ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第十話 若手最強決定戦.4 ギャスパーの意地

一誠が勝利を掴んだが……なんとも酷い勝利だ。

次のダイスシュートをする―――出た合計数字は8だ

 

「よし、次は私が出よう」

 

「ゼノヴィアが出るとしたら、祐斗かロスヴァイセが適任かしら」

 

ゼノヴィアと共に行くメンバーを選択しようとしているがギャスパーが手を上げていた。

 

「……ぼ、僕が行きます。そろそろ中盤ですから……何が起こるか分かりませんし……。

 ゆ、祐斗先輩とロスヴァイセさんは強いですから、

 後半に向けて控えていただいた方が良いかなって……」

 

皆がギャスパーの自主的な言動に驚くが、ギャスパーの意見は一理ある

リアスがフッと笑みを浮かべる

 

「じゃあ、ギャスパー、ゼノヴィアをサポートしてくれるかしら?

 あなたの邪眼やヴァンパイアの能力でゼノヴィアをサポートして欲しいの」

 

「……ぼ、僕、男子だし、小猫ちゃんの仇を討たなきゃ!」

 

震えながらも気迫を出すギャスパー。

ゼノヴィアとギャスパーは転移魔方陣に向かった。

 

―――――――――

 

 

2人が到着したバトルフィールドは岩がゴツゴツした荒れ地、足場が良くない場所だった

2人の眼前にひょろ長い体格の男と、不気味なデザインの杖を携えた小柄な少年が現れた

 

『グレモリーチームは伝説の聖剣デュランダルを持つ"騎士-ナイト"ゼノヴィア選手、一部で人気の"僧侶-ビショップ"な男の娘、ギャスパー選手です!』

 

「「「「うおおおおっ!ギャーくぅぅぅぅんっ!」」」」

 

実況の言う通り、観客席の一部からギャスパーに応援を送る男性ファンがいた

 

『対するバアルチームは、なんと!

 両者共に断絶した御家の末裔と言うから驚きです!

 戦車-ルーク-のラードラ・ブネ選手、僧侶-ビショップのミスティータ・サブノック選手。

 それぞれ断絶した元72柱のブネ家とサブノック家の末裔です!

 アザゼル総督、バアルチームには複数の断絶した家の末裔が所属しておりますが……』

 

『能力さえあれば、どんな身分の者でも引き入れる。それがサイラオーグ・バアルの考えだ。

 断絶した家の末裔は現悪魔政府から保護の対象にされていると同時に、一部の上役から厄介払いと蔑まれているからね。

 他の血と交じってまで生き残る家を無かった事にしたい純血重視の悪魔は上に行けば行く程たくさんいるからな』

 

『ハハハハ、全くその通りです』

 

ベリアルは笑っていたが、バアル側の『戦車-ルーク-』と『僧侶-ビショップ-』が言う

 

「我が主サイラオーグさまは人間と交じってまで生き長らえた我らの一族を迎え入れてくれた」

 

「サイラオーグさまの夢は僕達の夢……この勝負、負けるわけにはいかない」

 

バアル眷属の両者の目は使命感で燃えているようだ

審判から開始が告げられ、両チームが素早く構える

 

「ギャスパー、コウモリに変化して!ゼノヴィアはその後に攻撃!」

 

リアスが指示を出し、ギャスパーは無数のコウモリに変化してフィールド中に散らばり、ゼノヴィアは幾つものデュランダルの波動を放った

バアル眷属はその攻撃を躱し、ミスティータ・サブノックが杖から炎を放つ

コウモリとなって飛び回るギャスパーの赤い眼が炎を停止させ、ゼノヴィアがデュランダルの波動で掻き消す

息の合ったコンビネーションだ。

 

「ラードラ!サイラオーグさまの指示が届いた!僕は準備する!」

 

「了解だ!」

 

ミスティータ・サブノックが後方に下がって全身にオーラを迸らせる

それを守る様に前に立つラードラ・ブネ。

壁にでもなるのかと思った時―――ラードラの体が盛り上がり始めた。

膨れ上がった肉体に尾と翼が生え、口元から牙が剥き出し、手の爪が鋭くなっていく

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!」

 

