ラブライブ!~灰色少年は薔薇色を望まない~   作:ユカタびより

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お久しぶりですユカタびよりです。

遅くなりました。
約2週間ぶりの更新でしょうか?

では投下です。

※今回穂乃果ちゃん達は一切合切出ません。


3.攻殻機動隊?いいえ、スクールアイドルです。

 

 

 

 

「あ~…疲れた」

 

 

 

 

 

 ようやく学校を出ることができた。

 気怠い足取りで帰路に就きながら、一回二回とコキコキと首を鳴らしてそんなぼやきを漏らす。

 

 いや本当に疲れた。今だから言えるが絢瀬先輩に声をかけられた時汗の量が尋常じゃなかったからな。

 職質されるかと思ったわまじで。実際それに近いことされたんだけどな、尋問みたいな。

 まぁ今となってはどうでもいいことだ。

 帰るべ帰るべ…。

 

 

 

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 しばらく歩くと街中に出る。

 もうすぐ日が沈む時間帯になるからか、夕飯の食材を買いにきているご婦人方が大変多い様子だ。

 そんな群衆の中に、一人だけ小学生と思えるような女の子が見える。はて、おつかいだろうか?

 

 

 

「今日は何にしようかしらね。こころ達に何が食べたいか聞いてくるの忘れちゃったのよね…」

「野菜炒めは昨日食べたし、肉じゃがは一昨日だったでしょ?悩みどころね~…」

 

 

 

 ―――なにやら難しい顔で一言二言とぶつぶつ呟きながらその少女は人混みの中へと消えていった…。

 あまりよく聞き取れなかったが、小学生にしては達者な口調だったな。

 

 ヴーヴー ヴーヴー…

 

 少女が消えた先を見ていると、ポケットの携帯が鳴ったので取り出して確認する。

 画面には、

 

 

 

『ごっめ~んお兄ちゃん!今日お父さんとお母さんいなくて、冷蔵庫の中も何もないから適当に何か買って食べてねっ☆  PS.私は友達と食べて帰るから無問題なのですっ!』

 

 

 

 以上、たった今妹から送られて来たメールの内容である。

 実にそこはかとなくイラッと来る文体だが極力スルーすることが大事だろう。

 しかしそれにしても…

 

 

 

「なんか今日ツいてねぇなぁ」

 

 

 

 朝はあの3人から訳の分からない目論見を聞かされた後に話に付き合わされて…

 放課後は本来なら全く関わるはずもない生徒会の、それも会長と副会長に絡まれて…

 そして今。

 

 …っていうかよく考えると、高坂達との絡みは昨日からじゃねぇか。

 つまりツいてないのは昨日からということになる…。

 

「不幸だ―、なんていったら本家の人に怒られるかな…」

 

 はは…と自分でも分かるくらいに渇いた笑いが口から漏れる。

 しかしこうなってしまったものは仕方ない。いつまでも嘆いていないで、今日の夕飯は外食で済ますことにしよう。

 

 

 

「金、あったかな…」

 

 

 

 ゴソゴソと俺は鞄の中から財布を取り出して中身を確認する。

 すると中には、諭吉2人に一葉1人英世3人、後は硬貨という名の兵士がゾロゾロと詰め込まれていた。

 おいおい俺の財布(パーティ)魔力高すぎるだろ。戦争でもおっぱじめんのかってくらい揃ってんぞ主力が。

 でもキング2人にクイーン1人って内乱待ったなしじゃないのこれ?

 一人の女を巡っての男同士の戦い。やっぱり北斗の拳は名作だよなぁ…。

 

 とはいえ、たった一度にこれを全て使い切るなんてことはする気にもなれない。

 あったらとっくにこいつらはここにはいない。暗いレジドロワーの中で長く眠るか、ATMもしくは他人の財布の中で眠るか、という運命を辿っていただけだろう。

 

 しかし金は天下の回り物。

 人へ人へと移っていくその運命こそが正しいのだ。

 

 

 

 

 

 ”運命”…か。

 果たしてそれは、変えられるものなのだろうか?

 

 

 

 

 

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 少し歩いて人気が少ない広場まで来てから、俺はその辺りの壁に背中を預ける。

 もたれ掛かる壁の冷たさをどこか心地よく感じながら、俺は絢瀬先輩たちとのやりとりを思い出す。

 

 

 

 絢瀬先輩は廃校という一つの問題に随分と悩まされているようだった。

 東條先輩曰く、絢瀬先輩は最近はピリピリしていて他の生徒から怖がられることが多い。

 それはやはり、今回の事態に対して動揺を隠せないことと廃校を阻止しようにもどう動けばよいのかというものから来るもどかしさ故のものなのだろう。

 しかし意外だ。所詮噂からのものだが、俺は絢瀬先輩とはもう少しクールであまり感情を表に出さない性格の持ち主、悪い言い方だがポーカーフェイスを気取っているようなイメージを持っていた。

 …いや、もしかすると本来ならそうだったのかもしれない。

 ただそれだけ、絢瀬先輩にとって重いものだったということだ。

 

 

 東條先輩は、そんな絢瀬先輩の望みを叶えたいと言った。

 直接口にも出した通り、東條先輩自身も廃校を何とかしたいとは考えているのだろう。

 しかしそれよりも、東條先輩は今の絢瀬先輩のことを何とかしてあげたいという想いの方が強いのではないかと思えた。

 

 

 

 『この娘の…エリちの望みだけは叶えてあげたい!』

 

 

 

 はっきりと、高らかに言い放ったあれは現時点においてだが東條先輩自身が一番やりたいことだったのではないかと今に思う。

 

 

 絢瀬先輩に東條先輩。

 結局あの後あの二人は理事長室に行ったのだろうか?

