セブンスドラゴンⅢ~俺なんでかISDFやってます~ 作:定泰麒
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太陽の日差しが目に刺さる。アスファルトがその光を反射してさらに身体を焼き付ける。
「…熱い」
不意に零してしまう独り言。周りには運良く誰もいない。
ISDFとなって半年。訓練期間が終わり、今日からようやく任地へと赴く事になる。
場所は横須賀基地。
何の因果か流れに流され気づけば国際防衛軍のエリート新兵という立場。
今まで色んなことがあったが流石に軍人になるなんて思わなかった。
事の始めは、今でも思い出せるあの日の事だ。友人に誘われて出かけた先でマモノに遭遇した。
80年前にドラゴンと共に消えたはずのマモノだ。当然その事は極秘事項とされたが、俺がこうして横須賀基地へと向かわされている原因はそれなのである。
厄介&厄介。
とりあえず行くしかないよね。ここで逃げて殺されたくないし、何よりISDFなんて今の時代最も安定した職業に近いし、何も悪いことじゃないさと自分に言い聞かすのである。
「ヨリトモさん。今日から彼がここに来るらしいですね」
「…らしいな。俺の直属として配属される。お前ともなにかと絡むだろうが、フォローしてやれよ」
「フォローですか…彼にそれが必要でしょうかね」
「少し前まで唯の一般人だ。圧倒的に経験が足りてない。本人に才能があったとしても、最初は使いもんにならんさ」
「果たしてそうなりますかね…」
横須賀基地内の研究所。一人は歴戦の兵士を思わせられる風貌を持ち『極東に竜は居らず、ヨリトモというドラゴンがいる』と評された男『ヨリトモ・トウゴ』。
もう一人は、ドラゴンを倒すために生み出された最強の人間戦士『キサラギ・ユウマ』。
彼らが待つのは、半年ほど前に会ったマモノ襲来の際、一人でマモノを狩りISDFがくる前に事件を終わらせた男なのである。
その詳細はこうだ。ドラゴンは出現しなかったもののマモノの中でも強力なドリルシャークを3体撃破した民間人が出た。しかも民間人達に犠牲者は0という結果である。
このドリルシャークというマモノはISDF隊員でも苦戦するような難敵であり、それも一人で三体となるとヨリトモやユウマ等ISDF内でも数えられる程度だ。
この民間人。名前は『春峰冬司』。黒髪黒目の正に日本人顔で多少悪くない程度の顔の持ち主であった。
さて到着したISDF隊員の精鋭による民間人達に対する聴取があったわけだが、本人曰わく「逃げてたらああなった」というまるで運が良かったという言わんばかりの証言しかしなかった。
だが、周りの民間人達の意見は違った。
彼に助けられたという女性は、食べられそうになった時に颯爽と私の前に現れドリルシャークに何らかの一撃を与え自分の方についてこさせたとのこと。
また、彼の友人によるとマモノが出てきた瞬間。それがまるで来るとわかっていたような速さで何も言わずに急に走り出し、角から飛び出してきたマモノに対し膝蹴りを食らわした。
更にこの他にも『春峰冬司』に救われた人物達が多くいたが、最も大事などうやって倒したかというのを誰も見ていないというのも一つ問題になった。
通常であれば、銃であったり刀であったり殺傷力がある物。もしくは、「サイキック」と呼ばれる特別な能力であったり対抗手段があるはずで、当然銃であったら音が鳴り。刀であったら現物があるはずがそれも身体検査しても出なければ、刀を持っていたなんて証言もなかった。
そしてサイキック能力もないというのもまた検査によってはっきりと言われ、ではマモノの死因はとなるとこれも謎で三体とも内臓がズタズタであったという事なのである。
結局。『春峰冬司』の言うように運が良かったという結論になるそんな結論にヨリトモとユウマが待ったをかけた。
天文学的な運の良さだけではないのではないかと二人は言った。
そもそも友人に何も告げずに走り出すのはおかしい。そのことも『春峰冬司』に問い出すも、しどろもどろな回答しか得られなかった。そしてマモノ達の死因である内部がズタズタの件に関してもそうだ。
その辺のガラス片を投げつけたら動かなくなったと本人は言っていたが、実際距離20メートルはある敵の口にガラス片を投げ、尚且つドリルシャークには頑丈な盾にもなる牙があるのにも関わらずその合間を縫い内臓を破壊するなんて芸当は俺でもできんしかも三体ともなると余計に不可能だとヨリトモが発言し、それには全員が納得せざるを得なかった。
結果、それにより『春峰冬司』にはなんらかの才ありとしてISDFへの出頭及び兵になるようにというほぼほぼ強制に近い命令が下された。
そして、蓋を開ければ通常一年は係る訓練を半年で任了させ、しかも新兵としては有り得ないスコアを叩き出してのモノであり結果として運だけではなかったというのも実証された。
本人曰わく、この結果もまた運がよかったとの事であり、周りは謙遜しているんだろうぐらいにしかとらなかったのだという。
昔からこうなんだよ。俺なんか唯の雑魚なのに、なんでこう勘違いされるんだ…
そもそも友人の横から走り出したのは遠目から探してた好きなフィギュアを見つけたからで、そんな事大勢の人前で言うわけには行かんし、ガラス片もほんとに運がよかっただけ。
新兵訓練所でもそうだ。走るのは割と得意だからなんとかなったけど銃で的狙うとかも遊び心でカッコつけて目を閉じて撃ったり、壁に向けて打ったら反射して的に当たったりとか訓練所を辞めさせてほしくてやってただけなのに、気づけば教官にも賞賛される始末。
刀も適当に振り回してたら相手を倒してただけだし、それに同僚の剣とか怖くて目瞑って防御してたら同僚に一目置かれる始末。
もうたまんねーと思って、ここ抜けさせてくれって頼んだら確かに君の技量ではここにいるのは苦痛だろうと言われて重要な拠点の一つである横須賀基地に飛ばされたというおちなのである。
そして、暑い中横須賀基地にたどり着いたのを待ち受けてたのは、原因になった事件の時にいたがたいの良い強面のおじさんとすましたどこか影のあるイケメン。
資料によると強面の方が俺の上司になるらしい。とりあえず挨拶しとくか
「春峰冬司。本日この横須賀基地に就任致します。ご指導ご鞭撻のほどをお願いいたします」
「ふむ。歓迎しよう、トウジ。貴様は今日から私の直属の部下となる。そしてお前に紹介しておく。もう一人の部下であるキサラギ・ユウマだ。きっとこの先多くのことを共にするだろう」
「どうもトウジ君。キサラギ・ユウマです。ユウマと呼んでください。貴方には期待してます」
この二人の目には期待という文字が現れているようでなんとも心苦しかったが初対面ではないにしろ先輩と上司になるので丁寧にしとかねば。
「はっ!粉骨砕身の思いで頑張ります」
内心すぐにでも家に帰って涼しい部屋でPCをカタカタさせときたかったのは言えない。
「そうか、では明日に備え今日は色々と準備をしておくと良い。後、君には我々だけでなくISDFのお偉方も期待してるらしいのでな。すまんがこれからしばらくの間普通の生活は出来まい。正に粉骨砕身で頑張ってくれ」
拝啓 両親へ。お元気ですか?
私はどうやらとんでもないブラック企業に就職してしまいました。上司は良い人ですが鬼です。同僚は良い奴ですが怖いです。もう私は駄目かもしれませんよってお父さん、私になにかあればあそこのあれの処分をまかせました。それではまたいつか手紙を送ります。
こんな手紙を書いたことなんて言うまでもなく秘密であり、更に出さずに燃やした事もまた秘密なのであった……