死を経験した俺の生きる時間   作:天空を見上げる猫

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三十六話

「では、現状を説明します。」

 

 

旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷・風花の間では、イチカ達専用機持ち全員と教師陣が集められており、照明を落とした薄暗い室内に大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいた。

 

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音』《シルバリオ・ゴスペル》が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡がありました。」

 

 

(軍用IS、暴走、そう言う事か…。だから束さんは悲しそうな顔をしていたのか…。そして俺達専用機持ちが集められたという事は十中八九、俺達がこの機体を止め事になるのか。)

 

 

「そして、この事態を私達が対処する事になりました。まず教員が学園の訓練機を使用し、空域及び海域の封鎖を行います。そして専用機持ちの皆さんには本作戦の要を担当してもらいます。」

 

 

イチカの予想は当たっており、周りを見渡すと全員が予想出来ていたのか余り驚いておらず、特にラウラの眼差しは真剣その物だった。

 

 

「それでは作戦会議を始めます。意見がある人は挙手をお願いします。篠ノ之博士も何かあれば同じ様にお願いします。」

 

 

「分かりました。」

 

 

「はい、目的ISの詳細スペックデータを要求します。」

 

 

束は山田先生の言葉に頷き、早速セシリアが手を挙げていた。

 

 

「分かりました。ただし、これは二ヵ国の重要軍事機密です。皆さんは分かっていると思いますが決して口外してはなりません。情報が漏洩した場合、皆さんには査問委員会よる裁判と最低でも二年の監視がつけられます。」

 

 

「了解しました。」

 

 

ディスプレイに銀の福音のスペックが表示されイチカ達専用機と教師陣は開示されたデータを元に相談を始めた。

 

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型…私のティアーズと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね。」

 

 

「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ。しかも、スペック上では私のの甲龍をうわまわってるから向こうの方が有利…。」

 

 

「この特殊武装が曲者って感じがするね。丁度本国から防御パッケージが来てるけど、連続で防御するのは難しそうだね。イチカの盾なら行けそう?」

 

 

「防御面に関しては問題は無いが、広い範囲を防御するなら数秒のロスが生まれるから今回の作戦には向かないな。簪は?」

 

 

「私も防御用パッケージがあるけどシャルロットと同じく連続での使用は難しいかな。」

 

 

「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルも分からん、偵察は行えないと見て間違いないか…。いや待てよ?セシリア。」

 

 

「どうされました?」

 

 

「学年別タッグトーナメントで使った眼魂を使えないだろうか?」

 

 

「…残念ながらあの眼魂は一度使うと暫くの間使えなくなるので今回は使えませんわ。」

 

 

「そうか…。」

 

 

イチカ達は互いに意見を出しあっている中、束と千冬はそれぞれ違う反応を見せていた。束は深刻そうな顔をして、千冬は少しばかり頬が緩んでいた。

 

 

(…これって本当にISの暴走なの?軍が開発したISの試験稼働が暴走して、そして試験稼働には多すぎる武装の数…。まるで何か別の目的があってISが暴走したように見せている様にしか思えない…。一応コアネットワークに接続して何か情報が無いか探ってみよう。幸いにも作戦内容は確実に成功する為の奴みたいだから心配は必要無いけど一応念には念を。)

 

 

(これはチャンスだな。見た所、この機体を沈めるには一撃必殺でなければならない。此処で漸く一夏に雪片を持たせる事が出来るな。)

 

 

「取り合えず確認するぞ。俺、セシリア、シャルロットのA班が福音を発見次第捕縛。その後鈴、ラウラ、簪のB班が福音を撃つ。「その必要は無い。」…それはどう言う事でしょうか?」

 

 

「そんな面倒な事はせずミューゼルが雪片を使い一撃で仕留めろ。この中で最も速いのがミューゼルの機体だからな。」

 

 

『ハァ…。』

 

 

千冬の提案に束と山田先生を含めた八人が大きな溜め息を吐いた。特に山田先生に関しては頭を抑えていた。呆れて物も言えないとは正にこの状況の事を言うのであろう。

 

 

「今から君達のISのパッケージをインストールするからインストール次第出撃出来る様に準備してて!イッ君は私の手伝いをお願い!」

 

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 

「勝手な行d「因みに織斑先生には指揮権及び作戦の決定権がありませんのでお忘れなく。」チッ!」

 

 

千冬は山田先生の言葉に舌打ちをしたが眼はまだ諦めていなかった。それ所かその眼は、自身の勝利を確信していた。だが、その目論みが成功しない事をまだ千冬は知らない。

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