セブンスドラゴンⅢ~俺なんでかISDFやってます~ 作:定泰麒
子供の頃、純粋に『正義の味方』に憧れていた。それがいつの間にそういうモノに興味がなくなってしまった。
何故そうなったとか自分でもわからない。そしていつから私が化け物のような扱いになったのかも覚えてない。
なんでも出来てしまう私は昔から厄介者みたいな扱いをされてきた。
『生まれてくる時代を間違えたんだろうな。お互いに……』
その言葉を今でも思い出す。化け物扱いされていた私に彼はなんの躊躇もなく手を差し伸べてくれた。
人より少し出来るだけなら、きっとこんな扱いはされなかったんだろう。きっと天才少女ぐらいで済んでいたに違いない。
でも私は度が過ぎていた。だから、周りも怖かったのだ。そして遠ざけた。
いじめなんかじゃなかった。でも何を喋っても距離感があるし、やんわりと遠ざけられるとかそんな感じ。裏で化け物扱いされていた事に気づいたのもかなり後の方だった。
でも、終わりは突然やってきた。小学生の時に転校してきた少年に私は救われた。
だから私は彼を救いたい。でも彼は私を助けた事を覚えてはいないだろう。
なにせ、その時から『運がよかった』というのが口癖だったから。
待っててトウジ、ようやくあなたに借りを一つ返せるわ!
死ぬほど運がいい。なんて言葉があるわけなんだけれどもそれって俺のための言葉だよなと最近ふつふつと思うようになっちまった。
昔から運がよかったのは自他認める事実であることは間違っていない……はずだ。
いつから運がよかったのか、自分でも認識は出来ない。ただ今まで死にかけた目に遭っても死んでないその事実はまごうことなき真実だ。
それをなんとなく乗り切ってきた。そのなんとなくの部分をキリカを始め、いろんな奴が勘違いしている。
昔からそうだったのに、最近ではISDFの隊員たちにも一目置かれた扱いを受けている。
幸運であるが故に不幸という人類史上初めての快挙を成し遂げているのではないのだろうか。
さて、そんな俺は現在帝竜討伐として二人の精鋭ルシェ族と共に鍛冶場に向かっていた。
エーグルに言われた通り彼らは、相当な才能の持ち主だった。
兄であるユージンの方はルシェのナイトを勤めているらしい。ただ俺が知っているナイトとは違い盾を持ち、剣で戦い味方を守るのとは少し様子が違う。
身軽な軽戦士とでも言うか、更にそれに魔法のような力を使うらしい。
一回説明されたが、意味がチンプンカンプンのものが多かったので理解はできていない。
妹は妹で、魔法を使うだけじゃない。その両手には巨大な鎌を持っており使う魔法自体どこかえげつないものが多い。鎌を一振りするだけで斬撃に乗せた毒やら呪いやらが見に降りかかる。
一言で言うなら、死神。
あまりお近づきには成りたくない女性であるのは間違いない。
さてそんな彼らは道中の敵をなぎ倒して奥へと進んで行く。
運が良いはずなのに、今回は微妙な不幸とでも言えばいいか、そういうのが多い。
余所見してたら何にもないとこでこけそうになったり、急な腹痛に悩まされたり、腹痛に関しては今は大丈夫だが。
それに専用コーティングされていた筈のショットガンも壊れている。対竜専用で、ある程度の攻撃なら跳ね返せるコーティングだ。試した所に寄れば帝竜のブレス攻撃には耐えられる程度に強力らしい。爪や牙なら5発ぐらいならいける俺のショットガンは時として便利な盾になる。でも何故か壊れてた。
そんな感じでなんか変だ。それで彼らのマモノとの戦闘に関われなかったのは、一生の秘密だ。
実質俺が手を出したのは竜を倒す時ぐらいだ。既に10体は倒してるだろう。
正直もう満身創痍である。彼らも一向に休む気配とかもなく、仕方なしにISDFで配給された回復薬を飲む。
勿論彼らに渡すことも忘れない。彼らがいなければ帝竜なんか倒すことも出来ないだろう。
道のりは遠そうだ……。
エーグルさんから聞いていた。私と兄貴が護衛しなきゃいけない男は今までエーグルさんが遭ったことない程強い男だと半信半疑で彼と兄貴、そして私の三人で帝竜討伐に向かっている。
マモノには見向きもせずに戦闘を一切しないこの護衛している男に腹立たしく思いながら、兄貴と二人でマモノを退治していく。
正直、マモノには負ける気がしない。散々刈り尽くしている。それが油断に繋がった。
兄貴が私に叫んだ。不覚を取ったらしく背後にマモノが湧いていたらしい。
どう足掻いても間に合わなかった。兄貴が自分の短剣を投げるがその速さよりもマモノの手が振り下ろされる方が速い。
死を覚悟した。ただ震えていた私にマモノの手は落ちてこなかった。
何事だと思って振り返れば、マモノの後頭部に折れた短剣の刃が突き刺さっている。
兄貴にこんなことは間違いなく出来なかった筈、そして私にも不可能だった。答えは一つ護衛している男『トウジ』。
