ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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赤龍帝と銀流星を失い、残った者たちは……。

原作の第12巻目、始まります―――。


≪第13章 Hopes×Heros≫
第一話 癒えぬ傷


昇格試験から二日ほど経つ―――冥界はかつてない危機が迫っていた。

アンチモンスター軍団と灰色の巨人ガルガンチュアの群である。

まずアンチモンスターの軍団は厄介な事に小型モンスターを生み出すというものだ。

次から次へと肉を破り誕生していく、人間サイズだが数が多いのだ。

ガルガンチュアもまた、恐ろしいほど固く並の攻撃では通らないほどの堅牢を持っている。

悪い事に無理やり悪魔に転生させられた者たちが暴動を起こしているという情報も入った。

他の神話勢力が介入できれば魔獣たちを屠ることができるが―――曹操が持つ聖槍で滅ぼされてしまうからだ。

 

このままでは、冥界は‥‥‥‥‥‥‥滅んでしまう。

 

「超獣鬼、豪獣鬼、ガルガンチュアの迎撃に魔王さま方の眷属が遂に出撃されるようだ」

 

悩んでいる祐斗、突然の声に顔を向けると、そこにはライザー・フェニックスがいた。

 

「……兄貴の付き添いでな。

 ついでにリアスとレイヴェルの顔でも見に来たんだが。

 やっぱり状況が状況だからな。察するぜ、木場祐斗」

 

眉を潜め、深刻な表情をするライザー。

一誠と鋼弥の死はこの人にも届いていたようだ。

グレモリー眷属はこの一件の発端となった事件で赤龍帝の一誠と銀流星の鋼弥を失った。

同行していたであろうオーフィスも行方知らず。

そのまま次元の狭間に留まっているか、サマエルの呪いで滅びてしまったのか―――そちらの調査も継続中だった

しかし、祐斗達はオーフィスがシャルバの手によってハーデスのもとに行った可能性は無い。

涼刀千尋の証言だと、一誠と鋼弥がシャルバを仕留めたという。

祐斗だけでなく、誰もがそれを信じていた。信じ切っているのだが一誠と鋼弥の死を拭い去るモノが出てこない。

 

「痛みに入ります。―――部長に会う事はできましたか?」

 

「無理だったな。部屋のドアを開けてくれなかったぜ。呼んでも、反応もしなかった。

 ……会える状況でもないだろう。愛した男がああいう形になってしまったんだからな」

 

首を横に振るライザー。

彼は立ち直させるために一誠と鋼弥が協力してくれた事に感謝している。

だから、亡くなった事に悲しむのも解る。

 

「レイヴェル、とにかく元気を出すのだよ」

 

レイヴェルと話をしているのはフェニックス家の長兄にして次期当主――ルヴァル・フェニックスだ。

端整な顔立ちをしており、ライザーのような不良青年ではなく貴族服という出で立ちだ。

ルヴァルは妹であるレイヴェルを励まして祐斗にフェニックスの涙を渡す。

 

「リアスさんも"女王"の姫島朱乃は二人の死で酷く落ち込んでいる。

 こんな時に冷静であるべきは恐らくキミだろうね。

 情愛の深い眷属でありながら、仲間の死に耐える――――。見事だよ」

 

「ありがとうございます……」

 

正直なトコロ、祐斗もいっぱいいっぱいだった

この場にいないリアスと朱乃はルヴァルの言うようにマトモな状態ではなかった

リアスは一誠の駒を持ったまま城の自室に閉じこもり、朱乃も心の均衡を失って虚ろな表情で鋼弥のオカリナを持っていた。

アーシアに至ってはゲストルームで今も泣いている

 

「……今すぐにイッセーさんの許に行きたい。

 でも、私がイッセーさんを追ったら、イッセーさんはきっと悲しむから……。

 ずっと一緒だって、約束したんです……。それなら、私もそこに行ければずっと一緒だと思ってしまって……。

 イッセーさん、私はどうすれば良いんですか……?」

 

必死に悲しみと戦うアーシア。

ゼノヴィアとイリナは未だ天界で、一誠と鋼弥の死が伝えられているかどうかは分からない。

ギャスパーとロスヴァイセも強化を図る為に出掛けたまま連絡が来ない。

 

――――今のグレモリー眷属はバラバラになっていた――――

 

少し前までは最高のチームだったのに、今ではその面影すら無かった。

チームの支えだった一誠と鋼弥を失ったダメージはあまりにも大き過ぎる。

今のグレモリー眷属を支えられるか、祐斗も不安に駆られていた。

 

「我が家としてもレイヴェルと銀流星くんが仲がいいのは耳に入っているよ。

 出来る事なら、そのまま彼のもとに送り出したかった」

 

「はい、それは存じております」

 

「レイヴェルの今後をどうするかはこれからだが、今はここに置いてくれないだろうか?

