「こいつをチルドパックして欲しいんだけど」
夕方、夕餉の支度をしていた白が来客を告げるチャイムに気付き、エプロンで濡れた手を拭いながらドアを開けて迎えた訪問者は、開口一番こうのたまった。
「あっ!ナルト君、こんばんは、チルドパックってソレを?どう見ても人だよね?」
白はナルトが小脇に抱えたソレに視線を移す、どう見ても人だ、だって今も目が合ってるもの……。
「おっと失礼、こんばんは、野菜だよ白ゼツって云う品種で珍しいんだ」
採れたて新鮮さ、そう語るナルトに冷や汗をかきながら白は考える、ナルト君には恩がある、住処を手配して情報も改竄し追忍を気にしなくても良い様計らってくれた、再不斬さんとの今の生活を守るため白は多少のことは気にしない事とした。
「うんっ分かった、どれ位保存するのかな?」
「三カ月位かな?中忍試験まで保てば良いから」
不思議な事に野菜からフゴーッと音が聞こえたのを意図的に無視すると、作業に取り掛かる、物音を聞きつけたのか部屋から再不斬が白に話しかけながら顔を出した。
「白、 薬は何処だ?風呂から上がったんだが………何で手前ぇが此処に居る?」
「その節は本当に失礼致しました、此れ、傷に良く効くガマの油ですお納め下さい、今日は白さんに野菜の冷凍を頼みたくて来たんですけど……」
野菜?んなもん冷凍庫に入れりゃ良いじゃねーか、ナルトにメンチを切るのを止め作業中の白に目を向けると、水中花よろしく氷の中に浮かぶ白ゼツが
目に入る、一瞬固まった後見なかった事にしてガマの油を引っ手繰り部屋に戻る。
「1日2回患部に塗って下さい、良く効きますよ〜」
氷漬けの野菜を担ぎ同じ階の自分の部屋に帰って来たナルトは、鍵が開いていることに気付いた、なにせ忍だらけの里なので鍵なんて意味は無いと思いつつ、ついつい施錠してしまう癖がついていた、どうやら人の気配がする、ナルトは足音を消し室内に入った、キッチンから調理する音が聞こえ確認すると、黒髪でショートボブの女の子が鍋の味見をしていた、予想外の浸入者に硬直したナルトが物音を立てると日向ヒナタが振り返る。
「あっ、ナルト君もうすぐ出来るから待っててね、其れどうしたの?肩に担いでるの」
あっ、あぁ野菜だよ、お漬物にでもするの?と極自然に会話している状況に
もしかしたら俺の頭の方がおかしい可能性を疑い数度頭を小突く、しかし思い当たる節がないので疑問点を直接尋ねることにした。
「か、鍵掛かってなかった?施錠してたと思うんだけど……」
ネジ兄さんに借りました、疑問は氷解した、確かに数少ない友人であり兄貴分であるネジさんには合鍵を渡している、日向宗家との折り合いが悪かった彼は時折此処で遊び、修行したり、泊まっていったりもする。
今よりずっと幼く、物心がついて自身の状況を理解した頃、里の大人の冷たい視線に狼狽え、商店街では物を売って貰えなかった時、公園の隅で肩を震わせ泣いて居ると声をかけてくれたのがネジさんだった、彼は事情を聞くと商店街に行き買い物が出来るよう直談判してくれた、教えて貰ったばかりで在ろうチャクラの練り方も、内緒だぞ?と言って教授してくれた、はっきりと記憶していた印を組み影分身が成功した時、四方八方暗雲に覆われていた今世に光が射した様に感じたものだった、只の分身だと思ったのだろう、お前才能あるよと肩を叩くネジさんの笑顔が嬉しかった……ことほど左様に大恩が有る訳だがって違う!懐かしい回想(両親揃ってスタンディングオベーション、途中まで激おこだった)してる場合じゃない。
「鍵は分かったけど、どうして家で御飯作ってるの?」
「?、この間のおにぎりが美味しかったって……」
