ラブライブ!~灰色少年は薔薇色を望まない~   作:ユカタびより

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お待たせしました。

今回、というより前から兆しはありましたがオリジナル展開です。
それでもよければお付き合いいただければ幸いです。



投下です。


2.彼女は温もりを感じて、再度向き合う。

 

 

 

 

「ちょっといいかしら?」

 

 

 

 

 

 理事長室を出て、帰路に就こうとした矢先に聞こえたそんな声。

 

 周囲には誰もいないので、俺に向けられた声だと分かってから後ろを振り向く。

 

 すると目に入って来たのは、金髪碧眼の女生徒にどこか紺色が混じったような黒髪でおっとりとした女生徒。

 

 生徒会か…何かしたっけか俺?

 

「はい 俺になんの用でしょうか?」

「あなた、今理事長室から出てきたわよね?一体どんな用事だったのかしら」

「まぁまぁエリち。気になるのは分かるけど、いきなりそんなこと聞いたら失礼や」

「…そうね」

 

 そう呟いて、エリちと呼ばれた女生徒はごほんと一回咳払いをする。

 しかしながら、既に俺はこの二人の素性を知っているので、名乗ろうとするであろう先輩を手で制する。

 

「いえ、大丈夫です。先輩たちが誰かくらいは、多少理解しているつもりなので…」

「あれ、そうなん?」

「はい ですので自己紹介などは省いていただいても問題ないですよ。副会長」

「あははっそうなんや!でもウチはあまりその呼び方、好きやないなぁ…」

「じゃあ東條先輩、でいいですかね?」

「うんっ!その方がいいっ」

 

 そう言ってはにかんだ笑顔を見せるのは、生徒会副会長『東條 希』先輩だ。

 

「私も同じように呼んで貰ってもかまわないわ。”会長”って呼ばれるの、あまり好きじゃないの」

 

 そして少し苦笑をしながら口を開くこちらの金髪碧眼の女生徒こそ、生徒会長『絢瀬 絵里』。

 

「分かりました。俺は2年の中原と言います、よろしくお願いします絢瀬先輩、東條先輩」

 

 頷いてから、俺は名乗って軽く頭を下げておく。

 さっさと帰りたいが、一応上級生だ。雑に応じて目をつけられるのもめんどくさい。

 

「…えぇ、よろしく」

「中原くんやね?覚えとくっ」

 

 いや別に覚えてもらわなくていいのだが。

 これから関わることなんて、まずないだろうし…。

 

 そんなことを思いながら、俺は最初に絢瀬先輩が聞こうとしてきたことを確認する。

 

「それで、なんで俺が理事長室から出てきたか、ということでしたっけ?」

「あ、そ、そうね。よかったら理由を聞かせてもらえるかしら?」

 

 あ、ってなんだよ絶対に忘れてただろこの人…。

 

 それにしても、レポートのことは生徒会にも知らされてないのか?一般の生徒に知らされることがないのは分かるが、まさか生徒会の…それも生徒会長と副会長である二人にも知らされていないのは、少し驚きだ。

 

 そう思ってから、やがて俺は口を開く。

 

 しかし…

 

 「まぁ別にそんなに大したことじゃないですけどね。俺達男子生徒は…先輩?どうしました?」

 

 事情を説明するものの、今度は2人とも驚きと不思議そうな顔でまじまじと見つめてくるので、俺は途中で止める。

 

「なにかおかしい所とかありましたかね?」

「い、いえ…その」

「案外普通に話してしまうんやなーって」

「は?」

「ちょっと希!…ごめんなさい。聞いておいて変なことだけど、まさか素直に答えてくれるとは思ってなかったの…」

「最近のエリち、ちょっとピリピリしてるところがあって他の娘からも少しだけ怖がられることが多いんよ。だからさっきみたいに普通に応えてくれた君に、エリちは嬉しく思ってるん」

「の、希っ…」

「はぁ」

 

 生返事をして、ふと俺は絢瀬先輩に視線を向ける。

 もしかすると、この人は責任感が強い方ではないだろうか?

 

「な、なによ…?」

「いえ…」

 

 

 

 

 

 『絢瀬絵里』という女生徒の噂は以前から俺の学年の間でも流れていた。

 全く人に興味がない俺でもある程度のことは耳に入ってきて、この学校にいたら知らない人はいないという程に有名な先輩。

 

 頼まれれば断ることなく嫌な顔一つせずに物事に向き合う姿勢、それ故に生徒・教師陣から集める厚い人望。一部の女生徒からは”お姉さま”と呼ばれているのを耳にしたことがある。

 そして外見的なものになるが、なにより特徴的な金髪碧眼。そして抜群なプロポーション…。

 何度も何度も同性からの告白があり、一時期それはそれは凄まじいものだったらしい。

 …元とはいえ女子高って怖いな。

 

 そんな絢瀬先輩がなぜ最近怖がられる様になってしまったのか?

