目指せ自営業!社畜局員のミッド暮らし   作:この世全てのゴミ

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 間が長く空いてしまい、大変申し訳ありませんでした。
 年が明けて、「これで少しは書く暇もできるだろう」…そう思ってた時期が私にもありました。蓋を開けてみればやらなきゃいけないことが雨のように降ってくる。嫌になりますね!


第十三話 絶対転属ってこんなドタバタしない

 グルリと執務室を見渡す。半年ほどしかここで仕事していないが何だか随分長くここで働いていた感じもする。

 俺こと、ピース・ルナセルは本日付で高町なのはの書類補佐官から外された。理由は先日の件だ。狸上司も俺がなにかやったとは信じていないらしいが形式的にこういう措置は取らなければならないらしい。

 先日、俺は現在管理局のアイドルである神谷優に殺されかけた。怪我一つしなかったのは幸いだが、その他への被害が甚大だ。今回の件を神谷優がこちらを殺そうとしてきたせいだと言っても流石に誰も信じないだろう。なにより、証拠が無い。

 

「ん、忘れ物はなさそうだな」

 

 最後に忘れ物が無いかチェックをする。…よし、何もないな。俺が使ってたデスクの引き出しには何も入ってないし、余計な私物を持ち込んでいた訳でもない。

 大体、こういう時に忘れ物をすると次に来るやつがえらく困ることになる。だって、前任の奴の荷物とかが自分の使うべきところにあったら処理に困る。ソースは俺だ。一回なったことがあった。

 

「さてと…確か基地ごと転属だったな。まあ家からここよりは近くないからマシだが変な噂でも立ってたらどうしようか…やだなぁ、いきなり自分が使ってる仕事部屋を破壊したクレイジーな野郎って思われるのは」

 

 現状、狸上司が何だかんだで転属理由なんかは伏せてくれてるからこの基地ではそう問題になってないからいいけど、人の口には戸が立てられない、もしかしたら既に何処からか漏れて転属先の基地に伝わってるかも知れない。…伝わってないことを祈ろう。

 そろそろあっちの基地に行くためのバスが出る時間だ。急がなければ…

 

――と、その前にそう言えば忘れ物が一つあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的の人物は、仕事部屋の近くの休憩所に居た。

 ベンチに座って片手にコーヒーを持っているが飲む気配はなく全くの上の空。

 覇気がない。見える背中にはどことなく哀愁が漂っていた…いや、どっちかと言うなら途方に暮れてどうしようかと考えているかのような感じだった。

 そっと音をあまり立てないように近づき、声を掛ける。

 

「…高町なのは」

 

 呼びかければビクっと体を一瞬震わした後に俺の方へ振り向いて来た。

 

「ピースくん…」

 

 振り向いたその目には涙が浮かんでいるように見える。

 

「…最後に挨拶に来ました」

「…行っちゃうんだね」

 

 高町なのはもきっと狸上司からは話を聞いているだろう。俺は高町なのはの書類補佐官を外れる。その理由も聞いているだろう。

 

「半年の短い期間でしたが、お世話になりました」

「……」

 

 何も言わずに、高町なのはは俺の言葉を聞く。その顔は酷く辛そうだった。だけど俺には、これ以上何かを言う事は出来ない。精々が、彼女の文句を聞き入れることくらいだろう。

 高町なのはは人付き合いに関しては一定ラインまで引っ込み思案な人間だ。僅か半年ほどだが何となくそれは分かった。一定ラインを過ぎたり、余程の事をしでかしたりすると一気にアクセルを踏み込んでこちらに近づくどころか引く勢いで前進してくるが…まあ、それはいいだろう。

 そんな彼女が最後に人に文句を言うなんてハートの強いことは出来ない。だから、後押しはあるべきだ。

 

「何か、言いたいことがあるなら、好きにしてくれ」

 

 仕事や人付き合いではなく、完璧な私の部分での対応。あくまで上司だとかそう言うのは関係なくピース・ルナセルと高町なのはの間での出来事にする為に公の部分は消した。

 その言葉を聞いた高町なのはは、持っていたコーヒーを置き立ち上がって俺のすぐ近くまで来た。そして俺の肩に手を置いて…

 

 

「ピースくんが居なくなったら仕事が大変になっちゃうじゃん!!」

 

 

 そう、涙目になりながら言った。ホントに私情丸出しだな。それでいいのかエース・オブ・エース。

 うん、まあ居なくなるのは悪いとは思っているけど高町なのはだって仕事早くなったじゃん。俺より。

 

「確かに書類仕事は早くなったよ?!だけど私が教導で居ない間の書類をやってくれる人が居ないじゃん!これじゃあ私ヴィヴィオに泣かれることになっちゃう!」

「ちょっと待って、それだったら別に補佐官雇えばいいだろ」

「そう思ってピースくんの上司さんに聞いてみたら『ウチには確かに管理局の中では人は余ってる方だけどピース以外の奴は大体君のファンだからウルサイよ?』って言われたの」

「いや、我慢しようよエース・オブ・エース」

「私、ウルサイっていうかなんかグイグイ来る人苦手で…」

「コミュ障か」

「いくら何でもその言い方は酷くない!?」

 

 君のファンなんだろ、しっかり対応してやれよ。っていうかそれでよくあの子狸と知り合えたな。アイツも結構グイグイ来る人間だろうに。…ていうか、もしかしてその理由だけで新しい補佐官を付けないつもりだろうか?

