セブンスドラゴンⅢ~俺なんでかISDFやってます~ 作:定泰麒
広場にはISDFと13班の面々、それにルシェの戦士達の姿があった。
「残るは彼らだけか……」
「キリカさん大丈夫でしょうか」
「レンジュウロウ、あなたが心配することじゃないわ」
「そう言わないでください。帝竜を倒しに行った彼女達だけ、まだ帰って来てないのですよ」
「大丈夫。キリカとあの青年がいる限り負けないわ」
13班のメンバーが、キリカ達の心配をしている中でヨリトモは一切喋る事がなかった。
ユウマも喋ることはない。ただ思想に耽っていた。
『トウジに二度も先に帝竜を倒されるのはどうしても少し嫌な気がしてしまいますね。同僚だと言っても好敵手と認めてる訳ですから』
強くなることはユウマにとって生きる意味であり、存在意義でもある。
人類を守るための戦士として創り出され、誰よりも強いことを求められた。
だから、誰にも負けられない。負けた時、それ即ち自身に生きる価値がないとなってしまうのだ。
その考えを一番危惧してるのは、ヨリトモだ。
ヨリトモはISDFの中でも、提督と呼ばれる位には地位を持っている。
戦闘において常に前線で戦うヨリトモはISDFでも尊敬されている男。なにより純粋に強いのだ。だから前線で敵と戦う。
その身体には幾重にも傷痕があり、ボロボロだ。弱みは見せないものの自身にも限界を感じていた。
そんな時、現れたのがユウマだった。勿論ユウマの特殊な生まれも思考も知っている。
それでも、ユウマという存在に嘗て自分が愛した女性の姿が重なった。
普通の人間よりも、少ない時間しか生きられない。それでも普通の人間にはない才能を植え付けられ、必死に任務をこなしもがきながら生きていた女性を救いたい。
一緒に生きられる時間はほとんどないと分かっていても、救いたいと思った女性をいつの間にか愛してしまっていた。
結果子供が出来た。ヨリトモもその女性も子供を愛した。その時期は人生で最も幸せだったと断言できる。
だが、女性は死んでしまった。最初から分かっていたことだったのに、無性に罪悪感を抱いた。
俺は幸せだった、でも彼女はどう思ってたんだ?
子供を産ませながら、それを育てさせる事が出来なかったのは余計に不幸な目に遭わせてしまったんじゃないのか?
俺は本当に彼女を救えたのか?
今となっては、分からないのだ。死ぬ間際のあの輝きが奪われた様な笑みはどういう意味だったのか。
そして、ヨリトモは子供から逃げ出した。言い訳なら何十でもあるし、細かいのも挙げていけば何百通りもある。
自分に言い訳しながらも、本心では逃げ出した臆病者だと自分を責めていた。
だから余計にユウマの事を心配したのかもしれない。
自分が出来る事なんて殆どないと分かってる。
ユウマを変えられるのは、俺じゃないんだろう。俺にはその資格はないと思っていた。
このユウマと肩を並べられる奴ならばもしかしたら……
思えば、面白い男だった。あんな成績を挙げといて、除隊させてくれと訓練所に嘆願を出した件では、俺も耳を疑った。
訓練所に問い合わせても何故か分からないと言われた。
元々、徴兵したのは俺の一言で遭った。しかし、このISDFの徴兵令は強制ではない。確かに強制という認識は世間では強いが断る事も出来た筈、それを断らず訓練所に来て誰も追いつけない戦績を挙げたと思えば、この様だ。
しかし、俺は一つ考えを巡らせた。奴は辞めさせてくれとしか言わなかったらしい。
だから、訓練所を辞めさせ横須賀に来させた。
今思えば、自分でも随分卑劣な事をしてしまったものだと思うが、その時はそれが日本の為だと思った。
それにユウマの為にもなるかも知れないと少しばかりは思っていたのかもしれない。
それでも奴は嫌そうな顔を一つも見せずに結果を出し続けた。
いつの間にか、ユウマとも仲良くなっていた。
全ては上手く行っていた。それでも心に罪悪感だけは残っていた。
「トウジなら無事に帰って来るさ」
「当然です。僕が認めた相手の一人ですからね」
「強いからか?」
「それだけじゃありませよ。彼と話していると楽しいのです。なんせ仲間ですから」
「そうか……、よかったな」
そんな折りに、13班の面々から鍛冶場に帝竜討伐に向かった仲間の救援に行く事を言い渡された。
ISDFと共同任務だとしても、命令系統はあくまでも別であり、彼らに対してISDFは何も言う権利はない。
しかし、その13班に対してヨリトモは村を部下達に守らせ自分とユウマもついていくと言った。
それにはユウマも驚いた。
「いいのですか? 我らのどちらかだけでも残った方がいいのでは?」
「生憎もうこの洞窟内には、竜の生体反応は残り一つだ。それがきっと帝竜なのだろう。それに何かあっても俺の部下ならば竜など何十匹でも倒せる」
そうだろ、お前ら!
