英雄殺しのカンピオーネ   作:鋼な魔王

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連載のご要望がありましたので、連載する事にしました。私の拙い文章を読んで頂きありがとうございます。
それでは2話目になります。どうぞ最後までお付き合い下さい。

大幅に書き直しました。


希望の光

時は先日の朝まで遡る。

オルレアンの町の郊外には、小城と言うには少し大きな城が建っていた。『聖女の城』と名付けられたその城こそが、魔術結社『オルレアンの奇跡』の本部であった。

 

 

『オルレアンの奇跡』は1500年頃にジャンヌ・ダルクを崇拝する魔術師達によって結成された、フランスで1番古い歴史を持つ魔術結社である。

 

 

玉座の間には、豪華な装飾を施された空席の玉座があり、その後ろの壁にはジャンヌ・ダルクの紋章を掲げた、巨大なタペストリーがあった。その玉座の前は改装が施され、大きな円卓が置かれていた。

 

 

円卓には、『オルレアンの奇跡』の幹部の面々が何やら物々しい雰囲気で集まっていた。

 

 

円卓の中心に座って居るのは『オルレアンの奇跡』23代目の総帥である、ブルーノ・デュランである。

ブルーノは過去に出現した神獣であるドラゴンをたった1人で討伐した事もあり、『竜殺し』の異名を持つ男である。その他にも数々の功績を上げており、その実力を買われ、齢43にして総帥の地位を拝命した、実力派の魔術師である。

その顔は、整っているが、幾つもの修羅場を潜り抜けた歴戦の戦士の凄みと深みがあり、鍛え上げられた肉体は、まるで鋼の鎧を彷彿とさせる物がある。

ブルーノは幹部達が全員集まったのを確認し、1度その顔を見渡してから口を開いた。

 

 

 

「皆に集まって貰ったのは他でもない。先日、オルレアンの森で観測された爆発的な呪力の高まりについてだ。

その呪力は、その後飛散する事なく移動を始めたため、私はまつろわぬ神が降臨なされたと判断した」

 

 

 

オルレアンの森では3日前に森の比較的浅い方で爆弾の様に急速に高まった呪力が観測されており、その呪力はその後、通常であれば時間と共に飛散するはずが飛散する事をせず徐々に移動し始めたのである。

その事からブルーノはオルレアンの森にまつろわぬ神が降臨したと判断したのである。

 

 

 

「なんと…」

「このオルレアンに神が降臨なされるとは…」

「一体どうすれば…」

 

 

 

この非常自体に幹部の面々は取り乱し各々に喋り、相談をしたりしていた。

これは、此処数十年フランスではまつろわぬ神が降臨する事が無かった為、仕方の無い反応なのかも知れない。

その様子を眺めていたブルーノは、その場が一旦静まったのを見計らい口を開いた。

 

 

 

「静粛に。無論私もこの状況に手をこまねいていた訳ではない。

この報告を聞いて直ぐに隣国のカンピオーネであるサルバトーレ卿にご助力を願った。

…が、サルバトーレ卿は現在バカンスに旅立っている様で消息不明であるとの返答があった。そこで皆にはこの状況を如何に脱却するか、意見を交わしたくて集まってもらった次第だ」

 

 

 

「総帥。確認してもよろしいか?」

 

 

 

そう言って手を挙げたのは此処最近、幹部になった歳若い青年。『オルレアンの奇跡』で、主に政治方面を担当するティメオ・リシャールである。

 

 

 

「まつろわぬ神が進軍を開始したと伺ったが、かの神は一体何処に向かっているのだろうか?」

「このオルレアンの町だ。

ゆっくりとした速度であるが確実にこの町へ向かってきている。

…問題なのは森林を破壊しながら進軍されている事だ。

直線上にあるこの町も破壊されるであろう事が考えられる。このままの速度であれば、明日の夜にはこの町に到着するであろう」

「…なんと、

であればイギリスの『黒王子』に依頼なされては如何でしょうか?」

「『黒王子』と『オルレアンの奇跡』は現在敵対関係にある。

詳しく経緯は省くが、過去に『黒王子』が我々が所持するジャンヌ・ダルク様が残された神具を略奪せんとこの城に攻め入った事があったからだ。

その時は私を始めとする実力派の魔術師複数で当たる事で何とか追い返す事に成功したが、もし『黒王子』に依頼するとなれば、我らの象徴たる神具が要求される事は確実だ」

「しかし、住民の命を守る為とあらば致し方ないのでは?」

「無論、住民の命は最優先事項だ。

…しかしあの神具は我ら『オルレアンの奇跡』の存在意義の1つであるジャンヌ・ダルク様の御霊を静める術式の要となっている。神具が此処にから離れれば術式は壊れ、ジャンヌ・ダルク様がまつろわぬ神として降臨なされる可能性が非常に高い。

