イアン「ねぇ、犬のおじさん。また邪魔すんの?あんたうちのメンバーで評判悪いよ」
イアンはボロボロの体で立ち、ユウ達を見ていた。
エド?「そこの坊主にボコボコにされた奴が粋がってんじゃねぇよ」
エド?の小僧とと言う言葉にユウは少しムッとしたが、目の前のイアンに集中することにした。
イアン「……ボコボコで、もっ!」
バシンッ
バシンッ
両手を振るい、また銀の鞭が襲い掛かった。だが、今度はユウにでもギンタにでも無く、エド?に襲い掛かった。しかし、エド?はアッサリと二本の銀の鞭を右手で掴んだ。
エド?「ブレスレット型ウェポンÄRM【パイソンウィップ】か。なかなかレアな物持ってんじゃねぇか。ま、使い手はまだまだだがな」
イアン「くっ!」
ロコ「退いてくださいイアン。出てきてしまった以上、相手が悪いです」
ロコに言われ、そして目の前で見せ付けられた実力を見て、イアンは【パイソンウィップ】を袖にしまう。
エド?「さて、と。ユウって言ったか。犬のエドの中から見てたぜ。まぁ、今は犬のエドの方が俺の中から見てるだろうがな。訳有って元々二つの体だった俺達は、今は一つの肉体に、要は合体してんだ。犬のエドが三回寝ると俺が出て、俺が一回寝ると犬のエドが出る。なぁ、平等じゃねぇだろ!がっはっはっは!」
呑気に笑っているが、それがマジな話なら全然笑えないんですけど、と周囲の人間は思っていた。
エド?「見たところ、ÄRMは持ってるらしいが、お姫さまを助けるための火のÄRMは持ってんのか?」
ユウ「え?火のÄRMか。持ってないな」
エド?「だったら、こいつを使いな。こいつを氷に投げれば氷を溶かす事が出来る」
エド?はポケットから炎を象ったチェーンを取り出しユウに渡した。
エド?「こいつで早くスノウの氷を溶かしてやれ。もうそんなに時間は無いからな」
ユウ「おう」
火のÄRMを手にしたユウは堂々と真っ直ぐ氷に包まれたスノウのところに向かった。当然、真っ直ぐ行くとイアンとロコが居るのだが……。
イアン「まさか正面突破とはね」
ロコ「余りにもロコ達を嘗めすぎです」
ユウ「ディメンションÄRM【ショートジャンプ】」
ユウが走りながらÄRMを使うと、二人の前からユウの姿が消えた。
ボッ
そして、気付けば既にユウは二人の数メートル後ろに居て、氷の塊にエド?から渡された火のÄRMを投げていた。
火のÄRMは徐々に氷を溶かしていき、遂にスノウが氷の中から救い出された。
氷のように白い肌に、全体的にピンクを基調した服装、首からぶら下がっている雪だるま、そして、頭に付けられた大きなピンクのリボン。ドロシーが黒い美女ならスノウは白い美少女と言ったところだ。
ユウはそんなスノウに見とれてスノウが自分に向かって落ちてくるのに気付かなかった。そのままスノウはユウの方に落ちていき
チュッ
ドサッ
ユウの視界がスノウだけになった。そして唇に感じる柔らかい感触。ユウはスノウとキスしていた。ユウは動揺しながらもスノウを受け止めて地面に下ろす。
ユウ「あ~そのなんだ///すまん」
珍しく頬を赤くしながら、スノウに一言謝罪してそっぽを向いた。向いた先にはギンタにバッボ、ジャックが目を点にしてユウを見ており、それがまた恥ずかしくて視線を頭上に移した。
スノウ「……あ、エド!」
スノウはエド?に気付くとエド?のところに笑顔で駆け寄った。
スノウ「やっぱり助けてくれたんだね」
エド?「違うぜスノウ。助けを呼びに行ったのは犬のエドで、お前を助けたのはそこで上見上げて赤くなってる坊主だ」
スノウ「………///」
エド?に言われてユウの方を見たスノウは先程の事を思い出して頬を赤くした。
そこへ
?「遅くなったロコ。姫様まだ生きてる?」
黒いローブに包んだ体を十字架に張り付けにした、顔が腐ったトマトの怪物が現れた。
ロコ「大変お早いお着きで、お陰で状況は宜しくないです。ロコは怒っています」
トマトの怪物「こちらの状況も変わったのだ。宴も終わった。新しい指令を伝えに来たぜ。第二次メルヘヴン対戦を行うため、『チェスの駒』全員集結せよ」
ロコ「第二次メルヘヴン対戦。また世界に喧嘩を売っちゃうんですね」
トマトの怪物「イエース。姫様連行指令も一時中断。ファントムはこう言ったよ」
ファントム『忘れているもの達にもう一度思い出させなくてはならない。『チェスの駒』を、誰がこのメルヘヴンを頂上から見下ろすのに相応しいものか。頂点の強さを持つものなのか。私は甦った。それを知らしめるために』
トマトの怪物「どうだ?楽しく―――「おいこら!」ん?」
トマトの怪物の話を、エド?が遮った。
エド?「さっきから何こそこそ喋ってやがるトマト野郎!」
トマトの怪物「おぉ。噂には聞いていたが、ほんとにお前か“アラン”」
アラン「違うな。今はエドだ。六年ぶりだな、おい」
トマトの怪物「お互い生きてて何より。はっはっはっ!」
