セブンスドラゴンⅢ~俺なんでかISDFやってます~ 作:定泰麒
さすがに死んだと思った。どれだけ運が良くても竜に食われれば死ぬって誰でもわかる。
メイヘムが大口を開けている。死ぬ前に人間何を思うのか人それぞれだと思う。
俺は焼き肉を食べに行きたいって思った。案外死ぬ前っていうのはそういうもんなのかもしれない。
生憎、口の中に入るとき牙は俺の身体を貫くことはなかった。ということは下手したら俺は竜の体内で消化され死ぬんだろうなって、冷静に考えていた。
竜の体内は螺旋状の滑り台のようでかなりの速度で降下している気がした。
その最中でピタッとまるで張り付く様に俺の身体は止まった。
後ろを振り向く事は出来ないが何かに引っかかったんだろうと思う。
上を見れば暗闇だが、俺の頭に何かが垂れてきているようだ。
触ってみると液体なのはわかった。臭いを嗅いでみるとそれが何なのかすぐ理解した。血だ。
暗闇に目が慣れてくると何故血が垂れてきているのが見え始めた。俺が滑ってきたと思われる道筋に妙な傷跡が出来ているのだ。
そっと後ろに手を回し、何が起こってるのかを探った。どうも背中に掛けたショットガンが肉に食い込んでいるようだ。
壊れていても俺を助けてくれるショットガンには感謝してもしきれないものである。
さてどうしたものか……きっと時間はそうはない。
昔話で内側から敵を倒すなんてものがあったはず。でもこのメイヘム相手にそれが出来るか甚だ疑問だ。
しかも、この状況で一撃でも食らわせるとかなるとどうなるか全く予想もできない。
正直首の皮一枚程度で繋がってるとかそんな感じ。摘んでる。なるようになれという感じだが、なにもしないよりはいいと両手に持ってた刀を後ろの肉壁に突き刺した。
少しだけ血が噴き出した。
でも唯それだけ。この両手剣だけじゃ間違いなくメイヘムの外側へ突き破るようなことは出来ない。
ショットガンが使えるのであればまた違った展開だったに違いなけれど現実は残酷だ。
それに加えて、この体内にも妙な事が起こり始めた。
この中全体が波を打ち始めたのだ。それにつられ俺も波を打つ。
何が起こっているのか、さっぱりだ。
そんな事を考えているうちに、意識が遠のく。体力もどんとん下がっていく。
「そうか、毒か……」
意識を失う寸前。ようやくそれがわかった。
「また……あ……な…。ふん、し……たな……、たす……あ…る……」
また、この声かどこかで一度聞いた声。でもあの時よりも聞こえない。
必死に手を伸ばす俺がいる。何度も伸ばすが結局は触れない。
「起きろ!」
声が耳元で聞こえた。今度ははっきりだ。酷く懐かしいようなそんな声。まるで母親のような全てを包むそんな……
目を開く。体が重い。毒が回っているんだろう。それに目が回る。動けない、既にいろいろと理解の範疇を超えていた。
手も動かすことが出来ない。ただ何かを握りしめているような感覚だけは感じていた。
そうか、刀だ。
目が回っている理由もわかり始めた。再び螺旋状に滑り落ちている、それも今度は壁にうつ伏せになってだ。
俺は気を失っている間に何をしたのか。嘗てユウマと一緒に国会議事堂に赴いた時も似たようなことがあったような。
でも、その状態は長くはなかった。刀から伝わる重みが軽くなっていく感覚が伝わり、あれなんかタマネギ切ってるのかぐらいになっていく。
仕舞いには、その感覚さえもなくなった。いまいちわからん。だが刀が急になにかと接触したのかその動きを止めた。
違う、刀が止まったんじゃない。これは俺が何かの上に乗ったのだ。恐る恐る足の方を見る。
夥しい量の血と、どこからか入り込んでいる光。そして凸凹だが紛れもない地面だった。
謎が謎を呼ぶ。自分でも何が起こったかわからない。けれども一つ分かったこと、俺は助かったのだ。刀を抜き、ゆっくりゆっくりと光の射し込む方へ進む。
そこから手を外へと出し、慎重に外へと這い出た。
視界がぼやけているが、キリカが腰を抜かしているのはわかった。それにユージンの方は血塗れだ。
なんか言わなきゃ。
「案外、竜ってのも内側は堅くないもんなんだな。一撃だよ、一撃」
精一杯の強がりだった。また俺は気を失った。
「ほんと馬鹿な子達、ぼろぼろじゃない!!」
「まぁまぁ、ジュリエッタ。まだまだ始まったばかりよ。それにまた13班の子達強くなってる」
「たくっ! そんな悠長な!」
「大丈夫よ。全員命に別状はないし、あのルシェ族の青年も助かった訳だし。モーマンタイよ♪」
「彼はどうなの?」
「ISDFの男の子のこと?」
そうだと言わんばかりにジュリエッタは頷いた。
「ジュリエッタも気になるのね♡ 彼なら気を失ってるだけよ、それに貴重なデータも得られたっぽいから、あなたにも渡しておくわ~」
