死を経験した俺の生きる時間   作:天空を見上げる猫

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遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします。

今回は泊まりと永久さんの話です。


番外編 泊まりと兎と黒の昔話

とある日の放課後。授業を終えたイチカは何時も通り寮の部屋に帰る準備をしていた。本来なら鈴達と訓練をする筈であるが、全アリーナのメンテナンスの為に一週間程使用できない状態になっている為である。

 

 

「さて、アリーナは使えないからどうするかな…。鈴達を誘ってトランプとか普通に談笑とかでもするか。」

 

 

「師匠!ちょっと良いか!?」

 

 

「ラウラ?どうしたんだ?と言うか少し落ち着け?」

 

 

「うむ、すまない。スゥ…今度姉さんの家に泊まりに行きたいぞ!」

 

 

「家にか?」

 

 

「うむ!」

 

 

(うわぁ…。スッゲー目がキラキラしてんなぁ…。)

 

 

(可愛いですね。)

 

 

(だね!)

 

 

(ラウラの嬢ちゃんらしいと言えばらしいけどな~。)

 

 

「(だな。)ちょっと待ってろ。」

 

イチカはラウラに期待の眼差しを向けられながらスマホを取り出し、スコールに電話を掛ける。数コールで電話が掛かり用件を伝える。

 

 

「…もしもし義母さん?ちょっと聞きたい事…と言うより頼みたい事があるんだけど。」

 

 

 

『珍しいわねイチカが頼み事なんて?内容次第だけど大体の事なら大丈夫よ。』

 

 

「いやまぁ、大した事じゃないんだけど…。今度の休みに家に泊まりたいって子が居るんだけど…。」

 

 

『今度の休み?うーん、その日はオータムと出張なのよ…。一応、束とクロエちゃんとマドカは居るんだけど…。…そう言えば誰が泊まりたいって言ってるの?』

 

 

「ラ[ガタッ!]ウラ。…何か凄い音が聞こえたけど?」

 

 

『き、気にしないで!ちょっ!?土下座しないで!?此処食堂だからね!?あ、ち、違うの!無理な仕事を押し付けてるとかそう言うのじゃないからね!?待って!?その台詞は更に誤解されるから!?イチカ!?ラウラちゃんのお泊まりはオッケー!って伝えて!今すぐ!速く!そして伝えたらラウラちゃんに急いで変わって!』

 

 

「お、おう。ラウラ、泊まりのOKがでたぞ。」

 

 

「本当か!よしっ!」

 

 

ラウラはイチカの家に泊まれると聞くと先程よりも目をキラキラさせて嬉しそうにガッツポーズをする。 

 

 

「あ、それと電話を変わって欲しいそうだ。」

 

 

「?私にか?」

 

 

「あぁ。(もしかして義母さんに土下座とかしてるのって…。)」

 

 

「御電話変わりました、ラウラです。」

 

 

『ラウラ!』

 

 

(やっぱりクロエさんか!)

 

 

「姉さん!丁度良かった♪今度の休みに姉さんの家に泊まりに行くからね!あぁ!今から考えただけでも凄く楽しみだよ! そうだ!寝る前にいろんな事を沢山話そうね!」

 

 

『!?』

 

『はい!私も楽しみにしてますね!あ、では私は仕事に戻りますね。』

 

 

「うん!お仕事頑張ってね!ふぅ、と言う訳で宜しく頼むぞ師匠!」

 

 

「おう、任せろ。」

 

 

そう言うとラウラはスキップをしながら教室を出て行き、何処かへと行ってしまった。するとラウラが教室を出るのを確認したクラスメイトの一人が戸惑いながらイチカの元へとやって来る。

 

 

「えっと…ミューゼル君?さっきのは…ボーデヴィッヒ…さん…で…良いん…だよね?」

 

 

「あぁ、間違い無くラウラだ。ただ、お姉さんと話す時とかはあぁなるらしい。」

 