ISDFの隊員達はその問いかけにその声でもって返事を返した。
「「「「「おう!!!」」」」」
洞窟を揺るがすほどの咆哮だった。地面が揺れ、壁が揺れた。
トウジ一行は、ようやく目的地の鍛冶場へとたどり着いた。眼前には禍々しい巨大竜が立ちふさがっている。
「こいつが帝竜メイヘムだ。こいつに同胞達が殺されてきた。厄介なのは爪と牙だけじゃない。毒なんだ……」
心なしかユージンの表情にも、怯えたものと憎しみの感情が見える。それだけこいつには煮え湯を飲まされたのだろう。同時に恐怖も与えられたからこその表情だ。
「毒か! キリカ、どれくらい毒消し持ってきてる?」
「ポワゾルが15に、オールが3つよ」
「それだけあれば少しは保つな。キリカ俺が前衛をする、援護は頼んだ」
「火の粉は振り払ってあげるわ」
「頼んだ。ユージンとニオも頼むぞ、唯無理はしなくていいから」
ユージンは頷くが、ニオはどこか不満の様子だ。
無理はしなくていいと言われた事に引っかかっていた。
「そんな顔するなよ、なにも下に見てるから言ってるんじゃない」
「じゃあ、なんでなのよ!」
「聞くなよ、言うだけ野暮って奴さ。よし、キリカ行くぞ!」
首を縦に振ったキリカを見て、トウジはメイヘム目掛けて突っ込んだ。
巨大な竜だ。鋭利な爪以上に、その前足の重量が異様な程だ。踏みつぶされでもしたら、それは死に繋がる。
最初の一撃が肝になるのは間違いない。人間ならば弱点は多い、竜にも当然弱点はある。だがその殆どは堅く厚い皮膚や鱗に覆われ致命的な一撃は与えられない。だが一ヶ所だけ、竜に比較的大ダメージを与えられる場所がある。
それ即ち、目だ。
トウジが真っ先に狙ったのも目だった。
メイヘムは生憎その重量もあって、攻撃の速度はそう早くなかった。ただ攻撃の当たる面積が広くその攻撃を避けながら竜に詰め寄るのはそう簡単な事じゃない。
当たるギリギリの所で攻撃を避けているように他者から見えているトウジの動きは人間からすれば離れ技のようなもので、それに合わせて牽制をするキリカも十分化け物だ。
「うりゃあああああ!」
掛け声とともに高く飛んだトウジは両手に持った刀をメイヘムの右目に突き刺すために剣先を向ける。
流れは良かった。キリカとのコンビネーションはかなり良好。ユージンとニオもそれぞれの形で援護をしている。
メイヘムの両目を潰す予定であるトウジもこれなら帝竜でも楽に勝てると思った。
しかし、予想できた筈の予想しなかった事が起こる。メイヘムがその巨大な口を広げ始めたのだ。
これにはトウジも焦った。流石に空中で方向転換やジャンプなんて出来ない。
さほど何も考える時間もなくトウジはメイヘムの口の中へと消えた。
まるで時間が止まった様だった。
「うそっ、トウジが食べられた……」
キリカはトウジがメイヘムの口の中へと消えていった事を信じられないでいる。
目の前で起こった事なのに、自分を疑う。
それは、竜しかも帝竜の前でその状態になってしまったのは致命的な命取りだった。
メイヘム自身は何事も無かったかのように、全てを凪払う。
キリカもとっさに反応するが、回避は出来ずに防御した。そのせいで攻撃をもろに左腕に受けてしまい骨が砕け動かす事が出来ないという状態に陥ってしまった。刀もその余波で刃が砕け散っている。
ユージンとニオの方もまた危機に陥っていた。ユージンの着ていた鎧を貫き爪跡が腹部に残っている。
血みどろになりながら、ニオが必死に直前にトウジから渡されていたメディスⅡをユージンに飲ませていた。
絶体絶命。キリカは嘗てないほどの危機感を覚えていた。鮮明に死のイメージが自身の中を浸透していく。
メイヘムもメイヘムで、これで終わりだと毒を解き放とうと構えた。
「ごめん……、みんな」
力なく呟いた。
その時、帝竜メイヘムがうなり声を上げた。それは勝ち誇る様な声ではない。悲鳴だ。
「えっ?」
キリカもユージンを手当てしていたニオも又そのユージンでさえメイヘムを見た。
悲鳴が聞こえた、その一瞬。メイヘムがこときれたのだ。
人で言えば、頭と体が真っ二つとかそんな感じでメイヘムは倒れた。
切れた頭と体の間から出てきたのは返り血を浴びたトウジだった。
「案外、竜ってのも内側は堅くないもんなんだな。一撃だよ、一撃」
いつもの苦笑いだった。
お気に入り100超えたのソードアートオンライン以来かなって思ったんですけど、にじふぁんでそれだったし、原作が賑わい始めた時だったからランキングにも乗ったりしてたんすけど、それよりもこのナナドラで100超えたほうが嬉しい。
皆さんありがとうございます。
後、自分で小説見直すのが恥ずかしくて辛いので皆様の誤字脱字報告は助かります。一応最低限は確認するんですけど流し読み程度なんで。