「データ?」
「そう、映像はないけど彼がどう竜の中で過ごしたか。きっとそれ見たら、更に興味が湧くはず」
まじまじと渡されたデータフォルダを見つめた。ジュリエッタも研究者として気になる所があるのだろう。
「目を覚ましたら、じっくり話を聞きましょう。多分かなり面白い話が聞けるはず、楽しみね」
「なにか嫌な予感がするわ。まるでこのフォルダがパンドラの箱みたいに思える」
「開けてみなさい、絶望は既に箱から収まりきらずに這い出してきているわ。残ってるのは希望かもよ。まぁまだ、絶望が残ってる可能性もあるけどね♪」
アリーの目が怪しくも淫靡な瞳になったのをジュリエッタは見た。まるで何かの深淵を覗き込んだような気がしてならなかった。
「うっ、ここは?」
見慣れない場所だった。横を見れば誰かの人影だ。そうこれはユウマだ。
「目を覚ましたんですね。今回は比較的早く眠りから覚めてくれて良かった」
「そうだな。なんかデジャヴな気がする」
「ええ、そうでしょうとも。ただ今回はもう一人」
ユウマはそれだけ言って、右方向を見た。左腕に包帯を巻いてるがその寝顔は正しくキリカだ。
「そうか、キリカもいたのか」
「ええ、自分も大変な怪我をしているというのにあなたの看病をすると」
「感謝してもしきれないような奴ばっかだよ。俺の周りはさ」
「トウジ、一つ聞きたい事があります」
「なんだい?」
「あなたは強さとはどういうものだと思いますか?」
どこか陰が見える。いつもどこか飄々としているユウマでも、何か頭を悩ましているような事があるんだなと改めてそう思った。
「怪我人に随分難しい質問だな。俺は決して強くないからお前が求めてる答えが言えるとは限らんけども、一つ言えるのは腕っ節だけが強くても強いとは言わないというじゃないか」
「……なぜ、そう思うんですか」
「確かに腕っ節の強さっていうのはわかりやすい。ただ人間てそれだけじゃ生きていけない。現に腕っ節だけでは世界で一、二を争うかもしれないs級のキリカだって竜相手に傷ついてる。それでもキリカに対して俺は強いと認めている。それは単に腕っ節だけじゃない強さをキリカが持ってるからだ」
「僕にはわかりません。最強であること、それが僕の存在意義……」
「それが弱さじゃないかと思うんだ。お前は優しくて、思いやりもあって腕っ節も俺じゃ太刀打ち出来ない位に強い。でも、お前が腕っ節ばかりを見ているようじゃ強いとは言えない」
「答えが見つからないんです……」
「お前は、体だけ俺に近いだけで実際はまだ幼い。俺もつい最近までは高校生だった。だいぶ前に感じるけどな」
乾いた笑いをしたと思う。ユウマはまだどこか思いつめた様子だ。
「あなたをこの前線に巻き込んだのは悪いとは思っています。ただ巻き込んでよかったとも」
「そうか。でも俺もなんやかんや良かったと思うよ。確かに面倒な事も多いけど、世界の為になにか出来るなんて機会そうそうないし」
「誰かの為に戦うのが、強さですか?」
あれ話しがまた強さの云々かんぬんに戻っちまったよ……。でも適当に答える訳にもいかんしなぁ~。
「お前が俺に対してどう思っているかはわからんけど、それも一つの強さだとは思うよ。でもな、やっぱ真の強さってのは人それぞれなんだよな。一番わかりやすいのは『正義の味方』ってとこじゃないか」
「『正義の味方』ですか?」
「わかりやすい強さっていうのであればな」
「僕も『正義の味方』になれるのでしょうか」
「わからん。それはお前が今後どう生きるのかにもよるんじゃないか」
「なかなか難しいですね」
「だろうな……。そういえば、最近『ブラスターレイブン』っていう正義の味方がいることを知ってるか?」
「さあ、知りませんが……」
「なんでも『正義の味方』を演じている奴らしいが、実力はかなりのものらしい。ISDFでも多少噂になってた」
「『ブラスターレイブン』……」
「そう、それ。一度彼と話をしてみたらどうだ? 案外お前の求めている答えが見つかるかもしれない」
「そう……ですね」
少しだけ、その暗い表情に光が灯ったような。と言っても俺も他人にアドバイスできるような奴じゃないし、この程度で精一杯だ。悪いなユウマ。
「なんか喋り疲れたよ。また寝るな。お前も寝とけよ」
「ええ、もう少しだけ考えたら僕も寝させてもらいます」
俺は瞼を閉じた。
なんかユウマもヒロインくせぇような感じになっちゃったよ……orz
えぇ~話しはかわりますが、ランキング入りしたのも皆さんのおかげです。ほんとにね、このハーメルンでナナドラでハーレムでもないし糞みたいな文章で入るとはまじで思わんかった。お気に入りが160人ぐらい一気に増えたからやっぱみんなランキングみるんだね。