ラブライブ!~灰色少年は薔薇色を望まない~ 作:ユカタびより
灰色の青春。
こうして字に表すだけでどこか寂しい気持ちになってくるのかもしれない。
しかし、俺自身はそうでもない。
この俺『
そもそもの大前提として、授業で設けられるグループワークという形の集団活動くらいならば、俺にも経験は当然ながらある。しかし、誰かと協力して何かに集中し、取り組んで、そして達成感を感じるなんてことは未だかつて一度もない。
自分で言うのもおかしいが、俺は別に孤独を好むボッチというわけではない。
目も…腐っていない。
ただ俺は、興味が湧かないのだ。
友達?社会に出たら連絡を取ることなど無くなって疎遠になるのが目に見えているだろう。
恋愛?自分だけの時間と引き換えるほどに値打ちのあるものなのかそれは?
…他にも思う所はたくさんあるが、まぁそういうことだ。
それに今まで小・中と義務教育の場で彼ら彼女らの青春と呼ばれる行為を目の当たりにしてきたが、少しでもその青春の過程ですれ違いがあれば、今度は育んできたお互いの関係に亀裂が入って顔を合わせるだけで抵抗を覚える程に雰囲気が悪くなってしまっていたようだった。
そして今度はその関係の修復作業…。
もう友達・彼女以前に、人間関係を築くことすら億劫になりそうだった。
このように考えれば考えるほど、世間の一般的なイメージとして固定されてデフォルト化されたような輝かしい青春とやらは、口には出さないが俺には到底理解できそうにないものなのだ。
よって、俺はこんな灰色の青春の日々をとてつもなく気に入っている。
そしてそれは、これからも―――…
―――――――――――――――――――――――――――――――
キーンコーン カーンコーン…♪
「ん?」
午前の休憩時間。
俺は手洗い場に行き、戻ってくると俺のイスがなくなっていた。
と思ってよく見てみたら、一人の女生徒が移動させて使っているようだ。
まぁよくあることか…。
「おい」
「ほぇ?」
「…そのイス、俺の席のものなんだ。悪いが返してくれないか?」
「す、すみません!ほら穂乃果、早く返しなさいっ」
「う、うんっごめん、なさい…」
なぜこの娘が謝るのだろうかと、俺は青みがかった黒髪の女生徒をちらりと見やってすぐに目の前の女生徒に視線を戻す。
「あぁ」
それだけを言って、俺はイスを受け取り席に戻る。
しかし戻るといっても隣の席なので気まずいこと他ならない。
乱暴な言い方だったのだろうか、視線が突き刺さる。
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キーンコーン カーンコーン…♪
放課後のチャイムが鳴る。
すかさず帰宅準備を終えた俺はすぐに教室を出る。
さ~て、さっさと帰ろうと前に足を踏み出した瞬間だった。
がしっ
「ちょ、ちょっと穂乃果!?」
後ろで誰かが俺の手を掴んだことを感じるのと一緒に、声が聞こえた。
なんだ?っていうかこの声どこかで…
「!お前らは今朝の…」
「む~…さっきから呼んでるのに……」
「その、すみません中原君」
「ごめんね?」
後ろを振り向いて目に入ってきたのは、頬を膨らませて睨んでくる女生徒と申し訳なさそうに謝ってくる女生徒二人。
「いや、いい。それより、俺に何か用か?」
「あ、いえ…ほら穂乃果、いつまでもそんな顔をせずにちゃんと話さないと…」
「あ、そ、そうだったねっ…んゴホン」
”穂乃果”と呼ばれた女生徒は咳払いをしてから真剣な表情で俺に向き合い、やがて口を開く。
「あのっ!今朝は勝手にイスとっちゃって、っていうか使っちゃってごめんなさいっ!」
…………?
