IS〈インフィニット・ストラトス〉~未来へと繋ぐ英雄達~ 作:武御雷参型
漸く更新です。今後も不定期更新になると思いますが、よろしくお願いします。
千冬とキラの一騎打ちは、キラの勝利となった。
これには、一夏達やゴースト隊を除く全生徒が驚きを隠せなかった。
千冬は第一回目のモンドグロッソにてブリュンヒルデと言う称号を貰っており、世界最強と言われていた人物であった……が、実際にそれを果たしたのは千冬の偽者であり、本物の千冬はロゴスに幽閉されていた事から、実力こそあってもその実績も経験もないに等しい。
過去の戦争の事を知っている者達ならばいざ知らず、それを知らない生徒にしては驚愕そのものだった。だが、一番驚いていたのは、女尊男卑主義やIS至上主義の生徒達であったのは、別の話である。
《これより、赴任式を始めます》
アナウンスによって、全生徒が我に返ってアリーナに居るキラ達を見る。
《では、ヤマト隊長。お願いします》
『判りました。初めましての方は初めまして。久し振りの方はお久し振り。国際IS委員会特別遊撃隊隊長のキラ・ヤマトです』
キラはそう言うと頭を下げる。
『同じく、特別遊撃隊副隊長のアスラン・ザラだ』
『同じく、特別遊撃隊シン・アスカです』
『同じく、特別遊撃隊ルナマリア・ホークよ。よろしく』
キラ達は自己紹介を終えると、上空を見上げた。
そこには一隻の戦艦が浮遊していた。そこからストライク・アストレイに抱えられるように、一人の女性がアリーナに降り立った。
その姿を見た生徒たちは驚きを隠せなかった。
『ヤマト隊長が言った言葉を使わせて頂くのなら、初めまして、又はお久しぶりですわ。国際IS委員会特別遊撃隊専属艦、武御雷級二番艦“雷華”艦長のラクス・クラインですわ。』
その理由は至極、単純明快。
現在、”地球全土を復に駆ける歌姫”と呼ばれたラクス・クラインが目の前にいるのだ。
知っている生徒たちは再び会えた事を喜ぶ一方、知らなかった生徒たちは、”何故、歌姫であるはずのラクスが委員会の特別遊撃隊の専属艦の艦長をしているのか”、全く意味が判らなかった。
『ここでお伝えするべき事がありましたわね。 わたくしは一年前、先の旧IS学園攻防戦にてライカの副長を務めていましたわ。艦長はオーブの現防衛大臣を務めているカガリ・ユラ・アスハさんですわ。わたくし達は委員会の第一遊撃隊として、日本にあった旧IS学園に入学していました。終戦後、部隊は全て解散となり、わたくしは持てる歌で世界の人達と解りあえる事を伝えて来ました。ですが、今回の隕石破壊作戦を契機に、委員会は部隊を再結成し、新たに特別遊撃隊を作りました。 そして、わたくしたちはこのオーブに創立された新国際IS学園で防衛隊として任務に就くと同時に、皆さんの教鞭を持つ事になりました。ヤマト隊長は主に中距離戦闘技術を。ザラ副隊長には近接戦闘技術。アスカ隊員には近中遠距離戦闘技術。ホーク隊員には遠距離戦闘技術の講師を担当する事になります。そして、わたくし自身も音楽の教師として赴任してまいりました。これ以上皆さんには、先の戦争の様な事態にはなって欲しくはありません。ですが、正直に申しますと、それを言っていられる状況でもございません。既にロゴスは壊滅的打撃を受け、形を潜めている一方で、かの”某国”が動きを活発化させる様子を見せ始めています。残念ながら、いつ出て来るかは全く予想もつきません。国を思う心は誰もが同じです。それを大事にしてください。そして、わたくし達は、このオーブを……そして、皆さんを護る為にいます‼ わたくしからは以上ですわ』
そう言うとラクスは、キラに進行を返した。