 唯の、それも男子生徒というかつて女子高だったあの場所では実質イレギュラーといっても過言じゃない存在であるこの俺の意見にまともに耳を傾けていたという方がおかしい話だし、行っていても不思議ではないな。

 きっと行ったはずだ。実際そうするしか、生徒会が動く道は他にはない。

 上からの指示がないと碌に行動もできないってなんて奴隷チック!別称”社チック”である。

 

 しかしそれにしても、別れ際に絢瀬先輩が口にしたあの一言…

 

 

 

 『生徒会に…入ってくれないかしら?』

 

 

 

 いつもの癖で流れ作業のように断りをいれて、さっきのような不自由さもあるからそれでよかったのだがどうも引っかかるものがある。

 なぜあの人は会って間もないこの俺を生徒会に誘ったのだろうか?

 生徒会っていうのは本来内申がすこぶる、もしくはそこそこ良いと思われる人間が入るイメージだ。

 良くもなく悪くもない評価を持たれているであろう俺が入ったところで、肩身が狭い思いをするだけだ。

 そもそも俺は自ら自分の体に悲鳴を上げさせるような性癖は持ち合わせていない。

 よって、断りを入れておいて正解だった。

 

 どんなお誘いにも、まずは堅実な拒絶を。ここ、大事。

 

 

 ふと携帯の画面をつける。ただ今の時刻は16:30。

 つい色々と考えてしまったが、あまりもたもたしていると暗くなってしまう。

 はやくどこか食べに行こう。さてどこにしようか…?

 そんな風に頭の中でいくつか行き先の候補を挙げていたその時―――

 

 

 

 

 

「だ~か~ら~さ~、ちょっとくらい付き合ってくれても良いじゃ~ん!」

 

 

 

 

 

 と、すぐ近くからいかにもお調子者といった感じの間延びした声が聞こえて、俺の思考は中断されたのだった。

 糞…うるせぇな一体どこのどいつだ?今何時だと思ってんだよ4時半だぞ4時半。

 あと30分で5時だっつーの。カラスが鳴くからさっさと帰れ、俺は腹が鳴ってるから食ってから帰る。

 

 そういうわけなので、俺はそんな声は聞かなかったことにして足を動かす。

 若干早足になっているのは気のせいだ。

 さ~てとりあえず退散退散。

 

 しかし…

 

 

 

「本当にごめんなさい。私達、急いでるんです」

「申し訳ないが、本当に諦めてもらえないだろうか?」

「ごめんなさいね」

 

 

 

 なぜか俺の進行方向の先に、数人が揉めているような様子が目に入る。

 チャラそうな男が数人見えるし、先程の妙な声の元はあそこからの様だ。

 ちなみに、彼ら彼女らは広場の入口を塞ぐ形で揉めているのでこのままでは広場からは出られない。俺に残された道は正面突破というたった一つしかないのだ。

 勘弁してくれよ…。

 

 辟易としつつも俺は目を細めて、ついでに影も薄めてその様子をしばらく観察する。

 そこにいた者達は…

 

 白い制服に身を包んだ女生徒らしき女の子が3人。

 その制服には見覚えがある…っていうより、毎日家で見ている。

 俺の妹が通う高校の制服と全く同じものだ。つまりあの制服は…

 

 

 

「UTX学院か」

 

 

 

 都内でも有数なお嬢様学校として名のあるその学校名をボソっと呟く。

 

 そしてそんなUTX学院の女生徒たちに絡むチャラそうな男が3人。

 男たちの方は全員もれなく髪を金髪に染めていて、いかにもチャラ男という雰囲気を持っている。

 チャラ男達の声が聞こえてくる―――…

 

 

 

「ちょっと一緒に遊んでくれたらいいんだって!なぁ頼むよ~」

「…おい、この娘よく見たら他の二人に比べておっぱいデカくね?俺好みだわ」

「いやどこ見てんだお前」

「見てませーんちょっと気になっただけでーす(笑)」

「「一緒じゃねぇか!(笑)」」

 

 

 

 男二人が声をそろえて突っ込む。仲良いね君たち。

 

 にしてもあの男センスがあるな。あの切り返しセンスはどこか感嘆するものがある。

 今度機会があったら使わせてもらおう。…あったらな。

 それにしても彼ら、いわゆるヤンキーという人種は時折面白いことを言ってくるから困る。

 中学の時とか俺の席の後ろでヤンキーが騒いでいても気にせず机に突っ伏していたが、突然面白いことをいうものだから吹き出してしまった。

 結果気づかれて「何笑ってんだよwww」と背中をはたかれて殺意が芽生えたがすぐ収まった。

 べ、別に怖かったからとかじゃないんだからねっ!いやマジで。ただ面白いものも聞けたしいっかという気持ちからである。

 正直ヤンキー程、”憎めない存在”という言葉が似合う人種はいないと思う。代名詞になってもおかしくはない。

 

