IS学園 秘密の地下相談室 作:????
そこは、街中のホテルの一室。その部屋に設置されているベッドの中には、三人の女性がいた。
彼女らの格好は様々で、裸の者もいれば、ホテル備え付けのパジャマを着ている者もいる。まあ、裸の女性は少々寝づらそうに顔を顰めているが。
そのベッドの中で、ホテル備え付けのパジャマを着て寝ているものが目を覚ました。
「ふぁー、っあ……ここは……?」
その女性の名前は、
事の発端は、昨晩の飲み会にあった。約束通り、千冬の弟、
そこまでは良かったのだが、問題はそのあとにあるのだ。酒の席で時間を忘れてしまい、帰るための唯一の手段であるモノレールの運行が終わってしまったのだ。
なので、帰るに帰れず、近くのホテルに流れ込んだ。そして、酒の入った頭で、何も考えずに部屋をひとつしか借りず、一つのベッドを3人で分けて使うことになったのだ。
「とりあえず二人を起こさなきゃねぇ……」
幸い、今日は休日なので、授業はない。しかし、教氏としての仕事であるプリント作成やら何やらがあるので、この二人を起こしておいたほうがよいだろう。
「おーい、織斑さーん? 山田さーん? 起きたほうがいいんじゃないのー?」
「んっ……フグっ! ……すぅ……」
「…………」
この二人はなんの夢を見ているのだろうか。片方はフグと勢い良く叫び、もう片方は無言で自分の乳に腕を埋めている。
そして、月崎はこれ以上やってもしょうがないと考え、二人を起こすことをやめた。
ホテル備え付けのパジャマから、昨日着ていた服へと着替える。
「んー、なんかきもちわるいなぁ……」
通常、服は毎日着替えるものだ。しかし、昨晩はきっと部屋に入ってすぐにゾンビの如くベッドに向かったであろうから、洗濯になど出していない。むしろパジャマに着替えることができたのですら奇跡と言っても良いくらいだ。
「しかたない、洗濯に出すか……」
先程まで着ていたパジャマに着替え、ホテルの受付へと向かう。
「あのーすみません、洗濯ってできましか?」
すると、ホテル1階に併設されているコインランドリーへ案内されたので、そこに千冬と山田先生の分の衣類も詰め込み、洗濯する。
そして、その間に私はシャワーを浴びるのだ。
◇◆◇◆◇
「ぷはー! やっぱり外の新鮮な空気は美味しいねー!!」
洗濯が終わり、綺麗な服装で身を包んだ月崎は、街の中を歩きまわる。ちなみに、千冬と山田先生の分の衣類は部屋のテーブルの上へ置いてきた。
「さて、どこに行こうかなー」
IS学園の近くとはいえ、街は街であり、IS学園には無いものがたくさんある。例えば、八百屋や喫茶店、あとは……飲み屋などだろうか。八百屋や喫茶店は食堂と売店で補われているが、飲み屋はそうは行かない。千冬でさえ、ビールを買ってくるときは島の外から取り寄せるほどだ。
「あれ……? ここどこだっけ……?」
久々に街に来た私は、道に迷ってしまう。しかし、そんな私に話しかけてきてくれる人がいた。
「あの……大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫……かな?」
「それなら良いんですけど……」
「あ、ごめん。やっぱ無理」
赤髪の少女に心配されたとき、つまらない意地を張って大丈夫と答えたが、それは嘘。しかし、一度断った状態から手のひら返し、みたいな行動はしたくない。
だが、彼女が背を向けた時、ちょっとやばいかな? っとおもって引き止めたのだ。
「へ?」
「ああ、ごめんごめん。つい意地を張っちゃったよ。今の私の状態って迷子だから案内してくれない?」
勢いに任せて一息で全てを言い終わると、彼女は少しだけ惚ける。
「え、と。つまり、迷子なんですね……?」
「いえす」
「それじゃ、私の知ってる場所だったら案内できますから、行き先を教えてください」
おお、親切だなぁ。いや、話しかけて来た時点で親切な事はわかってたけれど。
「行き先はIS学園でお願いします」
「へ?」
お、2度目の惚け顔ゲット! じゃなくて、なんで惚けるのさ……。
「も、もしかしてIS学園の生徒さんですか!?」
「いや、教師だけど……」
「あ、そうなんですか……」
生徒ではなく、教師なんだと伝えると、彼女はあからさまに残念そうな顔をした。
むむ、これは迷いごとの匂いがするぞ!?