『クライン艦長、ありがとうございます。さて、ほとんどの事をクライン艦長が話してしまったので、僕からは何も言いません。ですが、もし皆さんの中に僕達の事を許せない人たちがいたら、いつでも挑戦は受けますよ。僕達は、皆さんを見捨てませんし、護って行きますので。僕からは以上です』
キラがそう締めると、アナウンスが流れだす。
《遊撃隊の皆さん、ありがとうございました。これにて赴任式を終了します。各生徒は自分達のクラスに戻ってください》
そうアナウンスが流れ、生徒達は教室へと引き上げて行ったのであった。
波乱の幕開けとなったキラ達の赴任式であったが、ラクスの所信表明にもあった通り、オーブから太平洋と日本列島を挟んで向かい側……かの”某国”は既に動き出していた。
「国家主席。国民達からのデモが多く発生しています⁉」
「ああ、判っている。 だが、今は身を潜めて耐え忍んでいた方が身の為だろう?」
「それもそうですが……ですが、国民達は納得致しません‼」
「そんな事は解っている! 私とて、納得してる訳がないのだ‼‼」
「ッ⁉」
国家主席と呼ばれた男は怒鳴り声を上げる。
この男が、かの”某国”の国家元首……国家主席である。
彼で、第二次世界大戦と南北戦争での分裂による建国以来、三人目の国家元首である。
以来、かの”某国”は彼の一族が、国家の頂点を担っている共産主義からなる独裁国家である。
これまで、幾度も日本や米国などの国家に挑発やミサイル発射を繰り返しては譲歩を引き出し、国家と支配体制の延命を図ってきた国際連合よりテロ支援国家に指定されている危険な国であった
「も、申し訳ありません。」
「構わん。私も大きな声を出して、申し訳ない。だが、今を大人しく耐えて耐え忍び、時期が来れば必ず、
「では、例の計画の準備を早めますか?」
「ああ、存分に進めてくれ。 くれぐれも、日帝や米帝は勿論だが、特にオーブに見つからない様に慎重
「承知いたしました」
男はそう言うと主席が居る部屋から出て行く。
国家主席はそれを見送ると、デスクの上に置いてある紙束を手に取った。
「これが完成し、実現さえすれば、日帝や米帝、オーブに大打撃を与え、我々が世界の主導権を握る事が可能となる。そうなれば、我々に反抗できるものはこの世から消え去る。その時こそ、我が国による地球統一が実現するのだ‼‼」
彼が持つ紙束の表紙には作戦名が、内容にはその概要が記されていた。
【作戦名“
・最終目標
わが国による地球統一
わが国政府による”未来永劫”地球全人類の資本・財産・権利、そして地球上に生きる人類全てを完全なるわが国政府の管理・統制化
日本国の破壊・消滅、並びに日本民族の抹殺・排除
・概要
超々弾道ミサイル百万発並びに高々度核ミサイル百万発、旧ソ連より払い下げの核弾頭を使用した軍事衛星数十機を使用し、オーブ、日本、アメリカ等の主要国首都や主要都市に投下、またはその大気圏上空で炸裂させて発生した電磁パルスによって混乱に陥れ、我が国で所有・製造したMSISにて全世界のMSISを破壊し、全世界の国家並びに国際連合を制圧する
・決行日
未定
核ミサイル製造が終了次第、直ちに決行予定
・我が国で所有、製造しているMSISについて
オーブ主導で製造しているMSISを独自で製造した機体は現時点にて二百六十四機。
超大型MSISの製造は、一年前の旧IS学園攻防戦と先の隕石騒動により手詰まり状態。
・現時点での国際情勢
オーブに対して友好的な国家は日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、イタリア、フランスの六か国。
日本以外の国家はオーブ連合の一員として組み込まれている一方、日本は国民の反対運動により検討段階に留まる。
・日本の動き
現状では、日本がオーブ連合に入る事は反対派の国民の運動により不可能と断定。
従って、日本が戦争に巻き込まれた際にはオーブを始めとする連合国は動く事は無く、孤立化。
