メルヘヴン バカな救世主   作:悠之

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第四話 凍てつく氷の城【アイスキーチェーン】前編

ミラとエリーの家を後にして数日後。ユウは氷の城の目の前に居る。

 

何故ユウが氷の城に来たかと言うと、ただ単に迷子だ。

 

姉妹と別れた後、道なりに歩いていた筈……だったのだが。どういう訳かいつの間にか森に居たり、山の頂上に居たりとびっくりするほどの方向音痴ぶりを見せていた。そして、いつの間にやら氷の城の前に来ていた。

 

ユウ「……まぁ中に誰か居るだろ」

 

そのままユウは氷の城の中へと入っていった。

 

ユウ「ん?これは……魔力か」

 

最近になって魔力を感じれるようになったユウは、氷の城の奥から魔力を感じ取った。それも二つや三つじゃなく複数。

 

ユウ「強いのが一つにあんま強く無いのがうじゃうじゃ、か。行ってみるかな」

 

強い魔力に興味を示したユウは小走りをしながら先を急いだ。

 

魔力の正体は直ぐに分かった。強い魔力はメルヘヴンで最初に出会ったドロシー、他の強く無い魔力の方は仮面を被った不気味な集団だった。

 

ユウ「(前にいろいろと世話になったしな)貸さなくても良さそうだけど、手を貸すか【トールハンマー】」

 

【トールハンマー】を手に出すと

 

ユウ「ドロシー伏せろ!」

 

ドロシー「うぇっ!?ユウたん!?」

 

ドロシーは驚きながらも、ユウの言った通り氷の柱の影に隠れて伏せた。

 

ユウ「おりゃっ!」

 

【トールハンマー】を思いっきり振り抜く。その【トールハンマー】を振り抜いた威力が突風となり仮面の集団を襲った。

 

仮面「「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」」

 

仮面の集団は突風でそれぞれ壁や天井、床などに叩き付けられ全員気絶した。

 

ユウ「掃除完了っと」

 

【トールハンマー】をネックレスに戻し体を伸ばしていると。

 

ドロシー「ゆぅぅぅぅたぁぁぁぁんっ!!」

 

ギュゥゥゥゥッ

 

ユウ「むむむ、むむむっむ」(だから、恥ずいって)

 

ドロシーの豊満な胸に埋もれながら何とか脱け出そうともがく。ユウの力なら少し力を入れるだけで簡単に脱け出せるが、ドロシーに怪我をさせないようにと力を全く入れていない。

 

ドロシー「あれ?そう言えばなんでユウたんもここに居るの?」

 

ユウ「ぷはっ。やっと解放された。え~と俺がここに居るのは………チェ、『チェスの駒』がここに居るって聞いてな」

 

まさか迷子でここに来たとは流石に言えず目を泳がせながらそれらしい事を言う。

 

ドロシー「………へ~」

 

そんなバレバレな嘘をついたユウを、ドロシーは疑いの目で見る。

 

ユウ「な、なんだよ。別に迷った訳じゃねぇぞ」

 

ドロシー「……迷ったんだ。はぁ、格好いいんだか可愛いんだか。ほんと、ユウたんは飽きさせないわね♥」

 

ゾワッ

 

ユウ「っ!?」

 

ドロシー「っ!(上の方の魔力が強くなった。ギンタ達が戦闘を始めたようね。ユウたんもそれに気付いてるみたいだし、この数日間でかなり成長した見たいね)」

 

ユウとドロシーは上の階の魔力が急に強くなったのを敏感に感じ取った。因みに、ドロシーは最初から気付いていたが、ユウは魔力が強くなってから気付いた。

 

ユウ「この上にもっと強い奴が居るのか。いっちょ行ってみるか」

 

そこらに転がっている『チェスの駒』を見てから、上の階の魔力の方が強いと分かると、上の階の方に興味を持ち会いに行こうとギンタ達が通った道を辿り始めた。

 

ユウ「ん?ドロシーは行かねぇのか?」

 

ドロシー「うん。私はそいつに興味無いからね」

 

ユウ「そっか。じゃな。久々に会えて嬉しかったぞ!」

 

タッタッタ

 

ドロシーに別れを言うと、ユウはさっさと行ってしまった。

 

ドロシー「……もう。さらっと嬉しいこと言っちゃうんだから///」

 

