IS学園 秘密の地下相談室   作:????

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M・Yちゃんの相談

 そこは暗い廊下にある一部屋だった。

 IS学園地下一階教師用カウンセリングルーム、その1部屋の名前であり、その部屋の主は当然のことながらカウンセラーだ。

 そのカウンセラーこと、月崎瑞希(つきざきみずき)は、何をしているのかというと……。

 

「よっ、ほっ」

 

 ダーツをしていた。

 トビラの内側に、市販のダーツ板を貼り付け、もし誰かがトビラを開けてもいいように安全性の高い吸盤のダーツを使用している。

 

「うーん、なかなか当たらないな-」

 

 しかし、命中精度が悪いためか、勢い良く射出しているので安全性云々を言える状況ではなくなっていたりする

 

「ほっ、よっ……あっ、当たった!」

 

 ダーツを始めて十数回目、ようやくダーツの針がダーツ板の中心に突き刺さったようだ。

 

「よしっ、この調子で」

「月崎さんいますー?」

 

 ダーツを大きく振りかぶり、トビラの内側(・・・・・・)に貼り付けてあるダーツ板に向けて放つ。

 しかし、来客が現れたことによって、いろいろと狂い始める。

 開くトビラ、止められぬ右腕、放たれる吸盤のダーツ、開かれた胸元。

 

 来客こと、山田真耶(やまだまや)の胸にダーツは張り付いた。

 

「きゃ!?」

「ナイスおっぱい」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「もうっ! 一応勤務中なんでそういうことはやめてください!」

「はーい」

 

 あのあと、掃除機に吸い取られたかのように、吸盤の痕が胸に残った山田先生は、プンスカと怒りながら対面の座席に着席した。

  

 でも、そこまで怒らなくたっていいじゃない……。

 

「もう……今も痛みますよ……」

「ああ、まだ痛むの?」

「痛むに決まってるじゃないですか、吸盤ですよ? 吸盤」

 

 若干赤くなった胸を擦りながらそう文句を言ってくるが、涙目だし、何より顔が真っ赤なので迫力も何も無い。

 なので、私は少し弄ることにした。

 

「吸盤吸盤言ってるけど、何か嫌な思い出とかあるの?」

「実は過去に友人に脂肪吸収器とかいうものを売り込まれたことが……って話をそらさないでください!!」

 

 どうやら過去にマルチ商法に引っかかったことがあるようだ。

 ……この時代にマルチ商法って残ってたんだね……。

 

「ああ、もうやめて! 頭が割れちゃう!!」

「へ!? だ、大丈夫ですか!?」

 

 ……少し頭を抱えただけで心配するのか……。これはすぐにダマされるわけだ。

 

「で、用は何? 相談?」

「はい。カウンセリングをお願いします。正直こんなのやらないといけないくらい最近いそがしくて……」

 

 へぇ……羨ましい限りだ。確かによく見てみると目の下に隈が現れてるね。

 

「それじゃ、忙しい原因を探してみよう」

「忙しい原因ですか……? 織斑くん……いや、でも……」

 

 山田先生はぶつぶつと何かを呟くながら考え込んでいる。

 はてはて、一体何が原因なのかねぇ……。

 

「あれ……でも私が今してる仕事って……でも……」

 

 うーん、まだまだ悩んでいる。

 

「……わかりません」

「そうかそうか。それじゃ、なんで忙しいのかを二人で探そうか」

「お願いします」

 

 どうやら答えが出なかったようなので二人で探すことを提案する。

 

「何時くらいから忙しくなったの?」

「えっと……今年の頭に副担任についてからですね」

「それじゃ、忙しい原因って副担任関連?」

「いえ、去年は普通に出来ていたのでそれは違うと思います」

「そっか。副担任って言ったけど、担任の仕事量と比べてどれくらい違うの?」

 

 副担任、担任、共に私が就いたことのない役職なので仕事量が全くと言っていいほどわからない。担任副担任っは一蓮托生というイメージはあるけど……。

 

「今回は特別な生徒が入学してきたので、副担任という役職が設けられたんです。なので、仕事内容に比べられる箇所なんてありませんけど……強いていうなら担任が10で副担任が5、くらいの差だったと思い……あれ?」

「ん? どうしたの?」

 

 彼女はいきなり額を抑えて何かを考え始めた。一体何を考えているのだろろうか。もしかすると仕事量が増えた原因が思いついたのかもしれない。

 

「何か分かったの?」

「……です」

「ごめん、聞こえなかったからもう一度言ってくれない?」

「……担任の仕事まで私やってたんですよ!!」

「ふぇ!?」

「そうですそうでした! 何故か私の仕事の中にも担任の仕事が紛れ込んでいました!! これはどういうことですか!?」

 

 いきなり顔を上げたかと思うと大声で私に向かってそう言ってくる。

 

「いや、私に言われても……」

「……そうでしたね。いいです、直接抗議に行ってやるんですから……怒った私は怖いんですよ……フフフッ」

 

 げっ、山田先生の後ろに瘴気が見え始めたよ……。

 

「なにか?」

「イエ、ナニモ」

「そうですか、それじゃ、私はもう行きますので……ありがとうございました」

「ハイ」

 

 逃げろ担任、暗黒面がそちらに迫っているぞ。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「織斑先生!!」

「……? なにかな山田先生」

 

 そこは職員室の中、緑おっぱいこと山田真耶と鬼の教師こと織斑千冬が向き合っていた。

 

「今までの仕事! あれ、あなたの分も含めて渡してましたよね!?」

「……いや、なんだ、その……わかってくれ」

 

 威嚇するように発言する山田先生に対し、千冬はとそれだけ言うと、手に持っていたコーヒーカップを給湯室に返しに行く。

 その姿を見て、更に憤ったのか、山田先生は追撃する。

 

「織斑先生! いいから話を聞いてくださいよ!!」

「あー、なんというか……まあいい。私に着いてくるといい」

 

 千冬は追撃の言葉を受け流し、山田先生に着いてくるように指示した。

 

「……仕方ないですね……今回だけですよ」

 

 それに本質的に人のいい山田先生はホイホイと職員室から出てゆく千冬に着いて行ってしまう。

 

 しばらく歩き、とある人部屋の前で千冬は止まった。

 

「ここは……織斑先生に割り当てられた部屋……?」

 

 その部屋は執務室、とトビラに書かれ、いつもは鍵が掛けてある、教師でも一定以上の権力がないと入室すら許されない部屋だった。そして、その部屋の主は織斑千冬であるのだ。

 

 これが織斑先生の見せたかったもの……?

 

「入ってくれ」

「はあ……これは!?」

 

 鍵が空けられ、指示されたとおりに部屋の中を覗くと、その中には書類の山があった。その量、山田先生が処理したものの約3倍。

 

「これが山田先生に見せたかったものだ……」

「あの、これって……」

「全部私が処理する予定のものだが?」

「ア、ハイ」

 

 こちらに背を向けたままの状態でそう言ってくる教師などいるだろうか? いや、少なくとも目の前にいるのだが。

 

「それじゃ見るもの見たんで私は帰りますね」

「まあ、待ち給え、どうせならこの書類を片付けてみないか? ちなみに拒否権など無い」

「は、はいぃぃ……」

 

 数日後、山田先生は有給を取ったそうだ。




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