 おっと、つい思い耽ってしまったがそれどころじゃないな。

 ヤンキー特有の本気で言ってるか冗談で言ってるか分からない評価を下された彼女たちはというと…。

 

 

 

「「「………………………」」」

 

 

 

 あ、俺あの眼知ってるわ。女子が心の底から本気で気持ち悪いと思ったものに向ける眼だわ。

 なんかどっかで見たことあったな~と必死に記憶を手繰り寄せて、俺はそれを思い出す。

 さて、反応はそれぞれ同じ。しかしその表情だけは三者三様である。

 

 

 ショートボブで異様なほどにデコが広がっている少女は頭を押さえながらはぁ…と溜息を吐いた様子を。

 

 東條先輩よりも少し濃く紫がかった黒髪のロングヘアの少女は困ったような、しかしどこかうんざりもしたような表情を浮かべている。

 

 そして、男たちに直接話題にされた少女。男たちの言ったように他の二人と比べると少しスタイルが良く(特にどことは言わない)、ウェーブがかった茶髪のロングヘアのその少女は先程の件の眼をしつつ、口角だけを無理やり吊り上げた表情だ。つまり目が笑っておらず空笑いをしている。

 

 

 このようにそれぞれの反応を窺って見たが、まぁ普通だな。

 もしあの女生徒が「きゃーホント!?そんなこと言ってくれた人初めてだよぅ私嬉しぃ♡」なんて抜かしてたらはっ倒してたところだ。

 

 さて、ではどうしよう?

 あらかたの様子は大体予想ついた。別に珍しいものでもなんでもない、男たちから仕掛けた一方的な唯のナンパだろう。ああいう輩のナンパはただ断っただけじゃ引いてくれないから質が悪い。

 Yesと言うまで開放してくれないのだ。無限ループとかお前らスクエニの回し者?

 

 何はともあれ、俺はこれからあの修羅場の渦中に飛び込んでいかなくてはならないのだ。

 嫌だなぁめんどくさい…。

 

 

 

 すうぅぅぅっ……はあぁぁぁぁ~…。

 

 

 

 よし、ほんじゃまぁ…行きますか。

 深呼吸をしながら謎の覚悟を決め、俺はいざ行かんとばかりに足を一歩前に踏み出し始める。

 

 

 

「…あ、その前に一応やっとくか」

 

 

 

 とある仕込みをして…。

 

 

 

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 【???side】

 

 はぁ…困ったことになっちゃったわね。

 これからまた学院に戻ってレッスンの続きをしないと駄目なのに、この人達全く引いてくれる気がしないわ。

 英玲奈も私と同じでどうしたらいいのか分からないみたいだし、あんじゅは笑ってるけど笑ってないって感じだし、はぁ…本当にどうしましょう…。

 

「っていうかさ~」

 

 悶々とした気分で頭を悩ませていると、男の人の一人が再び口を開く。

 もう、今度は何を言ってくるのかしら…。

 

「俺今思い出したんだけどさぁ、君らってアイドルっしょ?現役の」

 

 あら、気づいてなかったのかしら?でもこの流れは少しマズいわね…。

 

「は!?アイドル!?」

「ちょっとお前、釣れねぇからってその口説き方はねぇわー。爆引きだわー」

 

 爆引きってそんな使い方だったかしら…。多分、ドン引きとかのニュアンスで使ってるのよね?

 すこぶるどうでもいいことを考えながら、私は男の人達の会話に耳を傾ける。

 

「いやいやテッちゃん、アイドルはアイドルでもしょこたんみたいな芸能人じゃないよ?」

 

 そうよテッちゃん、流石に私達もそこまではいかないわよ。いつか昇りつめてみせるけど…。

 

「なにぃ?じゃあマツコみたいな感じか」

「テッちゃんそれ芸人」

「もう分かんねぇよ!アイドルって言ったら芸能人なんじゃねぇのかよ!?」

「まぁそうなんだけど、違うんだって!…」

 

 ギャーギャーと今度はアイドルの定義(?)についての論争を勃発させる男の人達3人。

 っていうかこの人達、話す内容が漏れないように円陣を組んで私達に背中を見せる形で話しているけど、けっこうまる聞こえなのよね…。

 

 あれ?これ今のうちに逃げられるんじゃない…と思ったのもそこまでだった。

 男の人達の騒がしい声がやがて鎮まり…

 

 

 

「はぁ…なぁもうめんどくさいし、強引に連れていかね?」

「んーそうだな」

「さんせーい」

 

 

 

 ―――そんな会話が私の、私達の耳に入ってきた…。

 

「ツバサ…」

「どうするの…?」

 

 今の彼らの不穏な会話で、二人共一気に不安な気持ちになってしまったようだ。

 英玲奈とあんじゅが小声で私に問いかける。

 

 あ~あ、やっぱりマズい流れだったわね…。

 

 この人達は最初からは気づいていなかったけど、私達はけっこうな知名度があるアイドル。

 その度合いは、この辺りの人達だったら私達を一目見れば何者かくらいは分かるほどのもののはずだ。

 ではそれほど名の知れた私達が街中を歩いていて、もし会ったこともない知らない男の人に声を、所謂ナンパをされたりしたらどう対処すれば良いのか?