薄く頬を赤くしながら、氷の城の出口へと歩いていった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

同時刻。黒髪で両腕に真っ赤なタトゥーが有る美少年と、小さな妖精が氷の城へと入ってきていた。

 

妖精「うぅぅ~アル~なんでこんなに寒いところに居るの~」

 

アルヴィス「ごめんよベル。少しギンタの様子が気になってね」

 

ベル「うぅぅ~分かった~」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

しばらく走っていると、ギンタ達の居ると思われる部屋へとついたユウは、扉の隙間から中の様子を伺った。

 

バシッバシッ

 

ギンタ「ぐわっ!」

 

ズサー

 

中では袖の長い服を着た黒髪のツンツン頭の男とギンタが戦っていた。ツンツン頭の男の方の後ろにはデカイ氷に閉じ込められた女の子とその側に箱を背負った女の子が佇んでいた。ギンタの方にも見たことの無い新顔が二人………いや、一人と一匹が居た。スコップを持った猿顔の少年と二足歩行で歩く眼鏡を掛けた犬だ。

 

ユウ(……仲間…だよな)

 

それよりも、今はギンタの方が優先だ。ギンタの方はツンツン頭の男に一方的に攻撃されている。このままでは流石にまずい。

 

ユウ「ほっとけねぇだろ!」

 

ズガンッ

 

扉を叩き壊し、ツンツン頭の男の方へと投げる。

 

ツンツン頭の男「おっと。いきなり危ないじゃん。俺っちに当たるところだったよ」

 

ユウ「当てるつもりだったんだよ」

 

ツンツン頭の男の注意がギンタから逸れたところで、歩いてギンタの正面に立つ。

 

ユウ「大丈夫かギンタ」

 

ギンタ「うっ。……ユウか」

 

ギンタは既にボロボロで、恐らくこのままやっても敵わないだろう。

 

猿顔の少年「ぎ、ギンタ!誰ッスかその人!」

 

犬「ギンタ殿のお知り合いですか!」

 

ユウ「………犬が喋った」

 

二足歩行の犬が喋ったことに、ユウは今日一番の驚きを見せる。

 

ロコ「新手ですか。今度はなかなか強そうです。イアン気を付けて下さい」

 

イアン「分かってるってロコ。俺っちは負けねぇ、よっ!」

 

バシッ

 

イアンが袖で見えない腕を振るうと、ヘビのように長い銀の鞭が、ユウの体を直撃した。

 

ユウ「……成る程な。ギンタはこれにやられたのか。確かに早いな」

 

イアン「あれ~、何で効いてないの?」

 

バシッバシッ

 

バシッバシッ

 

攻撃が効いてないと分かり、次は両手を振り攻撃の連打を繰り出す。

 

ガシッ

 

イアン「っ!?」

 

ユウ「だから効かないっての。性分でな、一度技を受けた方が相手の事が良く分かるんだ」

 

イアンの鞭の攻撃の最後の一撃を、ユウは掴んで止めた。

 

 

 

それを、影からアルヴィスとベルが見ていた。

 

アルヴィス「あの男、階級は【ルーク】でピアス付きか」

 

ベル「【ルーク】?ピアス付き?」

 

聞き慣れない言葉にベルは首を傾げる。

 

アルヴィス「『チェスの駒』はその名の通り一番弱く、同じ面を付けているのが【ポーン】。その上に格上が居て、それぞれ面も違うんだ。そして、あの男は【ポーン】の一つ上の【ルーク】なんだ」

 

ベル「へ~。でも、あいつ勝ってるよ」

 

アルヴィス「ああ。(問題はそこだ。ギンタは知っているようだが、俺はあんな奴見たことも無い。だが、今見た実力なら、【ビショップ】に届くほどだ)……一体何者なんだ」

 

 

 

 

 

ロコ「(まさか、イアンはルークでも中堅程の実力を持ってます。それを圧倒するとは……)イアン退いてください。侮りすぎました。私もやります」

 

ロコが少し魔力を放出する。

 

ユウ「あんたの方がこいつより強いんだ」

 

目の前のイアンよりもロコの方に興味が沸き、イアンの鞭を放す。

 

イアン「ちょっとちょっと。少し俺っちの攻撃を止めたくらいで調子に乗りすぎでしょ!」

 

イアンは素早くユウに近付き殴ろうとする。

 

ユウ「遅え」

 

ガンッ

 