 答えはすぐに出た。

 

 昨日理事長の口から知らされた廃校の知らせ。

 もし絢瀬先輩が強い責任感の持ち主であるなら、原因はそこにあるのだろう。

 

 責任感が強いという元々の気質、そして生徒会長という立場。

 この二つが絢瀬先輩に焦りを生ませて、結果それが表に出てしまい今に至る。

 この人にとって、廃校という知らせは悪循環しか生まない悲報以外の何物でもない。

 

 ……とまぁ、ここまで色々と考えてみたがあくまでも予想にすぎない。

 本当は俺なんかが知る由もない事情が、絢瀬先輩の中には渦巻いているのかもしれない。

 勝手な憶測はここまでにして、さっさと話を進めて帰らせてもらうとしよう。

 

 

 

 

 

「話を戻します。俺が理事長室に出入りしていたのは、レポートを提出する為です」

「「レポート?」」

 

 やはり知らなかったみたいだな。

 

「はい。俺達男子生徒は定期的にこの学院の校風や何か気づいたこと、改善した方がいいと思う事などをレポートとしてまとめて、それを理事長に直接提出することが義務付けられています」

「そうやったん…」

「理事長…そんなことは一言も…」

「どうして先輩達生徒会にも知らされていないのかは俺にも分かりません。…ただ分かるのは、理事長自身もなんとかして廃校という最悪の道を逃れようと、考えた手なのかもしれません」

「っ…」

「エリち…」

 

 この人達も、今回の事態に思う事は多々あるはずだ。

 ここら一体は他に使われてる教室などはなく、あるのは理事長室くらい。

 昨日の知らせがあった翌日に生徒会の者がこの辺りを通るなんてことは、理事長に用があってのことである可能性が高い。

 

「……そう、ありがとう。それと、長く捕まえてしまって…ごめんなさい」

「……………」

 

 納得してくれたのか、絢瀬先輩は一言と少しそう言って俺を解放する。

 

「そうですか、ではこれで失礼します」

 

 やっと帰れるのかと心の中でほっと一息しながら、俺は一礼してそこから立ち去る。

 

 しかし…

 

 

 

「ちょっと待って!」

 

 

 

 しばらく黙っていた東條先輩が、1オクターブ上げた声量で俺を引き留める。

 俺は再度彼女らの方に振り向いて、言葉を待つ。

 

「希…?」

 

 隣で不思議そうな目をして彼女を見つめる絢瀬先輩。

 

「中原くん。ウチ…私達(・・)はね?」

「はい」

「…廃校を、止めたいと思ってるのっ」

「そうですか」

「希?急にどうし」

 

 そんな絢瀬先輩の声を気にせず遮って、東條先輩は続ける。

 

「でもね、当たり前だけどその為のいい案なんて全然思い浮かばなくて」

「えぇ、分かります」

 

 現に高坂達がそうだから。

 

「だけど」

「はい」

 

「この娘の…エリちの望みだけは叶えてあげたい!」

 

 絢瀬先輩の手をぎゅっと握って、東條先輩は高らかにそう言い放つ。

 

「希……ありがとう」

 

 そして絢瀬先輩もまた、そんな東條先輩に同じように握り返すことで応える。

 

 っていうか…

 口には出したくないけど、ぶっちゃけ俺置いてけぼりだな。口には出したくないけど。

 

「…そうですか。やはり東條先輩たちも廃校を阻止する為に動いているというわけですね」

「も?」

「えぇ、実は俺のクラスにもまた1人、いや3人の奴らが廃校の阻止に昨日から動き始めました」

「!?」

「…ふふ、そうなん」

 

 まぁ本気かどうかは分からんけどな。 

 そもそもどうしてどいつもこいつも廃校という運命に逆らおうとするんだろうか。

 特に今回の場合、廃校になるのは在校生が全て去った後となるのだから、自分たちが実害を被ることなどまずないだろうに。むしろ下手に動いた方がマズいんじゃないの?主に内申的な意味で。

 

 でも、廃校の阻止なんていう規模が計り知れない問題にこの人達は立ち向かう訳だ。

 そんな度胸を持った人達が、今更誰かに言われたからといって活動を取りやめるなんてこともあるわけがない。

 

 そういえば、どうしてこの人達は理事長室へと向かっていたのか?

 別に考えようとも思わなかったはずなのに、さっきの東條先輩の発言の中でつい疑問を持ってしまった。

 

 これもまた唯の推論にすぎないが、この人達は自分たちが活動する許可を理事長から貰おうとする為に、わざわざ理事長室まで向かっていたのではないだろうか。例えば…

 

 『生徒会としても、学校存続に向けて活動をしていきたいと思います』

 

 といった具合に。しかし、行ったところで帰ってくる答えは目に見えるだろう。

 特に、焦りを持った今の絢瀬先輩が行ったならなおさら…。 

 

 だから俺は、

 

「絢瀬先輩、東條先輩」

「「?」」

「これは、あくまでも俺の推測にすぎないので、話半分に聞いてもらえたらなと思います」

「…何かしら?」

「どうしたん?中原くん」

 

「大したことではありません。ただ…理事長室に行くのはやめた方がいいかと」

「「!?」」

 

 俺は俺に出来そうなこと。

 単純に、唯の一般生徒としての意見をそのまま活動者に伝える。

 気休め程度だが、ただ思ったことを伝えるくらいはしてやろうと思った。

 

