「木ノ葉に生まれたら皆んな忍になるものなの?イルカ先生」
ラーメン一楽のカウンター席で隣に座った受け持ちの生徒……うずまきナルトからの突然の質問にイルカは麺を啜るのを中断してナルトの顔に視線を移した。
「なんだ急に?……う〜んまぁそうだなぁだいたいはアカデミーに入学するからそうなるのか?……でも副業で他の仕事してる人達もいるぞ、ほら、くノ一クラスの山中いの知ってるか?あの娘の家、花屋やってるだろ?後は職人達は流石に専業の人が多いな……」
ほらこのラーメンだって一つの道を極めて初めて出せる味だ、イルカはナルトに語って聞かせる、カウンターの奥から褒めたって何も出ねーぞケツが痒くならぁとぼやきながら大将がイルカとナルトの丼に焼豚をサービスしてくれる、イルカは嬉しそうに大将に礼を言うと食事を再開する。
ご馳走様でしたと礼をして帰って行くナルトの後ろ姿を見送りながらイルカはそっとため息を吐くナルトの境遇を鑑みるに先程語って聞かせた己の台詞が酷く白々しいものに感じられるからだ、ナルトに選択の余地は無い里から外出するのにも制限が掛かる筈だ、スリーマンセルを組み優秀な担当上忍に監視されるんだろう、もしかしたらあいつは忍になりたくないんじゃないかとイルカは空を仰いでもう一つため息をこぼすと、頭を振りアカデミーに向かって歩き出した、まだ仕事が残っているのだ。
イルカと別れた後ナルトはいつもの森に向かっていた、今日も今日とて彼の影分身達は遊ん……修行してくれているのだ。
「おっ?本体じゃんラーメン美味かったか?おっとそうだこれ見てくれよ〜」
本体に挨拶した分身が大木の幹に背を向けちゅうも〜くと叫ぶ、思い思い修行していた分身達が彼に向き直ると、注目させた彼はドヤ顔で木の幹に登り始めたが驚いた事に手も足も使っていない。
「ど〜よ!尻チャクラコントロールによる木登りの業だ!」
鬼才あらわる!この場に居た全員に電流が疾る、何だソレどうなってんの?
と詰め寄る分身達に大木の幹でさながらGの様にカサカサ動き回っていた尻チャクラの分身は黙って分身を解き煙と化した、すると囲んでいた彼等にも理解が及んでいくのだ全く便利な物である。
「な〜〜るほど吸着と反発の内反発の向きを工夫していた訳か後はそれを高速で繰り返すだけか」
職員室で書き物をしていたイルカは昼間の会話を思い出して筆を止めた、ナルトは何か悩んでいるのだろうか?
そうであれば相談して欲しい……親の仇の九尾を宿した人柱力と言えどもあの子に罪は無い、里の者に冷たくされてもじっと堪えて優しく成長している、この間など、女生徒が虐められていたのを諫めたらしい、イルカは弟の様に思っている生徒が誇らしかった。
そんな風にイルカ先生が思いを馳せる中、当の本人は夕方の森の中でデッドヒートを繰り広げていた。
「さあ!池の畔GP inKONOHAも最終コーナーを過ぎ最後の直線に入ります!ほぼ同時にコーナーに突入した三者ですが誰が栄光のゴールに到達するのか!如何でしょう解説のナルトさん」
「はいそうですねやはり有利な体勢でコーナーに入った赤ナルト選手でしょうか、いやしかし序盤チャクラを温存していた緑ナルト選手も可能性は残っています、若干不利なのは無理なコース取りでコーナーにはいり大きく膨らんでしまったナルト本体選手でしょうね」
したり顔で実況と解説に興ずる二人はスーツを着たナルト、声援を送るのもナルト、コースで体育座りのまま尻チャクラコントロールによるレースに興ずるのもナルトと言うナルトがゲシュタルト崩壊しそうな光景が広がっている。
イルカが心配していたナルトの苦悩とはなんだったのか、彼等は実に楽しそうだ……確かに彼ナルトには悩みが有る、出来れば忍にはなりたくない、だが人柱力である自分が里の外に出させて貰えるとは思えない。
大蛇丸の木ノ葉崩しがあるし、ペインだってその内にやって来るだろうこの里は厄いというレベルでは無い、幸いこの間完成した界王け……八門仙人モードによって幼少期から常にあった身近な死の恐怖は解消されたものの今度はそれの振るいどころが解らない。
あまりお頭の良く無い彼はこの規格外の力を振るった結果どのように世界に影響が波及して行くのか全く予想が付かない、殴られたら殴り返して最後まで立っているのは自分だろうが住む所が無くなったり居心地が今以上悪化するのは避けたい、つまり。
「カグヤだって殴って見せらぁだけど村八分だけは勘弁な!」
そうこうしている内にレースも決着が着いたのかナルト達がお互いを讃え合っていた、何処から調達したのかシャンパンファイトまでしていると仙人
モードで感知役をしていたナルトが声をあげた。
「誰かこっちに向かって来てる里から来てるのはミズキで外壁からのは分からないがかなり出来そうだ」
そう警告すると早速分身を解き情報の共有を図る、事態を把握した分身達が次々と消えてゆき本体だけが残る、もうそんな時期なのかと溜め息を吐くとほどなくミズキがやって来た。
要約すると卒業を確実にするため火影の屋敷から巻物取って来たらどうか?
とのことだった、ナルトはおもむろに女生徒に変化し悲鳴を上げると案の定もう一人が反応し森の中に現れた、予想外の事態の連続にミズキは硬直している。
「どォ〜ゆう状況だァ〜これ?ちっと聞きたい事が有るんだが……」
里の忍かと予想してたら現れたのはとってもオサレな雲の柄の外套を着た銀髪の青年だった。
一瞬ナルトもミズキと一緒に思考停止しかけるが同時にキュルルリーンと紫電のエフェクトが頭上に走る。
「こっ、この人が、ほ〜〜らおじちゃんのに触ってごらんって!この人ロリコンです!」
泣き真似しながら銀髪の青年 飛段の背中に隠れるナルト、ちょっ!ミズキが声にならない声をあげ、誤解を解こうと口を開く前に、飛段の大声が森に響き渡る。
「てめェ〜ロリコンかァ〜この性犯罪者がァ、ジャシン様に捧げる価値もねェ、この俺が直々にぶちのめしてやんぜェ〜!」
青筋を立てビキッビキッとメンチを切る飛段サン、背景にはっきりと!?が浮かぶのをナルトは目撃した、作品どころか今度は掲載誌を間違えたらしい……
言うが早いか飛段の手元か閃き飛来した大鎌によってミズキは昏倒する。
「よォし片付いた、おっと!角都探してたんだった、お嬢ちゃんこの辺で加齢臭がヤバいオッさん見なかったかァ?」
振り向いた飛段の網膜に飛び込んできたのは、変化を解き八門仙人モードで待機していたナルト!咄嗟に距離を取ろうするが腰を掴まれテコでも動きそうに無い、ナルトはニコッと笑うと腰を掴んだ両手をふりあげた。
"八門仙法 超タカイタカーイの術"
ナルトの手から打ち出された飛段は第三宇宙速度に達するとほどなく人類史上二人目の月面着陸者になった、この世界では地球と月の関係より距離的に月が近いのではないか?
そんな遠大な思索をしながら家路につく彼、途中気絶したミズキを踏み締め
たあたりでふと思い出した。
「トイレットペーパー買って帰ろう特売だったはずだ」