 

 実はそれだけだったら簡単だ、普通に断ればいい。

 だけど、今回のこの人達のように強引でなおかつ断っても全く引く気配がない人達が相手だと対処のしようがないのよね。

 私達がそこそこ有名なアイドルだって知ったことで、この人達は余計に私達を見逃してくれそうになくなっちゃったみたいだし…。

 

 こんな状況を打開する良い方法といえば…強いて言うならば人を呼べばいいのだけど、この辺りは人気が全くない広場。

 広場の外を通る人達に目を見やっても、すぐに気まずそうに目を逸らしてスタスタと行ってしまう。

 

 …まぁそれはそうよね。こんな誰が見ても修羅場真っ最中ですーって言ってるような雰囲気の中に、自ら飛び込んでくる人なんているわけないか。

 そもそもその前に、アイドルだからそんな目立つことができるかどうかも怪しい…。

 

 はぁ…。

 もう何度目か分からない溜息を吐いて、どうしようもないことを頭で理解しつつも目を瞑って思考する。

 だけどその行為によって思いつくことなんて当然なく、私の頭の中はただただ今のこの状況から目を逸らしたいという思いで埋まるばかりだ。

 

 そして今こんなこと考えている間にも…

 

「よ~し!じゃあしょうがないから、俺達がエスコートしてやるよ(笑)」

「はははっ似合わねぇ」

「それな(笑)」

 

 そんな男の人達の声に混じって、私に向かって腕が伸びてくる気配がする。

 

 誰か…

 

「ツバサ!」

「まぁまぁほら!いいからいいからっ」

「嫌、離して…っ」

 

 

 

 誰か、助けて…っ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガシっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は?」

「「へ?」」

「な…」

「え?」

 後ろから男の人達の間の抜けたような声が聞こえて、次に英玲奈とあんじゅの声。

 向かってきているはずの腕はいつまで経ってもくることがなく、何があったのかとゆっくり目を開ける。

 

「!?」

 

 何が起こっているのか全く分からなかった。

 

 視界に入って来たのは微妙に開かれた掌。

 案の定間近に迫り、伸びてきていた腕は見えない壁に当たっているかのようにその場で止まっている。

 

 

 

 

 

 いや、止められている。(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 ここにいる誰でもない、第三者の手によって。

 目の前の男の人の視線は、とある一点に集中している。おそらく後ろの4人もそうなのだろう。

 いったいどんな物好きが飛び込んできたのかと、私もつられるようにゆっくりとその視線を辿っていく。

 

 そして――

 

「…は?はあぁ!?なに、誰お前?」

「こいつ、どっから出てきたんだ?」

「さぁ、わかんね。…で何お前?俺達になんか用?」

 

 男の人達の口から困惑したようなそんな声が、次々と発される。

 そこには男の人がまた一人、立っていた。

 

 

 

 

 

「…用?あぁ、あるよ。あんたは今、この腕で何しようとしてたんだ?」

 

 

 

 

 

 青いブレザーで身を包み、風でさらさらとなびく長くも短くもない黒髪。

 前髪がなびいて、見え隠れしている垂れ目からは何か力強いものを感じる…

 

 そんな男の人だった。

 

 

 

 

 

【ツバサside end】

 

 

 

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 ――数分前――

 

 

 

 よし、とりあえず仕込み完了だな。

 まぁそんなに御大層なものじゃないが念の為だ。

 

 男たちの視界に入ることのないように隅っこに移動して仕込みを終えて、じゃあ今度こそ行くかと前に向いた瞬間だった。

 

 

 

「はぁ…なぁもうめんどくさいし、強引に連れていかね?」

「んーそうだな」

「さんせーい」

 

 

 

 いよいよそんな不穏な会話が俺の耳に入って来た。

 そして彼らは彼女達に一歩近づいて、それぞれ二人の腕を掴んだ。

 あと一人は目を瞑ってただ俯いているように見えるが、あの様子ではあっという間にあの娘も同じように引っ張られていくだけだろう。

 

 こんな状況の中で、俺は考える。

 正直言ってしまえば、もうこのまま放置していたらあの騒動は間もなく終わりを迎えるんじゃないだろうか?

