夏の居候と剣と鬼   作:へんぜる

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第二話目です。

楽しんでいただけると嬉しいです(笑)


第二話 一つ屋根の下

「なぁ……なんで俺の上に乗って……」

 そこまで言って気がついた。

 彼女が俗に言う裸ワイシャツの姿だと言うことに……。

 

 

 

 あのあと、うちの母が空港まで連れて行ったのだ。しかし、相手の保護者にホームステイの形で留学させたいと言われ、その場で即OKしたらしくて戻って来てしまったのだ。

 詳しい事は教えて貰えなかったが。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

「ちょっなんでそんな格好なんだよ!」

 そう言って目をそらす。

「これしか無かったの」

 

「そうかそれなら仕方ないな! ……ってなるか!」

 

「……だって自分で服を着たことが無いもの。……だから貴方が私に服を着させるしか無いわ」

 

 昨日の夜にほったらかしにしたのがいけなかったか……。

 ん? ちょっと待てよ? 自分で服を着たことが無い?

「今、自分で服を着たことが無いって言った?」

 

「言ったわ」

 

「MAJIKA!」

 

「マジよ」

 

 いったい何なんだ。コイツこの行動にこの言動、まったく訳がわからん。

 

 

 でも下着は流石に履いてるよな?

 

「あのー1つ質問させていただいても宜しいですか?」

 

「ダメよ」

 

 !?

 

「なんでだよ!」

 

「嘘よ。あまり叫ばないで、耳が痛いわ」

 

「貴様ぁ、覚えてろよ」

 

「忘れるわ」

 

「わーお! 話が進まなーい!」

 

「……で? 質問は何?」

 

「あ、うん。え~下着は着けています?」

 

「えっち」

 

 !?

 

「えっ?」

 

「えっち」

 

「ストップ!」

 

「貴方って耳が遠いのね」

 

 完全に向こうのペースに飲まれている。

 だが此方も黙ってやられているだけではないのだ。

 

「〇〇〇して〇〇〇してやるぞ!」

 

 フッ……勝った。

 お前の敗因は男子高校生を甘く見た事だな。

 

「……どういう意味?」

 

 き……効いていないだと。

 意味を知らなかったら確かに意味はないが。

「言ったこっちが恥ずかしいわ!」

 

「もしかして、いやらしい事なの?」

 

「うっ……」

 

「えっち」

 

 もういいわかったやめてくれ! 俺が悪かったからぁあッ!。

 穴があったら入りたい……。

 

「履いて無いわ」

 

「MAJIKA?」

 

「マジよ」

 

 鎮まれ俺の中の獣よ……耐えるんだ……駄目だ出てくるなよ。

 

「ノーパン、ノーブラよ」

 

 くっ……想像するな俺。

 落ち着け、こう言うときは素数を数えるんだ……。

 

 

「ねぇ……お腹がすいたわ」

 

「そうだな……なら何か作ってやるから、いい加減俺の上から降りてくれないか? え~と……」

 

「エレンで良いわ。あなたは?」

 

そう言えば自己紹介がまだだったな。

 

「俺は鶴木操(つるきみさお)だ。よろしく」

 

「……よろしく」

 

 そう言って彼女は俺の部屋から出ていった。

 

 二度寝をしようと思ったが、また上に乗られては困るので渋々ベッドから出て起きる事にした。

 

 とりあえず洗面所で顔を洗い歯を磨く。

 そうすると、後ろから服を引っ張られた。

「ん?」

 振り向くとエレンが包丁を此方に向けて立っている。

「ちょっどうした? 危ないから!」

 廻れ右するエレン。

 と同時に、エレンの持っている包丁が俺を襲う。

「うおっ! お前は俺に怨みでもあるのか!? と言うかその前にその格好をどうにかしてくれ! 昨日、お前が着てた服で良いから着てきてくれ!」

 

「……わかったわ」

 そう言ってエレンは二階にあがっていった。

 歯ブラシを口からだし、とりあえず口を(そそ)ぐ。

 エレンが着替えている間に朝ごはんを作ってしまおう。

 

 

 そのままリビングに行きキッチンに入ると……、

「な、何があった?」

 戦争でもやったのかって思うほど散らかっていた。

 とりあえず今の惨状を見る限り、冷蔵庫の中身は空だろう。

 食器も割れている、サラダ油も床に広がっている、何をどうしたらこうなるんだ?

 と言うか人の家なんだが。

 もっと気を使って欲しいものだ。

 

 

「お腹がすいて死にそうなの。だから自分で作ろうと思ったの」

 

 突然後ろから声をかけられた。

 振り返りると真っ白なワンピースーー腰に大きなリボン、胸の中央にも小さなリボンが付いているーーを来たエレンが立っていた。

 

「お前服一人で着れるじゃ……」

 

 美しいとはこのような人物に向けて言うのだろう。真っ白なワンピースを着た金色の髪と蒼色の瞳の少女は、俺をこの上なく魅了した。

 俺は真っ白なワンピースを来たエレンから、暫くの間目が離せなかった。

 

「始めて自分で服を着たけど案外簡単ね」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「あ、いや」

「えーと、料理の経験は?」

 

「この道具で作るのよね?」

 そう言って右手に持つ包丁を前に突きだす。

「うおっ! だから俺に何か恨みでもあるのか!?」

 と言うか包丁を持って移動していたのか。

 

 

「別に無いわ」

「料理の仕方くらい私でも知っているわ」

「他には火を使うんでしょ?」

 

 それは知っているとは言わない。

「はぁ~……俺が朝ごはん作るから、リビングのソファーに座ってテレビでも見てろ。頼むからおとなしくしててくれ」

 

「……」

 黙ってリビングに行きソファーに座るエレン。

「ふぅ……疲れる……」

 え~と生き残ってる食材は……。

 卵は割れずにすんだものが幾つかと、真空にされて5枚に切り分けられているハムが足元に転がっていた。

 まぁこの二つの材料があれば何とかなるだろう。

 スクランブルエッグとハムの上に卵を落とした目玉焼きを作ることにした。

 

 エレンは窓から指す光に照らされ、ソファーにきちんと座り込んで朝ごはんができるのを待っている。

 それはまるで絵画の様だった。

 エレンの髪は日光に当たり、キラキラと輝く目はガラス玉のように透き通っている。

 俺はその空間だけ……時間が止まっているかのように思えた。

 

 


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