彼の方を見れば何食わぬ顔で、どこかを見上げている。
彼は私の目線に気づいたんだろう。その顔をこちらに向けるが苦笑いをしている。
悔しいと思った。油断していた上にこの男に助けられた事が悔しいと、何か言ってくれば違う感情も湧いたのかもしれないが、何も語らずに苦笑いしているだけ。
結局彼は何も言わなかったので、私達は再び前に歩き出した。
油断は一切なかった。それでも少しずつダメージも溜まっている。そんな中で私の魔法がマモノに当たらずマモノの裏にいたトウジに一直線に向かっていった。
彼を見れば、またどこかを見ているようだ。戦闘中だというのに腹立たしい。
でも問題はそこではなかった。彼に私の魔法が当たろうとしているのだ。
しかし、彼は避けた。それも奇妙な形で。彼は急に前屈みになったのだ。
その右手は腹に添えられている。左手は背中の方に回していた。そして魔法が跳ね返りマモノに当たった。
訳が分からなかった。反射的に避けるのは私でも可能だとして、彼にも出来たのは間違いないだろう。
そこまでなら理解できる。問題はそこからでどうやって魔法を跳ね返したのかが問題だ。
彼はまた何も語らない。エーグルや村長とは話していたのに、私達とは話したくないということか実にイライラした。
彼は外から来たといった。しかも未来から来たと。つまり未来には魔法を跳ね返せるモノがあったということなんだろうと兄貴が言ったが彼は何も答えなかった。
変わりに疲れただろうと何か奇妙な液体の入ったビンを渡された。中身は回復薬らしい。
大丈夫だからと私達の前で飲んでみせた。
そんな気配りが出来るなら何故何も語らないと口には出さないものの心の中で思った。
彼に渡された薬は実に良く効いた。マモノにやられた切り傷も打撲痕も消えここに来る時よりも身体の調子がいい。
こんなものが作れる位なのだから、きっと魔法も跳ね返せるのだろう。
まだまだ先は長い。
ひたすらに走った。マモノも竜もいない所を見るときっとトウジとその護衛達が駆逐していっているのだろう。
だから走れた。わき目も降らずに走ったのは久しぶりだ。
きっとあの時のトウジはこんな感じだったんだろう。アーケード街で出かけた時の事、マモノの突然の襲来に逃げ惑う人達。
数は少なかったけれど、そのマモノ達は凶暴だった。
今ならわかる。トウジは人助けの為に命を賭けた。昔好きだった『正義の味方』そのものだ。
『正義の味方』とトウジの違いは変身するかしないかの差だろう。強く優しく、自分の事は二の次で人を助ける。
やってる事は一緒だ。私も彼と同じようになれていたはずなのに、気が付けば自分の力と才能がいらなくなった。憎んでいたのだ、普通の人ではないこの才能に。
でもチャンスは突然だった。思えばノーデンスでミオに会い、ゲームをしてスカウトされたのは運命だったのかも知れない。
ほんの二日で、私の知っていた世界は色を変えた。私と似たような才能を持っている仲間。マモノと竜といった敵、ISDFに徴兵されたトウジ。
ここに来て漸くトウジと同じ土俵に立てる。そう私にも『正義の味方』になるチャンスが訪れたんだ。
走ったにしては、息がさほど乱れていない。汗も1滴か2滴ぐらい、普通に紛れて暮らしていた時よりも自分の体力が上がっていることを体感してる。
私は走ることを止めた。理由は簡単、彼に追いついたのだ。
「トウジ、無事だったのね!」
出た。彼の表情にはいつもの苦笑いだ。
「キリカ、良く来てくれた。今から帝竜を狩りに行くんだ。一緒に来てくれ!」
「返答がそれなの!?」
彼にはイライラさせられる。
「すまん。無事だって言える状況でもないし、お前の助けが欲しかったから……」
「はぁ……まあいいわ。平常運転ね。分かった一緒に行くわ。足引っ張らないでね」
「大丈夫、ISDFで死なない程度には鍛えられてるから足は引っ張らないと思う……多分」
また苦笑い、胃がムカムカさせられる。
「ふん、男ならハッキリしなさいよ! この前、私とミオを助けに来たときみたいに」
「ほらあの時は無我夢中だったし、アドレナリンがかなり出てたんだと思う」
変な言い訳。やってる事と言ってる事がむちゃくちゃ。
「そういうとこ嫌いよ」
「はっきり言ってくれるなよ。辛いじゃないか」
「ふん! みんな心配したのにそんなんだから少しむかついたの!」
「ごめん。でも今はとりあえず前に進もう。時間がない」
「わかってる。もういいわ、帰ったら詳しく話を聞かせてもらうからね!」
「……はい」
最高にイライラさせられる。いつもそうだ、彼の事が腹立たしい事の方が多い。
それでも私はトウジの事が好きという事は変えられない事実だった。
本当のあなたを見られるのは何時なのかなトウジ君。わたしの『正義の味方さん』。
刀子がヒロイン感を出し始めて来ましたね。自分で書いてて臭すぎるけどこんな感じのがヒロインだと思ってる。