メルヘヴン バカな救世主   作:悠之

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第六話 修行開始!【修練の門】

城の外に出ると、太陽の光で一瞬視界が真っ白になる。

 

ユウ「ずっと暗い所に居たから、外に出ると眩しいな」

 

スノウ「そうだね。太陽、暖かいね」

 

アラン「この城、出れて良かったなスノウ」

 

スノウ「うん。ほんとに皆ありがとう」

 

スノウは改めてユウ達にお礼を言った。

 

アラン「さて、行くか」

 

ギンタ「これからどこに行くんだおっさん」

 

アラン「ピリカだ」

 

ギンタ「その町って近いのか?」

 

アラン「な~に、ちょっとあの山を越えるだけだ」

 

そう言ってアランが指差したのはかなり遠くに見える山だった。遠くの山を見てギンタとジャックは一っ飛びで行けるディメンションÄRMが無いか聞いた。それに対してアランは、ディメンションÄRMを一つ取り出し

 

アラン「このディメンションÄRMを使ってやっても良いが、どこに飛ぶかは分からねぇぞ」

 

と言ってきた。ただでさえ地理がまったく分からないのにそんな物を使われたら、まず間違いなく迷子になってしまうだろう。ギンタとジャックは慌ててÄRMの使用を拒否した。

 

ディメンションÄRMでの移動手段が無くなり、5人+1は山を越えるために歩いていた。道中、ギンタとジャックがどうやって出会ったか、何故ジャックはギンタと一緒に行動しているのか聞いた。

 

そして、やっとピリカの町へとたどり着いた。そこの食べ物屋で腹ごしらえをしている。

 

アラン「取り合えず………まぁなんだ、スノウを助けてご苦労だった。褒美にたらふく食って良いぞ」

 

ギンタ 肉一切れ

 

ジャック 豆七粒

 

バッボ 無し

 

ユウ 骨付き肉(自分で頼んだ)

 

ギンタ「って、これでどうやったらたらふくになるんだ!」

 

ジャック「おいらなんて豆七粒ッスよ!」

 

バッボ「わしに至ってはなにも無いわ!」

 

当然、ユウ以外は不満だらけのメニューだ。

 

スノウ「意地悪だよエド。好きなの食べさせてあげて」

 

ギ・ジ・バ(((や、優しい)))

 

ユウ「うまうま」ガツガツ

 

スノウの口添えも有ってギンタ、ジャック、バッボは各々好きなものを頼み、腹を満たしていた。

 

ギンタ「そういやユウはどこで金を手に入れたんだ?」

 

ジャック「あの綺麗なお姉さんに貰ったんスか?」

 

骨付き肉を平らげてお茶を飲みながらまったりしているユウに、ギンタとジャックが聞いてきた。バッボにアラン、スノウも気になっていたようでユウを見ていた。

 

ユウ「情報を集めるために町に行く途中やら、ÄRMを探してる時に襲われてな。返り討ちにして、逆にÄRMと金を貰ってたんだ」

 

アラン「初めての場所で、逞しい奴だな」

 

スノウ「凄いね。なかなか出来る事じゃ無いよ」

 

ジャック「ユウだったらどこに行っても一人で生きていけそうな気がするッス」

 

ギンタ「俺と別れた後そんな事してたのか」

 

バッボ「流石は第三家来じゃ」

 

バッボを除いて驚きやら呆れやらの反応をする。

 

ユウ「俺はお前の家来になった覚えは無い」

 

クルクル

 

バッボ「のわぁぁぁ!下ろせぇぇぇ!目が回るぅぅぅ!」

 

“家来”と言ったバッボをユウは上手いこと人差し指の上で回転させる。

 

アラン「さてギンタ。お前、こっちの世界に来てからどれくらいだ?」

 

ギンタ「う~ん。10日……くらいかな」

 

アラン「ユウはどうだ?」

 

ユウ「俺も似たようなもんだ」

 

アラン「だったら、殆どなにも知らねぇ状態って事だな。スノウ、地図を出してくれ」

 

スノウ「うん」

 

懐を探ると、スノウは大きな地図を出した。地図には大きな大陸が三つに、ちらほらと小さな島が書かれていた。

 

アラン「これがメルヘヴンだ」

 

スノウ「ねぇエド。説明してる間バッボさんとお外で遊んできても良い?」

 

アラン「ん?まぁ近くで魔力は感じねぇし良いか。でも遠くへは行くなよ」

 

スノウ「分かった。バッボさん、お外へ行こう!」

 