 

「そうなんだ…。何かボーデヴィッヒさんの珍しい一面が見れてイメージががらりと変わったよ。お菓子が好きなクールな女の子からお姉さんとお菓子が好きな可愛らしい女の子のイメージになったよ。」

 

 

「そっか。[♪~♪]…鈴から?」

 

 

イチカ!私もイチカの家に泊まりに行っても良い!?ラウラが嬉しそうにスキップしてたから「何か良いことでもあったの?」って聞いたら「姉さんの家に泊まる事になったんだ!…そうだ!鈴も一緒に泊まらないか!?きっと楽しいぞ!」って言われたから泊まりたくなっちゃった♪ダメ?

 

 

「…頼んでみるっと。」

 

 

「ミューゼル君、何か良い事あったんだね。」

 

 

「分かるのか?」

 

 

「うん。凄く良い笑顔。」

 

 

「…マジで?」

 

 

「うん。」

 

 

イチカはクラスメイトと話した後にスコールに鈴の事で連絡すると、とても悔しそうな声を出しながら許可を出しており、ラウラと鈴が楽しんでいる写真を撮る様にお願いされた。

そして土曜日になり、ラウラと鈴はテンションが上がっていて周りに迷惑が掛からない程度に声を押さえて談笑を楽しんでいる。すると三人の前に黒い車が止まり、中から黒服に身を包みサングラスを掛けた男女が現れる。

 

 

「イチカ・ミューゼル、鳳鈴音、ラウラ・ボーデヴィッヒだな?大人しく我々に着いて来て貰おうか。」

 

 

「…何だ貴様らは?いきなり現れて着いて来いだと?」

 

 

「…私達が黙って従うと思う?」

 

 

「…。」

 

 

「君達の意見を聞いている訳ではない。」

 

 

「無駄な抵抗はしない方が良いわよ。ま、此処に居る人達がどうなっても良いなら話は別だけど?」

 

 

「「ッ!」」

 

 

「…はぁ、乗るぞ二人とも。」

 

 

「なっ!?師匠!?」

 

 

「何考えてるの!?イチカ!?」

 

 

「…兎に角、今はこの人達に黙って着いて行く。ただそれだけだ。別に心配しなくても良い、この人達は敵じゃないから。」

 

 

「でも!…はぁ、分かったわよ。てな訳で乗るわよラウラ。…ラウラ?」

 

 

「師匠!鈴!このぬいぐるみ凄くモコモコして気持ちいいぞ!あ!そうだ!二人とも触ってみてくれ!本当に気持ちいいぞ!」

 

 

((…ヤバイ、何かラウラの事が心配になってきた…。何とかしないと…。))

 

 

イチカと鈴はラウラの声が聞こえた方を見ると満面の笑みを浮かべながら少し大きめの白い兎のぬいぐるみを抱えているラウラの姿があった。その姿を見たイチカと鈴は何とも言えない表情になり、何とかしようと決意したのだった。

 

 

「…ねぇ、イチカ?」

 

 

「…どうした?」

 

 

「…この車の座席、凄くフカフカで気持ち良くて気が付いたら寝そうなんだけど。」

 

 

「確かに気付いたら寝てそうだな。」

 

 

「…。」モグモグ

 

 

「…しかも何か冷蔵庫があって中に私達の好きな飲み物とかお菓子とかが沢山入ってるんだけど。」

 

 

「期間限定の奴とかもあるな。」

 

 

「…。」ゴクゴク

 

 

「…ねぇ、もしかしてこの人達ってイチカの会社の人達?」

 

 

「正解。此方の人達はPRCの広告宣伝担当の日野さんと月谷さん。普段はさっきみたいな口調じゃないから安心していいぞ。」

 

 

「初めまして、イチカ君の紹介通りPRCの広告宣伝の担当をしている日野明です。以後お見知り置きを。そして鳳さん、ボーデヴィッヒさん、先程は大変失礼いたしました。お詫び…と言っては何ですが車内にあるお菓子や飲み物はお好きなだけどうぞ。」