 

「だからピースくんが良いの!ピースくんが居ないと早く帰れないの~」

「ええい、この軟弱者め!そんなんで社会渡っていけないぞ!」

「その内に寿退社でもするつもりだから問題ないの」

「相手は?」

「………フェイトちゃん?」

 

 うわー、神谷呼んであげたほうがいいかな?それとも神谷が小さいころから高町なのはの近くに異性を近寄らせなかったからこうなったのか…

 

「じょ、冗談だからそんなに本気で引かないで!」

「あ、ああそうだな。冗談だよな…それじゃあ幸せになってくださいね。ミッドだったらその辺特に問題視されてないから」

「絶対信じてないの!」

「大丈夫、信じてるから、決してガチレズなのはbotとか思ってないから」

「いい加減にしないと撃つよ?!」

 

 これ以上弄るのはやめよう。本当に撃たれてしまったら洒落にならない。いや、ホントに。

 

 こんな感じで、ピース・ルナセルと高町なのはは別れた。…感動もクソも無いな。

 まあ、別れたといっても休日暇だったらヴィヴィオと遊んでと頼まれたのでそう遠くない内に会う事になるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勤めていた基地と勤める予定の基地は結構遠い。その為、そこそこの荷物を持って行くにはちょっと苦労する。なので途中にある我が家に荷物を置いて最低限の荷物だけ持ちその基地に向かう。それが高町なのはと別れた後の俺の予定だった。が、その高町なのはとの話が案外長引いてしまったのでバスを一本見送る羽目になった。…それでも、次のバスに乗り家で荷物の選別を素早く済ませれば特に問題にはならない…そう、家で素早く荷物の選別を済ますことが出来たなら。

 

 一本遅れのバスを降り、家の近くの停留所に立つ。

 停留所から家までの距離はそう遠くはない。歩きで十数分もすれば着くくらいだ。

 ボロボロの周囲を見渡しながら我がボロ家を目指す。こんなまだ明るい時間帯のこの周囲を歩くのはあまりなく、見える景色は少々新鮮だった。

 そしてしばらくすれば見えるのは我が家。錆びて登る度に軋む音を立てる階段を登り、自分の部屋の前に立つ。

 鍵を取り出し、鍵口に刺しこみ回す…が、違和感を覚えた。

 

「…鍵がかかってない?」

 

 おかしい、俺は家を出るときはどんなに近い場所に行く時でも鍵は閉めていく。だから、基地なんて遠い所に行くときは絶対に鍵は掛けて出るはずなのだが…何で開いている?

 鍵の閉め忘れは無いだろう。確かに閉めた記憶がある。だとしたら…誰かに開けられたのだろうか。

 

「他人に自宅の鍵なんて渡したことはないしな。そもそも、家の場所すら滅多に教えないし…ってなると空き巣?」

 

 空き巣、今の所それが一番可能性が高いだろう。この辺りは荒廃した見た目の通り、あまり治安がいいとは言えない…っていうかミッドの治安自体があんまり良くない。陸の人たちが頑張ってるけどどうしても間に合わないっていうケースが多い…まあ、それは置いといてだ。不用心だったら確かに空き巣には入られるだろう。

 だけど態々鍵を開けてまで盗みに入るような価値のあるものは我が家にはない。精々が模型位だ。というか模型しかない。他は最低限の生活用品。

 

「…兎に角、用心はしてみるか」

 

 デバイスを取り出す。久しぶりに「セットアップ」と言い、形態を銃剣へと変える。

 銃剣を握り扉を音が立たないようにソッと開ける。昔、本で読んだ音があまりたたない歩き方をして家の中へと入る。…人はリビングに居るようだ。

 

 ソロリソロリと、そっとリビングの入口の近くに立つ。

 …何かを漁っていると言う訳ではなさそうだ。

 まあ、何をしているのか分からないが不法侵入には変わりない。お縄についてもらおう。

 

 リビングに一気に突入し、銃剣を相手に向けて声を掛ける―――そのつもりだった。

 

 突入した途端に誰かが一気にこちらの懐に潜り込み、足払いをかけられ耐え切れず俺は転倒する。そしてすぐさま後ろに回られ、うつ伏せの状態で乗りかかられた。銃剣を持った手を抑えられた状態でだ。

 あっという間の出来事。一連の動作に淀みがなく間違いなくプロの人間だ。

 ――終わった…そう思った。精々金で命乞いでもした方がいいかとか素直に誰かに連絡するべきだったかと頭の中で考えたその時、聞き覚えのある声が上から降り注ぐ。

 

 

 

「…あれ?ピースくん?」

 

 

 

 …何だか、頭が痛くなってきた。いや、何だかじゃないな。上から降ってきた声を聞いて現在俺にのしかかってる人物が分かったから頭が痛くなったのだ。

 抑えられている手にある銃剣を通常のデバイス形態に戻す。

 そして、上に居る人物に声をかけた。

 

「……どうしてここに居る?子狸」

「ん~…サプライズしようと思ってかなー」

「とりあえず、俺の上からどかないか?重…」

「セイッ!」

「ガフッ!?…おま、いくら何でも背中に肘を落とすのは……」

「乙女に失礼なこと言いかけた罰や」

「…ごめんなさい」

 

 あ、さいですか。いや、確かに言おうとしたことは失礼だったが流石にどいて欲しい思う。ロクに運動していない人間の体を舐めないで欲しい。予想を上回る脆弱さだ。例えのしかかっているのが女性であろうと苦痛に感じる。…うん、普通に情けないな。

 それから八神はやては「いつもピースくんを見上げてたからこうやって見下ろすのは新鮮やな♪」なんて言った後に少ししてから俺の体から退いてくれた。

 

 

 

 

 ああ、絶対転属ってこんなドタバタしないよ…





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