死を経験した俺の生きる時間   作:天空を見上げる猫

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二十八話

「…ねぇ、イチカ。」

 

 

「どうした?」

 

 

「うんうん、何でもない。」

 

 

「そっか。」

 

 

現在、イチカと鈴は自分達の試合が始まるまでベンチに背中を合わせて座りながら話していた。しかし、何時もの様な楽しそうな会話ではなく何処か寂しそうにしていた。そして、もう一度鈴から話しかけて来た。

 

 

「…イチカはさ、…私の前から突然居なくなったりしないよね?」

 

 

「ッ!…いきなりどうしたんだ?」

 

 

「ちょっと昨日、嫌な夢を見てね…。」

 

 

「夢…か、どんな?」

 

 

「…イチカがいきなり居なくなってて、どんなに探しても見付からなくて。それにセシリア達に聞いたらそんな人は知らないって言うから。だから!」

 

 

「鈴。心配しなくても俺は今此処にちゃんと居るし、いきなり居なくなるなんて事はない。だから心配するな。」

 

 

「イチカ…。フフ、それもそうね。イチカは今私の後ろに居るし、ちゃんとこうして話も出来る。もうこんな弱気になるのは辞めたわ。」

 

 

イチカは鈴を落ち着かせる為に手を握りながら優しく返事をした。それを聞いた鈴は何時も通りの雰囲気になっていた。イチカと鈴は互いの顔が見えないが気付いていた、互いに笑顔になっている事に。

 

 

「さて、そろそろ時間だし行くか。」

 

 

「そうね。それとイチカ。」

 

 

「分かってる。」

 

 

「「背中は任せた!」」

 

 

二人は立ち上がり顔を合わせずに拳を軽くぶつけ合った。互いに信頼し合っている二人にはこれだけで十分であった。

 

 

「あの小娘のせいで一夏は変わってしまった!本来一夏の隣に居るべきなのはあの小娘ではない!この私だ!待っててくれ一夏、私がお前をあの小娘から救ってみせる!」

 

 

篠ノ之は人気の無い所で決意をしていたがその決意は無駄だと言う事を知らない。何故ならイチカは何も変わってはおらず、既に多くの人に救われているからである。

 

 

「一夏、お前は私が居て初めて幸せになれる。そして今お前が感じている幸せは偽りの幸せだ。お前の事をよく知っているこの私がお前を戻して共に幸せになろう!」

 

 

篠ノ之の考えはどうやったら出てくるのだろうか?幸せは他人が決める物ではなく、本人が決める物である。篠ノ之の考えはただ自分が幸せになる為だけの幻想に過ぎない。

 

 

「セシリア、ちょっと良いか?」

 

 

「何でしょうか?」

 

 

「私達は何故こんなにゆっくりとお茶を飲んでいるんだ?次の相手は確実に師匠と鈴だぞ?」

 

 

「だからですわ。」

 

 

「?どう言う事だ?」

 

 

「焦って何時も通りの力を出せないよりリラックスして何時も以上の力を出した方が良いではありませんか。」

 

 

ラウラとセシリアは現在自分達の試合が終わり、ゆっくりとティータイムを楽しんでいた。ラウラは茶請けに手を伸ばしながらセシリアに質問した。

セシリアはカップを静かに置き、ラウラの質問に答えた。ただ質問に答えただけだが今のセシリアは一つ一つの行動が優雅に見えた。これが本来のセシリアの姿なのであろう。

 

 

「そう言う事か。ならば私も今はこの時間を楽しむとするか。話は変わるが師匠達とはどうやって闘うつもりだ?」

 

 

「その事なのですがこれを使いますわ。この日の為にイギリスから許可を貰いましたわ。」

 

 

「なるほどな。私もこれを使いたかったが許可が降りなくてな。」

 

 

セシリアとラウラはそれぞれ眼魂を取り出した。セシリアは金色、ラウラは青色の眼魂であった。おそらく二人の持つ眼魂の中で最も強力な眼魂だろう。

 

 

「それは残念ですわ。処でラウラさん。」

 

 

「何だ?」

 

 

「ラウラさんはイチカさんをお願い出来ますか?私は鈴さんを対処いたしますわ。」

 

 

「良いのか?」

 

 

「えぇ、今回の私の仕事はサポートですから。」

 

 

「了解した。次の試合は絶対に勝つぞ!」

 

 

「えぇ!あのお二人に私のチームワークを見せて差し上げますわ!」

 

 

二人は自分達の目標を越える為に手を組みイチカと鈴に牙を向く。しかし

 

 

『寄越せ、彼奴を倒す為の力を寄越せ!』『力が欲しいなら全てを否定しやがれ!』『本当にすまない、僕があの時にちゃんと知らせていれば…』『天照さんは何も悪くないですよ。悪いのは俺の心の弱さなんですから。』『…警告だ。もう一度倒す為だけに使えば君は存在が消えてしまうよ。』『消える覚悟ならもう出来てます。』

 

 

様々な思いや真実が渦巻く学年別タッグトーナメントが遂に始まる。

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