 

 

「同じくPRCの広告宣伝を担当している月谷紫苑です。今回はクロエちゃんと社長の希望でこの様な形でおもてなしする事になりました。…おもてなしと言って良いのか疑問ではありますが。」

 

 

「…サプライズが義母さん、お菓子とかがクロエさんですね。すまん二人共、クロエさんは兎も角義母さんが勘違いさせたな。」

 

 

「まぁ、驚いたけどこの人達が良い人だって分かったから私は気にしてないわ。「鈴!これも美味しいぞ!食べてみてくれ!」あむ…あ、美味しい。てか、苺味あったんだこれ。ラウラこれも食べる?」

 

 

「頂くぞ!」

 

 

「なら、はいあーん。」

 

 

「はむっ…うむ!此方も美味しいぞ!」

 

 

「…ハァ。」

 

 

席に座っている三人のやり取りを見ていた月谷はいきなり右手を頬に添えながら溜め息を吐いていた。三人には聞こえていない様だが運転席の日野はしっかり聞こえていた。

 

 

「…?月谷さん?溜め息なんか吐いてどうかしたんですか?何か問題でもありましたか?」

 

 

「違うのよ…日野君…後ろにツインテール活発美少女と銀髪キュート美少女が居るでしょ?その二人が仲良くお菓子を食べさせ合ってるでしょ?後は…分かるわよね?」

 

 

「分かりません。」

 

 

「…え?日野君…貴方本気で言ってる?直ぐ後ろに世界の神秘があるのよ?」

 

 

「神秘。」

 

 

「そう…美少女と美少女が近い距離でキャッキャッウフフ…これこそ世界の神秘であり、世界の真理でもあるの。」

 

 

「真理。」

 

 

「女の子同士の過ごす時間…これこそがGL…世界で最も尊くエモい物なのよ。」

 

 

「すいません、僕はNL派なので否定はしませんが同意出来ないです。男女の甘い恋、これこそ至高です。」

 

 

「何…ですって…!?じゃ、じゃぁ!そこまで言うなら日野君の今のトレンド言ってみなさい!因みに私の今のトレンドはお嬢様×メイドよ!」

 

 

「男の娘×姐御系女子。」

 

 

「…クッ!あり…!」

 

 

「ねぇ、イチカ?この人達って何時もこうなの?」

 

 

「この人達はって言うか会社の人達はってのが正しいかな?大体休憩時間とかに仲良くお互いの好きな事を話してるからなぁ…。サブカルチャーとかアウトドアとかミリタリーとか色々。」

 

 

「成る程ね。でもそう言う風に好きな物を話し合えるくらい仲が良いのね。それにしても…初めてじゃない?イチカの家に泊まるの。」

 

 

「確かにそうだな。まぁ、昔は俺自身の環境に問題があってそれどころじゃなかったからなぁ…。それを考えると今日はラウラに感謝しないとな。」

 

 

「そうね、私も誘ってくれてありがとね。」

 

 

「!(しまった…お菓子に夢中で話を聞いていなかった…取り敢えず鈴が頭を撫でているから笑っておこう。)ニッ!」

 

 

前の席で二人がGLとNLの事で言い合っている間もイチカと鈴は少し前の事を思い出しながら楽しそうに話して泊まりの切っ掛けを作ったラウラに感謝していた。話を聞いていなかったラウラは笑って誤魔化していた。そして車で移動する事約1時間、目的地であるミューゼル宅に到着し日野と月谷の二人と別れた。

 

 

「おぉ!此処が姉さんと師匠達の家か!」

 

 

「やっぱ広いわねぇ、初めて来た時もラウラくらい驚いてたわね。」

 

 

「鈴は来た事があったのか?…あ、そう言う事か。」

 

 

「?そう言う事って?」

 

 

「挨拶に来たんだろ?結婚の?」

 

 

「んなっ!?」

 

 

「ゲホッゲホッ!?何でそうなる!?普通に鈴は遊びに来ただけだぞ!?後、年齢的に早いわ!」

 

 

「そうなのか?てっきりシャルロットの言う通り二人の結婚の挨拶をしに来たとばかり思ったんだが…。勘違いしてすまなかったな。」

 

 

((やっぱりシャルロット(あいつ)か!?))