 すると、二人の表情が驚愕に染まる。

 やっぱり当たってたのか…。

 

「な…」

「わぁ…これは驚いたなぁ…なんで分かったん?」

「言ったように所詮推測です。理事長室よりここから先は使われていない空き教室が続くばかり。あんな知らせがあった翌日に生徒会の、しかも生徒会長と生徒会副会長なんて立場にいる人がこんなところに通りがかるといったら…とか考えた結果ですよ」

 

 まぁ自分でもこんな穴だらけの推測が当たるとは思わなかったけどな。

 そもそも俺探偵でもないし。薬で小さくなったりもしてないし、じっちゃんの名をかけたりもしない。ついでに超高校級でもなければ魔人でもない。

 

「あははっ!中原くん探偵さんみたいやぁ」

「だから違いますって」

 

 東條先輩とそんなやりとりをしていると、

 

「…中原君は、どうして理事長の所に行ったら駄目だと思う?」

 

 ポツリと。

 絢瀬先輩は呟くようにして俺に聞く。

 

「…さぁ、分かりません。別に俺は、特別あの人と仲が良いというわけでもないので…ただ」

「ただ?」

「ただ、理事長の人柄とかを色々考えたら…」

 

『思い付きで行動しても、簡単に状況は変わりません』

『生徒会は、今いる生徒の学院生活をよりよくすることを考えるべきです』

 

「って言われるんじゃないかなとは思います」

「……………」

「……………」

 

 あの人は、この学院の誰よりも生徒のことを考えているのだろう。

 それは、数多くの生徒を束ねる組織の生徒会も例に漏れず…。

 

 誰よりも生徒の事を考えていると同時に、誰よりも今回の事態に対して悲しみが大きいのだ。

 だからさっき、理事長は俺に聞いてきたのだろう。

 娘を持つ一人の母親としての顔に変えて、自分の娘は同じように苦しんでいないかということを。

 

 案外、誰しも等し並みに悩みを抱えているということか…。

 と、このように色々と考えているところへ

 

「…ねぇ、中原君。あなたさえよかったらなんだけど」

 

 ふと、絢瀬先輩の呼ぶ声。

 何故かその声音は、すっきりと透き通ったようなものではっきりと聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生徒会に…入ってくれないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――― ― ― ― ― ―

 

 

 

 【絵里side】

 

 

 誰もいなくなってシンと静まり返る廊下。

 そこに残った静寂が、私と希を包み込む…。

 

「不思議な、子やったね」

 

 沈黙を破るようにして、希が口を開く。

 

「…えぇ、今までに出会ったことのないような、ね」

 

 昨日の廃校の知らせがあってから、私は随分と焦っていた。

 希が言ったように、最近の私はどこか話しかけ辛くて近寄りがたい雰囲気を出していたのかもしれない。

 

 ふと私は思い返す。

 希以外で私とまともに向き合って話してくれた人は最近いただろうか?

 考えてみても、思い浮かぶのはやっぱり希と、それにさっきの彼…。

 

 まさか理事長の所へ行くことを当てられるとは思いもしなかった。

 それに、止められることも…。

 

「エリち」

「なに?希」

 

 思い返していると、希が再び声を掛けてくる。

 

「振られちゃったね?」

「…ふふっ そうね」

 

 結論から言うと、彼は…中原君は生徒会に入ることを断った。

 

 

『え?お断りします。…でも、どんな形であろうと先輩達にとって良い結果を出せることくらいは密かにお祈りしてます。…では』

 

 

 …良い結果、か。

 廃校を免れるということ以外にも、そんなものあるのかしら…?

 

 さっきのやりとりの中で、私は彼を生徒会に誘った。

 理由は自分でも分からない。

 ただ…彼が言い放ったあの忠告によって、少し気分が落ち着いたということだけは分かる。

 少なくとも、彼と出会うまでより遥かに頭が整理された気がする。

 

 本当に、不思議な子だった。

 

「ねぇ希」

「ん、どしたんエリち」 

 

 今度は私から話しかける。

 

「ありがとね」

 

 廃校を阻止する為にこれまで、そしてこれからも活動していくにあたって一緒に付き合ってくれるであろうたった一人の親友に、改めてその言葉を伝える。

 

「……も、もぉ~なんなん急に~。それにさっき聞いたよ?それ」

「あら、別にいいでしょ?わざわざ口調変えてまで言ってくれたんだから」

「う、な、なぁエリち…さっきのはその、忘れてくれるとありがたいんやけど…」

「嫌よっ♪」

「っ…むぅ、エリちの意地悪…」

「ふふふっ さぁ希っ戻りましょうか」

 

 ちらりと自分の手を見やる。

 

 その手にはまだ…温もりが残っている。

 

 

 

 

 




お付き合いありがとうございました!

希と絵里がおかしい!ん?とかまず展開がおかしいってなった方、申し訳ありませんでした!

これからもオリジナルな展開を予定してますので、よければお願いします。




では次回、『攻殻機動隊?いいえ、スクールアイドルです』

次回もよろしくお願いします。


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