IS〈インフィニット・ストラトス〉~未来へと繋ぐ英雄達~ 作:武御雷参型
オーブ首長国に到着したロシア軍とギャラクシーはそのまま、オーブの所有する島の一つにある機密ドックに入港した。
ギャラクシーから降りて来たのは、先の旧IS学園攻防戦にて航空戦艦”三笠”の艦長を務めていた桜井智香である。
彼女は先の攻防戦で幼馴染であった西村ニエラを亡くした後、自暴自棄になった頃があった。しかし、それを変えたのが弟の俊輔であった。
「いつまでもニエラさんの事を引き摺っているつもり? そんなんじゃ、彼女が智香姉の事を思って、いつまでも成仏できねぇぞ? それに………俺はいつまでもウジウジしている智香姉の事は嫌いだ。軽蔑するよ。」
俊輔の叱咤の言葉を受けた智香は気持ちを切り替え、ニエラの事は思っていても引き摺らないようにした。
その結果、現在では最新鋭艦であるギャラクシーの艦長を任せられるほどに回復していたのである。
「さて、これであの二国も大人しくなってくれるかな?」
「さぁ? 国家ぐるみで反日感情を煽り、国民の反感の目を逸らす為に世界征服を企んでいる”とんでも国家”の事だから難しいんじゃない?」
「だよね………はぁ、面倒ね。いっその事、隕石でも落ちないかしら?」
副官である俊輔に愚痴を零す智香だが、俊輔はその愚痴の最後の言葉に驚き慌てふためく。
「いやいや、今キラ達が隕石を破壊しに行っているからね⁉ それと、流石にピンポイントで落とす事は無理だし、近くに俺達の母国・日本があるから‼」
「判っているわよ、そんな事。でも、中華人民共和国と韓国と、出てきていないけれど朝鮮民主主義人民共和国の三国はもしかしたら………」
「そうかも知れないな………でも今はあの三国が、かの”某国”かロゴスと繋がっている確証が得られないから、何とも言えないんだけどね」
「はぁ、其処なんだよね。どうにかしてかの”某国”の尻尾を掴みたいわね。」
「そこはデュランダル委員長に任せる他無いでしょ?」
「そうね………さぁ、ロシア軍の方々に挨拶でも行きますか。」
智香はそう言うと、俊輔を連れてロシア軍の元に向かって行くのであった。
一方その頃のIS学園では、一夏達でも鈴に帰還命令が下されていた。
なお、外洋で中華人民共和国と韓国軍の連合艦隊が、ロシア軍と国際IS委員会の戦艦”ギャラクシー”によって殲滅されている事を知らない。
「はぁ? 何言っているんです? 私はこの学園に残りますからね? ………さぁ? あなた方が言っている意味が解りませんけど? え、専用機を返せって? 良いわよ。もう要らないし………何だったら送りつけてあげましょうか?」
鈴はぶっきらぼうにそう言って通信機を切り、地面に叩き付けた。
「り、鈴………本当に良かったの? 専用機を返すっていう事は候補生から離れる事だよ?」
「ええ、そんな事は判っているわよ。でもね、中華人民共和国には何も思い出は無いしね。お母さんもいつの間にか日本に戻ってお父さんと再会しているらしいし、アタシにとってはどうでも良いのよ」
シャルロットの言葉に鈴は素っ気なく答える。
「それに、アタシは今回の事については情報が来ていたの。オーブの機密情報を持って帰れってね。でもね、そんな事してもアタシのメリットは無いし、キラ達を敵に回したくは無いしね。」
『………』
その言葉を聞いた一夏達は、中国に対して内心で合掌するのであった。
「鳳鈴音さんですね?」
すると、一夏達の前に一人の女性が現れる。
「貴様は誰だ?」
ラウラが懐に隠してあった銃を女性に構える。
「そう敵意を向けないでくれるかしら?」
「貴様からは敵意が響いてくるがな」
「………フフフ、やっぱりドイツ軍の少佐は優秀ね。降参よ。自己紹介がまだだったわね。私の名前はユウコ・アスカ。貴方達の知る、シン・アスカの母よ。息子と娘と息子嫁が世話になっているわね。」