 

 

「?どうしたんだ?二人共?」

 

 

「あ、いや、何でもない…『♪』ちょっと待ってろ。(メッセージ?あ…)」

 

 

『イチカさん!?外で何をしているんですか!?私は月谷さんから連絡を頂いてからずっと玄関でスタンバイしてたんですよ!?なのに何時までも入ってこられないし、ラウラの楽しそうな声が聞こえて!私は何時まで待てば良いんですか!?私は久し振りにラウラに会うんですよ!?沢山話したい事もありますし、何よりラウラを甘やかしたいんですよ!?』

 

 

「(オゥ…速めに入るしかないな…。)ま、まぁ、立ち話もこれくらいにして中でゆっくりしようぜ。」

 

 

ラウラの勘違いを解きクロエからのメッセージを確認すると急いで家の中に入る事を提案する。鈴とラウラも断る理由も無いのでイチカに続く。

 

 

「ただいまー…うおっ!?」

 

 

「キャッ!?」

 

 

「ムグッ!?」

 

 

「お帰りなさい、イチカさん。鈴さんもいらっしゃいませ。そして…待ってましたよラウラ!元気にしてましたか?怪我とかはしてませんか?きちんとバランスの良い食事を取っていますか?友達は沢山出来ましたか?あ、今着ている服はとても似合っていて可愛いですよ♪」

 

 

「久し振り姉さん!そうでしょ!この服は鈴達が私の為に選んでくれたんだよ!それに私は何時も元気で怪我もしてないよ!今日は沢山色んな事を話そうね!」

 

 

「はぅっ!?私の妹が可愛い過ぎる…そうは思いませんか!?イチカさん!鈴さん!」

 

 

「玄関でスタンバイしていたとは知っていましたけど、まさかクラウチングでスタンバイしていたなんて普通予想出来ませんよ…」

 

 

「お邪魔します。と言うよりラウラに抱き付きながら迎えられるなんて思ってもいなかったわよ…」

 

 

イチカが扉を開けて家に入ると同時にクロエが此方に飛び付いてきている光景が目の前にあり、咄嗟に鈴を抱き寄せて回避してクロエはそのままラウラに抱き付くと同時に頭を撫で始め、イチカと鈴に挨拶をしていた。これがイチカが扉を開けて数秒の出来事であった。

 

 

「兄さんお帰…何か凄い事になってるね。それとお久し振りです鈴さん。今日はゆっくりしていってください。」カシャッ

 

 

「ただいま、マドカ。と言うか何で普通に流れる様に撮影した?」

 

 

「久し振りね、マドカ。一日だけど世話になるわね。確かに、ラウラとクロエさんを撮影したなら分かるけど明らかにスマホは私達に向いてるわよね?」

 

 

「え?いやー、こんな状況でも仲が良いなぁって思ったから。つい撮っちゃった。」

 

 

「「仲が良い?」」

 

 

「あ、無自覚なんですね。何時までも抱き合ってるから微笑ましなぁって。」 

 

 

「「ッ!?」」

 

 

[え~、気付いて無かったのかよ~?]

 

 

[まぁ、マスター達に関しては何時もの事だからね。]

 

 

[仲が良いのは良い事です!ね?メア?]

