イチカ達が束と永久の元での訓練を終えて数日後、イチカと簪はPRCの開発室で束からアドバイスを聞きながら作業をしていた。
「ふぅ…イチカ、束さん、私の専用機の事を手伝だってくれてありがとうございます。」
「良いって、俺としても良い経験になるし、メインは簪がやってるんだから気にするな。」
「にしても、かんちゃんのやろうとしてる事を聞いて流石の私もビックリだよ。何せ今の打鉄二式のデータを残したまま改良したデータや武装をインストールするなんて普通考えないからね。と言うか、かんちゃんの考えた事って擬似的な二次移行なんだよねぇ。普通の開発者ならまず不可能って言って逃げ出すけど私達は普通じゃないからねぇ、むしろ楽しいまであるよね~。」
「ですね。ん?ちょっとストップ。簪、そこのシステム間違ってないか?」
「え?…あ、本当だ、大文字の所が小文字になってる。修正修正っと。ありがとねイチカ。」
「ふぅ…皆疲れてきたみたいだからそろそろ休憩しようか。あ、せっかくだからナーちゃんも一緒に休憩しようよ。」
「そうですね、ではお言葉に甘えさせて貰いますね。折角なので私のお気に入りのお茶とお菓子を出しますね♪」
束にナーちゃんと呼ばれた女性は後ろで纏めた金髪に動きやすそうな服装をし、右手の人差し指には銀色と灰色の指輪が付けられていた。彼女の名はナターシャ・ファイルス、元アメリカの国家代表であり、シルバリオ・ゴスペルのテストパイロットでもあった女性である。ナターシャは福音事件の後に束がシルバリオ・ゴスペルに使われていたコアと共にPRCへ引き抜いて今に至る訳だ。
「ナターシャさん、此処に来てから楽しそうですね。」
「楽しそう…か、確かにそうかもね。国家代表時代は訓練や広告塔の仕事が多忙過ぎて趣味の時間とかも中々取れなかったけど、君達がこの娘を
「福音のコア…ですか?でもそれは…」
「えぇ、この娘は機能を停止していて共に空を飛ぶのを諦めていたけど、篠ノ之博士が言うには完全に停止している訳じゃなくて、生きてる自己修復機能を使ってゆっくり回復してるみたい。」
「本当に奇跡的にだけどね。VTシステムを搭載したISは膨大な負荷が掛かってかなり危険でそれが福音には二つ搭載されていて普通ならシールドエネルギーが尽きた時点でコアは砕け散るはず…なんだけど、福音の場合は二次移行した事とイッ君達が早急に対処してくれたからISに備わってる自己修復機能で徐々に回復してるんだ。本当は私が修復したいんだけど、下手に手を加えて完全に停止させたくないしね。まぁ、それだけ今の福音が手を加えられない位ギリギリの状態なんだよ…って言ってもナーちゃんが言った通り少しずつ回復しているんだけどね。」
「成る程。」
「…ん、分かった。それじゃ早速…イチカ。」
「うん?どうしたかんざ…「パース!」うおっ!?」
簪は独り言を呟くとイチカを呼び、振り向いた瞬間に待機状態の打鉄二式を全力でぶん投げて、それをイチカは驚きながらも難無くキャッチした。その瞬間、イチカの意識は何者かに引っ張られる様に落ちた。
「此処は…図書館…か?と言うよりこの感じは…「此処は私の世界さ。」ッ!」
「フフ…」
「お前は…」
イチカが気が付くとそこは大量の本棚に囲まれた空間に立っており、声が聞こえた方へ振り向くとそこにはロングコートとフードストールを着用し手には大きめの本を持つ女性が立っていた。
「自己紹介…の前に、コホン…祝え!」
「…は?」
「我が女王の忠実なる側近にして天地の鎧翼、その名も打鉄零式!今、悪夢の守護天使と対峙した瞬間である!」
「…え?」
「さて、改めて自己紹介をさせて貰おう。初めまして織斑一夏君…おっと失礼、今はイチカ・ミューゼル君だったね。私の名前は打鉄二式改め、打鉄零式。私の事は気軽にゼロもしくは祝福のお姉さんと呼んでくれたまえ。」
「え、あ、じゃあゼロ…で。」
「…はぁ、つれないねぇ。まぁ、良い。一度君とは話がしてみたくてね。我が女王に頼んで協力して貰ったと言うわけさ。…ん?この感じは…イチカ君、一歩…いや、念の為に三歩下がりたまえ。」
「三歩?何故?」
「良いから、其処に居ると危険だからさ。」
「…三歩だな?」
「あぁ、感謝するよ。さて…五、四、三、二、一、来る。」
「来…[Master!ご無事ですか!?]うおっ!?白騎士!?[私も居るよ!]白式!?どうやって此処に!?」
[少し裏技を使って此方に来ました!誰ですか!Masterの意識を…あぁ!?]
