ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~ 作:Mr.エメト
フィールドが半分以上も崩壊しており、最早時間がない。
シャルバは一誠と鋼弥に映すと不快そうな顔をする。
「ヴァーリならともかく、貴様の様な天龍の出来損ないと半魔が立ち塞がるのか?
どこまで、バカにしてくれる!私を追撃する目的はなんだ!?
真なる魔王の血を蔑ろにするのか!?オーフィスを取り入れることで力を求めるのか!?
冥界と人間界の覇権を狙っているのか!?」
「どれも違う。俺たちはただひとつ、オーフィスと母さんを返して貰う」
鋼弥が一歩踏み出し、口を開く。
「それと、冥界の子供たちを殺すということだ。俺らはヒーローやっているからよ!
あんたみてぇな、子供の敵は絶対に許しておくわけにはいかないんだよ!!」
一誠はビシッと指をさす。
アンリ・マンユはククククッと嗤っていた。
【それが貴様らの戦う理由か……。
ならば、一つ面白い余興をしてやろう。
シャルバ・ベルゼブブ。この悪神の褒美を受け取るがよい】
黒い泥の様な塊を生み出し、シャルバに与える。
「ち、力が漲る!!滾る!!身体がぁぁぁぁぁ!!」
シャルバの姿が変貌し、ボロボロの翅をもつ醜悪な巨大蠅となった。
【グロォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!】
翅を広げて、産声をあげる変異シャルバ。
途端、胸が開き触手を使い千尋とオーフィスを捕らえて飲みこんだのだ。
「母さん!!オーフィス!!」
「てめぇ、アンリ・マンユ!!」
【お前たちの絶望、恐怖、破滅が我の喜び。ハーハハハハハハハハッ!】
アンリ・マンユはそう言い残し消え去った。
変異シャルバが一誠と鋼弥に狙いを定めて、攻撃の意思を見せる。
「哀れれなものだなシャルバ……。
お前は英雄派とゾロアスターを利用しようとしたが、逆に利用されていたことに気付かず、
悪神の力を得て、醜悪な怪物に貶められるなんてね」
鋼弥はシャルバに憐みを言うが、直ぐに眼を鋭くする。
「こんな化け物に貶められたら……三流悪魔以下だな。急いで二人を助けるぜ!!」
一誠は真紅の赫龍帝になる呪文を唱えた。
『行こう!!兵藤一誠!!」
『我らは皆の未来を護る、赤龍帝なのだ!」
『紅き王道を掲げる時だ!!」
歴代所有者の激励と共に―――、一誠の王道宣言。
《汝らに真紅に光り輝く天道へ導こう――――ッ!!!!》
紅いオーラが包まれて、紅と染まる鎧。
鋼弥も瞑目し覇気を集中し、髪が伸び、体中に悪魔の刻印が刻まれていきオーバードライブになる。
変異シャルバから無数の蠅を呼び寄せて、円陣を組ませると魔力の波動を打ち出してきた。
一誠と鋼弥は瞬時に躱していき、腹部に一撃を叩きこみ―――
『Solid Impact Booster!!』
「マグマ・アクシス!!」
一誠の右腕に紅いオーラを覆い、巨大な拳を形成し肘の撃鉄を打ち鳴らして叩きこむ。
鋼弥は両手から炎を生み出しシャルバに向けて放ち炎が奔る。
強烈な一撃で、変異シャルバは大きく仰け反る。
勝てると思いきや――――ドスッ!!
一誠の右腕に矢が刺さっていた。
抜こうとした途端、一誠が震え出し激痛が走っていく。
鋼弥は急いで抜くと矢の先端に恐ろしい気配が漂っていた。
「まさか……!?サマエルの血が塗り込んでいたのか!?」
シャルバが万が一の為に持っていたのだろう。
ハーデスあたりから借りて、ヴァーリ対策に使おうと……。
「一誠!!しっかりしろ!!」
「やべぇ……すんげー……痛い……。寒気が襲ってきて意識が飛びそうだ……」
「少しは休んでてくれ、俺が片を付ける」
鋼弥は一誠を抱えて、離れた場所へと置いて単独でシャルバと戦う。
(BGM:勇気ある戦い《勇者王ガオガイガーより》)
シャルバは弱っている一誠を執拗に攻撃を仕掛ける。
鋼弥は一誠の前に立ち、シャルバの攻撃を捌きつつ一誠を護る。
「うおおおおおおおおおっ!!」
鋼弥の拳が変異シャルバを吹き飛ばすが、腹部に口が開かれ紫色の光線が放たれ直撃する。
倒れそうになるが、一誠が背中を支えて両足を踏ん張って眼前の敵を見据える。
「……一誠、あいつを倒せる算段はあるか?」
「倍化のクリムゾンブラスターなら倒せる……!」
「俺が母さんとオーフィスを救出したら、思いっきり撃て!」
「ああ、仕留めてやるさ!」
一誠は親指を立てて、チャージに入る。
攻撃を加えつつ、一誠の様子を見るが今にも膝が地面につきそうになっている
サマエルの毒でこれ以上はもたない。
(二人が囚われているのは何処だ?何処なんだ!?)