 

 

[…ノーコメントだ。]

 

 

「ユルセン達もお帰りなさい。兄さん、鈴さん、ラウラさん、クロエさん、此処玄関ですし中でゆっくりしましょう。束さんも中で暇にしてるでしょうし。」

 

 

マドカの言葉にイチカと鈴は急いで離れ、ラウラはクロエに抱き抱えられながら束の待つリビングへと向かう。イチカ達がリビングに入るとそこには軽快な音楽とシャンシャンと言う音が流れており、束がタブレットを何度もタッチしていた。

 

 

「フンフン♪…あ、イッ君お帰り~♪鈴とラウちゃんもいらっしゃ~い♪」

 

 

「「お邪魔します。」」

 

 

「何やってるんですか束さん?」

 

 

「あ、これ?かんちゃんに教えて貰ったリズムゲームだよ。かんちゃんに時間を潰すのに丁度良いゲームを聞いたらオススメされたんだけど見事にはまってね~。よし!フルコンボ!」

 

 

「成る程。」

 

 

「あ、これお土産なんですけど良かったら皆さんで食べてください。」

 

 

「鈴ちゃんありがとう!これは…クッキーだね。折角持って来てくれたから食後に出して良いかもね。」

 

 

「そう言えば束さん。夕食って何にするか決まってるんですか?メニュー次第では今から準備しようと思いますので。」

 

 

「晩御飯のメニューは皆でワイワイ出来ながら作れる…たこ焼きだよ!」

 

 

「たこ焼き!?作れるのか!?」

 

 

「オゥ、ラウちゃんが凄く食い付いてきた。フッフッフ、勿論!この…たこ焼き機を使えば誰だって作れるよ!」

 

 

「こ、これで、たこ焼きが作れるのか!?」

 

 

「因みにたこ焼きで使うタコは、私がラウラの為に朝一で一番良い物を買ってきたんですよ♪」

 

 

「本当!?ありがとう姉さん!」

 

 

束は何処からかたこ焼き機を取り出しラウラに見せて説明しラウラは眼を輝かせながら見つめており、クロエは買ってきたタコについて語っていた。そしてイチカはクロエの言葉にある疑問を覚えた。

 

 

「…朝一で買ってきた?」

 

 

「兄さん、鈴さん、ラウラさん、お茶です。それと兄さんにはこれを。」

 

 

「あ、うん、もう理解した。」

 

 

「クーラーボックス?マドカ、これ開けて良い?」

 

 

「どうぞ。」

 

 

「…タコ…ね。しかもかなり立派な真ダコね。しかも二匹居るわね。」

 

 

「だな。因みに…生きてますけど束さんとクロエさんはタコの下処理出来るんですか?」

 

 

「「…。」」スッ

 

 

イチカの質問に束とクロエは無言で顔を反らし、わざとらしく口笛を吹くふりをしていた。イチカは束達の反応が予想通りだった為に特に驚きもせずマドカの方を向く。

 

 

「…マドカは?」

 

 

「生きてるタコを触るのは抵抗があります。この大きいサイズは特に。」

 

 

「だろうな。取り敢えず俺が下処理するから束さん達はラウラ達とゆっくりしててください。」

 

 

「イチカ、私も下処理手伝うわよ。二人でやれば速く終わるしね。」

 

 

「いや、悪いから。鈴は客人なんだからゆっくり好きな事をしてて待ってくれ。」

 

 

「良いから良いから、さっきも言ったけど二人でやった方が速いから、ね?それに二人でキッチンに並んで作業するって何か良くない?」

 

 

「そうだな。なら、頼めるか?」

 

 

「勿論!」

 

 

イチカと鈴はクーラーボックスを持ってキッチンに移動してタコの下処理を始める。その光景を見ていた束とクロエとマドカはまるで仲の良い夫婦に見え、スマホのカメラを起動して二人を撮影し、ラウラを含めた四人でトランプで遊び始めた。

 

 

「ふぅ…こんなもんか。鈴、そっちは?」

 

 

「此方も終わったわよ。ところでイチカ?これ全部たこ焼きで使うの?」

 