 そういうことなら、今なら引き返せる。まだ大丈夫なのだ。

 だいたい正義の味方じゃあるまいし、目の前で困っている奴がいたら助けるなんてことは別にしなくてもいいはずだ。

 そもそもの話だ。生憎俺は自ずから痛い目に遭いそうな状況へ飛び込むなんていうマゾヒストが極めるような趣味は持ち合わせていない。 

 バッドエンドを迎えるのは会ったことも話したこともない知り合いでもなければ、顔も知らないただの他人である彼女達だ。  

 

 ここでただ見なかったことにするという選択肢を選ぶことが、どれほど楽で、どれほど安全だろうか…。 

 

 

 

 

 

 

 …………だけど

 

 

 

 

 

「まぁでも、やれるだけやってみるか」

 

 後味悪い結末を頭に残すなんていう趣味も、生憎俺にはもっとない。

 そんなものを残して飯時を迎えるなんていうことも勘弁被る。

 僅かながらの迷いを断ち切って、同時に再び覚悟を決め、俺は本当に今度こそ隅っこを移動しながら彼らに近づいていった。

 

 

 

 ―――止めるべきは、あの男の腕だ。

 

 

 

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 そして今現在。

 俺は男の腕を掴んで、行き過ぎた行為に出るのを阻止することに成功した。

 どうやら間一髪だったみたいだな。

 

 しばらくして、男が呆けた顔を直していかにもイラついたような声で再び問いかけてくる…。

 

「…は?いきなり何言っちゃってんのお前??」

「なんだ聞こえなかったのか?だったらもう一度言ってやる。この腕で、あんたはこの娘をどうしようとした」

 

 お楽しみを邪魔されて、分かりやすいほどにその声には明確な怒気が孕まれていた。

 

 

 

 しかし、そんなことは関係ない。知ったことではない。

 

 

 

 俺は掴む腕に力を少し込めて、傍らでポカンとしている少女を見やって再び男に問う。

 しかし、

 

「っ!?イッテーな離せよオラ!」

 

 男が空いた手でブンっと殴りかかってきたので、避けると同時にそのまま放してしまった。

 まぁでも、空気を変えてやること位はできたようなのでこれはこれで良かったのかもしれない。

 後ろに下がる形で避けると、視界に入った男二人が口を開く。

 

「なぁあんた、いきなりなんな訳?俺らせっかく楽しんでたっていうのにさ」

「そうそう、自分がモテないからって俺らが女の子と絡んでんの邪魔するとかやめてくんない?」

 

 最初の男と同じく、二人の声に怒気が孕んでいることが分かる。

 邪魔する?ふざけんなよ、こちとら誰がてめぇらみたいなもんの為にわざわざ貴重な時間を割いてそんな御大層なことしてやるものか。

 

 何やら俺までイラッとしてきたが、そこはなんとか顔に出さない様に平常心を保ちつつ、俺は口を開く。

 

「ナンパはあんた達の勝手だ、好きにしたらいい。だけど、流石にそれ以上はマズいんじゃないのか?」

「「「はぁ??」」」

「「「…………」」」

 

 女生徒3人は未だに口を開けてポカンとした表情でこちらの様子を見ている。

 一方、男ら三人は「何言ってんのこいつ?」だの「頭おかしんじゃね?」「ウケる(笑)」等と口々にしてゲラゲラと嘲笑うかのような反応を見せる。

 

 そうか…言わないと分からないか。これだからこういう奴らを相手にすんの嫌なんだよなぁ。

 ヤンキーやチャラ男が”察する”ということができないのは、もしかして万国共通レベルに広がっているのだろうか?

 もう既にこの時点で鬱ゲージがカンストしそうだが、何とかこらえながら話を進める…。

 

「…分からないなら何度でも言わせてもらう。あんた達がナンパをしようがそれは勝手だ。だが誘いを断られたからといって強引に連れていくっていうのは、そこからはもうナンパじゃないんじゃないのか?」

「はあぁぁぁ!?本当に何言っちゃってんのお前??」

「つーか断られてねーし!」

「ほんまそれな!だからお前はさっさと俺らの前から消えろって!今なら見逃してやるから」

 

 ほーん…断られてない、ねぇ。

 

「だったら念の為に、本人達に尋ねてみてもいいか?それでもしそうなら、おとなしくあんた達の前から消えるとするよ」

「「「はぁ!?」」」

 

 傍から「お前ふざけんなよ!」「断られてないって言ってんじゃねーか!」だの必死に抗議するかのような声が飛んでくるが知ったことではない。

 俺は彼らの返答を聞く前にそのまま彼女達に顔を向ける。

 それにしてもこいつらずっとはぁはぁ言ってんな、発情期かよ。そりゃナンパでもしないとやってられんわな。

 

「なぁ」

「は、はいっ!」

 

 おうふ、なんか妙な反応されたけど俺変な顔とかしてないよな?…大丈夫だよね??

 

「今の話聞いてたよな?君たちがどう答えたか教えてもらってもいいか?」

 

 なるべく怖がらせないような口調と声音で、俺はショートカットの娘に尋ねた。

 

「は、はいっ…あの、断りました。ちゃんと」

「そうか。…後ろの二人もそうなのか?」

 

 視線を黒髪の娘と茶髪の娘に向ける。

 返ってきた反応はコクコクと頷いて問いかけに肯定したもの。

 

「「「なっ!?」」」

「分かった、ありがとう…だ、そうだが?」

 

 一言礼を口にして、俺は顔を男達に向け直す。そしてしばらく間が空いて、

 

「………この、アマァ!」

 

 男の一人が遂に逆ギレをして、ショートカットの女の子に掴み掛ろうと行動に出た。

 正直予期せぬ展開という訳でもなかったので、俺は即座にそいつの腕を掴んで制止する。

 

