メルヘヴン バカな救世主   作:悠之

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第三話 巨大なる守護神。雷神【トール】

ギンタとドロシーと別れた後、ユウは小さな町へ行きメルヘヴンの情報を少しずつ入手して、メルヘヴンの今の状況を理解した。『チェスの駒』の事、『クロスガード』の事、そして『チェスの駒』と戦う事を決めた。

 

その後、ÄRMを買おうにもお金が無いことに今更気付き、町を出ると丁度盗賊が二人の女性を追い掛けているところに出くわした。

 

 

 

 

女性1「はぁはぁ!」

 

女性2「お、お姉ちゃん。もう……走れないよ」

 

女性1「もう少し、もう少しで町に着くから頑張りなさい!」

 

茶髪で肩くらいまでのショートヘアーの女性が、茶髪で腰くらいまでのロングヘアーの女性の手を引いて町に向かって走っている。

 

盗賊1「待ちやがれ!」

 

盗賊2「てめぇの持ってるもん全部置いてけ!」

 

盗賊3「なんならてめぇ等も可愛がってやるぜ!」

 

後ろからは手に斧やナイフを持った男三人が追い掛けてきていた。

 

今止まれば間違いなく悲惨な目に逢うだろう。それを想像し、姉の方は顔を恐怖に染めながら、妹の手を引いて必死に逃げた。

 

盗賊1「いい加減捕まれ!ネイチャーÄRM【ウィンドソード】」

 

妹「きゃっ!」

 

ドサッ

 

姉「っ!?エリー!」

 

盗賊の一人が手に剣の柄だけを出すと、それを前の姉妹に向かって振るう。すると、妹の方は何かに引っ張られたように転倒する。姉は妹を心配して慌てて駆け寄ると、妹のスカートの端が綺麗に切れていた。

 

姉「大丈夫エリー!」

 

エリー「うん。ミラお姉ちゃん」

 

妹の無事を確認すると、姉のミラはホッと胸を撫で下ろした。……のも束の間、二人の頭上に影が掛かる。

 

盗賊1「へっへっへっ!」

 

盗賊2「くくくっ!」

 

盗賊3「うへへっ!」

 

盗賊等は二人を見下ろしながら、舌舐めずりする。その仕草に姉妹は更に震え上がる。ミラはエリーを少しでも守ろうと自分を盾にするようにエリー自分の後ろに隠す。

 

盗賊1「さぁて、お楽しみの時間だ、ぞ!」

 

先程の剣の柄を姉妹に降り下ろそうとしたとき

 

ガッ

 

盗賊1「ぶほっ!」

 

唐突に剣の柄を持っていた盗賊が視界から消えた。

 

盗賊2「なっ!?」

 

盗賊3「モーブ!?」

 

盗賊の一人は右頬を真っ赤に腫らしながら十メートル程離れた場所に、仰向けに気絶していた。

 

盗賊2「誰だ!」

 

盗賊3「出てきやがれ!」

 

盗賊はいきなりの襲撃に対して背中合わせになりながら周りを伺う。

 

ドカッ

 

盗賊2「ぶへらっ!」

 

盗賊3「ザッコ!」

 

周りを伺っていたにも関わらず、更に一人の盗賊が体を9の字に曲げながら吹き飛んだ。

 

そこでやっと盗賊二人を倒した人物が現れた。

 

ヒュッ

 

スタッ

 

上空から人が一人降ってきた。

 

盗賊3「て、てめぇが俺の仲間のモーブとザッコを!誰だてめぇ!」

 

ユウ「俺はユウ、人間だ」

 

盗賊3「俺の名はスカー あべしっ!」

 

ユウ「誰も聞いてない」

 

最後の一人の盗賊も、ユウに下から打ち上げられ気絶した。

 

三人とも気絶程度で済んでいる辺り、手加減はしているらしい。

 

ユウ「……さて」

 

ゴソゴソ

 

ユウは順番に三人の盗賊の持ち物をあさり始めた。

 

ユウ「ん、ÄRMと金ゲット」

 