 

「流石に全部はなぁ…クロエさん、タコって全部たこ焼きにせずに幾つか別料理にしても良いですか?唐揚げとかマリネとかに。」

 

 

「お願いします!」

 

 

「分かりました。鈴、マリネの方を頼む。体と足四本位で味付けは任せる。あ、調味料とかは一通り揃ってるから好きに使って良いぞ。」

 

 

「了解。たこ焼きに入れるタコは一口サイズで良い?」

 

 

「おう。」

 

 

イチカと鈴は手際良くタコを調理し、同時進行でたこ焼きの生地を作ろうとすると先程までラウラ達とトランプをしていたマドカがキッチンに入って来てボウルやキャベツを準備していた。

 

 

「兄さん、鈴さん、ユルセン達がトランプに交ざるそうなので手伝います。話しを聞いた感じ兄さんは唐揚げを作るみたいなので生地は私が作りますよ。」

 

 

「マジか、それは助かる。なら、生地は五袋全部使ってくれ。それで足りると思う。」

 

 

「そうね、五袋あれば足りるでしょ。」

 

 

「五袋で足りる…?え…?…もしかしてラウラさんって私達の中で一番食べます?」

 

 

「あぁ、てか俺達のメンバーで一番食うぞ。」

 

 

「そうなんですか。何か…意外ですね。」

 

 

「そうね。私達も普通に驚いたからね。」

 

 

マドカが加わったキッチン組の三人は他愛の無い話で盛り上がりながらそれぞれの担当した物をこなしていく。リビングではトランプで盛り上がっている声が、キッチンではタコが揚がる音や野菜を切る音や泡立て機がボウルに当たる音等が響いていた。

 

 

「よし、完成っと。二人は?」

 

 

「此方も完成したわよ。」

 

 

「で、出来ました…!」

 

 

「うん、マドカに関してはマジでありがとうな。さて、束さん、クロエさん、ラウラ、ユルセン、準備出来たからトランプ片付けてください。」

 

 

イチカの声を聞いた束達はすぐにトランプを片付け始めて夕食もといたこ焼きパーティーの準備に取り掛かる。タコの下処理が出来ずトランプを楽しんでいた束とクロエも流石にたこ焼きは焼ける様で二人がメインで焼いている。

 

 

「四人共!私とクーちゃんでどんどん焼くからじゃんじゃん食べて!」

 

 

「そうですね。下処理や準備出来なかった分、焼くのは任せてください。私達は作りながら食べれますしね。」

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

「まぁ、作りなら食べるのはたこ焼きパーティーの醍醐味でもありますからね。」

 

 

「ですね。」

 

 

「し、師匠、鈴?わ、私は下処理も準備もやっていないのに、ただ食べるだけで良いのか?」

 

 

「気にするな。元々ラウラが泊まりたいって俺に言ってくれたから泊まりに来たわけだから、ゆっくりしても何も問題無いぞ。」

 

 

「そうそう。それにラウラのお陰で私も泊まれたんだからね?後、ラウラは束さん達の為に私と一緒にお土産を選んでるでしょ?それだけでも無いもしていない訳じゃ無いからね?」

 

 

「そ、そうなのか?」

 

 

「そうよ。…あ、そう言えば束さん。一つ聞きたい事があるんですけど。」

 

 

「ん?何かな鈴ちゃん?」

 

 

「蒼夜さんとはどうやって出会ったんですか?」

 

 

「あ、気になっちゃう?」

 

 

「あぁ、確かに気になりますね。あ、でも俺は永久さんとの出会いも気になりますね。何て言うか、束さんは永久さんに絶対的な信頼を置いてますよね。俺に永久さんを紹介したのも束さんですし。」

 

 

「そうだね~。なら、まず永久ちゃんとの出会いから話し始めようか。」

 

 