先行して、わが国の太古からの悲願たる日本を世界地図から消し去る事と日本民族の根絶やしこそが、最優先且つオーブ側の出鼻を挫いて主導権を握る最適な案と考えられる。
本作戦並びにわが国にとっては、非常に都合の良い条件が整っていると確認。
以上を持って、作戦内容をまとめ上げる。
【国家安全理事会】
国家主席には、この紙束に書かれている作戦内容とこのまま日本が動けない状態のまま自国の準備が完了したその時こそ、絶好の機会であると考えていた。
例え世界征服が不可能でも、自国や国家主席の父や建国者の祖父の長年の悲願だった日本の滅亡で、国民たちの不満を逸らして納得させ、その跡地を自分達の思うままに出来ると共に、連合国の管理下に置かれた隣国・中華人民共和国と韓国を開放する事によって、一気に形勢が逆転する事ができる……国家主席は、そんな”取らぬ狸の皮算用”とばかりに日本を滅ぼした後の事をたくらみ、作戦を立案していった。
だが、既にオーブは諜報員をかの”某国”に投入しており、作戦内容は本国へともたらされていたのであった。
無論、同盟国は勿論の事、オーブにとっては父祖たちの祖国である日本も、例外ではなかった。
一方その頃、かの”某国”から日本海を挟んで向かい側……オーブからすれば父祖達の母国である日本では、かの”某国”関連やオーブとの連合関連で動乱が起きていた。
それは、民間によるデモ行進である。
デモの内容としては、“オーブと手を組むことにより日本は再び戦争の犠牲となる。 それを何としてでも阻止し、外交交渉でオーブとかの”某国”との和平と融和を図りたい”という思いで民間がデモ行進をしていた。
だが、オーブはまだしも、かの”某国”は日本との交渉に応じる訳がなく、彼等の行動は知識も考えもなしに叫び喚くだけの無意味なものであった。
無論、彼等の言うふざけたとしか言いようのない極端で無謀な内容を実現させれば、かの”某国”の思惑や理想通りになり、今度は日本が破滅の道へと突き進んで、「かの”亡国”」と化してしまうことは明白なので、政府はその意見を呑もうとはしない。
にも関わらず、デモ参加者はその事実を誰も知らない上に知ろうともしない……
「日本をまた戦争に巻き込もうとするな‼」
『するな‼』
「日本は戦争をしない‼」
『しない‼』
「自衛隊を解体しろ‼」
『解体‼ 解体‼ 解体‼』
「オーブやかの”某国”との問題は、話し合いで解決しろ‼」
『話し合いで解決しろ‼』
「オーブはわが国を、戦争に巻き込むな‼ 第二・第三の広島と長崎を作るな‼」
『ノーモア・オーブ‼ ノーモア・ヒロシマ‼ ノーモア・ナガサキ‼』
上記の内容がデモ参加者の言い分である……実に暢気且つ、平和ボケをして堕落に満ちきったデモであった。
しかし、一部にはオーブを名指ししてバッシングする者達も少なからず紛れ込んでおり、流石の警察も動き出してデモ行進の行く手を阻もうと試みる。
だが、デモに参加する人たちによる攻撃に対し、わが身の可愛さのあまりに何もできない状況であった。
だが、一方で反対の意見も飛び上がっていた。
「日本は自国で守るべきだ‼ だが、単独では限界がある。だから、ここはオーブと手を組むことで日本は安定とした国となる‼」
「我々、日本人は第二次世界大戦戦後以来、最大且つ最悪の脅威の風に曝されている‼ 護る為にも自衛隊や防衛力を上げろ‼」
「オーブ連合の一員として、日本も参加するべきだ‼ 一年前の恩を忘れるな‼」
と連合に加盟する事を進めようと反対する人々が、デモ行進の横で叫んでいた。
その結果、デモ参加者と反対する人々との間で衝突が起き、多数の逮捕者、けが人、死亡者等がでた。
所変わって、日本国首相官邸では、副総理を初めとした閣僚たちが総理を急遽呼び出して臨時の閣議を開かせ、”もう時間がない”と、総理に決断を迫っていた……