やっている事が盗賊とあまり変わらないような……。

 

ユウ「そんな事は無い」

 

盗賊のÄRMと金をユウはポケットにしまった。

 

ミラ「あ、あの~」

 

ユウ「なんだ?」

 

振り返ると、襲われていた姉妹が仲良く手を繋ぎながらユウを見ていた。

 

エリー「助けてくれてありがとう!」

 

ユウ「偶々見掛けたんでな、無視できんだろ」

 

ミラ「それでも、助けて下さった事に変わりはありません。本当にありがとうございます」

 

ユウは綺麗に頭を下げる姉妹を見て、「どうしたものか」と少し照れていた。

 

エリー「あ!もし良かったら家でごはん食べませんか!」

 

ユウ「いや別に グウゥゥゥゥ………迷惑で無ければ」

 

メルヘヴンに来てから何も口にしていないユウのお腹は正直だった。

 

と言う訳で、姉妹の家に招待された。

 

 

 

ガツガツ

 

バクバク

 

ミラ「………」

 

エリー「………」

 

余程お腹が空いていたのだろう。ユウは姉妹が出してくれた料理をあっという間に平らげていく。姉妹もその勢いに開いた口が塞がらない。

 

ユウ「ふ~、旨かった」

 

料理が出来て二分としない内に、テーブルの上に並べられていた料理は、ユウの胃袋へと消えていった。

 

ミラ「よ、良かったです」

 

エリー「凄い食べっぷりだったね」

 

ユウ「今日なんも食ってなかったからな。ところで、ここら辺でÄRMが手に入る場所って知らないか?」

 

ユウは『チェスの駒』と戦う為にÄRMを探している事を姉妹に話した。

 

エリー「ユウさん『チェスの駒』と戦うの!?」

 

ミラ「そう、『チェスの駒』と。でしたら、ここより北に行ったところに大きな洞窟が有ります。噂ではそこに強大な力を持ったÄRMが隠されているとか。『チェスの駒』も何度かその洞窟に行ったらしいのですが、誰も帰って来なかったそうです」

 

ユウ「へ~。『チェスの駒』でも手に入れる事の出来ないÄRMか。よし、ちょっと行ってみようかな」

 

姉妹からの情報を得て、ユウは出発の準備を整えた。

 

ミラ「………お気をつけて」

 

エリー「絶対無事に帰って来てね」

 

ユウ「おう!」

 

姉妹の見送りを受けながら、ユウは北の洞窟へと向かった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

姉妹に言われた通り、ずっと北に向かって歩き続けて居ると、大きな洞窟が見えてきた。

 

ユウ「ここがÄRMが有る洞窟か」

 

何の躊躇いもなく洞窟へと進んでいくユウ。

 

………。

 

ユウ「ん?」

 

何か物音が聞こえたような気がしてユウが辺りを見回すと

 

仮面の男1「うわぁぁぁぁっ!」

 

仮面の男2「ぎゃぁぁぁぁっ!」

 

ゴロゴロゴロ

 

真っ白で中心に黒の十字架が刻まれた仮面を着けた男と、真っ黒で中心に白の十字架が刻まれた仮面を着けた男が、ユウの方に全力で走ってきた。……後ろに転がる巨大な岩を連れて。

 

ユウ「確か『チェスの駒』の特徴は仮面だったな。じゃああいつ等も敵か。うしっ!」

 

ユウは向かってくる『チェスの駒』を待ち構え

 

仮面の男1・2「「ぐえっ!」」

 

両腕で仮面達にラリアットを食らわせた。

 

ゴロゴロゴロ

 

そして、転がってきた岩を

 

ユウ「はっ!」

 

ガゴォォォォォォンッ

 

拳一発で粉砕した。

 

パラパラ

 

ユウ「っし!じゃあ、貰うかな」

 

岩を壊し終わると、ラリアットで気絶した『チェスの駒』に近付き、盗賊にしたのと同じようにÄRMと金を全て貰った。

 

