ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~ 作:Mr.エメト
第一話 揺れる思い
「それは本気なのか、ヴァーリ」
『ああ、彼女はそれを望んでいてね。俺としても興味があるので便座を図りたい』
「……お前の事だ、それだけじゃないんじゃないか?」
『相変わらず鋭い。ゆえに他の勢力からも疎まれているわけか』
「余計なお世話だ。まぁ……性分だからな。それで背中を狙われるなら、それで受け入れるさ」
『……彼女を狙うものがいてね』
「当然だろうな。それこそ星の数だが、滅すること叶わずだからどいつも歯がゆい思いをしているんだろうな」
『それはそうなんだが、身内から出そうでね。いや……仕掛けてくるかな』
アザゼルが脳裏に浮かぶのは聖なる槍を持った若造、奈落の底にいる悪神。
ヴァーリは楽しそうな笑みをして―――。
『ケリをつけるには頃合いだな』
◇◇◇◇
=涼刀事務所 地下修練所=
鋼弥はオーバードライブ化して、シンディと戦っている。
無駄な気と魔力を消費せずにコントロールし長時間でも戦えるように特訓している。
「はっ!!」
正拳突き、回し蹴りと放つがシンディは受け流し、反撃する。
「鋭く突きなさい!!無駄な動きがあるわ!!」
「はいっ!!」
サイラオーグ戦で完全なオーバードライブの制御に成功したが、より上手く制御する為に修練している。
時間が鳴り響き、お互い戦いを止め、鋼弥はオーバードライブ化を解く。
「ありがとうございました」
「時間も長くなり、気と魔力の消費をうまく抑えているな」
シンディは徐々にコントロールしている鋼弥の成長に嬉しそうだ。
「そういえば、一誠とリアス嬢は付き合っていると聞いたな。
鋼弥も朱乃と愛のささやきをしているのか?」
シンディの言葉に鋼弥の顔は赤くなり、ボンッと湯気が出る。
「やれやれ……そちらの方は不足しているのか。
時にはそういう事も必要ですよ。愛を育み、結婚して、子供を育てる。
全ての生き物はそうなるのだからな」
「……こんな俺が幸せになってもいいのでしょうか」
「大丈夫です、私は貴方が幸せになれると信じてます。
辛い分は必ず幸せが訪れます。さぁ、ご飯にしましょう」
◇◇◇◇
皆が集まり、朝ごはんを食べている一同。
ただ、小猫が元気がない。顔が赤く、辛そうな表情だ。
「小猫さん?顔色が優れませんわよ?」
「……なんでもない」
「お顔が赤いですわよ。風邪ではなくて?
特製アップルシャーベットを作ってあげますわ。
実家から地元産の林檎をが届きましてたの、それを使って特別にこの私が作ってあげますわね!」
レイヴェルがそう言うが小猫は顔を横に振る
「………ありがた迷惑」
「まぁ!ヒトの好意を即否定だなんて!!猫は自由気ままでいいですわね!!」
縦ロールを回転するほどの勢いで怒り出すレイヴェル。
「鳥頭に言われたくない」
「と、鳥頭って!!えーっと、日本では鳥頭とは、物忘れの激しい方をさしましたわよね?」
「……よく勉強しているようだから、ほめてあげる」
「んもー!!この猫娘は!!」
小猫とレイヴェルの口喧嘩は日常の一部になっていた。
とは言っても本当に仲が悪いという訳ではない。
お互い助け合って頼っている。なんだかドルキーと望紅を思い出す。
「時に鋼弥、聞きたいことがあるのですが」
「なんでしょうか?師匠」
「子供はいつ見れるのか?」
そんな爆弾発言に鋼弥は喉詰らせるが、水を飲み干す。
「な、な、何を言っているんですか!?」
「お前は朱乃と付き合っているのだから、そういう時が来てもいいのではないかと思う。
保護者の私も鋼弥の子供が楽しみですからね。
名前は私やレイハ、ミランダと考えているのだが…………」
そんな会話を聞いてか、皆は小さく笑っているし、朱乃は顔を赤くしている。
「本当の平和が来た時に……その、お願いします」
「……ふふふ、そうですね。浮かれすぎましたね」
そんな会話のやり取りに小猫は――――。
「赤ちゃん……幸せ……」
◇◇◇◇
学校にて―――。
「中級悪魔への昇格か」
「昨日、サーゼクス様とアザゼル先生にな。
朱乃さんにも中級悪魔への昇格される話もきてたぜ」
一誠、祐斗、朱乃が中級悪魔へ昇格する話が出たのだ。
テロリスト、ゾロアスター、悪神ロキなど撃退した功績が大きく上級悪魔にしてもいいのだが、特例を認めるわけにはいかないということだ。
実技試験はともかく、筆記試験が最大の敵だろうな……特に一誠の場合だと。
「勉強に関してはレイヴェルが教えてくれるから安心できるけどな……」