「何か聞きたいことでもあったの?」
「へ? い、いえ、そんなことはないですよ?」
「いやいや、今のは絶対にあった顔だよ。ほらほら、お姉さんに教えてみなさい……」
手をわきわきと動かして、彼女へ近づいてゆく。すると、彼女は音を上げたのか、諦めるようにため息をついた。
「男性IS操縦者の織斑一夏……さんがいますよね?」
「いるねぇ」
「私、あの人の知り合いなんですけど……IS学園の中で何をしているのか知らなくて……」
「ふむふむ、恋煩い?」
「こっ……恋煩い!?」
私が自分自身でも的を得ていると感じたことを言うと、彼女の顔は真っ赤に染まった。
「そ、そんなことないじゃないですか!!」
「いやいや、わかっちゃうんだよなぁ~これが」
「いやいや、そんなことありません!!」
「まま、詳しいことはあそこの喫茶店で聞かせてちょーだい? 私が奢るから」
幸いな事に、昨晩の飲み会の代金は、千冬の財布から出されたので、私自身の財布に傷はない。そのため、幾らかは奢ることも出来る。
「む、わかりました。さっきのことは絶対に訂正させますよ?」
「うんうん、頑張ってね?」
「むむぅ……。あ、そういえば名前を聞いてませんでしたね」
「それもそうだね……」
「私の名前は五反田蘭です。よろしくお願いしますね」
「私の名前は月崎瑞希、IS学園のカウンセラーをしてるよ。よろしくね?」
◇◆◇◆◇
あの後、喫茶店に入って席に座った。
「コーヒーと……蘭ちゃんは何にする?」
「それじゃ……私もコーヒーでお願いします」
「もっと頼んでいいんだよ? パフェとか」
「い、いえ……パフェはちょっと……」
ふむ、ダイエット中なのかな? いや、彼女がそう言うならば無理にすすめることは無いだろう。
「それじゃ、コーヒー2つとパフェ一つで」
店員が「かしこまりました」と言って、厨房に入っていく姿を見送って、蘭ちゃんにに話しかける。
「で、さっきの話の続きだけど、一夏くんの学園での様子を知りたいの?」
「……はぁ。もういいですよぉ……」
何が彼女をそうさせたのかは知らないが、今度は素直に白状してくれるようだ。
「お、やっと自分の気持ちを白状する気になったか!?」
「……ああもう! いいですよわかりました! 言いますよ!」
いきなり彼女が発狂し始めた。こわいこわい。もしかしてアレの日なのだろうか? と思ったので小声で聞く。
「蘭ちゃん、もしかしてあの日?」
「……はぁ」
呆れられた。解せぬ。
「それじゃ、本題に入りますか。えっと、さっきカウンセラーって言ってましたから、相談って言ったほうがいいんでしょうか」
「さあ? それはキミに任せるよ」
「じゃあ、相談で」
強制的に話をそらされた。しかし、今度は真面目な相談なようなので、私も背筋を伸ばすなどをして、態度を改める。
「先ほどは一夏さんの様子が聞きたいと言いましたけど、改めます。IS学園の様子を教えて下さい」
「IS学園の様子? なんでそんなものを」
なんでそんなものを聞くのだろうか。今の時代ネットで検索すれば星の数だけあるだろうに。
「一夏さんの様子を人に聞くのはあれかな? と思いまして……」
「ああ、人づての情報はちょっと……って類い?」
「やはり自分で正面から攻めていったほうがいいと思ったんですよ」
なんだなんだ? さっき弄ったことがきっかけで自己完結したの? 意味不明だよ。
「まあ、いいや。IS学園についてどこまで知ってるの?」
「国立の学校で、学費については奨学金も対応可能……ということぐらいです。あ、あとはISの操縦試験があるとか……」
うーん、やっぱり殆ど知ってるじゃないか。あ、でも一つだけ違うことがあるかな。
「他の人には言っちゃダメだよ?」
「え……?」
「実は、操縦試験っていうのはオマケなんだ。学園側の本当の狙いはIS適性だよ」
「と、いうことはつまり……」
「操縦が疎かでも、IS適性さえあれば実技は通ると思えばいいさ。ま、なかったらご愁傷様としか言えないんだけどね」
だいたいの受験者はISに乗ることは初めてだ。それなのに操縦を見るだなんてものはちょっとアレだと思うね。
「っそれって」
「あ、迎えが来たみたいだ。ごめんね、せっかく案内を頼んだのに」
喫茶店の窓の外に見える人影が2つ。鬼とおっぱいオバケが現れたので、会計を済ませて素早く外に出る。
「ここにいたのか」
「さ、帰りますよ、月崎さん」
「はいはい、わかったわかったって……あっ、引っ張らないで」
最後に喫茶店の中にいる、蘭ちゃんに向けて手を降った。
◇◆◇◆◇
赤髪の少女、五反田蘭のIS適性はAランク。それはIS学園の生徒の中でもトップクラスの適性だ。
彼女はこの先、どのような道を進んで行くのだろうか、誰もわからない。
「来年会いましょう」
しかし、彼女の中では決まったようだ。
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