ユウ「流石は悪党なだけあるな。盗賊よりもÄRM多いな」

 

貰ったÄRMを先程の姉妹に貰った布地の袋に入れる。

 

その後、さまざまな罠が仕掛けられていたが、難なく乗り越え、遂に洞窟の奥までやって来た。

 

そこには、バッボの時の遺跡よりも更に広い空間が広がっていた。天井もその広さに見合う高さだ。

 

ユウ「………や~な予感すんな」

 

行きたくないと思いながら、ÄRMも欲しいと言う欲に負け一歩踏み出した。

 

ドスンッ

 

一歩踏み出すと、入ってきた入り口が上から今で閉じられ閉じ込められてしまった。

 

ユウ「成る程な。弱いやつは途中の罠で殺られて、そこそこ強くても、ここに入ったら出られないって訳だ。で、出てくるんだろ」

 

ユウの問い掛けに答えるように洞窟そのものが揺れ始めた。

 

ドォォォォンッ

 

揺れがしばらく続くと、洞窟の一番奥の壁が壊れ、中から洞窟の天井にも届きそうな巨人が現れた。腕は両腕ともでかく、体は白く所々に青い線が入っている。その姿は巨神と呼んだ方が正しいよな威圧感を発していた。

 

巨人『貴様は私を求めて来たのか』

 

ユウ「おう!流石に拳だけじゃこの先勝てない奴が出てきそうだしな」

 

巨人『良かろう。では、我を認めさせてみろ』

 

ズドォォォンッ

 

巨人はその豪腕をユウに叩き付けた。ユウは前のように受け止めるつもりだったが

 

ガガガガ

 

両手でも受け止めきれず、地面を抉りながらどんどん後ろに押されていく。

 

ユウ「くっ!なんつーパワーだ!」

 

巨人『人間よ。貴様の力は並みの者よりも遥かに強い。だが、我はÄRMの中でも一番のパワーを持っている。貴様では受け止めきれん』

 

巨人は更にパワーを上げ、壁際まで押していく。

 

ユウ「ちっ!だったら!」

 

ユウは巨人の腕を跳んで避け、そのまま巨人の腕を駆け上った。巨人はユウを振り落とそうと腕を振り回すが、なんとか耐え肩までたどり着いた。

 

ユウ「ふんっ!」

 

ガンッ

 

肩までたどり着くと、一気に顔まで近付き右足で巨人の後頭部を力一杯蹴った。

 

ユウ「硬さも半端ねぇのかよ!」

 

後頭部には罅どころか、傷一つ付いていない。

 

巨人『なかなか良い蹴りだ。だが、我には遠く及ばん!』

 

バリバリバリ

 

突如、巨人の体が帯電し始めそれによりユウは巨人の体から引き剥がされた。

 

そのせいで空中に投げ出され、攻撃を避ける事が出来なくなる。

 

ユウ「……やっべ」

 

巨人『我の最強の一撃を堪えてみよ。さすれば貴様を認めてやる。はぁぁぁぁっ!!』

 

帯電していた電気が全て巨人の右腕に集まり、右腕が電気で白く発光する。そして、一点に集中した力が解放され、ユウに向かって右腕によるストレートが放たれた。

 

ズガガガガァァァァン

 

放たれた右腕は的確にユウを捉え、壁を抉り壁に大穴を開けた。

 

巨人『また一人の命が散ったか』

 

巨人が腕を引き抜こうと力を入れると

 

ガシッ

 

巨人『っ!?』

 

ユウ「おいこら、勝手に殺すな」

 

巨人の腕と共にユウは壁の穴から出てきた。流石に至るところを怪我して、服もボロボロだが確かに生きている。

 

巨人『き、貴様何故!?』

 

ユウ「何故って、お前が堪えたら認めるって言うから堪えたんだろ。あ~いて~」

 

トール『ふ、ふはははは!良いだろう!お前となら楽しそうだ!我が名は雷神【トール】お前の名はなんだ』

 

ユウ「俺はユウだ。好きに呼んでくれ。これから宜しく頼む」

 