「なんでまた謝ってんだ?お前…」
「だ、だってちゃんと謝れてなかったから…」
「私たちも、穂乃果が貴方の席のイスを使っているとは知らなかったので…本当に申し訳ありませんでした」
「ごめんなさいっ」
だからなんでお前も謝ってんの?しかも増えてるし…はぁ
確かこいつの名前は…
「高坂、だっけ?それに園田と、南?」
「!う、うんっ」
「はいっ」
「そうだよ」
どうやら合っていたようだな。
さて、高坂に園田、南。この3人はどうやら俺が朝の事をまだ怒っていると思っているらしい。だが、正直に言ってあんなことはこいつらが言い出してくるまですっかり忘れてしまっていた。
そもそもの話だ。一体なぜ俺がイスを勝手に使われたくらいで怒らねばならないのか?あの程度のこと、中学の頃だと日常茶飯事レベルであり、逆に何か異議を申し立てようものなら複数のグループから集中砲火を喰らい、それはそれは過ごし難い環境になっていた。小学校だと”帰りの会”という場で裁判沙汰になったりな…。
だから俺は、
「もう気にするな。あまり気にすると、気持ちが沈んでいくばかりだぞ じゃあな」
彼女らの中ではまだ残っているこの問題を、さっさと終わらせてやることにした。
それだけを言い終えて、俺は今度こそ帰路に就くために歩を進ませる…。
――――――――――― ― ― ― ― ―
少年が去っていった方向を見据えて、彼女らはそれぞれ思う事を口にする。
「なんだか…不思議な方、でしたね」
「うん、なんだか落ち着いてて…。私たちのこと、全然怒ってなかったね…穂乃果ちゃん?」
「…………」
「穂乃果?」
「海未ちゃん、ことりちゃん…」
「「?」」
「あの人にも、手伝ってもらおうっ!!」
「「……え?」」
直後、凜とした声と甘い声の絶叫。
二人の女生徒による絶叫が校舎内に響き渡ったのだった――――…
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翌朝。
教室に入って席につくものの始業のチャイムが鳴るまでどうも暇だったので、俺は鞄から本を取り出して時間を潰していた。のだが…
「ねぇねぇ臨也くんっ!この学校、無くなっちゃうんだって!」
「いや知ってるよ。昨日の話じゃねぇかそれ…」
「あははだよね~、ねっだからさ、何かいい方法ない?」
「は?」
ヤバい…こいつが何を言って何の話をしているのかが全く理解できない。
「う~んとね?昨日海未ちゃんとことりちゃんとで話したんだけど、この学校の良いところを見つけてあげれば入学希望者も出てきて廃校も免れるんじゃないかなって思ったんだけど…」
それがいい案出てこなくて、と高坂はその場で項垂れる。
もしかして昨日俺のイスを使ってまで話してた内容がこれなのだろうか?いやその前に廃校も免れるって…
「ちょっと待て。廃校も免れるってなんだ?さっきから何の話をしてるんだ?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「悲しいことにな」
「もうっ穂乃果は少し下がっていてください」
「む、む~…」
「あはは…」
そう言いながら、先程から高坂の後ろで黙っていた園田がこめかみを押えながら前に出てくる。
なんか苦労してそうだなぁと思いつつ、俺は園田の言葉を待つ。
「コホン…えっと、中原君もご存知の通り………」
園田の口から概要が語られる。
その内容は、この学校が好きだからなんとかして廃校を阻止しようということ。
廃校は入学希望者が定員を下回った場合…と発表にはあったので、だったら入学希望者を集めれば廃校にはならないと結論付けたこと。
そして先程高坂が言ったように、それなら学校の良い所を挙げてそこをアピールしてやれば入学希望者が増えてくるかもしれないといったこと。
「成程な、まぁ大体分かった。それで、思いつくのは伝統があるということくらい…」
「はい…あの、なにか他に思いつくこととかありませんか?」
「…ふむ」
ざっと俺は考える。しかし出てくるものは俺も似たようなものばかりだ。
「悪いな、俺も特に思いつくことがない」
「う~ん難しいよねぇ…ことりちゃ~ん何かない?」
「う~ん強いて言えば…」
「おぉっ、強いて言えば?」
「なんですかっ?」
「古くからあるってことかなぁ」
