セブンスドラゴンⅢ~俺なんでかISDFやってます~ 作:定泰麒
「それにしてもトウジの奴、一体全体どうしてこんな所に一人で飛ばされたんだろうな」
「分かりませんが、彼がよく使う運とやらに関係があるのではないでしょうか」
「その運てのはよ、結局の所なんなんだろうな」
「僕には分かりかねますが、神の戯れとも神の意志とも……、はたまた別のナニカでしょうか」
「そこはどうでもいい。ただよー、ジュリエッタが言ってたろ。彼は天文学的なレベルで運がいいって」
「転送ミスが生じたならば、普通は死ぬ。違う場所に転送されたのは本当に運が良かったと言っていた件ですね」
「ああ。奴の運の良さには何かあるそう思わんか?」
「あるのでしょう。唯それが何と言えないのが少々悔しい所です。さて、今トウジは大丈夫なんでしょうかね」
「大丈夫だろう。トウジならピンピンしてる筈だ。それに彼女もトウジ救援に向かったんだ。心配はないさ」
「……ですね。提督」
ISDFによる竜種及びマモノ討伐はかなり順調だった。本来ならば彼らもトウジ救援に駆けつけたかったのだが、それを状況が許さなかった。
「この程度の竜なら、僕一人で十分です」
ISDFの不動のエースであるユウマは既に竜を一人で何体も撃破している。
ヨリトモも又、他の隊員たちを導きマモノを倒し竜を少なからず討伐している様子だ。
S級の一人の戦力は一般人の100人分であると嘗てムラクモ機関の長だったものが言っていた。事実一般人一人ではマモノの中で最弱とされているラビにさえ勝てない。
唯それがもし10人だったら?
13班に用意される武器にも負けず劣らずの装備をしていたら?
一人一人がs級でなくてもA級だったら?
当然話が変わってくる。だがISDFというのはそういう組織なのだ。
皆が強い、集団になっても更に強い。エリートの中のエリート集団なのである。
「13班だけには任せられない。我々が日本、いや世界を救わなければな」
「今はまだ13班は育成中のようなものです。それにまだ始まったばかりですよ」
「そうは言うがな。あいつらだって最近まで守られる側だったんだ。前線を俺達が張らないでどうする」
「それはわかりますが、現状彼らは秒単位で力を付けていっています。僕も強くならなければ」
「ユウマ、そんなに力に固執するなよ。溺れるぞ……」
「強さが僕の存在の証明、生きる価値ですから……」
「生きる価値な……」
ISDFは今日も戦う。
「竜ってこんなに手応えなかったっけ?」
「アキラ君。その油断はいけませんよ」
「でも、レンジュウロウさんも同意見でしょ」
「……強くもなったのでしょうが、恐らくは竜との戦闘に慣れはじめたのでしょう」
「なるほどね~。確かに能力も上がった気がする」
「これだから男は嫌ねぇ。なんだか汗臭いわ~。帰ったら直ぐにお風呂入りに行かなくちゃ」
13班の実力はかなり上がっていた。その成長スピードはISDFを軽く凌駕している。
それにノーデンスで整えた装備も皆一級品、危険な場面もなく竜を討伐していく。
「メイさんは余裕綽々のご様子で。このレンジュウロウ羨ましく思います」
「ふーん。そう言ってるあなたも汗一つかかないで余裕に見えるんだけど?」
「いえいえ、汗はかいておりますよ。ただ汗がでたら直ぐに拭いているだけでございます」
「それが余裕じゃない」
「これだから、大人は……」
メイとレンジュウロウのやりとりにアキラは少し呆れた表情である。
「それにしてもキリカねえちゃん大丈夫かな? 少し心配だよ」
「あの子なら大丈夫よ!」
どこか確信を持っているメイにアキラは何故かと聞いた。
「決まってるじゃない。私の感よ!」
はたまた呆れた顔を見せるアキラであった。
「まあまあアキラ君。そんな顔してはいけませんよ。案外女性の感というものはここぞという時に当たりますからね」
「たとえば?」
「それは中々答え辛いモノがありますが、女性は何故かそういうものなのです」
「訳がわからないよ」
「いずれアキラ君も経験するでしょう。その時は、いつかわかりませんが潔くいなさい」
どこか遠い目をしているレンジュウロウにアキラは何も言えなくなってしまった。
「二人共お喋りしてる時間があるならマモノと戦いましょうね~。手を動かしなさい」
「「了解!」」
「この仕事ブラックすぎるよ。はやく辞めたいよ!」
「そんなこと言う暇あるなら手を動かせ~」
「もう耐えられない……」
「でも働かないと住むとこなくなるし、内臓売らなきゃならなくなるよ」
「それはいやーーー!」
暗く微笑むリッカにチカは白目を向くほかなかった。
「そんなことよりさ~チカ。ISDFにお客さん来てるみたいなんだよね」
「それ私達の仕事じゃないでしょ! 受付は何してるの!」
「今社長がいないのよ。だから誰かに伝えなきゃいけないって受付が私達に」
「そうなんだ……、とりあえずジュリエッタにでも伝えとく? 社長の次に偉いのジュリエッタじゃない?」
「おー、いい判断かもね。よっ! 社員の鏡!」
「この仕事ほんとに辞めたい……」
リッカはジュリエッタに内線で電話をかけた。
「……っていう訳なんだけど、ジュリエッタ後はよろしく」
電話の向こう側でジュリエッタが何か言っていた気がした事をなかったがリッカは電話を切った。
「なんでそんな話が私のとこ来るのよ! おかしいでしょ!」
って切ってるんじゃないわよ!