両目を閉じて、気配を探る、禍々しい邪悪な塊―――変異シャルバの者だろう。
だが、真ん中に一筋の光が見えた。
両目を見開き、その先―――胸部だ。
「そこかぁぁぁ!!真覇双龍撃!!」
両拳が闘気の龍顎となりシャルバの胸部に叩き打ち込む。
胸部が破壊されて、そこへ突入する。
二人が囚われているコアを見つけ出し、後は破壊しようと向かうが―――。
―――ドスドスドスドスッ!!
鋭利な刃となった触手が鋼弥の全身を貫いた。
千尋は口元を抑えて、血塗れた息子の姿に涙を流す。
全身に激痛が走り、吐血するが、歯を食いしばり――――。
「うああああああああああああああああああああっ!!」
修羅は吼えて、血塗れになりながらも、拳撃でコアを破壊。
千尋とオーフィスを抱えて変異シャルバから脱出し、離れる。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!一誠ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「おおうっ!!」
鋼弥の叫びに応える一誠は両翼のキャノンを展開し、発射の準備をする。
「クリムゾンブラスタァァァァァァァアアアアアアアアアッ!!」
『Fang Blast Booster!!!!』
一誠のキャノンから放射された紅い砲撃が放たれ――――。
【ガオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!】
変異シャルバを包み込み、跡形も無く消し飛んでいった―――。
――――――――
「終わったな・・・」
「お互い、ボロボロだな・・・」
シャルバを倒した二人。
オーフィスが二人に問いかけた
「どうして我を助けた」
「……あの時、アーシアとイリナを助けたからさ」
「あれはあの者たちの礼。二人が我を助ける理由にはならない」
「……大事な仲間だからさ。それを助けてくれたなら、俺もお前を助ける理由ができちまう。
どうして、ゾロアスターや禍の団と協力したんだ?
あいつらがお前との約束を果たす訳ねぇだろ。随分利用されたんじゃないのか?」
「グレートレッド倒せるなら、我はそれで良い。だから蛇を与えた。
赤龍帝の家に行ったのは、我が望む夢を果たせる何か、あるかもしれないと思っただけ。
普通ではない成長。そこに真龍、天龍の隠された何かがあると思った。
我、何故存在するのか、その理由、あると思った」
二人はオーフィスの言葉を聞いて確信を得た。
「そうか、オーフィスは本当に純粋なだけなんだ。
旧魔王派や英雄派が担ぎ上げて利用した、自分たちの私利私欲のために……」
「……本当に悪いのは英雄派と旧魔王派、其処を付け込んだゾロアスターか……」
旧魔王派は完全に消滅し、残すところは、英雄派だけとなった。
鋼弥は次に母の千尋を見る、僅かとはいえ、母を思い出す。
自分と兄を救うために、死んだかと思った。
目の前に、本当に生きている母とようやく、ようやく再会できたのだ。
「鋼弥・・・」
「母さん・・・」
二人は涙を流し強く、強く、抱きしめる。
一誠はその光景に涙ぐんでいた。
「鋼弥、母さんとゆっくりするのはここを脱出してからだ・・・」
「そうだな・・・」
――――――――
崩壊するフィールドを歩く一誠たち。
しかし、一誠はサマエルの猛毒、鋼弥は全身を貫かれ出血状態。
千尋の魔法を使えば治せることはできるが……彼女は力を封じられていたままだ。
『相棒!もうすぐだ!
アザゼル達が俺達を呼び寄せる龍門を開いてくれる筈だ!
そうすれば後はあちらが俺達を呼び出してくれる!』
しかし、一誠の意識は薄れていき、倒れてしまった。
「……オーフィス、お前、誰かを……好きになった事はあるか……?」
『相棒、気をしっかりしろ!皆が待っているのだぞ!』
「ドライグ、この者は呪いが全身に回っている。――――限界」
『分かっている、オーフィス!そんな事は分かっている!