イアン「ぐあっ!」

 

ズザザザ

 

逆にイアンは殴り飛ばされてしまい床を滑る。

 

猿顔の少年「ギンタ。何者ッスかあの人。めちゃくちゃ強いッスよ!」

 

犬「『チェスの駒』を圧倒するとは、あの方は一体」

 

ギンタ「ユウはドロシーと一緒にこの世界で最初に出会った一人なんだ。確かに、前よりも強くなってる。ジャック、エド。俺、もっと強くなんなきゃな」

 

バッボ「そうじゃな。わしも手を貸そう」

 

ギンタはボロボロの体をジャックとエドに支えて貰いながら、ユウの戦いを見ていた。

 

 

 

一方、ユウの方はイアンに止めの一撃を食らわせようと、イアンの二メートル程頭上から落下しながら拳を振り下ろしていた。

 

ロコ「まったく、ロコの言うことを聞かないからです」

 

ズガァァァン

 

ジャック「どわっ!なんつー怪力してるんスか!?」

 

エド「もうむちゃくちゃですぞ」バタッ

 

思ったよりも力が入っていたようで、ユウの拳は床に大穴を空け、回りに衝撃波と砂煙を撒き散らした。エドはその衝撃波で目を回してしまった。

 

イアンはロコが回収しており、ユウの攻撃をギリギリ回避していた。

 

 

 

ベル「げほっげほっ!何なのよ~!」

 

アルヴィス「まったく出鱈目だ。見た感じÄRMも使っていない。それでこれほどとは……ますます不思議だ」

 

 

 

イアン「ロコ、助かった」

 

ロコ「本当です。ロコが助けていなければ、貴方は今頃肉片になっています」

 

ロコはユウが空けた穴を見ながら言った。それを聞いたイアンは、ロコと同じように穴を見て「肉片じゃなくても、ミンチにされてたかも」と冷や汗を流した。

 

ガラガラ

 

ユウ「あちゃ。やり過ぎた」

 

穴の中央から普段通りの物言いで出てきたユウは、息一つ乱していない。

 

そんな中

 

ギンタ「ゆ、ユウ!」

 

ユウ「なんだ?」

 

ジャック「こ、これ見て下さいッス!」

 

二人に呼ばれてそちらを向くと、二人の方で何かが光っていた。その何かとは

 

ユウ「………犬って光るのか?」

 

先程目を回して居たエドだった。ÄRMが光っているや、眼鏡に光が反射して光っていると言うのなら何となく分かる。だが、この光はエド自体が光って出ている光だ。

 

ボンッ

 

光っていたと思ったら、エドが爆発した。

 

ギンタ「おわーエドー!」

 

ジャック「大丈夫ッスかエドー!」

 

イアン「ちっ!出たね」

 

エドの回りが煙で見えなくなる。徐々に煙が消えると人影が浮かび上がる。

 

エド?「おやすみ」

 

アルヴィス「っ!?」

 

エド?「そんで、おはようだ」

 

煙が晴れて現れたのは犬のエド、ではなく顔の右頬に二本の傷が付いたがたいの良いおっさんが立っていた。

 

ギンタ「はっ!?」

 

バッボ『なっ!?』

 

ジャック「がぁ!?」

 

ユウ「……犬が、おっさんに?」

 

その場に居る四人はエドの姿が変わったことに混乱していた。それは影から見ていたベルも一緒で

 

ベル「ワンちゃんが、おっちゃんに化けた!?」

 

その横で、アルヴィスはベルとは違う反応をしていた。

 

アルヴィス「馬鹿な。……あの方は!」

 

エド?は氷付けの少女を見たあと、近くに居るギンタを見て近付き頭を乱暴に撫でた。

 

エド?「粘ったじゃねぇか。誉めてやるぜ。そんで、そこのお前もな」

 

ギンタの次はユウを見てニヤリと笑い誉めた。

 

ギンタ「おっさん。エドをどこにやった?」

 

エド?「俺がエドだ」

 

ギンタ「エドは犬」

 

エド?「俺だ」

 

ヒュー

 

ユウ「へ~、犬って人間になれんだな」

 

ユウは何の疑いもなく、エド?の言葉を信じた。

 

エド?「おめぇは物分かりが良いな」

 

ギ・ジ・バ(((……普通は信じないだろ)))

 

段々とギンタ達はユウが天然である事を理解し始めた。

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