バッボ「うむ」

 

アラン「丸いの!目立つから外では喋るな!」

 

アラン「丸いのとはなんじゃ!」

 

スノウは全て把握しているので、外に行くようだ。バッボもあまりこの手の話は関係無いので、連れていくらしい。

 

ユウ「だったら、俺も着いていく。俺は大体の状況も把握してるしな」

 

アラン「ああ、頼んだ」

 

スノウ「やったー!行こうユウ、バッボさん」

 

スノウの後に続き店の外に出る。後ろから「羨ましいッス」と言う声が聞こえたような気がしたが、軽く無視しておく。

 

 

 

 

外に出て、近くの花壇に植えてあった花でスノウが花飾りを作ってくれた。

 

ユウ「……俺にはこう言うのは似合わないと思うんだが……」

 

スノウ「大丈夫!すっごくかわいいよ!」

 

バッボ「そ、そうじゃな。プクク……す、凄く似合って…プ…おる…ぞ。プクク」

 

ユウ「イラッ バッボにもしてやるよ」

 

バッボ「んがっ!」

 

ニヤニヤしながらユウを見ていたバッボに、怒ったユウはバッボの口に花を詰め込み、生け花のようにした。

 

ユウ「なかなか綺麗に出来たな」

 

スノウ「あ、ほんとに綺麗」

 

バッボ「んがががががっが!んがが、がががが!」(わしが悪かった!だから、たすけて!)

 

仕方なくバッボの口から花を全部取り出す。

 

ユウ「やっぱ俺には似合わないな。だが、スノウにはぴったりだな」

 

自分の頭から花飾りを取ると、大きさを少し調整してスノウの頭の上にそっと置く。

 

スノウ「そ、そうかな///」

 

ユウ「ああ。これ程似合う女はなかなか居ないぞ」

 

スノウ「えへへ///」

 

ヒュー

 

パリンッ

 

ユウ「いてっ!」

 

スノウを誉めていると、上から瓦(かわら)が降ってきた。瓦はユウの頭に直撃して粉々に割れた。

 

スノウ「だ、大丈夫!?」

 

スノウが慌ててユウの頭に触り、怪我が無いか確かめる。

 

ユウ「平気だ。瓦くらいじゃ怪我一つしない」

 

スノウ「それでも心配なの!私には自分を犠牲にするなとか言った癖に、自分は良いなんてダメだよ!」

 

ユウ「……ん。すまん」

 

ユウは大人しくスノウに頭を撫でられていた。

 

バッボ「……わしは蚊帳の外かの」

 

 

 

 

ギンタ達が居る店の屋根の上

 

ドロシー「何さあの小娘!ユウたんにあんなに誉められちゃって。私だってまだちゃんと誉められた事無いのにー!」

 

屋根の上からユウとスノウを(バッボも居るよ)見ていたドロシーは、スノウを誉めるユウを見てスノウに嫉妬していた。

 

ドロシー「ユウたんもあんな娘にデレデレしすぎ!(してない)こうなったら、えい!」

 

屋根の瓦を一枚剥がすと、剥がした瓦をユウ目掛けて投げた。瓦は見事にユウの頭に当たり粉々に割れた。ドロシーもユウの頑丈さを知っていて投げたため、ユウが怪我することは無いだろうと思っていたが、その行為が思わぬ事態を起こす。

 

ドロシー「なっ!?」

 

なんとスノウはユウに近付きユウの頭を撫で始めたのだ。ユウを今まで抱き締めた事は有っても、頭を触った事が無かったドロシーは、かなりの衝撃を受けた。

 

ドロシー「あ、あああの小娘ぇぇぇぇ!!」

 

ドロシーの恋の炎に油が撒かれて更に勢いを増した。

 

 

 

 

スノウ「そろそろエド達の話も終わってるかもしれないから、中に入ろうか」

 

バッボ「む~もうちょっと遊びたいのう」

 

ユウ「我が儘言うな。行くぞ」

 

スノウに続き、バッボの鎖を握ったユウがバッボを引き摺りながら店内に入る。

 

アラン「スノウっ!!」

 

スノウ「はい!」

 

ギンタ達の元に戻ると、アランがいきなりスノウを大声で呼んだ。

 

アラン「今日からこいつらもパーティーだ」

 

バッボ「パーティー!」

 

アラン「久し振りに“あれ”でもやってみるか」

 

スノウ「……“あれ”」

 

ギ・ジ・バ・ユ「「「「……“あれ”?」」」」

 