?、確かに、イジメ問題を解決した後お礼として弁当を頂戴したことは有るし感想も伝えた、だがこの二人の間にある認識の齟齬というか発想の飛躍はなんだろう?悩んでいるとヒナタの様子が変化した事に気づく、なにやら聞き取れない声量で呟き、伏せた前髪で表情も窺えない、すると何かを握りしめる音が聞こえ発生源を捜すとヒナタの手元にソレは有った、包丁だ、余程強く握っているのか部屋に革を絞る様な音が響く。
「おかしいな、おかしいなおかしいな」
"ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド"
あれっ?新手のスタンド使いかな?僕の目がオカシクなったかも知れない、だって最近擬音が空中に浮いて見えるんだもの……ヒナタを注視しながら一声かけようとして失敗し喉が鳴る、その音が合図になり弾かれた様にヒナタは部屋から飛び出して行った、ごめんなさいと一言残して。
「あっ、家の包丁………なんかすっごいドキドキする……これがKoi?」
多分違う(これには両親もニッコリ)
所変わって此処は日向宗家の道場、今この中では木ノ葉一セガールな漢と専らの噂(局地的)の日向ヒアシと、馬鹿と化学反応を起こした天災(残当)の日向ネジによる試合が行われていた、柔拳による攻防は如何に躱し、捌き、当てるかが重要になるが流石に二人は達者で、開始から1分とかからず離れて立会人をしている次期当主たるハナビの白眼で捉え切れぬ速度の応酬に成った。
日向の正道の極致に居るヒアシの繰り出す攻撃は、正道からは外れた術理で
(必要な所へ薄くチャクラを纏わせ身体の各部をコロの原理で回転させて)捌かれる、このよりチャクラを節約できる回天によって悉く凌がれることに焦れて遂にヒアシが隙を曝す。
それを観て取るや、ネジは両椀に纏わせたチャクラを超高速で左右逆回転させると両椀をつき放った、すると腕から飛び出した竜巻がヒアシに向かい直進して行く。
「そのふたつの拳の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的な砂嵐の小宇宙」
あわやヒアシを飲み込む所で、ハナビの悲鳴染みた其れまでの声を聞き届けたネジが腕を逸らすと竜巻は壁を抉って外へ飛んで行き、火影の顔岩の有る岩山に潜伏していた赤砂のサソリ(美的感覚がおかしい)を巻き込み山肌を抉る、抉られた穴の壁面は鏡面状になっていてこの技破壊性能の凄まじさを物語っている。
「参った!良くぞ其処まで練り上げた、やはりお前こそハナビの婿に相応しい!」
破顔一笑、豪快に笑ってヒアシはネジを讃える、ハナビは真っ赤になって俯いてしまった、血継限界の家系にとって近しい血縁の婚姻は然程珍しくない。
「しかし最後の技は、八卦空掌の可能性を感じた……台詞は必要なのか?
お前顔が真っ赤だぞ?」
様式美だそうです、ネジは答えながらこの技の雛形をくれた弟分について考える。
『知ろうとする努力もしないで、憎むなんて悲しいじゃないですか、言葉にしなきゃ、して貰わなきゃ真意なんて伝わりませんよ、いじけてる今のネジさんはカッコ悪いです……カッコ良いネジさんに戻って下さいよ』
思わずカッとなりナルトを殴って帰宅し暫く悶々としていたが意を決してヒアシの自室を訪い思いの丈をぶち撒けた結果、今の関係性がある、翌日目を腫らして謝る俺をナルトは笑って許してくれた、返しきれない恩があるのだ。
「絶対に外しちゃいけないんだそうです、台詞まで含めて神砂嵐が完成するらしいので」
ヒアシは納得したのかしきりに頷きながら唸っている、ネジはヒナタとナルトが上手く行って欲しいと祈った、あいつが本当の弟になればこんなに嬉しいことは無い。
「あっ!?」
ネジが果たしていない約束を思い出すのと、ネジの名前を叫びながら包丁を持って泣き噦るヒナタの帰宅は同時だった。
ネッジ「ヒナタを焚きつけといて、ナルトに連絡するの忘れてたンゴwスマンナ」