バアル眷属のラードラ・ブネは黒く巨大な怪物――――ドラゴンに変貌した

 

「ブネは悪魔でありながら竜を司る一族……。

 けれど、変化出来るのは家の血を引く者でも限られた者、よりによって……っ!」

 

リアスが苦虫を噛み潰したような表情をする。

グラシャラボラス戦の記録映像でも見なかった能力に度肝を抜かれた

 

『ドラゴン変化は情報にも無かった!サイラオーグめ……、その眷属を鍛え上げて覚醒させたか!』

 

観客席に座っていたノアもラードラの竜化、引き出したサイラオーグに関心を示している。

 

「冥界のブネは限られたものでしか変身できぬのか。

 人の血を半分引いているにも拘らず、これだけの力を引き延ばしたラードラとやらもそうだが、

 そこまで引き出したサイラオーグ・バアル、見事である」

 

視点はラードラとゼノヴィア&ギャスパーの攻防が始まった

デュランダルの波動+直接攻撃を繰り出すが、竜鱗は堅牢でなかなかダメージを与えられない

 

「ギャスパー、あれを撃つ!時間を稼いでくれないか!」

 

ゼノヴィアがギャスパーにサポートを仰ぐと、後方に下がり、無数のコウモリがドラゴンを包み込む

ブネは口から火炎を吐くが、ギャスパーは散らばって避ける

ゼノヴィアがエクス・デュランダルを天高く掲げてチャージし始めた時、ミスティータが叫んだ

 

「そこだ!聖剣よ!その力を閉じよ!」

 

ミスティータの杖が怪しく光り、ゼノヴィアの全身を捕らえた

不気味な光に包まれるゼノヴィアの体に気味悪い紋様が浮かび上がる

 

「……これは何だ……。デュランダルが反応しない……!」

 

「何!?どういう事だよ!?」

 

一誠もゼノヴィアの異変に驚いた

鋼弥はミスティータの方を見ると、当人はやつれた表情になっていた。

 

「……僕は人間の血も引いていてね。

 神器、"異能の棺(トリック・バニッシュ)"。

 最近になってようやく使えるようになった呪い系神器だよ……』

 

『異能の棺(トリック・バニッシュ)か。

 自分の体力、精神力などを極限まで費やす事で、特定の相手の能力を一定時間完全に封じる神器。

 バアルの僧侶-ビショップ-は自分の力と引き替えにゼノヴィア選手の聖剣を使う力を封じたようだ』

 

アザゼルから説明が入る、相手の能力を封じる神器は厄介極まりない

ゼノヴィアのデュランダルを封じた代わりに、急激に体力を消耗してしまったようだ

 

「本当なら聖剣を封じた余波で、彼女自信にも聖剣のダメージを与えさせようと思ったんだが……。

 聖剣使いとしての才能は思った以上に濃かったようだ……」

 

ダメージを与えられないものの、デュランダルが使えなくなったのはかなりの痛手。

ゼノヴィアの武器はデュランダル以外存在しない、完全に丸腰の状態になった

そこへブネが容赦なく襲い掛かる

踏みつけられる瞬間、無数のコウモリになったギャスパーがゼノヴィアを包み込む

誰もいなくなった地面にドラゴンの踏みつけが炸裂。

ギャスパーとゼノヴィアは岩陰に避難していた

 

「……すまない、ギャスパー。どうやら私は役立たずになりそうだ……」

 

「そ、そんな事ないです!ゼノヴィア先輩の方が僕よりもずっと部長のお役に立ちますよ!」

 

ギャスパーはゼノヴィアを励まし、腰に着けていたポシェットから小瓶、チョーク等の道具を取り出した

 

「ぼ、僕、この手の呪いを解く方法をいくつか知ってます!」

 