 せっかく友人も出来たようだし。小猫さんとギャスパーくんだったかな?

 連絡用の魔方陣越しによく2人の事を話してくれていた。とても楽しそうだったよ」

 

「はい、レイヴェルさんは僕達がお預かり致します」

 

祐斗の一声にルヴァルは微笑み、真剣な表情となる

 

「うむ。では行くぞ、ライザー。

 お前もフェニックス家の男子ならば業火の翼を冥界中に見せつけておくのだ。

 これ以上、成り上がりとバカにされたくはないだろう?」

 

「分かっていますよ、ルヴァル兄上。じゃあな、木場祐斗。リアス達を頼むぜ」

 

ルヴァルとライザーはそれだけ言い残してこの場を去っていく。

再び静まり返るフロア。レイヴェルが小猫の隣に座り、目元に涙を溜めて顔を手で覆った。

 

「こんなのって無いですわ…。ようやく、心から敬愛出来る殿方のもとに近づけたのに…」

 

「……私は何となく覚悟はしていたよ。

 激戦ばかりだから、いくら鋼弥先輩、イッセー先輩、祐斗先輩が強くても、

 いつか限界が来て、こんなことになるかもしれないって……」

 

既に覚悟を決めていた小猫。

激戦続きの日を過ごせば、いつ死んでもおかしくない状況に直面するのは当然だった。

小猫の一言を聞き、レイヴェルは立ち上がって激昂した。

 

「割り切り過ぎですわよ!私は小猫さんのように強くなれませんわっ!」

 

レイヴェルの激情を当てられた直後、小猫の表情が徐々に崩壊し、震えながら涙を流していく

 

「……私だって、私だって、いろいろ限界だよ!

 やっと想いを打ち明けられたのに!それなのに死んじゃうなんて!

 鋼弥先輩のバカ!!バカァ……!!」

 

小猫は嗚咽を漏らしながら制服の袖口で目元を隠す。

お茶を出した時も必死に悲しみを堪え、表に出さないように無理をしていた。

だが、レイヴェルの言葉で泣き崩れ、レイヴェルはこの姿を見て優しく抱き締めた

 

「……小猫さん………ごめんなさい」

 

「……レイヴェル。つらいよ、こんなのって無いよぉ……」

 

二人にとって、鋼弥の死はあまりにも大きく辛すぎたのだ。

 

「木場祐斗くんか……」

 

声がする方を見るとバラキエルと姫島朱離の二人だった。

 

―――――――――

 

「そうですか……朱乃は……」

 

事の顛末を二人に説明しつつ廊下を歩く。

朱乃がいるゲストルーム前に立ち、ドアをノックするが……返事がない。

開けると……部屋の中は明かりを灯しておらず、暗闇に包まれていた。

部屋の隅にあるソファーに座っている朱乃はオカリナをただ握りしめていた。

バラキエルが一歩前に出て朱乃の肩を揺する。

 

「・・・朱乃」

 

「・・・とう、さま・・・かあ、さま・・・」

 

父親の声と母親の姿を見て、朱乃が初めて反応を返した

バラキエルはただ黙って頷き、朱乃を抱き締めた

 

「・・・話は聞いている」

 

その一言を聞いて朱乃は表情を戻し、バラキエルの胸に顔を寄せる

 

「父様・・・母様・・・私・・・」

 

涙混じりの声音、朱離は朱乃の頭をやさしく撫でる。

 

「今は泣いてもいいのよ。私たちは泣き止むまでここにいますから・・・」

 

「・・・・・・うぅっ。鋼弥ぁ・・・・・・どうして・・・どうして・・・!!」

 

最愛の男の死に朱乃は涙を流して泣いていた。

 

 

―――――――――

 

 

祐斗がフロアに戻ろうとした時、廊下で見知った人物が前を通り掛かる

 

「――――匙くん」

 