『えっ? シンのお母さん⁉』
「あっ、そういえばマユさんと似ているかも……」
ユウコの言葉に、一夏達は親友の親が目の前に居る事に、驚きを隠せずにはいられなかった。
ただ一人、シャルロットは一年前に旧ライカの船内でマユに会った事がある為に、その違いを見分ける事ができた。
「さて、鳳鈴音さん? 本題に戻るけれど、貴女は専用機を国に返すつもりだけど、返したら貴女は丸腰同然よ? それでも良いの?」
「そ…それは……」
ユウコの言葉に鈴は言葉を詰まらせる。一夏達と一緒に戦えたには専用機であった”甲龍”があったからである。
それを手放すと言う事は、一夏達と一緒に戦う事が出来ない、戦闘不可能となるだけである。
「そこで提案だけれど、貴女にはシャルロットさんと同じように、一機のMSISのテストパイロットになって欲しいの。」
『えっ⁉』
二度目の驚きの声を上げる一夏達。
それもその筈。
専用機と言えば簡単に手に入るものではない。
特に、他国の代表国家候補生に与えるものではない。
しかし、ユウコはそれをしようとしていたのである。
「ま、待ってください! どうして私にテストパイロットになんて………それにそれって他国の物じゃないのですか⁉」
「それは違うわ。私達の作る機体は全て国際IS委員会の所属機なの。それに、向こうも向こうで、貴女に代表候補生を降ろして、新たな人を代表候補生にさせる動きがあるの。それに乗じて、貴女には正式にIS委員会の所属になって欲しいのよ」
「はぁ~……」
「私達は世界平和を願うわ。 元々ISは宇宙に行くために作られた物なんですもの。まぁ、今まさに二人共に宇宙に行っているけど……」
ユウコは自分の息子と娘を心配する声になる。
「さて、しんみりした話は嫌いだわ。どうするの? 機体を受け取るのかしら?」
「…………正直、受け取りたい気持ちが大きいです。でも、今の私に受け取っても良いのかと思っています」
「そう………なら、ちょっと私に付いて来てくれないかしら?」
ユウコはそう言うと鈴の返事も聞かないまま、歩き出す。
「何処に行くんですか?」
鈴の言葉にユウコは一夏達に振り返ると笑顔で答える。
「格納庫よ」
そう言うと、ユウコは歩き出し一夏達は何が何やらで判らないが、ついて行く事にするのであった。
一方その頃、宇宙にいるキラ達は隕石に接近していた。
「各分隊はそれぞれ所定の位置に就いてください。就き次第、報告を」
キラがそう言うと、各分隊からは『了解』と返事を受ける。
そして、キラ達が見守る中で作業が開始された。
「キラ、このまま何も起きないと思うか?」
「判らないね、こればっかりは………でも、今は僕達が出来る事をするだけだよ?」
「フッ、そうだったな。」
アスランはそう言うと通信を切る。
「(でも、僕も心配しているんだよね。このまま何も起きずに地球に帰れたら良いのにねってね………でも、何だろう? この嫌な感じは………”ブレイク・ザ・ワールド”の時よりも、酷く胸騒ぎがする)」
キラは内心で心配をしていた。
ロゴスがこの状況で見す見す自分達に手を出して来ないかと言う事を。
『ヤマト分隊長。 第一メテオブレイカー分隊、設置完了しました!』
『第二メテオブレイカー分隊、設置完了!』
『第三分隊も設置終わりました!』
各分隊の報告を聞いて、キラは安堵する。
「判った。では、僕達も一旦、帰還しよう。」
『了解!』
キラの言葉でそれぞれの国家が隕石から離れて行き、疾風雷の元へと戻って行くのであった。
キラの懸念は間違っていなかった……それを見ていた者達付近の宙域にいた。
ロゴスである。
ロゴスの部隊は、キラ達が隕石から離れたのを確認すると、ゆっくりと隕石の爆発に巻き込まれない所を飛行する。
その先頭に立ているのが漆黒の”デュエル”……”ブラック・デュエル”であり、搭乗者はカレン・バーリングである。