私が永久ちゃんと出会ったのは中学一年の夏の事だよ。まぁ、最初はテストの順位で私と同率一位ってだけで特に興味無かった…と言うより、その頃は彼奴以外の人達を認識してなくて、その辺の小石同然に思ってたんだよねぇ…そうそう、イッ君が知ってる最初らへんの私だね。本当に今考えるとクソガキだったなぁ…あの頃は…おっと話が逸れたね。ある日、彼奴は永久ちゃんに剣道で本気の勝負を仕掛けたんだよね。確か理由が手加減していることに気付いたからかな?勿論、私はその時彼奴が勝つと確信していたし、疑わなかった。でも結果は一瞬だった。試合開始の合図に繰り出された面が彼奴に何かする暇も与えずに決まったんだよ。その瞬間、私の中で色んな事がぐちゃぐちゃになって、気付いたら私も永久ちゃんに本気の試合を申し込んだ。で、一瞬だけ見えちゃったんだよねぇ、永久ちゃんの興味無さげの目付きが獣みたいな目付きに変わって私に向かって何て言ったと思う?「…良いだろう、私も一度篠ノ之と本気で手合わせをしたいと思っていた。」って言ったんだよ。

 

 

「アムッハフッ…まぁ、その時私は例え本気を出した所で勝てる訳がないって内心は嘲笑いながら思ってたんだよね。彼奴に勝ったのも偶然だとか調子が悪かったとか考えてたし。」

 

 

「そう言えば永久さんも言ってましたね。最初束さんは他人を見下す事しか出来ないつまらない奴だったって。」

 

 

「あはは…ひどい言われ様…まぁ、事実だけど。」

 

 

話を戻すけど試合開始の合図で最初に動いたのは私なんだよね。けど呆気なく対処されて反撃されるし、速いし一撃一撃は重いは、時々見える目付きは鋭くて怖いし、「…どうした?…そんな物か?」ってめっちゃ低い声で聞いてくるしで、かなりイライラしてたんだよねぇ、それでも何度も攻撃するけど当たらないから私の本気を全力で出して一撃、一本取れた訳じゃないけど、たった一撃を当てる事が出来た。それだけで本当に嬉しくて勝利を確信して一瞬だけど気を抜いちゃったんだよね。そしたら目の前にとてつもない速度で迫る竹刀と面越しに血に餓えた獣の様な目付きの笑顔の永久ちゃんが見えたんだよね。そして頭に強い衝撃を受けた瞬間に意識が無くなって、気付いたら保健室のベッドで寝てたんだよね。そして私が目を覚ましたのを確認した永久ちゃんがいきなり「…すまなかった。」だよ?本当にその時は意味が分からなかったよ。なんでこいつは謝っているのか。

普通なら私は興味を示さないんだけど、気になったんだよね。こいつの…永久ちゃんの強さとか何で謝ってるのかとか色々。だから私は永久ちゃんに聞いたんだよ、「何で謝るの?私が本気で戦えって言ったんだから。」って、そしたら永久ちゃんは何したと思う?私の着けてた面を取り出したんだよ。真っ二つになった状態で。真っ二つだよ真っ二つ!面が綺麗に真ん中から二つに割れてたんだよ!?そしたら「…私は初めて本気の試合で竹刀を当てられた。…その瞬間、今まで感じた事の無いくらい気分が高揚していた。…その結果がこれだ。…本当にすまなかった。…弁償もするし可能なら償いもしたい。」もうその謝る姿を見たら笑うしか無くて大爆笑!だから私は永久ちゃんに「弁償も要らないし償いとかじゃなくて、私と友達になってよ!私は君の事が凄く気に入ったから!」そこからだね私と永久ちゃんが友達になって、信頼し合える親友になったのは。

 

 

束は自身の過去を振り返りながら本当に楽しそうに永久との思い出を語っていおり、イチカ達も束の話を興味津々に聞いていた。




如何でしたか?次回は蒼夜さんの思出話です。
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