二人のやり取りに、四人は頭に?を浮かべた。

 

アラン「強くなりてぇんだろ」

 

ギ・ジ「「………」」

 

アランの挑発ぎみな物言いに、二人の顔付きが変わる。

 

そして

 

ドロシー「………」

 

それを屋根の上に居る一人の魔女が確りと聞いていた。

 

 

 

 

店から出て、アランに着いて歩く事数分、回りに木が生い茂った道を歩いていた。

 

ギンタ「なぁおっさん。どこに連れてってくれんだ?」

 

アラン「………」

 

ギンタ「なぁおっさん。修行って何やるんだ?」

 

アラン「………」

 

ギンタ「なぁおっさん。おっさん!」

 

先程から、ギンタが聞いてそれをアランがスルーし、またギンタが聞く、と。同じことを何度も繰り返している。デジャブではと思うが、現に目の前で行われている事なので、デジャブでは無い。

 

更に数分後、やっと開けた場所に着いた。正直、ギンタが煩くてユウがギンタを黙らせる一歩手前だったのでギリギリセーフと言ったところだ。

 

アラン「ギンタ、お前のÄRMはファントムが使ってたそいつだけだろ」

 

バッボ「そいつとはなんじゃ!バッボじゃ!」

 

アラン「懐かしいな。6年前バッボを封印したのは、当時『クロスガード』だった俺様だ」

 

ギンタ「ええ!じゃあバッボをあの洞窟に隠したのっておっさん!」

 

―――へ~、じゃああのガーディアンÄRMもおっさんのか。

 

アラン「おうよ。あの宝箱はÄRMじゃ壊すことも、傷一つ付けれない」

 

ユウ「傷一つ付けれんとは凄いな。……あれ?でもギンタ……」

 

ギンタ「ああ、俺―――」

 

アラン「魔力0の人間じゃねぇと開けれねぇって仕組みだ」

 

―――なるほど、だからギンタには開けられたのか。

 

アラン「見付けて居たとして、『チェスの駒』がいくら開けようとしても開けられない。そんで、魔力0の奴にはガーディアンは倒せないってトラップだ」

 

『チェスの駒』は精鋭集団。いくら強い魔力を持って居ようとも、その魔力のせいで宝箱は開けられず、『チェスの駒』に魔力0の人間は居ないと言う訳だ。

 

アラン「しかしお前、よくガーディアンに殺られねぇでバッボ取れたな」

 

ジャック「う~ん。不思議ッス」

 

ギンタ「なぁ、魔力ってなに?」

 

ギンタは宝箱の話よりも魔力の方が気になるらしく、宝箱について考えているジャックに見向きもせずに、アランに魔力の事を聞いた。

 

アラン「ん?魔力?……ふっ。森に入った頃からプンプンしてたぜ。ふんっ!」

 

ゴォォッ

 

ズガァン

 

アランは建物の残骸の柱に、魔力の砲弾を放ち、柱を真ん中で折る。

 

アラン「出てこいや」

 

?「ケホケホっ!」

 

砂煙の舞う中、女性の咳き込む声が聞こえてきた。そして、うっすらと見えてきたのは、見たことの有るシルエットだった。

 

ドロシー「けほっ!何すんのさ一体!」

 

ギンタ「あ!ドロシー!」

 

バッボ「無礼女!」

 

ジャック「綺麗なお姉さま!」

 

スノウ「??」

 

隠れて居たのはユウがメルヘヴンに来て初めて出会ったドロシーだった。

 

ギンタ「俺がこの世界で初めて会ったのはユウとドロシーなんだぜ!バッボも二人と一緒に取ったんだ」

 

アラン「納得。ガーディアンをユウとこいつが相手してる隙に、ギンタが宝箱を開けてバッボを手に入れたって訳か(まぁこいつにバッボ渡すくらいだからチェスじゃねぇよな)」

 

砂煙が収まるとドロシーは箒に乗り、アランに近付き

 

ドロシー「おいおやじ!ユウたんをどこに連れていくつもりさ!」

 

と言った。

 

アラン「お前、ユウの?何なんだ?」

 

ドロシー「何だって良いだろ!変な事しようってんならただじゃおかないよ!」

 

アラン「ほぉ、俺様とやろうってのか?言っとくが俺様は強いぞ」

 

アランはドロシーに怯む事なく、逆にドロシーを見下ろしながら挑発した。その言葉にドロシーは臨戦態勢をとり、アランと距離をとる。

 