「「…………」」
今真顔で言ったから、南なりに真剣に考えたんだろうな。ただ、
「振り出しに戻ったな」
「うわーんもう何も思いつかないよおおおおっ!!」
「ほ、穂乃果ちゃん落ち着いてっ」
「やっぱり、一筋縄ではいきませんね…」
そりゃ一筋縄で廃校を免れる学校ならそもそも廃校なんかになるわけないだろうしな。
そこでふと、時計に目を向けると…
「おい、そろそろチャイムが鳴るぞ」
「そうですね、ではこの辺りで失礼します。…中原君、ちゃんと聞いてくれてありがとうございました」
「あ?あぁ…」
「ふふっ…ほら穂乃果席に戻りなさいっ授業始まっちゃいますよ」
「思いつかない思いつかない思いつかない思いつかないいいいい…っ」
「穂乃果ちゃ~んっ!」
…こいつら、どこまで本気なんだろうか。
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キーンコーン カーンコーン…♪
放課後。
いつまでも教室でもたもたしていると高坂に捕まりかねないので、俺はそそくさと教室を出た。
そして今現在、俺は理事長室へと向かっている。
なんでもこの音ノ木坂学院においての男子生徒は、この学校の校風はどんなものか?不便だと思った所等はないかなど、定期的にレポートを書いて理事長のところまで直接提出に行くことが義務付けられているのだそうだ。
コンコンっ
「どうぞ」
扉の向こうから聞こえる若々しい女性の声。
ガチャリ、と俺はドアノブを回して扉を開ける。
「失礼します」
「あら中原君、いらっしゃい。今日はどうしました?」
「いえ、レポートの提出に…」
そう言いながら、俺はレポートが入ったA4サイズの紙封筒を理事長に手渡す。
「まぁっ…ふふっありがとう中原君、いつも助かります」
「いえ、大したことは書けてないので…」
書いている内容といえば、あそこの~は撤去した方がいいとかあの教室の電灯が切れている、といったことくらいだ。
「それでも、ちゃんと書いてくれているだけで助かります。本当にありがとう」
「…では、この辺りで」
失礼しましたとその場を去ろうとするも、理事長は顔を変えて再度俺に話しかける。
教育者としての顔から、
「ねぇ中原君」
「?はい」
「ことりは、どんな様子かしら…?」
「小鳥?…あ」
少し考えて理解する。
そういえば、理事長も『南』だったか…
「ふふ、やっと気づいたみたいね。それで、どう?」
恐らくこれは、廃校の知らせがあってから娘の様子はどうだと聞いているんだろう。教育者の…理事長としてではなく、娘を持つただ一人の親として。
その場合、あんな知らせがあったら不安になっているかもしれないと思うのも仕方のないことだ。
だが、
「そうですね…お恥ずかしい話、自分は全くクラスメートと話したりはしないので、はっきりとは分かりませんが…まぁ、大丈夫かと思います。クラスに暗い雰囲気もないので」
むしろ、あの騒がしい高坂と一緒になって廃校を阻止すると言ってるくらいだ。
間違ったことは言ってないな。
「そうですか。…安心しました。中原君がいれば、何も問題はないようですね」
「え?いや、俺はあまり関係ないんじゃないかと…」
何を言いだすんだこの人は…
「そうですか?」
「そうですね」
くすくすと笑いながら言う理事長に、俺は答える。
さっきから笑ってるし、一体何なんだ…? これ以上ここにいたら理事長のペースに巻き込まれるなこれは、さっさと退散してしまおう…。
「失礼しました」
閉めた扉の音がガチャンと鳴って、あとは廊下の静けさが残る。
はぁ…やっぱりちょっと苦手かもしれないな、あの人は…。
「…帰るか」
壁にもたれ掛かって、そう呟いた瞬間だった。
「貴方、ちょっといい?」
「ん?……あ」
「ちょっと話がしたいのだけど」
「ええかな~?」
そこに立っていたのは、この学院を引っ張るツートップ的な立場にいる2人組。
音ノ木坂学院 生徒会。
生徒会長と生徒会副会長の2人だった。
お付き合い、ありがとうございました。
書き溜めてたのはここまでなので、次の投稿は少し遅くなります。
またお付き合いいただければ幸いです。
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