誠の姿を確認したブルーノ達3人は誠の近くまで歩み寄り、ブルーノを先頭とし後ろ両脇にエリーゼとティメオが立ち、3人はその場で左膝を立て片膝をつき、左手を膝の上に置き右手を軽く握り床に置いて跪いた。
「王よ、あなた様のご尊顔を拝見でき大変嬉しく思います。
私は、この『オルレアンの奇跡』の総帥を勤めさせて頂いておりますブルーノ・デュランと申します。
後ろにおりますは政治部門長のティメオ・リシャール、魔術指南役のエリーゼ・デュランで御座います」
「お初にお目にかかります、王よ。ご紹介に預かりましたティメオ・リシャールで御座います。」
「同じく、エリーゼ・デュランで御座います」
「この度は私どもが居を構えるオルレアンの町にお越し頂きーー」
「どうでも良い挨拶なんざそこら辺にしておけ。
それよりさっさと本題に入ろうじゃねーか。
単刀直入に聞くぞ、ここにまつろわぬ神はいるのか?」
魔術師に会う度に、毎回毎回似た様な挨拶を聞かされていた誠は、心底嫌そうな顔をしてブルーノの言葉を遮り、いきなり核心を突いてきた。
「ーー失礼しました。まつろわぬ神が顕現したか否かですが、現状から察するに間違いなく顕現しております」
「…へぇ、そりぁ良い。ーー久しぶりに獲物にありつけそうだ」
そう言って誠は、見る者を凍りつかせる様な壮絶な笑みを浮かべた。
その笑みに背筋に嫌な物が走るのを感じながら、ブルーノはこれで誠はまつろわぬ神の元へ向かうだろうと確かな手ごたえを感じていた。
(これがカンピオーネ?ーー確かに呪力やオーラには驚くべき物があるが、それだけだ。今もこうして隙だらけであるし、武道を嗜んでいる様にも見えない、復活の権能がなければ私や父上なら十分勝機があると思うのだが…)
エリーゼは理解していなかった。実は誠は剣や槍、弓などの武器を一通り使えるくらいには武を嗜んでいる。
ーーそれなのに誠が無防備な姿を晒しているのは、ブルーノやエリーゼなど警戒するに値しない路傍の石程度にしか認識してしていないと言う事を。
自分達の命が誠の気分1つで消し飛んでしまうと言う事を。
誠はそんな不敬な事を考えて居たエリーゼを一瞥してからブルーノに話し掛けた。
「随分なじゃじゃ馬を飼ってる見てーだな」
「お恥ずかしい限りで御座います。御身の寛大さに感謝致します」
ブルーノはエリーゼが邪推し始めたのを感じていたが、王の手前それを止める事が出来ず、内心とても焦っていたが、誠のそれを大して気にしていない姿を見て、心の中でホッと息をついた。
一方エリーゼは最初は何の事かわからなかったが、それが自分の事だと気づくと顔を青ざめさせ俯いた。
「さてと、聞く事聞いたし、行くか」
そう言って誠は、立ち上がり廊下へつながる扉の方に歩き出した。
それを見たブルーノは慌てて立ち上がり、誠の方を向き静止の言葉を掛けた。
「お待ち下さい、紫藤王!まだ、まつろわぬ神の調査は完了しておりません!
相手の神格を分析し、対策を講じてからの方が勝率も上がります!
後、半日ほどお待ち下さーー」
「おい、小僧。俺は今行くといってるんだ。
お前は俺の邪魔をするつもりか?」
そう言って誠は頭を後ろに向け、紅玉の様な紅い瞳に怒気を込めながら、ブルーノを睨みつけた。
ブルーノは瞬時にこれ以上引き止めるのは不可能と悟り、直ぐに打開案を打ち出した。
「…それでは、此方のエリーゼを共につかせていただけませんでしょうか?」
「俺に子守りをさせるつもりか?」
「滅相もございません。確かにまだ未熟な部分も有りますが、魔術の腕、戦闘力はフランスでも3指に入ります。足手まといになる事はないでしょう。
我々もまつろわぬ神が確かに討伐されたと言う確証が欲しいのです。」
「なら、お前が来い。お前程の奴なら俺も手がかからないだろ」
「お誘いの言葉大変嬉しく思います。ですが私も組織を纏める者としてこの非常時に此処を離れる訳には参りません。
それに、世界を知らぬ我が娘に王の威光を示して頂きたいのです」
「……まぁ、良いだろう。エリーゼとか言ったな、10分で支度して正門に来い」
「はっ、了解しました」
「感謝致します、王よ」
そう言って誠は退室し、エリーゼは慌てて準備を整え出発したのであった。
こうして物語は冒頭へ遡る。
オルレアンの森に広がる災害に見舞われたかの様な破壊の後、その中心に佇む騎士を見て、誠はチッと舌打ちをして呟いた。
「また鋼か」
誠は100年を超える時の中で数々のまつろわぬ神と遭遇して来たが、その中のおよそ8割強が鋼の神格であると言う、ある意味、驚異的な記録を持っている。故に誠の所持している権能の殆どは鋼の権能なのだ。
同時に誠は目の前の神に強烈な違和感を感じとっていた。
「こりぁ、ちょっと厄介な奴かも知れねーな」
「どうゆうことでしょうか?」
その言葉を聞きエリーゼは、厄介ではないまつろわぬ神など存在するのか疑問に思いながら問い掛けた。
「あいつ、目の前に
「ま、とりあえず攻撃するか。
お前は離れてろ」
そう言って誠は聖句を唱え始めた。
「神よ怖れよ、人よ敬服せよ、我は王。天にも勝る我が至高の財をみよ!」
聖句を唱えた誠の背後の空間に波紋が浮かび、その中から10もの聖剣や魔槍、神剣が現れ、その切っ先をまつろわぬ神に向け音速を遥かに超える速度で放たれた。
しかし、まつろわぬ神はそれでも尚その場から動く事をせず、放たれた武器達はまつろわぬ神に直撃し、辺りは爆発と轟音に包まれ、埃と煙が立ち込めた。
「やったのですか?」
もうもうと煙が立ち込めるまつろまぬ神がいた辺りを視界に収めながら、エリーゼは誠に問いかけた。
「この程度で死ぬ様なら苦労はしねぇさ」
誠がそう言うと収まってきた煙の中から上半身の鎧が消し飛びながらもその下に見える体には傷1つ付いていないまつろわぬ神が姿を現した。
「…なんと言うこと事だ。アンジェリカに受け入れられなかった悲しみに暮れる我が前に神殺しが姿を見せるとは、これは僥倖だ!森を幾ら壊そうとも慰める事の出来なかった我が悲しみを貴様にぶつけるとしよう!
そして貴様を倒した暁には我が悲しみが癒えている事を願おう!」
「無視した訳じゃなくただ気づかなかっただけか。ーーその馬鹿見てーに硬い体とアンジェリカ、ねぇ。
腰に差してる剣は聖剣デュランダルか、こんなあっさり正体が分かるとは思わなかったぜローラン。いや、お前の場合オルランドって言った方が良いか」
誠はあっさり正体が分かった事に若干拍子抜けしながらも敵がフランス屈指の英雄であるオルランドである事に歓喜し、その顔に笑みを浮かべた。
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