二人はまさに一触即発と言った雰囲気でお互いを睨み合っている。

 

スノウ「喧嘩は、やめよ!」

 

それを止めたのは我らが雪の妖精、スノウだった。スノウは二人の間に入り、二人が戦闘を始めないように止めた。

 

二人もスノウのやんわりとした仲裁で、勢いが削がれ一触即発とした雰囲気は消えていた。

 

スノウ「ユウとギンタの友達なんでしょ。だったら悪い人じゃ無いよ」

 

ドロシー(……雪のÄRM)

 

スノウの腰に有るÄRMを見て、ドロシーは氷の城を思い浮かべた。

 

スノウ「何か?」

 

ドロシーの視線に気付いたスノウは、首を傾げながらドロシーに聞いた。

 

ドロシー(……女の勘。この娘、私にとって邪魔になりそう)

 

何故か分からないが、ドロシーはスノウを邪魔者のように見ていた。……スノウはまったく気付いていないが……。

 

アラン「こんな奴放っといてさっさと行くぞ!」

 

付き合ってられないと言った感じでアランはドロシーの前を歩いていく。スノウも丁寧にドロシーにお辞儀してからアランを追い掛けた。

 

ギンタ「ちょっくら強くなって帰って来るぜドロシー!」

 

ユウ「これからの戦いに備えて、少し鍛えてくる」

 

ギンタ、バッボ、ジャック、ユウの順番にドロシーの前を過ぎていく。

 

 

 

 

アラン「この辺で良いだろう」

 

アランに付いていくと何か建造物の名残がある場所へとたどり着いた。

 

ギンタ「なぁおっさん。さっき言いかけてたけど、魔力ってなんだ?」

 

ギンタの問いにアランは分かりやすいように説明した。魔力とは特殊なÄRMを使うÄRM使いから発せられる氣の事で、強力なÄRMを使ったり、経験を増やしていくことで染み付く力の証明のような物だ。因みに、ギンタとジャックの今の魔力は0らしい。

 

どうやら二人はまだÄRM使いですら無いらしい。ギンタはどうやったら強くなれるかをアランに聞き、アランは【マジックストーン】と言う青い三つのビー玉程の玉を、バッボのハンマーの窪(くぼ)みに付けた。

 

アラン「さぁ、これで準備は出来た。後はあいつか」

 

ギ・ジ「「ん?」」

 

アラン「おい!出てこいや!」

 

アランが木が生えている場所に呼び掛けると、先程別れたばかりのドロシーが姿を現した。

 

バッボ「まぁた付ついてきて居ったのか無礼女!」

 

ドロシー「な、なによ」

 

アラン「よし。じゃあ行くぞ」

 

ギンタ「え。ちょ、おっさん!行くぞってどこにだよ!まだどうやって使うのか聞いてないし……」

 

いきなり「行くぞ」と言われてギンタは戸惑いながら渡された【マジックストーン】について聞いた。アランは右手に輪っかを加えた龍の頭が先端に着いたチェーンを持ち。

 

アラン「そっから先は……自分で考えやがれ!」

 

ユウ「っ!?」

 

アランの魔力が吹き上がるのを感じたユウは、何か攻撃を仕掛けて来るのかと思い身構えた。しかし――

 

アラン「ディメンションÄRM【修練の門】!!」

 

ユウを襲ったのは攻撃出はなく浮遊感。アランのÄRMの龍が輪っかを離すと、ギンタ、バッボ、スノウ、ユウとジャック、ドロシーの下にそれぞれ一つずつ扉が現れて二組を扉の中へと落とした。

 

ギ・バ・ジ「「「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」」」

 

ドロシー「きゃぁぁぁっ!嫌だぁぁぁっ!こんな猿と一緒はぁぁぁぁっ!!」

 

ユウ「おぉ~」

 

ギンタ、バッボ、ジャックはいきなり下に落ちることに驚き悲鳴を上げ、ドロシーはジャックと一緒であることに悲鳴を上げた。スノウは分かって居たのか、両手を胸の前で 祈るようにしながら落ちていった。ユウは……ボ~ッしていた。

 

ギィィ

 

バタンッ

 

アラン「ダンナもこれで強くなって行った。どうなるかはてめぇ等次第だ。ギンタ、ジャック。にしても、とんでもない奴が居たもんだな。ギンタと同時期にこっちに来たってのに、実力は【ビショップ】と同等かそれ以上。しかも、伸び代が見えねぇ。末恐ろしいこった」

 

閉じた門を見ながらアランはそう呟いた。

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