ギャスパーは手元に小さな魔方陣を展開させ、ゼノヴィアの体に当てる

どうやら魔方陣を通してゼノヴィアにかかった神器の呪いを調べているようだ

 

「逃がさん!何処だ!」

 

ラードラが地響きを立てながらゼノヴィアとギャスパーを捜し回る

 

「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」

 

「……分かりました。はい、僕流の解呪方法なら手持ちの道具で何とかなりそうです」

 

ギャスパーはゼノヴィアを中心にチョークで魔方陣を描く

見慣れない紋様を描き、最後に一誠の血が入った小瓶を持った

 

「今描いた魔方陣にこのイッセー先輩の血を馴染ませる事で、呪いは解けると思います。

 ただ、解呪出来るまで少し時間が掛かりそうですけど……」

 

「待て、ギャスパー。その血を使えばお前は――――」

 

困惑するゼノヴィアにギャスパーは満面の笑みを見せた

 

「ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました」

 

「ギャスパー……?」

 

嫌な予感がした陣地内。

それは外れる事なく、魔方陣を完成させたギャスパーは岩陰から飛び出していった

 

「ぼ、僕が時間を稼ぎます!呪いが解けたら、そのままデュランダルをチャージしてください!」

 

「一誠の血も飲まずに単身で挑むつもりか!駄目だギャスパー!!戻れ!!」

 

「無謀よ!ギャスパー!隠れなさい!」

 

鋼弥とリアスが叫ぶが、ギャスパーは逃げる素振りを見せなかった

 

「ダメですぅっ!ぼ、僕が時間を稼がないとダメなんですぅっ!

 部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですぅっ!」

 

「いいから、早く逃げてッ!」

 

リアスの二度めの叫びを聞かないギャスパーの眼前に敵が迫っていた。

 

「見つけたぞ!!あの剣士を隠したようだが……炙り出してやるわ!!」

 

「あ、暴れさせるわけにはいきません!!」

 

竜化したラードラの巨躯に迫られ、怖い思いをしているギャスパー。

しかし、逃げる素振りを見せず立ち向かっていく。

 

「単独で臨むか。その勇気、敬意を払うべきもの。

 たとえ、震えて恐怖しようと勇気が無ければドラゴンの前に立つことすらできない」

 

ラードラは口元から猛火を勢いよく吐き出す。

ギャスパーは防御魔法陣で防ごうとするが……。

 

「うわああああああああああああああああっ!!」

 

防御魔法陣が破れ、火炎に吹き飛ばされていく。

火炎の一撃で火傷を負うが、よろよろと立ち上がる。

 

「ギャスパー!!無理はよせ!!」

 

ラードラがゼノヴィアの声を聞き、辺りを探し始めた。

 

「あああああああああああああああっ!!」

 

ギャスパーはそうはさせまいと、悪魔の羽を展開し、ラードラの腕に食らいつく!!

 

「離せっ!!いつでも倒せる貴様とは違って、デュランダル使いは早急に倒さねばならぬ!!」

 

ギャスパーを掴み、握りつぶされていき、ミシミシと嫌な音が響き渡る

 

「うわぁぁああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

ギャスパーが激痛に絶叫し、あまりの光景にリアスは目を背けてしまう。

握りつぶしたギャスパーを地面に捨てるが……ギャスパーは這って敵に食い下がる。

 

「……僕は……グレモリー眷属の……男子だから……。

 ゼノヴィア先輩、待っていて……ください……!!」

 

「ええい、邪魔をするな!!」

 

蹴られて、転がるギャスパー。

だが、それでも這う。

 

「グレモリー眷属男子訓戒……その一。男は女を護るべし……!!」

 

ギャスパーが放った言葉、それは一誠が部室で教えたものだ。

 

「グレモリー眷属男子……訓戒……その二、男はどんな時でも……立ち上がること……!!」

 

手元に魔方陣を展開させようとしたが――――。

 

「このっ……!!」

 

ミスティータはフラフラになりながらもギャスパーを杖で横殴りする。

あの一撃は今のギャスパーには堪えるダメージだ

 

「諦めろ……キミでは我々には勝てない」

 

「グレモリー……眷属……男子……訓戒……その三……」

 

ギャスパーは岩につかまり、なんとか立ち上がる。

 

「何が起きても……決してあきらめるな……。ゼノヴィア先輩は……僕が……守らないと!!」

 

「これで、トドメだ!!」

 

ズンッ―――!!

