作業用シレクタは意外にもハンドガンやナイフといった基本的な武器を腰のホルダーに装備していた、が、それを構える事は無くこちらの機体に近づいてくる、それも1機だけではなく10機ほどだ。一言で作業用と言っても侮ることは出来ない、戦闘用のようにカスタムも出来るし……最近では作業用含める非戦闘用シレクタを改造して戦わせるスポーツだって出てきたくらいだ、それに習ってかこちらの機体を取り囲むような形になった10機もカスタムされている、塗装は予算が無かったのか鉄の色で統一されているが。
《通話開始》
10機のうち1機がこちらに通信を繋いだようだ、こちらが通信をOKした覚えは無いためハッキングか何かだろう
『えーっと……こんにちはかな?』
律儀にも挨拶をしてきた声はよく通る少女のものだった、女性でもシレクタに乗るのか、これはたまげた。
とりあえず挨拶にはダンマリで返す、相手の出方を伺うのも傭兵のスキル……だと思う。
『も、もしかして怒ってる?まぁいきなり囲まれたら怒るよね』
残念だが自分は心が広い、だから怒ってはいない、警戒はしているが。今の自分は敵かもしれない奴らに囲まれているかもしれないのだから当たり前だ
『その…ごめんなさい!戦闘用シレクタが落ちてるなんて珍しかったからさ、回収しようとしたら中にあなたがいたみたいで……』
少女はまだ口を止めない、『牢屋入れられちゃうかな……』や『どうしよう』といった不安から来る言葉や謝罪を繰り返している、流石に可哀想になったので「自分はそんな事しない」と伝えると少女はピタリと口を止める。
……が、直ぐに前言撤回した、「刑務所に入れない代わりに作業用シレクタの武装を全て解除する」事を条件にしたのだ、まぁただの傭兵である自分にそんな権限は無いが
『それだけでいいの?…仕方ないからやるよ……』
もちろん、武器は怖い、だから早くしてほしい。そう言うと作業用シレクタ達は自身の武器や追加装甲を外し、投げ捨てるように地面に落とした。
『武器も外したし、少しは安心出来たかな?会話できるなら是非話を聞いてほしいなー、なんて』
会話なら既にしている気がするが……。しかし聞いても聞かなくてもデメリットは発生しないだろう、それどころか神宮の人達と友好的になれる願ってもいないチャンスかもしれない。よし、ここは話を聞くことにしようか
『よしっ!じゃあそのシレクタのパーツ頂戴!』
ちょっと急に依頼思い出したので帰りますね
『ちょっ……じゃあこうしよう!私達が使える設備で君のシレクタを無料で整備してあげる!もちろんエネルギーだって満タンまで補給させてあげるし!ぱ、パーツは……くれるかくれないかは私と話し合って決めてもらえばいいからさ…』
何をそこまで必死になっているんだか……、だが悪くない条件ではある。神宮で補給を受けなければこのシレクタは動かなくなっていた。
その条件を快諾し、パーツを譲る事を約束しよう
『本当!?やった!これで私達優勝間違いなしだよ!』
少女のシレクタは仲間の方に向き直りひたすらに喜ぶ、他のシレクタ達も操縦者の声は聞こえないもののどよめいたり喜んだりしているのが機体の操作から分かった。ところで、何の優勝だろう?
『じゃあ神宮の地下施設まで行くからついてきてね、あんまり遠くないよ』
そうして警戒はまだ解かないまま、先導する少女に向かって脚部を動かすのだった
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数時間後、すっかり日は沈み、冷たい風だけが外を駆け抜けるように走っている。寒くない……といえば嘘になるが防寒着を使うほど寒いわけではない、これがいわゆる「肌寒い」状態なのだろう。ビル群と、ビルの中の光をぼんやりと眺めていると時々砂も風に飛ばされる
「ねー、そろそろ中に戻ったら?」
まだ聞き慣れていないが聞き覚えのある少女の声を聞いて、少女の方へ振り向く。彼女自分の名前を「ソラ」と名乗った、地下施設でソラが話した事情は「金が必要だからシレクタを戦わせる競技で優勝して稼ぐ」、「しかし今の資金とパーツでは優勝できない、戦闘用シレクタのパーツが必要」とのことだ、シレクタを戦わせる競技の名前は「SysF」というらしいが、まぁ必要の無い情報だった
「戻らないの?じゃあコーヒー入れてくるよ、待っててね」
いけない、返答を忘れてしまうとは……。地下施設への階段を下るソラの背中に向かい、小さく謝っておく。しかし元気な少女だ、無造作にくくられたポニーテールと裾の折られた作業着が彼女の明るさに拍車をかけている気がした。
地下施設は神宮と離れた場所にある、とはいえ神宮とは目と鼻の先なので買い物などに困る事はないらしい、確かに少しの間だけ神宮を散策したが移動に困ることは無い、至って普通の繁華街へ直行できたのだ
「はい」
そのソラの声とほぼ同時に手の甲に温かく無機質な物がコツンと当たり、それがマグカップだと気付くのに時間はかからなかった。中には温かいコーヒー、というよりカフェオレが白い湯気を昇らせている。礼を言って少しづつ口に含む
「君のシレクタの整備は明日まで終わりそうにない、申し訳ないけど泊まってってくれないかな?部屋なら空いてるから、ね?」
部屋とは、地下施設の?