それでは本末転倒だ。故にその案は許可する事が出来ない」

 

 

 

そう言われは、政治方面では他の追随を許さないが術式については専門家程詳しくないティメオは、それ以上言える事は何も無かった。

 

 

「…成る程。失礼しました。

私からは以上です」

 

 

「他に意見のある者はいないか?」

 

「……近隣のカンピオーネである『黒王子』、ヴォパン侯爵は論外。ならばサルバトーレ卿と連絡が取れるまで我らで足止めする他ないでしょう」

 

 

 

そう言って立ち上がったのは若干18歳にしてフランスで3人しか居ない『聖人』の1人であり、『オルレアンの奇跡』魔術指南役を勤め、ブルーノの実の娘であるエリーゼ・デュランである。

 

 

 

 

「……その言葉の意味を分かって言っているのか?」

 

 

 

人間でありながら神に相対する。

それは一部の例外ーーカンピオーネを除き『死』を意味する。

それを知った上で尚エリーゼはこう答える。

 

 

 

「無論です」

 

 

 

だが『オルレアンの奇跡』を纏める総帥である以前に子を愛する親でもあるブルーノは。

 

 

 

「ダメだ。お前はまだ若い。

これからの『オルレアンの奇跡』に必ず必要な人材だ。

こんな所で死んでいい人間ではーー」

「父上、私はこの身に余る『聖人』の位を拝命した時から愛するこの国と民に人命を捧げる覚悟は出来ています。

それに私の禁術なら一時的とはいえ、まつろわぬ神を封印する事も可能です。

……今まで私を守り育ててくれた父上や祖国に、ようやく恩を返す時が来たのです」

 

 

 

ブルーノはそう言いながら儚く微笑んだ自らの娘の背後に祖国の為にその人命を捧げた聖女の姿を幻想し、息を呑んだ。

その光景は、悲壮感さえ漂う姿であるのに何故か美しくもあった。

 

 

 

「ーーッ

……分かった。この件はお前に一任しよう。

だが、私の騎士団を共に行かせる。

当然、私も出陣する」

「父上ッ!」

「妻を守り事も出来ず、見す見す死なせてしまった私が言うのは腹立たしいかも知れんが、私も父親だ。

どうして、娘1人を死地に行かせる事が出来ようか!」

「その事に関して私は、父上を恨んでなんかーー」

「それにこれは私情のみの判断ではない。

お前の禁術は発動するまでに時間がかかる。その間の時間稼ぎは必須だ。戦力的にも私が出なければ足止めすらままならないだろう」

「だからと言って、父上まで死んでしまったら一体誰がこのオルレアンを守るのですッ!」

「お前の指導のおかげで実力ある若い芽も育って来ている。

私が居なくなっても上手くやって行けるだろう」

「ですがッーー」

 

 

その時、円卓の入り口の扉が大きく音を立てながら開け放たれ、その奥から息を切らした構成員が駆け込んできた。

 

 

 

「失礼しますッ!」

 

 

円卓に集まった幹部の面々や、ブルーノとの会話で熱くなっていたエリーゼもそちらの方へ顔を向けた。

ブルーノは入ってきた構成員の顔を睨みながら口を開いた。

 

 

 

「何の様だ。

我々は今、重要な会議中だ。幹部以外の出入りを禁じた筈だぞ」

 

 

ブルーノに睨み付けられた構成員は、それでも尚、興奮が収まらない様でその顔を歓喜の色を浮かべながら報告を始めた。

 

 

「王がッ!紫藤王がこのオルレアンの町にいらしておりますッ!」

 

 

 

父と娘が命を差し出す覚悟を決めた悲壮感に染まっていたその場に希望の光が差した。




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