「ふむ、頑張れと言うしかないな」
「それに、リアスも滅びの魔力を鍛えるとか言ってたよ。
あの時の最終決戦で、枷になってたの気にしてたんだよ」
「サーゼクス殿の場合はテクニカルだが、リアスの場合はパワーで押し切るという感じだな。決定打に欠けているわけか」
サイラオーグ戦で悪い部分が見つかり、模索し鍛え直す。
ロスヴァイセもギャスパーも自分を鍛え直す言い、しばらく離れるとのことだ。
「そういえばカナンも人間世界にいることになったとノア殿から報告があったよ」
「竜のお姫様が?」
「どうやら、俺と一誠の姿を見て負けたくない心に火がついたとさ。
毎回、家に帰ってきたら勝負を挑まれる覚悟はしなければいかん」
カナンは昔から負けず嫌いで、勝負を仕掛けてくる事が多い。
(そういえば、カナンは俺と一緒にいる時だと、笑う事が多くなったな……)
◇◇◇◇
鋼弥はソーナがいる生徒会室に足を運んだ。
魔界の資料などを渡すために来ている。
御茶を飲みながら話をしているとソーナが―――。
「そういえば、リアスが兵藤くんに告白したわね」
「知っているのか?」
「彼女とは幼い頃からの友人ですから。最近は通信用の魔方陣越しにのろけ話を聞かされます」
ソーナは真っ直ぐに視線を送りながら話を続ける
「……あなた達は私が出来そうになかった事を全て叶えるのね」
「どういう事だ?」
「ライザー・フェニックスの件、木場祐斗くんの件、ギャスパーくんの件、小猫さんの件、朱乃さんの件。
――――リアスが抱えていたものをあなた達が全部軽くしたの。
私はあなた達よりも長くリアスの側にいながら、友人でありながら、何も出来ませんでした。
『上級悪魔だから』、『悪魔のしきたりだから』と概念に捕らわれ、それらの壁を私は越えられなかった。
周囲の視線と自分の立場を鑑みて、何も出来なかったのです」
「……ソーナもリアスの事を心配していたのか」
「あなた達はそれらを意にも介さずに解決していった。
私はそれがたまらなく嬉しくて、たまらない程に妬みもしたわ。
私に出来ない事をあなた達は全部解決してしまうのだもの。
だからこそ、改めてお礼を言いたいのです。――――リアスを救ってくれてありがとう」
「後で一誠にも伝えておくよ」
ソーナは一息ついてからクールな表情を緩めた
「ねえ、涼刀くん」
「ソーナ、俺の事は下の名前で呼んでもいい」
「そ、そうですか?じゃあ、鋼弥くんと呼びます」
「それでいい。今更だが、これからもソーナと呼んでもいいか?」
「はい」
そういえば、匙がソーナに恋愛事情を聞いて欲しいと頼まれていたことを思い出す。
「ソーナは彼氏というものは作ろうと思わないのか?」
「……作ろうとは思いますが、まだ意中の人はいません」
「匙はどうだろうか?あいつも中々、実力もあるし誠実な男だ」
「匙は弟、と言ったところかしら。それに彼を慕う眷属の子達がいるのだから、手なんて出せないわ」
匙、どうやら道のりは険しく厳しいかもしれん。
鋼弥はお茶を飲みながら匙を心の中で応援するしかできない。
◆◇◆◇
「そうですか、ソーナ会長とその様なお話をしたのですね」
夕食を終えて、朱乃と一緒に皿洗い中に会話をする。
「一つ思ったが、リアスとライザーの婚約があったようにソーナにも婚約者がいるのか?」
「ええ、いましたわ」
「いた、ということは過去の事か?」
「彼女もリアスと同様、解消しましたの。少し前の事らしいですわ。
なんでも勝ったら破談、負けたら即退学と即結婚を条件にチェスの十番勝負を申し込んだそうなの。
自分よりも頭の回らない殿方と一緒になりたくないと言う思いがあったみたいですわ」
「それで、勝負に勝って破談したというわけか」
「圧倒的な全勝で相手の男性のプライドを粉々に砕きましたわ。
次期大公シーグヴァイラ・アガレスさまに戦術で勝ったソーナ会長ですもの、並大抵のヒトでは勝てませんわ。
リアスも今の彼女とのチェス勝負では負け越しそうと言ってましたわ」
グレモリーチームはパワーで攻めるのに対し、シトリーチームはテクニックと戦術で攻める。
剛と柔、対極の存在だ。
「そう言えば、新しい『騎士』と『戦車』のアテが出来たとソーナ会長は言っていましたわ。交渉してみるそうです」
「いよいよ、シトリー眷属も戦力増強か。強い相手だといいな。
朱乃、昇格推薦おめでとう。俺も冥界についていくけど、いいかな」
「勿論ですわ。鋼弥がいてくれたら、合格できますわ」
朱乃は抱きしめ、鋼弥も抱きしめて背中を優しく叩く。
そんな光景を小猫は見て、胸をギュっと握る