「よぉ、木場」

 

「どうしてここに?」

 

そう尋ねると匙は息を吐きながら言う

 

「会長がちょいとリアス先輩の様子を見に来たってトコロかな、その付き添い。

 表ですれ違い様フェニックスのヒト達にも会ったけどさ」

 

「そっか、ありがとう」

 

祐斗は匙と共にフロアまで歩き、その中で匙が決意の眼差しで言った

 

「木場、俺も今回の一件に参加するつもりだ。都市部の一般人を守る」

 

シトリー眷属も冥界の危機に立ち上がってくれた

実力のある若手悪魔は召集が掛けられており、大王バアル眷属と大公アガレス眷属も出るだろう

本来、祐斗達も力ある若手として参戦しなければならない

 

「僕達も後で合流するつもりだ」

 

「‥‥‥‥リアス先輩達は戦えるのか?」

 

やはり今のリアス達を知れば、そういう疑問を抱く

今はまともに戦える筈が無い状態だが、それでも行かなければならない

 

「戦うしかないさ。

 この冥界の危機に力のある悪魔全てに召集が掛けられているのだから。

 僕達は力のある悪魔だ。――――やらなきゃダメさ」

 

祐斗は自分の心情とグレモリー眷属のあるべき姿を重ねて吐露した

匙は笑みながら大きく頷く

 

「だよな。そうだよな……」

 

しかし、その直後に匙の表情が一転する

迫力に染まった瞳で訊いてくる匙

 

「……兵藤と涼刀を殺した奴は分かるか?」

 

「分かるけど、もうこの世には存在しないよ。その者はイッセーくんと鋼弥くんが倒しただろうからね」

 

祐斗は一切の疑いも無く答えた。

鋼弥の母である涼刀千尋の証言どおり、シャルバを倒したと聞く。

 

「そうか、相討ちか……。

 いや、負ける訳がねぇ、勝って死んだんだよな?

 あいつらが……あの二人が負ける筈がねぇんだッ!」

 

匙は目から大粒の涙を流して心底悔しがり、気迫に満ちた表情のまま言う。

 

「あいつらを殺した奴はもういないんだな。

 なら、禍の団とゾロアスターの奴らをぶっ倒せば良いだけか」

 

「匙くん、キミは………」

 

「俺の目標だったんだ、あいつらのお陰で俺はここまで頑張れた。

 アガレスとの戦いでも活躍出来たっ!

 身近に同じ兵士の兵藤と夢を応援してくれた涼刀。

 あいつらがいたから俺はどんなツラいトレーニングでも耐えてこられた!」

 

匙にとって同期である一誠と鋼弥の存在は何者よりも大きく、その背中をずっと追い掛けていたのだろう

匙は憎悪に包まれた言葉を吐き出す

 

「俺の目標を――――俺のダチを殺した奴らは絶対に許さない。

 全員、ヴリトラの炎で燃やし尽くしてやるッ!俺の炎は死んでも消えない呪いの黒炎。

 たとえ刺し違えても命だけは削り切ってやる!」

 

匙は凄まじいオーラを内部から猛らせる

 

「死んでもらっては困りますよ、サジ」

 

声がした方角に振り向くと、ソーナ・シトリーの姿があった

 

「……会長」

 

「サジ、感情的になるのは分かります。

 だからと言ってあなたに死んでもらっては困ります。

 ――――やるのなら、生きて相手を燃やしなさい」

 

「はいっ!」

 

ソーナの言葉に匙は涙を袖で拭い大きく頷き自分の眷属と合流しに歩む。

 

「私達はこれで失礼します。

 魔王領にある首都リリスの防衛及び都民の避難に協力するよう、

 セラフォルー・レヴィアタンさまから仰せつかっていますので」

 

「部長にお会いになられたんですね?」

 

「……部屋にこもったきりです。

 私が問い掛けても反応はあまりありませんでしたが、

 代わりにこういう時にうってつけの相手を呼んでおきました」

 

「うってつけの相手?」

 

祐斗は訝しげに問うが、ソーナは薄く微笑むだけでその者の正体を教えてくれなかった。

ソーナはそのことを告げて、自分たちの眷属と合流しようと歩む―――。

 

(……鋼弥、貴方の仇はとります。例え、私の身がどうなろうとも……!!)

 

ソーナの目には涙がたまっていたが、弱さを見せないために振り払う。

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