「ッ!クソっ放せや!!」

「だから暴力はよくないだろ」

「ふざっけんな!…そうだ、大体お前が入ってこなきゃ上手くいってたんだ。おら、謝れや」

「はぁ?」

 

 ヤバい伝染った、いやそうじゃない。この男、余りにも冷静さを欠き過ぎているな。

 いよいよ支離滅裂な発言が飛んできた。

 男の発言に軽く呆けていると、

 

「チッ、てめえは引っ込んでろ!」

「危ない!」

 

 女生徒の声が聞こえたと同時に、別の男が殴りかかってきたので俺は今腕を掴んでいる男をグイっと引っ張ってそのままそちらにぶつけた。

 

「がっ!?」「うわっ!?」

 

 上手く衝突してくれて悲鳴を上げる男達二人。

 しかしまだ安心するには早く、次は横から残りの一人が殴りかかってきたのでそれを躱し、その腕を取って後ろに回り捻る。

 

「いでぇっ!?」

 

 そして近くに丁度良い壁があったので、男の身体をそのまま壁に押しつけ、涙目で睨んでくる(ちょっと可愛い)男の目を真正面から睨み返す。

 そして、俺は携帯を取り出して片手でスイスイっと画面操作をしてとある画面を見せながら、トーンを少し抑えたちょっと怒ってますよ~感のある声で男に告げる。

 

「…悪いが、あんた達がやっていたことは既に伝えてある。もう間もなく来る頃だと思うが、もしこのままおとなしく引いてくれるなら勘違いだったと伝えておく…どうする?」

 

 腕を掴んでいる手に若干の力を込めて、俺は笑いながら(・・・・・)そう言った。

 

 『いざやくん笑ったおかおこわーい』

 女子に本気で怖がられた小学4年のあの夏の日…。

 小学生って思ったこと隠さないから告白とかやりたい放題だよね。

 

 何が言いたいのかっていうと、俺の笑った顔はまぁつまり…そういうことだ。

 その証拠に…

 

「ひ……っ!わ、わかった……引くっ、引くから!」

「そいつはどうも」

 

 異常な程に怯えて戦意を喪失する男。

 俺は拘束を解いて、やや強めに背中をトンと押して仲間の方へ行かせる。

 三人は忌々しそうにこちらの方をチラチラと見ながら、やがてそのまま離れていった。

 

「はぁ…」

 

 ようやく片が付いて、俺は安堵の息を漏らしながら手に持っている携帯の画面を一瞥する。

 その画面には、俺が事前に仕込んだものが明確に映し出されていた。

 

 

 

     【通話履歴】

 

 千代田警察署    10分前

 

 

 

 俺があらかじめ実行した仕込みとやらはいたってシンプル。

 警察に、今〇〇の広場で複数の男の人達が学生らしき女の子達に絡んで乱暴なことをしようとしています、と伝えたような痕(・・・・・・・)を残すことだった。痕を残すことが目的なので当然繋がる直前に通話は切ったが、もし繋がっていたら心の中で謝っておく。

 とにかくそれをいざという時に見せて、そういった旨を一緒に伝えれば…という考えからさっきの結果である。まぁ成功だろう。

 

 正直言って上手くいくと思っていなかった。

 賭けだったのだ。あんな状況に出くわすことなんて今まで全くなかったから、こんなにも些末な案しか思いつかなかった。

 しかし、それでも成功した。

 もう少し知能が高い奴が相手だったなら、今俺はこうして立っていられないだろう。

 …いや、さっきの三人にのっけから見せていた場合でもそんな結果は然りだな。

 あの極限、とまではいかないかもしれないが冷静さを欠かせることができたあの状況だったからこそ効果を発揮できたのかもしれない。

 

 グ~…

 

 ……腹、減ったな。何はともあれ無事に終わることができたんだ。 

 考えるのはここまでにして、飯行くか…

 スタスタと足を動かして、俺はようやく広場を出ようとする。しかしその瞬間…

 

 がしっ

 

「つ、ツバサ!?」

 

 後ろで誰かが俺の手を掴んだことを感じるのと一緒に、声が聞こえた。

 あれれ~なんだかデジャヴを感じるぞ~?と思いつつ、俺は後ろを振り返る。

 

「!君達は…まだ行ってなかったのか」

 

 そこに立っていたのは、さっきまでの女生徒達だった。

 どうでもいいが、今日はよく腕を掴んだりはしても掴まれたのは初めてだな…。

 そんなことを考えていると、ショートカットの娘が腕から手を放してニコっと微笑みながら口を開く。

 

「えぇ、まだお礼を言ってなかったから。助けてくれて、ありがとう!」

「私からも言わせてもらうぞ。本当にありがとう、君が来てくれなかったらどうなっていたか…」

「ありがとね!ヒーローさんっ♪」

 

 彼女達はそんな言葉を俺に向けて次々と口にするが…、

 

