【視点・シエラ】
フェイトと別れ、廃墟の近くにある町に向かう。
町にはお城や大きなお屋敷が複数あって、大きい町に見えるが人口はそれほど多くなさそうだ。
フラフラと建物の影を移動していると、気を失っている女の子を一人担いだ5人の男達が目の前に現れた。
目撃者は殺すとでもいうかのようにナイフを首へ一閃してきた。
が、右手に宿る月の紋章が青い膜を張り、この身に一切の傷を与えない。
それを見て、怪しい男達驚愕して一瞬動きが止まる。
その一瞬の隙に妾の影から一振りの剣が飛び、私を攻撃した男を左右に両断する。
その剣の名は星辰剣。
数少ない意志を持った紋章の一つ、夜の紋章の化身。
月の紋章の上位に当たる紋章だからか、ある程度の距離ならこうして転移してくることができる。
妾はまだまだ紋章も魔法も戦闘で使いこなせるほど使っていないので、こういう手数が必要な時は文字どうり飛んできてくれるのだ。
『シエラ、大丈夫か?』
「ん、平気じゃ」
『ならばよし……皆殺しでよいか?』
「あの女の子はダメじゃ」
『心得た』
その瞬間、女の子を抱えた男が星辰剣に貫かれ倒れる。
残っている三人が慌てて逃げようとするが、星辰剣の剣先から紫の雷が直撃して焼け焦げた肉塊と化す。
やっぱり星辰剣は、使われるより自由に動いた方が強いと思う。
でも、星辰剣自身が剣としてのプライドがあるのか、誰かに使ってもらうことを望んでいるもよう。
それはさておき、女の子をお姫様抱っこで抱えその場から離れる。
起きたらスプラッタは普通の感性じゃ毒にしかならない、と星辰剣に言われた。
妾なら血は歓迎だよ?
人がいない空き地の木に寄りかかる様に女の子を座らせ、その正面に座ってジッと女の子を見つめる。
十歳ぐらいの金髪碧眼の可愛い女の子。
なんでか、この女の子がすごく気になる。
所詮短命の人間でしかないのに、不思議なほど気になる。
そのまま数分間ジッと見ていると、女の子に動きがあった。
「んぅ……………わた、し……」
自身の頭を押さえながらぼんやりとした目でこちらを見つめる女の子。
妾も女の子を見つめ返す。
十数秒見つめ合っていると、女の子の目がハッキリと開く。
「……え?誰?ここ、どこ?」
周囲を見渡し、怯える女の子。
ここがどこだか妾も知らないので、小首を傾げる。
「知らない」
「……えっと、じゃあ、貴女は誰なの?」
「妾はシエラ・ミケーネ……お主は?」
「わ、私はエヴァンジェリン・
「そう……家はわかるかの?」
「んっと……あ!あそこのお屋敷!私が住んでるのあそこだよ!」
「ならそこに―――」
行こうと言おうとした時、巨大な魔力を感じたシエラはとっさにエヴァを抱えて月の紋章の力を解き放つ。
「わぷっ!?な、なに!?」
月の紋章の加護がシエラとエヴァを覆った次の瞬間、世界が灼熱の業火に包まれた。
一瞬で鉄を溶かし、水を干上がらせ、人が焼け死ぬ地獄がそこにあった。
シエラは月の紋章と始祖の吸血鬼としての力で何の問題もないが、抱えられたエヴァは月の紋章の加護ですぐに死ぬことはないが所詮は脆弱な人間、その圧倒的な熱量で皮膚が焼け始める。
「あ、ぎっ!?アァァァァァ―――――!!!」
喉が焼けたのか、エヴァの悲鳴が止まる。
目が限界まで開かれ、徐々にその瞳から光が消えていく。
妾の服を掴む手が力なく垂れさがる。
死ぬ逝くエヴァを見つめ、妾はしっかりとエヴァを抱え直し……その首筋に牙を突き立てた。
【視点・レイ】
廃墟の奴等をフェイト任せ、近くの町へと虚空瞬動で向かった。
轟々と燃え盛る町を歯を食いしばりながら見つめる。
先ほど町へ入ろうとしたら服が燃え始めたので危険を感じ、それ以上進めずただ眺めることしかできなかった。
そして一番の問題は、シエラからもらったある紋章がその町の中にシエラがいると教えてくれてることだ。
「シエラ……」
俺は魔法よりも気の方が得意なので、こういう時に使える魔法はない。
だからこそ、シエラが無事でいてくれることを祈るしかできない。
もっとも、シエラの月の紋章は宿主をあらゆる害意から守るし、シエラ自身は始祖の吸血鬼で不老不死だから死ぬことはないだろうし、傷がその身に残ることすらないだろう。
だけどそんなことはどうでもよく、俺やフェイトにとってシエラが一度でも傷つくことが問題なのだ。
というか、シエラが一回でも死んだなんてライフメーカーに知れたらと思うと……俺もフェイトもこの世から消滅するかもしれん!
シエラと一緒にいたいから、それだけは避けないと!!
