヒルデ相手にもビシバシ言ったりする。
「いつの間に座ってたのよ」
「お前がアイスの棒をゴミ箱に捨てている間に席についたな」
「もー話しかけてくれたっていいじゃない」
「そんなことより、だ。最近生徒を入れてるらしいじゃないか」
生徒を入れている……? ああ、カウンセリングのことか。
「そんなつもりは無いよ? ただ彼らは道に迷って、ここに来ただけみたいだし」
「フンッ、どこまでが本当なのやら」
「信じてよ~」
上目遣いで、私傷ついてますアピールをやりながらそう言う。
「たわけ、そんなものに紛らわされんわ」
「ちぇっ、少しは戸惑うかと思ったのに……」
「まぁ、少しは効いたがな」
千冬はそう言いながら頬を掻く。
「マジ!? それならもっとやってみよう」
「やめろ」
「えぇー」
「こっちの労力も考えてくれよ……」
「労力って何さ-」
そう言って月崎は机越しに、千冬に抱きつこうとする。
「労力は労力だ。疲れるものは疲れるのと似たようなものさ」
しかし、千冬もそういった奇行をする人間が近くにいたため、アイアンクローで対処するのだった。
「あっ、ちょっ、待って! これ死んじゃうパターン! 待って! ちょ!」
「悪いな……これは仕返しも含んでいるんだ」
「仕返しってなにじゃー! ちょ、ホントに割れるぅー!!」
◇◆◇◆◇
「で、キミの話は何なのさ」
「ああ、さっき言ったこのカウンセリングルームに入ってきた男子生徒がいただろ?」
「いたね」
「アイツがお礼を言いたいだとか」
男子生徒とは、言わずもがな織斑一夏のことであり、因みに言うと、千冬は教師としてではなく姉として頼みに来ていたりする。
しかし、そんなことなど知らない月崎は、千冬が教師としてここに来て、教師としてその生徒をどうにかしろと言われているように感じている。
「アイツの事だから、諦めることも無いだろう……だから、今度ここに連れてくるから礼を受け取ってくれないか?」
「うん、別にいいよ?」
「なんなら、今度奢りで飲みに行っても……。いや、なんでもない。お前が受け入れてくれるのなら、今、私は何も呟かなかったことにする」
「何言ってるのさ、今の話は聞き逃せないよ?」
まさか簡単に了承されるとは思っていなかったため、うっかりと、千冬の口から奢りという言葉が溢れる。
「いやー、まさか奢りで飲みに行かせてくれるとは……太っ腹-!!」
「いや、その……だな……」
「あ、そうだ! 山田先生も呼ぼうよ!」
「クソッ、最近不幸なことばかりだ……」
千冬は頭を力強く書きながらそう吐き捨てる。
しかし、その程度のことなど月崎に通用するわけもなく、流されるのだった。
「それも含めて、飲みの場で流そう流そう」
「ああ、もういいよ……奢りでも何でもやってやるよ……クソッ」
「わーい! やったー!」
月崎はそう言って、両手を上げて喜びを体現した。
◇◆◇◆◇
「落ち着いた?」
「ああ、なんとかな」
「あ、でも奢りに関しては本当のことだからね?」
「ああ、もういいよ。奢りでも何でもいいよ……」
千冬の目が濁ってきているのが確認される。
その目を見て、流石にやり過ぎた、と思った月崎はフォローの言葉を入れる。
「まあまあ、さっきのこと以外の相談なら聞くよ?」
「個人的にはさっきのことについて相談したいのだが……」
「それは無しで」
「だよなぁ……」
千冬は未だに抵抗しようとする。なぜなら彼女の今月のビール代がかかっているとも言って良いのだから。
「例えばあの生徒がつらいー、とか?」
「生徒か……そういえば、最近私のクラスの生徒が変な知識を身につけ始めたな」
「変な知識?」
変な知識とはなんのことだろうか? 解剖学? 精神学? それとも黒魔術とかだろうか。
「びーえる? だとかどうとか……おそらくアルファベットのBとLのことだろうが、なんのことかさっぱりわからん」
「あー、なるほどなるほど……」
最も手をつけてはならないモノにその生徒たちは手を付けたようだ。
BL、それはベーコンレタスという隠語を孕んだ、同姓愛の光景を愛でる趣味嗜好のことだ。それは人によっては嫌悪感を覚えたり、下手をすると吐き気を覚えるほどの衝撃的なものだったりする。
「それはね……いや、山田先生なんか知ってそうだし、聞いてみたらどうです?」
「……確かに山田くんもその話を聞くたびに顔を真っ赤にしてたな」
あ、これ山田先生は絶対知ってるパターンだ。……でもあの人そういうのに耳聡いというかなんというか、ただ詳しそうなんだよねぇ……。
「それでは、山田くんにでも詳しいことは聞いて、対処することにします」
「それじゃー、また後で飲み会の日時を伝えるから、開けておいてねー」
「……はぁ……」
千冬は、肩を落としながら部屋から出て行った。
「楽しみだなー」
◇◆◇◆◇
「なあ、山田くん」
「はい? 何ですか先輩?」
「生徒の言っていたBL、という言葉に心掛かりはあるか?」
それは職員室内での出来事。織斑千冬が山田真耶に話しかけたことが事の発端だった。
千冬がその一言を発した途端に職員室内部に衝撃が走る。
「あ、あの先輩! コーヒーもう残ってないですよね? 私ついできますよ」
「いえ、その必要はありません。さあ、教えてください」
「あ、あの……えっと……」
この学校のBLの標的は織斑一夏、目の前にいる千冬の弟であるので、言葉を選ばなければ山田先生は即座に刈られてしまうだろう。どことは言わないが。
「あうう……」
「どうした山田くん? 大したことではあるまい」
遂に山田先生は涙目になってうつむいてしまう。
そこで周りの教師の一人、2組担任のリアーデが助け舟をだす。
「BLと言えばアレですよ。ボーイズラブ、男性同士の同姓愛のことですね。日本の文化なんでしょ?」
悪い方へ。
「…………」
「あの……先輩?」
「……山田くん、もしかしてキミは、私の弟のこともそんな目で見ていたのか?」
「いえ! そんなことはありません!」
千冬の目は濃く濁り、そんな目で見られた山田先生は恐怖でガタガタ震えている。
「いや、とりあえず道場で組手100本をやろうか」
「え? え!?」
「いいから。さあ、道場へ行こうじゃないか」
「ちょ、待ってください!! ちょ~~~~ッ!!!!」
感想待ってます!