セブンスドラゴンⅢ~俺なんでかISDFやってます~ 作:定泰麒
ノーデンスに思わず耳を防いでしまう程にけたたましい警告音が鳴り響く。
「これは一体なに!?」
ジュリエッタがそう叫ぶ中、現在ミオがエデンにいる13班にナビゲーションをしている。
警告音は13班の方にも聞こえているらしく、ミオに何事とキリカが尋ねていた。
「わかりません。こっちもまだ現状が……こっ、これは!!」
ミオが状況を確認しようと、ジュリエッタが弄っている画面の方を見た。
「不味いです。大量の竜種の出現及び帝竜級も画面上に確認されました」
「そんな! 私達はどうしたらいいの!」
ミオの報告を聞いたキリカは悲痛な面持ちでナビを見つめる。
「13班はそのままエデンの任務を続行なさい! ISDFは至急帰還せよと長官命令よ」
キリカの質問に答えたのは、アリーだった。
「そんな帝竜が出現してるんでしょ! だったら「黙りなさい!」……」
「竜の大量出現は前から予想されてたわ! それに、エデンで検体を手に入れる方が先よ! じゃなきゃ、人類は滅びるわ!」
アリーに説き伏せられ、キリカも他の13班も何も言い返す事が出来ない。
それはきっと彼らも分かっているからかもしれない。
自分達が人類の希望になりかけている事に……。
「アリー! アリー!」
ジュリエッタはアリーを早くこっちに来てと言わんばかりに手を振り自分の元に呼んだ。
そして、アリーが来たのを横目に見ると画面を指差した。
「帝竜級一体の生命反応が消失したわ」
「どういう事!? 帝竜級が出現からわずか一分もかからず死んだとでも?」
「わからない。でも今衛星からの映像待ちよ」
画面に表示されるloadingが100%となるのにそう時間はかからなかった。その間は沈黙に支配された空間のようで誰も喋る事はない。
「これは……」
誰もが言葉を失ったのだ。
画面に写された。巨大な竜とその頭に深々と突き刺さる二振りの刀。そして竜の上に平然として立っている一人の男に。
「ハルミネトウジ……。そうね、あなたなら帝竜なんか秒殺よね♪ サードエンカウントの始まりはやっぱりあなただったわ☆」
アリーは笑う。
「今から戻ったとしても3時間はかかるぞ」
東京に竜の襲撃というアリーの報告を受け、すぐさま戻る事になった。ISDFの一同はヨリトモの指揮下の元で撤退の準備をしていた。
「ヨリトモさん。もしかしたら僕達が帰る頃には出番ないかもしれませんよ」
「何故だ?」
「東京にはトウジがいるので」
「それはあまりに信頼のしすぎではないか」
「そうですかね? でも彼なら帝竜級ぐらいなら3時間で全滅させてそうですけど。なんせ少なくとも一体は倒してるでしょ」
「それはそうだが……」
ユウマの言葉にヨリトモの顔は晴れない。ヨリトモは拳を握りしめて苦渋の表情だ。
「なにか懸念でも?」
「きっとまだあいつには兵がついて来ないだろう。となれば連携も悪くなる」
「そうだとしても」
「質は無論大事だ。だが戦いは数という言葉があることを忘れてはならない。それにまだあいつには直属の部下をつけていない。俺が東京にいればこの中の兵士を貸したんだが……」
「トウジが個人で動くしかないという事でしょうか」
「私がいないという事は、長官が直々に戦闘指令を下すということだ。あの人はお前やトウジといった個人の力に頼りすぎるきらいがある。それが問題だ」
「長官直々にですか、それは不味いかもしれませんね」
「最悪、トウジの命も危ないかもしれん」
兵士から撤退の準備完了の報告が入るとヨリトモは号令を掛けいち早く東京への道を走った。
その後ろでユウマが苦しそうにして走っているのにも気づかずに。
「くっ、こんなとこで副作用が……でも僕は……」
遡ること、数日前。ノーデンスのとある場所に一人の客が訪れた。
「やっぱり、お仕事って最高に楽しいなぁ~」
