ネス公国ホルム伯爵領シリン村。
その村は神殿を中心にして、小さな家々が軒を並べていた。
村民は畑を耕し、家畜を育てたり、狩りをして日々を食い繋いでいる。
のどかな小さな村であった。
日の暮れ、その村に一人の男が現れた。右前髪に若干の白髪が混じる黒髪、黒目。
黒基調の甲冑とマントを纏っている。
「・・・辺鄙な村だぜ」
名前はガッツ。呪われた烙印を刻まれた男だ。
自分はキャスカの身の安全と心の再生を求めて、妖精卿を目指している。そのために仲間と共に船に乗り、海を渡っていたはずだ。
けれど、気が付いたら見知らぬ場所に。こんなことが出来そうなのはシールケの婆さんかアイツらぐらいしか・・・
「・・・くそったれ」
だが、こんなことをして何の意味が?まぁいい、考えてもどうせ分からないだろう。
畑仕事を終え、家に帰ろうとしているであろう青年にガッツは声を掛けた。
「泊まる場所を探している」
ここがどこなのかすらよく分からない。情報が欲しい。
見知らぬ他人と夜を過ごすのは好みではないが、我慢するしかないだろう。
「うーん、40Gで」
「G?金貨のことか?」
「いいや、40枚の銅貨さ、知らないの?」
「・・・これでいいか?」
そう言って小袋から取り出したのは数少ない金貨だ。
「金貨?見たことない柄だな。うん、これでいいよ。ついてきなよ、家はすぐそこさ」
青年について行き、辿り着いたのはボロ小屋。この時代、さして珍しくない。
「兄ちゃんお帰りー」
「お帰りー」
「もうすぐ夕食よ、あらその方は?」
祖母、父母、妹、弟の6人兄弟らしい。
「ああ、今日泊めることになったんだ。見たこともない金貨もらったぞ」
先ほどガッツからもらった金貨をにんまりとした笑みを浮かべて青年は家族に見せる。
「見せてー」
「見せい、見たい!」
「はい、なくすなよ」
青年は苦笑しながら金貨を兄妹に渡した。
「あんた、名前なんて言うんだ?」
「・・・ガッツだ」
「ガッツさん、そこの椅子に座って。もうすぐ夕食だ」
剣を壁に立てかけ、青年が指差した場所にある椅子に座る。
「大きい!」
「おおきー」
「でかい剣だなぁ」
「ほぉ」
「おお」
「大きいわねぇ」
目を見張らざるを得ない。
それは 剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく分厚く重くそして大雑把過ぎた。
それは 正に鉄塊だった。
青年に夕食中、尋ねて分かったことがある。ここが見知らぬ国であること。
クシャーン、ミットランドなど聞いたこともないらしい。
文化も大分違っている気がする。宗教は大河神殿とか何とかアークフィアがどうだこうだの言っていたが、興味がなかったので聞き流した。
最近、化け物が現れたり奇病が流行り始めたりして大変だとも言っていた。
大河の水が赤く濁ったということも。
あの風のせいだろうか?
ガッツは床についた。
自分の目的はグリフィスの打倒とキャスカが平穏に日々を生きることだ。
そのためにも、二人がいるであろうミットランド、クシャーンなどを知っているか聞き回る以外にないだろう。
明日、青年とこの村にいる男連中で、狩りに行く。
狩りの成否次第だが、食料と幾ばくかお金も渡すからと言われ引き受けた。
先立つ物は必要だ。その時に他の人に色々聞くのもいいだろう。この家族は知らなかったが、誰か国名ぐらいなら知ってる人もいるかもしれない。
そう考えながら、眠りについた。
ホルム伯爵領
ネス公国の西のはずれにあり、森と湖沼の点在する辺境の土地である。