「やぁ、久し振りだね姉さん。再び会えた事を祝福…[祝福は良いです!]ふぅ…全く姉さんは祝福の大事さを分かっていない…」
[事あるごとに祝福を聞かされる私の身にもなって欲しいんですが!?と言うより何故Masterを貴女の世界に連れ込んだんですか!?]
[お姉ちゃん?このコア人格は?]
[…この娘は私の二番目の妹に当たるコアで些細な事でも祝福する変わった娘です。]
[へぇ~二番目の妹…え?]
「…つまりゼロは三番目に作られたコアと言う事か。」
「正解だよ、イチカ君。それと私はただイチカ君と話がしたくて此処に呼んだだけさ。それより…祝…[ストップ!]え…せめて最後まで言わせたまえ。はぁ…仕方ない祝福はまたの機会でするとしよう。さて、イチカ君。話…と言うよりは面白いニュースと予言を君に伝えたかったんだ。君はどっちから聞きたいかい?」
「ニュースと予言?…予言からで頼む。何と言うか…ニュースの方は嫌な予感がするから後回しだ。」
「成る程。では…主を無くした戦乙女は守護者を電脳の大海で探し求め、いずれ守護者の力となるだろう。…これが君に伝えたい予言さ。ストレートに伝えても良かったんだがそれでは面白くもないし予言とも言えないからね。意味は自分で考えてみてくれたまえ。そしてニュースは現実に戻ったらテレビを点けてみると良い。」
「はぁ?テレビ?予言の方は意味はともかくテレビ…。」
[ちょっと!?面白いって言ったから期待したのにテレビを点けろ!?此処で言えば良いじゃん!?]
[はぁ…Master、白式、この娘に何を言っても意味ないですよ。基本的にこんな感じですから。はぁ…ではMasterへの用事は済みましたか?済んだなら私達は帰りますよ?]
「あぁ、構わないよ。ではイチカ君、今度はゆっくり我が女王と共に話そう。今度は二次移行した時になると思うが此方から出向こう。」
「そうしてくれると此方も助かる。じゃあ、またな。」
イチカはそう言うと振り返り右手を軽く上げて揺らして眼を閉じる。そしてイチカは自身が引き上げられる感覚を覚え、眼を開く。そこは先程まで自身が作業していた場所であり、ソファーに寝かされていた事に気付く。
「あ、イッ君起きた?急に意識を失ったから焦ったけど、かんちゃんから事情は聞いたから安心したよ。」
「束さん、ありがとうございます。…あ、テレビのリモコンってありますか?」
「リモコン?ほい、でもどうして?打鉄二式のコア人格から何か聞いたの?」
「えぇ、まぁ、此方に戻ったらテレビを点けろと。面白いニュースがあるから…と。」
「面白いニュース?それって?」
「さぁな?そこまでは分からん。まぁ、答えはテレビを点ければ分かるだろ。」
そう言うとイチカはリモコンを操作してテレビを点ける。その瞬間、イチカ達全員は流れている映像と聞こえてくる音声に理解が追い付かず、ただ絶句していた。何故ならテレビには…
『はい、僕は前任のアリス・ルグランさんからフランス国家代表の座と彼女の意思を受け継ぎ、これから誠心誠意頑張って行こうと思います。まだ着任したばかりではありますが皆さんの応援に応えて見せます。…目標ですか?勿論、モンドグロッソで優勝する事ですね。』
大量のフラッシュを浴び、正装に身を包み何時も通りハイライトが失われた瞳でおそらく四分の三は心に思っても居ない言葉を話すIS学園最狂のフランス国家代表候補生…もといフランス国家代表となったシャルロット・デュノアの姿があった。
「どうでしたか?それでは次回もお楽しみに!……アハハ♪何てね?」