「シエラァァァァァ!!!いたら返事して―――」
「いるのじゃ」
「―――キャァァァァァ!?」
思わず女々しい悲鳴が出てしまった。
いつの間にか真横に、金髪の美少女(全裸ver)をお姫様抱っこしたシエラが立っていた。
どうやってって、そうか、門の紋章か。
……できたらでいいから、俺の心配を返してくれ。
「……ん、ぅ」
「お?起きたのか?てか、良く生きて……あれ?この美少女どこかで……」
「ぅ……私……………ッ!?」
美少女がボンヤリとした目で自身の体を見た後に、周囲を見渡して俺が視界に入った瞬間、顔が真っ赤になりフワッと俺の目の前に立つ。
スッと開かれたその紅い瞳が俺を睨みつけていた。
俺は思った。
あ、これ殴られるな、と。
「この変態!!!」
「違ぶごん!?」
見た目のわりに、その拳の威力は不思議な程高かったぜ……ぐふっ。
【視点・フェイト】
右手に宿した紋章に導かれ、シエラと別れた花畑に行ってみると簀巻きにされたレイ、泣いている見知らぬ少女を慰めているシエラがいた。
正直訳が分からない。
それに、あの少女から感じる魔力がシエラに近い気がするのは何故だろう?
「シエラ」
「フェイト」
名前を呼び合って見つめ合うだけなんだけど、なんとなく言いたいことが分かった。
あの業火の中、偶然傍に居て少女を助けた。
たぶんだけど、吸血鬼化したのだろう。
我が主が言っていたが、シエラは血を吸うのではなく血を送ることで吸血鬼化させられると。
だからシエラの魔力を少女から微かに感じるのだろう。
で、一命は取り留めたが服は燃え尽きたところにレイが現れ、加減も何もない吸血鬼の一撃を腹にでも直撃したのだろう。
ザマァ!
しばらくして、暮らしていた場所で生き残ったのは自分だけと知って泣いてしまった。
そして僕が来た、と。
そんなところかな?
これからどうするかも重要だけど、とりあえずここから離れないとね。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
「……エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」
「じゃあエヴァンジェリン、君に二つの道のどちらかを選んでもらおう。一つは僕等についてくる道、君は既にただの人ではなくなった。もう一つの道は、今ここで死を選ぶ道だ」
「ッ!?」
「フェイト!テメェ!!」
「レイ、黙るのじゃ」
「ぅ……クソ!」
レイが喚くが、シエラが止める。
こればっかりはしっかりと決めてもらわないと。
むしろ、死ねるだけ僕やレイ、エヴァンジェリンは幸せだろう。
我が主やシエラは、並大抵の方法じゃ封印すら不可能なのだから。
「君は人の道を外れた、後戻りの方法は無いと思った方がいい。何十、何百、何千と生き続ける覚悟を持てないというなら、今死んだ方が君の為だ。いつまでもここにいるわけにはいかない、選んでもらえるかい?一緒に生きる道か、死か」
「……シエラちゃんは、どうして私を助けたの?」
そういえば、それは気になるね。
我が主の教育で、シエラは短命種に興味を示さない。
親しくなればなるほど、別れが辛くなるとわかっているから。
「……妾は、エヴァに宿星を見たのじゃ」
「宿星?」
「いつかはわからぬが、全ての宿星が揃う必要が必ずあるはずじゃ」
「……そっか」
宿星、ね。
紋章が何かを教えてるのかな?
でも、吸血鬼化した理由はそれだけじゃなさそうだけど?
「……………私、生きたいです。だから、連れて行ってください。亡くなってしまった皆の為にも、どんなに辛くても、どんなに苦しくても、たとえ幸せになれなくても、生きなきゃいけない、そんな気がするんですだから、私は、貴方達と生きる道を選びます」
「そうかい。ならさっさと移動しようか。シエラ」
「ん」
シエラの隣に立ち、レイとエヴァンジェリンが近寄ってくる前に小声で話しかける。
「エヴァンジェリンの吸血鬼化にもう一つ理由があるんじゃないのかい?」
「……ライフメーカーが、名前を教え合った人は大切にしろって言ってたのじゃ。でも、あの時は何も考えてなかったけど」
「無意識に友達認定でもしたのかな?まあ、これから長い付き合いだろうし、同性で肉体年齢も近いんだ、仲良くするといいよ」
「……ん。お兄ちゃん大好き」
「……………あのクソ主か」
形容しがたい複数の感情で顔が熱い。
誰にも、特にレイに顔を見られない様に立ち、シエラの門の紋章が輝く。
次の瞬間、我が家の前にいた。
ゴミクズ主を襲撃する前に、エヴァンジェリンに言っておく。
「ようこそ、君を歓迎しようエヴァンジェリン」
「あ、ありがとう」
さて、とりあえず冥府の石柱五連打を叩き込もうかな。
補足説明
エヴァはまだ真祖じゃないので、あの再生能力は持ってません。
造物主との出会い方次第で原作通りの不死身の真祖になります。
まあ、あえて真祖にしないで肉体年齢を上げてから紋章と闇の魔法で原作以上にするという方法もありますけど。
ぶっちゃけ、私の想像力ではそのレベルを再現できるか不明です。
そんなこといいから続き書けっていう感想は無しでお願いします。
もっとも、そんなことを感想に書く読者様はいないですよね!
まさかそんな、ね?
てか、IS更新しないと……