どうやら二人は何らかの因縁が有るらしい。アランもトマトの怪物を見てから妙にピリピリしている。
アルヴィス(奴は六年前の戦争で覚えが有る。【ナイト】クラスのハロウィン。やはりチェスは集結していた。最悪の事態として考えられる事、ファントムの復活)
ユウ「おいおっさん」
アラン「ん。なんだ」
ユウ「あんたの名前、アランじゃねぇか。合体してても二人は別々なんだから、ちゃんと自分の名前を言え。今度からはアランって呼ぶからな」
目の前に新手が現れたと言うのに割りと平然としているユウに、アランは少し呆れていた。
アラン「お前、今目の前に新手が居んのに、それ言うか?」
ユウ「え?あのトマトの事か?」
アランに言われてユウはハロウィンをジーと見詰めた。
ユウ「……寒いから厚着してんのか?」
ズコッ
その瞬間、敵味方問わずずっこけた。ユウはいつでも平常運転だ。
ユウ「っつか、お前も『チェスの駒』か」
ハロウィン「………なんだあのガキは」
イアン「俺っちが苦戦したユウ。んで、あっちの金髪がギンタって言うんだ」
ハロウィンはイアンの言葉を聞き、ボロボロのその姿を見てから
ハロウィン「……冗談だよな」
イアン「………マジ」
ハロウィン「ぎゃーはははははっ!!アランなら兎も角、あんなガキ二人に!!」
ムカッ
ユウ「おいトマト。だったら試してみるか」
ユウが魔力を上げて放出すると、ハロウィンは笑うのを止めた。
ハロウィン「ほぅ、なかなか良いもん持ってんな。だが、今は指令が先だ」
とそこで、何を思ったのかジャックが
ジャック「おいお前達!ギンタを嘗めない方が良いッスよ!なんたってギンタは異世界から来たんスからね!」
アラン「………」
スノウ「………」
イアン「………」
ロコ「………」
ハロウィン「………」
ジャック「あ、あれ?」
もっと「そんなっ!」や「まさかっ!」見たいな反応を期待していたジャックは、皆の反応の無さに首を傾げる。
ハロウィン「それは………本当か!!」
ジャック「のわぁぁぁぁ!」
暫くの沈黙の後、ハロウィンがジャックに本当かどうか聞くが、迫力が有りすぎて逆にジャックが驚いていた。
ユウ「へ~ギンタって異世界から来たんだな。奇遇だな、俺もだ。まぁ、前の記憶は殆ど無いけどな」
皆「「「「「なっ!!!」」」」」
次に言ったユウの言葉には流石に驚いた。異世界から“一人”来たなら前にも有ったため驚きも少なかった。実際、六年前に異世界から人を呼んだのはアラン自身であったし、不思議な事では無かった。だが、異世界の住人がもう一人居たと言う事に驚いたのだ。しかも、既にかなりの強さを有している。そして、『チェスの駒』はユウとギンタを最重要人物に印付けした。
ギンタ「えー!ユウも異世界から来たのか!どこどこ?」
ユウ「だからあんま覚えてないって」
当の二人は驚いている面々を無視して、異世界人同士で盛り上がっていた。
ハロウィン「まぁ良い。姫様連行も異世界人抹殺も、そこに居るバッボの回収も後回しだ。帰るぞ」
シュンッ
あんな中でもハロウィンはバッボが居るのに気付いたらしく、その裂けた口でニヤリと笑うと、ロコとイアンを連れて青白い光に包まれ姿を消した。
ユウ「ふぅ。なんかあっという間だったような、長かったような」
魔力を戻し、リラックスすると重かった空気が一気に軽くなった。
スノウ「……あの」
ユウ「なんだ?」
呼び掛けられて後ろを向くと、スノウがユウを見て立っていた。
スノウ「助けてくれてありがとう。私、スノウ宜しくね」
ユウ「俺はユウだ。宜しく。ところで、スノウに少し言いたい事が有る」
ユウは改まってスノウを真剣な目で見る。
スノウ「うん。何?」
ユウ「たぶんこれから、『チェスの駒』と戦う上でスノウとは行動を共にすると思う。だから、今回見たいに自分を犠牲にして仲間を助けるって言うのはやめて欲しい。確かに今回はその選択が最良立ったんだと思う。だが、次からは俺を、もしくは他の仲間を頼って欲しい」
ユウがスノウに言いたかったのは、自己犠牲なんてしてほしく無いと言う事だった。
スノウ「そう、だね。分かった。今度からはユウを頼るね」
ユウ「ああ。何度でも助けてやる」
こうして、新しい仲間、スノウが加わった。
城の上空
ドロシー「あ、氷が無くなって綺麗になったじゃない。やったわねユウたん。中に居たデカイ魔力も消えたし、これで一件落着ね。でも何故かしら。妙に胸がざわついてイライラするのは」
ディメンションÄRM【ショートジャンプ】
丸い半円が付いた指輪。発動すると自分を中心に上下左右前後200メートルに自由に瞬間移動出来る。一見凄そうに見えるが、長距離や空間隔離などに重点を置くディメンションÄRMとしては欠陥品。200メートルずつ何度も移動しようにも、それなりに魔力を消費するため普通では不可能。ÄRMを発動した者に捕まっていれば2、3人までなら一緒に移動可能。