だが、死なぬ!この男はいつだって立ち上がったのだ!』
(一誠……。俺も血を流し過ぎて、力が入らない……)
このまま全員、全滅してしまう。
鋼弥はオカリナを千尋の首へとかける
「・・・母さん、ごめん・・・」
鋼弥は最後の力を振り絞り防御障壁を展開させて千尋を包み込んだ。
「鋼弥!?」
「・・・母さんを皆の所へ送る。死なせるわけにいかない・・・」
「鋼弥!!やめて!!」
「・・・最期に逢えて、良かった・・・」
笑顔で言って、千尋を龍門へと送り込んだ。
かつて母が自分を護ったときと同じように、今度は自分が母を護る。
やるべきことをやり、鋼弥はゆっくりと……うつ伏せに倒れた。
2人の頭に過る仲間達の姿――。
激しい激闘を繰り広げた好敵手達の姿――。
そして、愛しい女性の姿――。
「大好き・・・だ・・・リアス・・・」
一誠はその言葉を、言って目を閉じた―――。
「朱乃・・・約束・・・破って・・・ごめん・・・」
鋼弥の目に一筋の涙が流れ、目を閉じた―――。
――――――――――
「・・・ドライグ、この者たち、動かない」
『・・・・・・ああ』
「・・・ドライグ、泣いている?」
『・・・・・・ああ』
「我、少しの付き合いだった」
『・・・・・・そうだな』
「悪い者達ではなかった。――――我の、最初の友達」
『ああ、楽しかった。オーフィス。いや、この男達の最後の友よ』
「なに?」
『俺の意識が次の宿主に移るまでの間、少しだけ話を聞いてくれないか?』
「分かった」
『この男達の事を、どうか覚えておいて欲しい。その話をさせてくれ』
「良い赤龍帝と銀流星だった?」
『ああ、最高の赤龍帝と銀流星の話だ』
――――――――――
「召喚用の魔方陣を用意出来た。――――龍門を開くぞ」
中級悪魔の昇格試験センターにあるフロア。
アザゼルが元龍王のタンニーンと共に魔方陣を展開し、その魔方陣が輝きを増していく。
疑似空間にて"魔獣創造"で生み出された巨大モンスター軍団は現実の冥界に出現し、各都市部に向けて進撃を開始した
既に悪魔と堕天使の同盟による迎撃部隊が派遣されたのだが……規格外の大きさと堅牢さに手を焼いている
更に魔獣達は進撃と共に数多くのアンチモンスターを独自に生み出し、そこに旧魔王派の残党が合流して進行方向にある村や町を襲撃し始めたのだ
冥府の神ハーデスは英雄派だけでなく旧魔王派とゾロアスターにも裏で力を貸し、英雄派を騙して巨大モンスターを生み出させた。
自ら気に入らないと称している勢力に一泡吹かせる為ならどんな手段でも使うと言ったトコロだろう。
更にはゾロアスターも姿を現して、ガルガンチュアと呼ばれる人工巨人軍団を使いアンチモンスター軍団と共に進撃しているのだ。
事態は深刻になっていき、魔王達も各勢力に打診しているそうだが――――。
神々を殺せる聖槍を持つ曹操の存在がネックとなり、なかなか協力を仰げないでいる。
各勢力の神々や冥界の魔王が聖槍に屠られたら、情勢は覆ってしまうかもしれない。
グレモリー眷属のような力のある若手悪魔や最上級悪魔の眷属チームに巨大魔獣迎撃の話が届いている。
魔王が出られない以上、彼らが赴いて戦わなければならないが同盟関係にある各勢力からも救援部隊が派遣される
天界からは"御使い"、堕天使サイドからは神器所有者、北欧からヴァルキリー部隊、魔界からハンターや幻影騎士団などが冥界の危機に応じてくれた。
ゼノヴィア、イリナは無事に事件の顛末を各上層部に伝える事が出来た。
ゼノヴィアとイリナは天界でデュランダルの修復に入っている。
「――――よし、繋がった!」
アザゼルがそう叫び、巨大な魔方陣に光が走る。
ファーブニルの宝玉が金色に光り、隅にいたヴァーリの体も白く発光、タンニーンの体も紫色に輝いた
それに呼応するように魔方陣の輝きは広がっていき力強く光り輝く魔方陣は遂に弾けて何かを出現させようとした。
閃光がフロア全体を包み込んでいき、閃光が止み、皆が視線を魔方陣の中央に向けた。
魔方陣の中央に出現したのは――――紅い『兵士』の駒8つと銀色の長髪の女性だった。
「あ、あんたは千尋さん?一誠と鋼弥はどうしたんだ!?」
「・・・私を助ける為に戦い散りました・・・。これを私に託して・・・」
鋼弥が大事に持っていたオカリナを震える手で皆に見せた。
力を封じられ、母として何もできず助けることができなかった千尋は泣き崩れる。
アザゼルが力無くその場で膝をついてフロアの床を叩いた。
「あの・・・バカ野郎どもが・・・ッ!」
アザゼルの絞り出した声を聞いて皆は徐々に理解し始める。
耐え難く、受け入れたくない残酷な現実を―――。
朱乃はその場に力が抜けた様に座り込み、リアスは呆然と立ち尽くし、リオとカナンは涙が溢れた。
「イ、イッセーさんは・・・?」
怪訝そうに窺うアーシア、反応を示さない小猫。
その小猫に抱きつき、信じられないように首を振って嗚咽を漏らすレイヴェル。
「卑怯だよ、イッセーくん、鋼弥くん。駒と母だけを帰すなんて、ちゃんと戻るって言ったじゃないか・・・」
祐斗の頬を伝う涙はしばらく止まらなかった。
グレモリー眷属は赤龍帝と銀流星を失った――――。
一誠と鋼弥は本当に死んでしまったのか……。
第12章(または前編)、終了。
次なる章にて、最大の危機、最大の戦い、明かされる謎、二人は帰ってくるのか……。
第13章で会いましょう……。