傭兵は指で数えれる程の数しか集まっていなかった、今は大きな輸送機の中で作戦の説明を受けているといったところだ、なんでもAstとBextに奇襲をかけるらしい。
Ast、Bextとは環境保護団体の名称であると同時に暴力組織の名称でもある、この両組織の過剰すぎる環境防衛が戦火を散らす形となってしまったのだ。ディマジオは何らかの理由でこの2つの団体に目をつけられてしまったのだろうが……あくまで傭兵であるこちらは必要以上の情報を追求しないというのが暗黙の了解だ
「以上で作戦の説明を終了する、まもなく作戦領域だ、各員はシレクタに乗り込み獲物を狩れ」
まぁ……大地を上から見下ろせば環境を守らなければ、と使命感が湧くのだろう、今や植物なんてほとんど消え失せてしまっており、どれだけ地平線を追ってみても有るのは乾燥した醜い大地だけなのだ。そうなってしまった原因は残念ながら情報として残ってはいない、ゆっくりと滅びを迎えたのか突如として世界が荒廃したのか、今では知る術もない。
と、ブリーフィングも終了しているようだし輸送機内のシレクタ格納庫へと早足で向かう、……格納庫の中にはシレクタが数機詰め込まれるように入れられていた、シレクタの全長は平均で6mほどだが、やはり3機以上並ぶと威圧感があるものだ。さっさと自分の機体を見つけて乗り込む、本ミッションで採用したヘッドパーツは四角いシルエットが特徴的なツインアイの偵察型、おそらく複数機と同時に交戦するため敵の位置を素早く把握する必要がある、そのための偵察型ヘッドパーツだ、カラーも機体に合わせて灰色にしてあるため市街地での迷彩としては申し分ないだろう
《作戦領域に侵入しました、これより作戦を開始します……敵部隊を無力化してください》
~~~~~
乱暴に輸送機から落とされてから周囲を見回す。ボロボロになった高いビルが何本も建っており、かつての賑わいを思い立たせる場所だった。
他の傭兵も遅れて着地し行動を開始した、……適性反応は感知できない、しかし熱源は感知できた、これは………
『こちらオペレーター、全機に通達。皆さんは熱源反応に気づいていますね?』
よく通る女性のオペレーターにyesの意を表す、自分以外の傭兵も熱源を発見しているのだろうか
『よろしい。感のいい方は既に気付いていると思いますが、この熱源は本来我々が交戦するはずだった敵部隊の物です、UAVからの情報なので間違いないでしょう』
つまり?
『別に敵が居る可能性があります。……ともあれ、目標が沈黙している場所に居座り続ける必要はありません、全機、輸送機内に帰投してください』
そう言い終えると輸送機が降下してくる、傭兵達は輸送機内に素早い動きで入っていき、最後に自分の番がきた、輸送機の格納庫に機体の足をかけると──
《連絡、高速で接近してくる機体をレーダーが感知しました、繰り返します、高速で接近してくる機体をレーダーが感知しました》
これまでの経験が告げる、この「接近してくる機体」は間違いなく敵だと!まずい、早く乗り込まなければ……!
『こちらオペレーター、輸送機が大破!全機、逃げ』
その通信はそこで途絶え、輸送機からはミシミシと金属が折れる音がする。自機を急旋回させ、即座にブースターを起動し輸送機から離れた、「爆発」ではなく「弾けた」音が何度も何度も後ろで鳴り響く、あれでは輸送機内にいた傭兵もオペレーターも助からないだろう。
適当なビルに機体を寄りかからせて上にカメラを向ける、1本の黒煙は轟々と音を立てながら空へ登っており、青い空を汚していた
《輸送機を襲撃した機体を「敵機」「適性反応」として登録しました、敵機の情報を表示します》
コックピット内に表示されたのは敵機の名前と機体の性能。性能は……もはや表示する意味がなかった、全てが「測定不能」と示されている、……それより気になったのが機体名、自分の目がおかしくなければ「グラジオラス」に見えるのだが
《以前協力した傭兵として活動しているグラジオラスとは全くの別機体です、600年前の遺物と思われます》
600年前の機体か、そんなに経っているのに何故動ける?
ともかく輸送機に一瞬で接近し、攻撃を行う速度を持っている化物のような機体だ、全力で逃げたとしても追いつかれる。やはり迎撃するしかないか
《適性反応接近》
畜生、分かってる!
とにかくビルが多く建っている場所は危険だ、いつ奇襲を受けてもおかしくない。この近くに広場のような場所があったはずだ、まずはそこへ向かわなければ。
《敵機から画像を受信しました、内容を表示します》
モニターは何かの資料を画面いっぱいに映し出す、解読できない文字で書かれた資料の画像のようだが……。
資料を読む暇もなく画像は次々送られてくる、恐らく50枚は受信しているだろう。
そして最後に、何やら……花畑での写真、だろうか?
──写真の中央には軍服を着た少女と、タバコをくわえた男性が手をピースにしながら笑っている、男性はどこかぎこちない笑顔で、少女は本当に楽しそうな笑顔を浮かべて。花畑の後ろには「ディマジオ」と大きく書かれたビルがそびえ立っていた
《受信終了。》
敵機は何を伝えたかったのだろう?こんなものを送信されても何をどうすればいいのか。資料についてはディマジオの人に分析を頼もう
《広場に到着、会敵しました》
生きて帰れれば、だが。
敵機は見るに耐えない状態だ、左腕は何かで切断されており頭部パーツやボディも装甲が溶けて内装すら見えている、右脚は恐らく千切れたのだろう、白い脚部パーツを右脚に無理やりくっ付けているようだった。グラジオラスの装甲は酷く汚れており、かろうじて赤い色が視認できる。
理解できないのはグラジオラスが持っている武器だ、何かを突き刺すために作られた様な鋭い銃身を持つライフルをだらんとした右腕で力なく持っている、あんな形は見たことが無い。ともかく気を引き締めなければ、こいつは尋常ではない強さの敵なのだ
《適性反応が無力化しました》
………?
……………は?
《データ受信中、「ギアネットワーク」オンライン、バックアップしたARNDをダウンロードします》
ガシャン、と金属音が静かな廃都市に反響し、グラジオラスは膝をついて倒れてしまった。
そして「ギアネットワーク」、古いサーバーを利用した情報保管庫のようなもので、利用するにはパスワードが必要なはずだ、それが何故オンラインになったのだろう?極めつけは「ARND」と呼ばれる人工知能をこの機体に入れようとしている。……正直勘弁してほしい、頼むから考え事はあまり増やさないでくれ
《ダウンロード完了、インストールに時間がかかるため、帰還を推奨します》
帰還と一言に言われても、ここからだとディマジオまで2時間以上はかかってしまう。シレクタは基本、長くても30分しか動けないためそれでは困るのだが……。
輸送機は見に行くだけ無駄だ、とすればシレクタを降りて徒歩で……というのも無理がある、道路も道しるべも無い地上で何のサポートも受けずに動くのはリスクが大きすぎる。
………詰んだ……
ARNDとか色々単語出てきましたね
UAVは簡単に言うと無人で空飛ぶ凄い奴のことです、検索で出てきますので興味があれば是非どうぞ。
本作はそこまで戦闘がないので、楽に書けますね(書くとは言っていない)