トール『分かった。ならば主(ぬし)と呼ぼう』

 

巨人は一瞬光ると、そこには巨人の四角い顔が彫られたネックレスが有った。

 

ユウ「これで主力もゲット出来たな。後は『チェスの駒』と戦ってみてだな」

 

ネックレスを首に着け帰ろうとしたとき

 

トール『主よ』

 

ユウ「うおわ!」

 

再びトールが巨大な姿で現れた。

 

ユウ「びっくりするからいきなり出んな」

 

トール『すまん主よ。まだ伝えてない事が有ってな。我はバージョンが有って、ハンマーになることも出来るのだ』

 

ユウ「マジか!ちょうど俺に合う武器が欲しかったんだよな。良し、ハンマーになってくれ」

 

トール『承知した』

 

トールはÄRMに一度戻ると、今度は二メートル近く有る巨大な真っ白なハンマーになった。その重量はバッボをも軽く越える重さだった。だが、ユウにはちょうど良い見たいで軽々と振り回している。

 

ユウ「よっしゃ!これで準備は整った。後は『チェスの駒』をぶっ倒す」

 

ハンマーをしまうとユウは姉妹の家に無事を知らせに行った。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

エリー「あ、ユウさん!」

 

家の近くまで行くと、エリーが家の外でユウを待っていた。

 

ガチャッ

 

ミラ「……ユウさん」

 

エリーの声を聞き、ミラも家の中から慌てて出てきた。

 

ユウ「な、大丈夫だったろ」

 

ミラ「……はい」

 

エリー「ユウさん凄いね!」

 

潤んだ瞳で見詰めるミラとキラキラした瞳で見詰めるエリーの二人と家に入った。

 

洞窟で有ったことを聞きたいと言ったエリーに、洞窟の中での事を話し、ボロボロだった服をミラに直して貰った。

 

 

 

翌日

 

ユウは家の前に居た。

 

姉妹もユウを見送る為に出てきている。

 

ミラ「気を付けて下さい。私たちも遠くから応援しています」

 

エリー「あの、これ」

 

エリーはユウに中心にビー玉程の穴が空いた盾に十字架を刻んだような腕輪を渡した。

 

ユウ「これは?」

 

ミラ「これは父が使っていた物です。父は“第一次対戦”の時にこのÄRMを使っていました。その時、父は『チェスの駒』の一人の体のあちこちに髑髏を着けた男に殺されたそうです。だから、父の無念を晴らして下さい!」

 

エリー「お父さんは傷付いた人を助ける優しい人だったの。でも、そいつは傷付いている人を盾にお父さんを……」

 

ユウ「……分かった。俺がミラとエリーのお父さんの分まで戦ってくる。そんでその髑髏野郎をぶっ飛ばしてやる」

 

託されたÄRMを握り、ミラとエリーに誓った。

 

ユウ「じゃあ、短い間だったけどありがとな」

 

ミラ「はい。お気をつけて」

 

エリー「絶対勝ってね!」

 

ユウ「おう!」

 

その左手首にÄRMを光らせユウは二人の家を後にした。

 

 




ネイチャーÄRM【ウィンドソード】

剣が風を纏ったような形をしたイヤリング。発動すると剣の柄だけが現れ、魔力を流すと風の見えない刃が形成される。発動者の魔力操作次第で長さや強度が変わる。

ガーディアンÄRM【トール】

四角いトールの顔が彫られたネックレス。ガーディアンÄRMの中でも一番のパワー、強度をしている。それに加えて体を帯電したり、帯電した電気を一点に集中することも可能な超レアなÄRM。他にも、【トールハンマー】と言う純白なハンマーのウェポンÄRMにする事も可能。

ホーリーÄRM【生命の加護】

中心にビー玉程の穴が空いた、盾に十字架が刻まれた腕輪。ユウがミラとエリーに貰ったÄRM。前の使用者はミラとエリーの父で、父の死語『クロスガード』の一人が届けたらしい。能力はミラ達も父に聞かされていなかった為不明。

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