「…いや、やめてくれ。俺は別に、あんた達を助けようと考えてあの場に飛び込んだ訳じゃない」

「でも、結果的には私達を助けてくれたじゃない。現に私達は今こうしてあなたにお礼を言えている…それだけで、もう充分じゃないかしら?」

「いやだからそのお礼ってやつは」

「ふむ、案外強情だな。あんじゅ、どうしようか?」

「いや別にどうもしなくていい」

 

 何を言いだすんだこのクールビューティーは…。

 

「うふふっ、そうねぇ~…」

 

 小悪魔のような微笑みを浮かべてからう~んと小さく唸りながら考える茶髪の女生徒。

 嫌な予感がするのはきっと気のせいではないだろう。むしろ予知といっても過言じゃない、何それ俺超能力者?思春期真っ盛りの学生が持つっていう例のアレ?歩未ちゃん可愛いよ歩未ちゃん、だから今すぐこの空気と数分前の俺の覚悟を崩壊させてくれ。

 

 っていうかなんなのこいつら?ついさっき少し口利いた時はですます口調の敬語だったのに今物凄く馴れ馴れしいんだけど??友達かよ。

 あ~やっぱりあのままスルーしといたら良かった。某フリーゲームのたけしの如くマナーモードに徹するスタイルで行くべきだったぁぁぁ…。

 

 そうやって俺が心の中で項垂れていると、

 

「そうだ!ねぇ、今からこの4人でお食事にでも行かない?」

「おぉっそれはいいな!…しかし、私達はこれからレッスンがあったのではないか?」

「別にいいじゃないっ、レッスンは次のお休みの日にでもやりましょ。私はあんじゅの案に賛成だわ!」

 

 はいはいはーい!それは永遠に来ないお休みの日だと思いまーす!

 なにやら明日から頑張るという名言に通ずるものがあるな。

 ちなみに俺は人間の三大欲求を満たすには全てソロプレイがマナーだと思っているのでここはやんわりと断ろうそうしよう。

 

「いや、悪いが俺は」

「…ふふっそうだな。よし、では行くとしようか!」

「ねぇちょっと聞いてる?俺は」

「ふふっ決まりねぇ、実は私もうお腹ペコペコなの~」

「いや決まってないよあのね」

「あらあんじゅったら…でも私も人のこと言えないわね、あははっ」

「…………」

「あら?どうしたの?」

「…いや、折角の誘いで本当に申し訳ないんだが俺は遠慮させてもらうよ」

 

 被せに被せられた断りの言葉をようやく俺は伝えることができた。

 誘いを断るのだ。彼女達にとってはあまり良い気分はせず、不満げな表情が目に入ってくるだろう。

 そんなことを考えながら、俺は伝えた。どうせ社交辞令だとか捻くれた考えは敢えてしない。

 しかし、ショートカットの彼女は俺の予想とは違った反応をし、ゆっくりと微笑みながら口を開く。

 

「…ねぇ」

「?」

「そういえば私達、まだお互いに自己紹介してなかったわよね?」

「…は?」

 

 思いがけない彼女のそんな発言と表情に、俺は間の抜けた声で返してしまう。

 よく見てみると、黒髪の娘と茶髪の娘も同じように微笑みを浮かべている。

 視線を向けていると、まず黒髪の娘が口を開いた。

 

「そういえばそうだったな。では、まず私から…私の名前は『統堂 英玲奈』だ」

 

 続いて、隣の茶髪の娘…

 

「私は『優木 あんじゅ』よぉ、よろしくね!ヒーローさん♪」

 

 最後にショートカットの娘が…

 

「コホン、そして私が『綺羅 ツバサ』。知ってると思うけど、A-RISEのリーダーをやらせて貰っているの」

「私達はそのメンバーだな」

「そうねぇ」

 

 こうして、三人共自己紹介を終えたわけだが…

 

「アラ…?」

 

 ついそんな聞きなれない言葉を口に出してしまった。

 直後、三人は男達に絡まれていた時と同じように呆けた表情を浮かべた。

 

「え…ま、まさか知らない?私達のこと…」

「あ、あぁ…まぁ正直言うとすまないが聞いたこともない、と思う…」

 

 あれ?嘘、やだなにこの空気…俺まさか地雷踏んじゃった?

 綺羅、さんが呆けた表情から瞬く間に不安気な表情を浮かべて恐る恐る聞いてくる。

 統堂さんと優木さんにも目を見やると、やはり同じ表情だ。そんなに有名なのだろうか…?

 

「…………」

「ふ、ふむ…まぁ私達も、まだまだだということだな…」

「そ、そうねぇ…はぁ」

 

 分かりやすいほどに気分が沈んで落ち込む三人。ズーンとかいう擬音が聞こえてきそうだ。

 や、ヤバい…とりあえず、何か言って空気を変えるか。俺何やってんだろ…。

 

「あ~その、本当に申し訳ない。できればそのアラなんとかの名前をもう一度言ってもらっていいか?なんかこう、このままだと俺自身ももやもやするし…」

 

 言うと、三人は項垂れていた首を起こしてなんとか答えてくれる。

 

「…分かったわ。私達は『A-RISE』っていうグループである活動をしているの」

「そして私達はそのグループのメンバーで、先程言ったようにツバサはリーダーを務めている」

「ねぇ、何のグループだと思う?」

 

 ……成程。A-RISE、か。

 改めて聞いてみると、心当たりがあるような気がする。あれは、確か…

 

「…攻殻機動隊、か?」

「「へ?」」

「君は何を言っているんだ…」

 

 違ったようだ。

 綺羅さんと優木さんには「何言ってんのこいつ?」みたいな反応をとられ、統堂さんに至ってははっきりと口にされて呆れられてしまった…。

 っていうか統堂さんはもしかしてネタ分かる人なのか?