「……消えたい。こんな仕事早くやめたい。あっそうだ、死ねば辞められるんじゃ」
鼻歌混じりのやる気満々の声に今日も頭を悩ませられるチカは暗く微笑みながら仕事をこなす。
「もぅチカ! 笑うならもっとこう明るい笑い方をしなさいよ」
「……無理」
「はぁ~」
性格は対照的だったが、その容姿はよく似ていた。それも当然と言えば当然なのだが……。
「おーい、お二人さん。ちょっといい?」
目の前のカウンター越しに見える訪問者にリッカの方は見覚えがあった。
「あー、あなた。えっとトウジだったよね」
目の前の少女が初対面にも関わらず自分の名前を知っていた事に驚きつつもなんで知ってるのかと言葉を返した。
「そりゃ当然よ。ノーデンスの社員じゃないのに社長から目をかけられてるのはあなたしかいないわ」
「そうかもね……」
苦笑いするのが精一杯だった。自分に対して武器を造ってくれるというのは目を掛けられているに違いのない事だろうと思ったのだ。
「で、要件は? きっと例のあれなんだろうけど」
「俺の刀を作ってもらったって連絡があってさ」
「やっぱ例のあれじゃない。うーんと……チカ!」
はっと何かを思い出したように、リッカはチカを呼びかけた。
「……なに?」
「アレ持ってきて!」
「……アレってあなたの足元にある箱の事?」
「あっ……そうだった。今日来るかもって言って置いといたんだ」
リッカは箱をカウンターの上に置いた。そして蓋を開けて中身を取り出す。
「はい、これ。2400Azね」
「やっぱお金取るんだ」
「当然じゃない! こっちもボランティアじゃないの!」
「そうだよね。じゃあはいこれ」
「……うーん。おっけー♪ じゃこれ。大切に使ってね、獅子王の事」
「獅子王ね。おし、大切に使う事にするよ」
トウジは刀を受け取ると、エレベーターに乗って去っていった。
「ねぇ、チカ。あれってあなたが渡した方が良かったんじゃないの?」
「……いいの」
「そう……。まぁそんなことよりお仕事、お仕事!!」
「……やっぱり、こんな仕事止めたい」
今日も二人は仲良く仕事をこなす。
紅杭の塔と今は呼ばれているそんな場所の境界線に二人の姿が見える。
「俺は、俺です。としか答えようがないですね」
レイブンから聞かれた、君は何者という質問に苦笑いで答えるトウジ。
「そう、君はハルミネトウジで間違いない筈なんだよ。でもね、君から懐かしい友人の気配がするんだ」
「友人……?」
「そう、僕がまだこうなる前の事なんだけどね」
「こうなるって?」
「いやー失敬、失敬。特に深い意味はないんだ。でもそうだな~、君って伝説の13班の子孫だったりしないかな?」
「そんな話しは一回も聞いた事ないですね」
「そう……だよね」
「どうしてそんな質問を?」
「別に深い意味じゃないんだ。ただ君は強いからそれって遺伝なのかなって」
若干言葉を濁しながら答えるレイブンにどこか違和感をトウジは覚えた。
「俺は強くないです。ただ運が良いだけです」
「運か……。僕も君みたいな運の強さを持っていたらもっといろんな人を救えていたんだろうか。いや、うん。さぁ最後の質問といこう。ずばり君にとっての正義ってなに?」
「難しい質問ですね。でも俺が思うに正義って人の数程答えがあると思うんです」
「それはわかるな~。人によって考え方が違えば正義が異なるって事でしょ?」
「そうです。あなたにとっての正義があるように、俺にも正義というかそんなもんがあって。でもちょっと前まで正義とか考えた事なかったんです」
「なにかあったのかい?」
「それはちょっと……。でも今の俺にとっての正義はできる限り精一杯頑張るって事ですかね」
「なるほど……。面白い答えだった。ありがとう」
「いいえ。そんな俺なんか」
「少し君の事がわかった気がしたんだ。今はそれだけで充分さ」
レイブンは境界線の果てを見つめた。
またワンパンかって、思ったあなた。そうワンパンなのだよ。(ゲス顔)