”ブラック・デュエル”は天津光が使用していた”ブル・デュエル”の改良機で、ストライクと同様にストライカーパックを搭載する事が出来る機体に改良されていた。
機体こそ、”ブル・デュエル”に近いが、所々の装甲はストライクノワールに似ている。
それについては、後々に話す事になる。
「さぁ、私たちの悲願はこれから叶うわ‼ 全機、散開‼ 隕石が破壊されたのを確認後、直ちに襲撃して敵の殲滅に当たります!」
カレンは通信で無人機に指示を出す。
彼女の機体には、無人機を操作する為の装置が搭載されている。
その為、彼女の命令には服従になっていた。
彼女と無人機は、宙域に浮遊する宇宙デブリの中に身を潜め、いつでも襲撃できる準備をするのであった。
所戻って、キラ達臨時宇宙軍は疾風雷に無事に着艦すると、起爆装置を作動させた。
隕石に設置されたメテオブレイカーは起動が確認されると、自動で隕石内部に爆薬を設置していく。
そして、それぞれが最大の所で止まると、一斉に爆発が起きて隕石が粉々に砕かれていった。
それを見てキラ達はおろか、他の国家の人間たちは喜んで爆発が収まるのを待った。
しかし、爆発の影響で発生した爆煙が晴れると、其処にはまだ一キロはあるかないかの隕石の姿が残っていた。
「どう言う事だ⁉ 隕石が残っているぞ⁉」
「メテオブレイカー作戦は失敗か⁉」
「まだ一キロ近い大きさじゃないか‼ あれは地球に墜ちたら、地球は無事じゃないぞ⁉」
各国家の人間が慌てふためき始める。
しかし、キラ達は静かに席を立つと格納庫へと向かって行く。
それを見たアメリカ軍のナターシャがキラ達に尋ねる。
「ヤマト隊長達は何処に行こうとしているのかしら?」
「決まっているじゃないですか。隕石の破壊に行くんです。みなさんは体力を使い切っています。僕達だけで予備のメテオブレイカーを持って隕石を破壊しに行きます。 皆さんは此処で待機してください」
キラはそう言うと、アスラン、シン、ルナマリア、スコール、オータム、マドカを連れて出撃しようとするのであった。
しかし、そこで待ったをかける者達がいた。
それはメテオブレイカー護衛に就いていた各国の軍人達であった。
「おいおい、俺達はそこまで体力を消耗してないぜ? 俺達が今度はメテオブレイカーを持って行くから、隊長達は護衛に徹してください」
この言葉で護衛に就いていた国家の軍人がキラ達に付いて行こうとする。
だが、キラはそれを拒否する。
「それは出来ません。それをすればこの艦はどうするのですか? それに僕達が持って行くには、精々四基が限度です。ですが、皆さんにはこの艦隊の護衛に就いてほしいのです。 これは隊長命令です!」
この言葉で各国家の軍人は黙る他無かった。
実際、戦力として残っているのは護衛に就いていた軍人と体力を消耗している軍人だけである。
体力を消耗している軍人だけでは臨時宇宙軍艦隊の護衛に就くには戦力として見れなかったのである。
キラ達だけが出撃しても、艦隊旗艦の疾風雷の艦長が独自判断で指揮をする事が出来るのである。
「申し訳ありませんが、今回の追加ミッションに関しては僕達だけで行います。どうか、解ってください。お願いします!」
キラはそう言うと頭を下げるのであった。
それを見た各国家の軍人は何も言えなくなる。
「判ったわ。 ここはヤマト隊長の命令に従いましょう?」
アメリカ軍隊長がそう言うと、いつしか全員がキラの命令に従う事になったのであった。
「皆さん……ありがとうございます。これからの指揮は疾風雷の艦長に任せてあるので、それに従って行動をしてください。では、何もない事を願っています」
そう言うと、キラは会議室を後にして格納庫へと向かうのであった。
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