 もしそうだとしたらちょっと嬉しいな、と密かにウキウキとして考えていると…

 

「ざ、残念ながら私達はそのこう何とかっていうものじゃないわ。アイドルよ」

 

 綺羅さんが苦笑いを浮かべつつも正解を言ってくれたようだ。

 

「アイドル…?」

「そ、アイドル。まぁ正しく言うなら、『スクールアイドル』ね♪」

「スクール、アイドル…」

 

 これまた聞き覚えのないワードに、俺はつい反芻して口に出してしまう。

 

「…ふふ、気になる?」

 

 すると、考え込んでいるように見えたのか綺羅さんが近づいてきて、顔を覗き込んできた。

 チカっじゃなくて近っ!

 …なぜここで絢瀬先輩を思い浮かべたのだろう?疲れてんのかな。

 

「ねぇ、ツバサちゃんったらちょっと近くないかしらぁ…?」

「ふむ、あれは分かってやってるのだろうか…?」

 

 正面、綺羅さんの後ろからひそひそとそんな声が聞こえてくるがやはり他の人から見ても近いようだ。

 よかった、俺の感覚狂ってない。

 

「いや…そんなことは」

 

 ない、とは何故か言い切れなかった。

 何故だ?スクールアイドルなんていうもの、確かに聞き覚えがないもので珍しいもののはずだ。

 だが、引っかかるのだ。過去に俺が関係したとかそんな漫画にありがちな展開ではない。

 ただこの『スクールアイドル』というものがこの先、それも明日か明後日という近い未来に音ノ木坂学院の、さらにもしかすると廃校を阻止することに繋がることに、一枚噛んでくる予感がしたのだ。

 

 …考えすぎか?常識的に考えて何の関連性もない二つのそれらが噛んでくることなんて、まずないだろうが…。

 少し複雑で難しい顔をしていたのかもしれない。

 そんな俺を見かねてか、綺羅さんは俺に再度誘いをかけてくる。

 

「ねぇ、やっぱり一緒に行かない?」

「え?」

「だってほら、あなた今凄く深刻そうに考え込んでたわよ?何があなたをそんな顔にさせるか分からないけど、時間も時間だし一度食事をとって気持ちを入れ替えた方が良いと思うの」

「いや…だが」

「ツバサの言う通りだ。空腹のままでは、碌に考えもまとまらないぞ」

「そうよぉ…それに、私ももう少しあなたとお話してみたいし♪」

 

 俺の言葉を遮って、統堂さんと優木さんは口を開く。

 

「…ねっ?英玲奈とあんじゅもこう言ってるし、一緒に行きましょうよ」

 

 それに、と付け加えて綺羅さんは続けて口を開く…。

 

「あんじゅが言ったように、私ももうちょっとあなたとお話していたいわ♪」

「無論、私もだっ」

「うふふっ♪」

「……………」

 

 最後に締めくくるようにして綺羅さんがそう言って、直後に3人の微笑みが俺の眼に飛び込んできた。

 そして――

 

「…はぁ、分かった。その代わり、行った先でその…スクールアイドル、ってやつをもうちょい詳しく教えてくれ」

「えぇっ、分かったわ!えぇっと…」

「俺の名前は、中原 臨也だ…まぁその、よろしく頼む。綺羅さん、統堂さん、優木さん…」

「えぇ!よろしくっ臨也君!」

「よろしく頼む、臨也君」

「よろしくねぇ、いーくん♪」

 

 …実にらしくない返事を返して、俺は彼女達が歩を進めると共にその後ろを歩き始める。

 

「ねぇねぇあんじゅっ、どこに行きましょうか?」

「えっ!?う、う~んとそうねぇ~…」

「あんじゅ…考えていなかったのか…」

「あははっあんじゅらしいわね」

「う~ん…」

 

 

 

 賑やかであり華やかでもある、そんな彼女達の声が夕暮れ時の街中から聞こえる。

 ググ~と鳴る腹の虫をBGMに、俺は彼女達についていく形で歩を進める。

 

 

 どうやら俺のツいてない1日とやらは、もう少しだけ続くようだった―――

 

 

 

 

 

 




はい随分と長い文字数でしたがお疲れ様でした。
これにて第三話終了です。

このタイミングでA-RISEを出すあたり、いかにもオリジナル展開ですねはい。
でもA-RISE大好きなのです。可愛いし可愛いから。
だからこんなに長くなってしまったのかもですね…。

ところで、A-RISEの口調とか大丈夫でしょうか?
初めて書いたので、口調について思うところがあれば是非意見お願いします。
特にあんじゅが難しいのです…。


それでは今回はこの辺りで!
次は今月中にはあと1回更新したいなと考えております!


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