ひとしきり叫んだところで、ジュリエッタは実際どうすべきか迷っていた。
本来ノーデンスという企業にISDFが来ているというのは機密事項だ。
それにも関わらずここにISDF目当てで来ているということはおかしい。
果たして如何様な人物がISDFに用があるというのか、少しだけ興味を持ったジュリエッタだった。
「確か受付に来てるのよね。面白そうだわ、少し行ってみようかしら」
ジュリエッタはエレベーターに乗り込みその足を受付へと向けた。
「ってあのヒーローの格好した奴かい! なんで彼奴はISDFがここにいるなんて知ってるんでしょ?」
いざ受付に向かい相手を見てみると待っていたのは胡散臭いヒーローの格好をした男だった。
だが、ジュリエッタは彼の事を知っていた。最近ヒーローの格好でマモノや竜を討伐している男がいるという話を聞いていたのだ。
しかも単騎で。その男に全く興味がないといえないのが研究員、技術者としての性だった。
そこでジュリエッタは彼に話しかけた。
「私はブラスターレイブン。それ以上でもそれ以下でもない。ここにISDFが来ているという話だったが事実かね?」
「あんた本当に胡散臭いわね。でもまぁいいわ、彼らならここに来てる。それで彼らに何の用?」
「見たところあなたは、ISDFではないようだが、彼らは何をしているんだい」
「まだ帰ってきてない。それだけよ……」
「帰って……、なるほど理解した。ならば帰ってくるのを待たせてもらうよ」
「好きにしなさい。後もう一つ聞いていい? なんでISDFを訪ねて来たの?」
「具体的に言えばISDFに用があるんじゃない。『ハルミネトウジ』君に用があるんだ」
「みんなその名前をよく口にするわね。ただごあいにくさま、彼行方不明よ」
「なに!? そんな馬鹿な!」
「事実よ。でも私達の13班とISDFが救出に向かった。きっと戻るでしょ。生きてるか死んでるかは彼の運次第だけどね……」
「了解した。なら私は彼が生きている事を願って尚更待たせてもらうことにしよう」
「ふん……」
こうしてジュリエッタは研究室に戻っていった。そして、ブラスターレイブンという男に少なからず興味を持った。
「まるでこのノーデンスで何が行われているか知っているような口振りだったわね。少しだけ興味を持ったわ『ヒーローさん』」
俺達兄妹の目から見て、その男はかなり強かった。
ルーンナイトとして日々鍛錬を積み重ね才能もあったんだろう最近じゃエーグルさんしか相手にならなくなった。
そんな中で現れた竜やマモノ。獰猛で厳かな奴らに仲間も相当やられてしまった。
その中には俺達兄妹の親もいる。妹は泣きじゃくった。それでも皆を守りたいと今でも必死に戦っている。
それでも日に日に仲間は減っていく。怪我を負っていないな者の方が少ない。
そう考えれば俺は運がいい方だったんだろう。
でもそれも限界まで来ていた。竜は賢く、前よりもかなり強くなっていた。
そして彼が来た。
外からの訪問者、見ただけで彼が強者なのがわかった。
どこか飄々としている言動が気になるが少なくとも彼が敵でなかった事を喜ぶべきだと思う。
そして、彼との出会いが俺達兄妹の冒険の始まりになるとは夢にも思わなかったんだ。
彼の名はトウジ。
火事場に巣くった帝竜を一撃で倒した男だ。
ニアラって近くで見たら目がチカチカすると思うんだ。