この総理、一年前にあった旧IS学園攻防戦後に国民に土下座の上で謝罪して倒れる以前から総理の職にあったのだが……何とか立ち直ったものの、損害の多さや国民たちの怒りを買う事を恐れて、決断が下せずにいた。
「総理、ここはどうかご決断下さい‼ わが国の国家危機のみならず、世界の、いや、地球や人類の滅亡の危機が迫っているんです‼」
「そうは言いますがねぇ……副総理、私だって考えているんですよ?」
「では、総理。何を考えているのか、ぜひともここにいる閣僚全員に解るようにお話し下さい。納得のいく内容でしたら、我々も何も言いません……総理に従います」
「うぅ……」
「ならば、大臣を代表して私から言わせていただきますよ、総理。今、かの”某国”では日本に攻め込み、核を使って第二・第三の広島や長崎を実現させて、わが国や国民全てをこの世から消し去ろうとしている準備をしているのです! 貴方はそれをみすみす見逃し、見てみぬ振りをして日本ばかりか世界を危険に陥らせようとしているのですよ‼ これをご覧下さい‼」
閣僚を代表して、防衛大臣が強気の姿勢で発言する。
言うべき事を言い切った防衛大臣は、総理にオーブから送られてきたかの”某国”に潜入している諜報員からの報告書を投げ渡した。
「これを見てもなお、貴方は”まだ考えている”と言って現実から逃げるおつもりですか⁉ それは貴方が本気で”手を血に染める覚悟”が無い、何よりの証です‼ かの”某国”は日本を攻撃するだけでなく、”この世から消し去ろうとしている”のです‼ その無責任の行動によって”死という代償”を支払う事になるのは、私たち日本国民全員です。 これでもまだ、決断できませんか……日本国内閣総理大臣‼‼」
防衛大臣の強気の発言に続き、副総理は追い討ちとして総理の逃げ姿勢を強く非難し、その優柔不断な態度に止めを刺した。
「…………解りました。私の負けです。明日、緊急記者会見を行い、全てを国民の皆さんに話しましょう。最早一刻の猶予もなければ、手段を選んでいる暇もありません。」
「総理……はい‼」
首相は”自らの無能”と”自分は総理として何も考えていなかったという不徳の致す所存”を認めたことで閣僚達に負けを認め、副総理を初めとした閣僚達は、”ようやく決心してくれたか”と思い、心を撫で下ろした。
「私も日本国の頂点に立つ人間です。日本の国民の安全を守る義務があります。では副総理。 そして防衛大臣。皆さん。只今より、自衛隊の事と、かの”某国”進行や国防に関する内容で、改めて閣議を始めます」
「判りました」
「はい。 手筈は整えましょう」
「「「「「「「「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」」」」」」」」」」」
副総理と防衛大臣は首相に言われた言葉通り、自衛隊の事と国内の治安や防衛について他の閣僚達も含めて、改めて閣議を再開した。
「日本国を今まで支え、尽くし、そして守る為に戦ってきた皆さん。第二次世界大戦以後、今までの戦争では日本は介入をしてきませんでした。ですが、最早そう言える時も過ぎてしまい、再び戦争に巻き込まれる時が来てしまいました。どうか我等の父祖達よ、そして日本を守る為に戦場で散っていった英雄達よ。我々日本国と、この地球をお守りください」
臨時閣議が終了した後、日本国総理大臣は第二次世界大戦で日本を守ろうとして散って行った英霊たちや、戦後の日本を立て直して平和を創ってきた父祖達に願うかのように呟き、彼等に対して頭を下げるのだった。
誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたらよろしくお願いします。