「うん、けっこういろんな設備持て余しててさ、空き部屋もそのひとつ」
本来ならシレクタの中で眠りたいが、部屋を貸してくれるというならそうしよう。
マグカップに口をつけ、中身が少なくなっている事に気付くと一気に飲み干す、小さく「ごちそうさま」と呟いて地下施設へ通じる階段へと足を進めた。暗い階段にも灯りはあるがとても小さく、点滅しているものもある、シンロータスに侵入した時同様肝試しでもしているみたいだ。
しばらく進むと小さな通路にスライド式のドアが拒むようにそこにある、ドアを開けて地下施設の中へ入ると作業服を着た男女9人が自分に向かって軽く挨拶をする、そう、作業用シレクタの操縦者達だ
「ソラさんにも言われたと思うけどシレクタのメンテとか補給とかは朝まで終わりそうにないっすよ、色んなとこが傷んでて……ロクにシレクタの修理してなかったんじゃないですか?傷ついた装甲は取り替えずに関節にだけ異常がないか見てたとか……」
見るだけで分かるのか……整備士(操縦者?)とはすごいものだとつくづく感じる
「ちゃんと修理しないとそのうち動かなくなるっすよこのシレクタ、砂も詰まってるしカメラは汚れてるし、勿体ない。俺だったら不安で乗れませんよこれ」
金欠だから可能な限り出費は抑えたい、でもそこまで言うならもう少し金をかけた修理も検討していいかもしれない。わざわざ壊れかけの機体に乗って戦っても報酬は増えないし、命には変えられない
「まぁそういうことなんでルドアさんは部屋入ってくつろいでてください、右側の通路にある部屋全部使っていいですからね」
それなら、と早速休む事にする、特に今日はやれる事が無いわけだし。あの操縦者達には感謝しなくちゃいけないな
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□□□□□□日目。
記憶が正しければ、この世界は同じ事を繰り返している。いつかの自分は幾度なく死に、いつかの反逆者ルドアは幾度なく自分が殺した、そこで「クローン」という言葉が脳裏をよぎった、繰り返しているのは自分が経験した記憶ばかり、誰かが私と、その仲間のクローンを作り過去の再現をしている、何度も何度も。
だから現状打破のために手を加える事にした、反逆者ルドアを「傭兵ルドア」に、グラジオラスに乗っていた自分をディマジオ所属の傭兵に、そしてクローンの彼等には偽物の情報を掴ませ、gearには私が直々に手を下して権力を弱めさせた。これでなにかが変わってくれるといいが。何にせよ時間は限られてきた、失敗は許されないだろう
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アラーム 7:30分、うるさい音を発する携帯端末は気付くと画面にそんな文字を出していた、部屋に入り、寝転がり、……そのまま寝たのか?
とにかく朝だ、寝癖を直して部屋から出………
《警報、警報、敵機が接近しています、繰り返します───》
アラームの次は部屋に取り付けられたスピーカーから警報が鳴り今度こそ目が覚めた、たドッキリならいいのだが上の方で「ドスン」と巨人が歩いたような音と鉄がこすれる音がするため、お遊びで警報を流している訳じゃないだろう。
飛び出すように部屋のドアを蹴飛ばして通路をとにかく走る、目標地点は自分のシレクタ内部だ、まともに戦えるのが自分しか居ないならやらねばならない
「あっ、ちょっとルドアさん!」
通路を移動する途中で昨日の操縦者兼整備士とすれ違いそう声をかけられる、何かと聞き返すと
「相手の方が数多いっすよ!あんた1機じゃ……」
時間稼ぎくらいにはなるだろう、多分。
「無理です!攻撃が収まるまでここで静かにしてる方が安全ですってぇ!」
ここはシレクタの足音が響くくらい浅い場所にある地下だ、天井が崩れてもおかしくない。
申し訳ないがこの足を止めている時間も惜しい。頭を抱える整備士を尻目に、シレクタの元へと走り出した
まーた文章力無いくせに詰め込みすぎたよこのバカモノサシは……そんなんだから読者いないんだぞクズモノサシ
3日目といえば、前作は3日目行きませんでしたね。
前作で3日目からエンディングまでの間何があったのか、次の話から彼等が照明してくれることでしょう(多分)
(多分)は万能ですね