 

ラードラはギャスパーを踏みつけた。

足をのけると、ギャスパーはボロボロになっていた。

もはや、まともに戦える状態じゃない。

それでも、這って、立ち上がろうとしていた。

 

「ギャスパー……」

 

リアスは目の前の光景を背けようとしたが、一誠は―――。

 

「お願いです。背を向けずに……見てやってください。

 あいつは、ギャスパーはあなたのために死ぬ覚悟であそこで頑張っているんです。

 誰よりも怖がりなアイツが……一生懸命がんばっているんです!!

 見てやってください……!!」

 

一誠の訴えにリアスは涙を溢れようとしたが、それを我慢して映像に視線を送った

 

「解ったわ……。ゴメンなさい……イッセー、ギャスパー……」

 

アーシアと朱乃が嗚咽を漏らし、ロスヴァイセは目に涙を浮かべていた。

木場は唇を噛み、血が滲んでいた。

鋼弥は拳を強く強く、握り血が流れていた。

 

「まだ動くか……勝利への執念、恐れ入る。これ以上の攻撃はあまりにも残酷、楽にしてやる!!」

 

ラードラの口から火炎が漏れ、吐こうとしたが――――。

 

「そうはさせない」

 

岩陰からゼノヴィアが姿を現した。

デュランダルから迸る聖なるオーラが溢れていた。

解呪に成功しており、ギャスパーを抱き寄せた。

 

「すまなかった……。私が不甲斐無いばかりに、おまえは……」

 

涙を流して、ギャスパーに謝る。

そっと地面に降ろし、ラードラとミスティ―タを強く睨む。

 

「私には覚悟が足りなかったようだ。だから、あんなものに捕らわれた」

 

エクス・デュランダルの鞘がスライドしていき、攻撃フォルムとなる。

 

「仲間の為に、主の為に持つべきだった死ぬ覚悟をギャスパーよりも足りなかった。

 自分があまりに情けない……!!私は自分が許せなくて仕方がないんだ!!」

 

その言葉にグレモリー眷属に突き刺さる。

先の試合でリタイアした小猫も今戦っているギャスパーも覚悟を持っていた。

 

「ならこの思いに応えるのはただ一つ。

 おまえのためにこいつらを完全に吹き飛ばしてやろう!!

 それが、お前への応えだと思うからな!!」

 

エクス・デュランダルから天高く立ち上る聖なる光の柱。

この一撃を喰らえば勝負は決める!!

ミスティ―タは命を代償に神器を発動しようとしたが……停止した

ラードラはギャスパーに視線を向けると―――リタイアの光に包まれて尚、双眸を赤く輝かせていた。

 

「ば、バカな……!!」

 

「でゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

ゼノヴィアは大きく振り上げて必殺の一撃を解き放つ。

大質量の聖なるオーラは二人を飲みこんでいった。

 

『サイラオーグ・バアル選手の戦車、僧侶。リアス・グレモリー選手の僧侶。リタイアです!!』

 

第四試合も勝利を得たが―――二人を失った。

ここから、更に激化するが、小猫とギャスパーのためにも!!

 

 

――――――――――――――

《王として》

 

 

何が「勝ちましょう」だろうか……。

 

一番、覚悟を決めていたのはこの子たちだった。

 

この子たちは最初から死ぬつもりでここに立っていた。

 

仲間の為に……私の為に……そして、勝つために……。

 

私は、最低な『王』だろうか。貧弱で、貧相で、あまりにも酷い王だ。

 

だから、覚悟を決めよう。

 

泥に塗れようとも、地べたを這いずろうと、このゲームを制することを―――!!

 

 

――――――――――――――

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