ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~ 作:Mr.エメト
魔界組は命令が出るまで待機が出されていた。
全員、今すぐにでも飛び出したい気持ちだが、フィーナに止められていたのだ。
後にシェリル、リーザ、アルスと合流するためである。
カナンはノアの所へ行き、今回の騒動を報告しに行っている。
向こうも、鋼弥と一誠の死は伝わっている。
「心配してんじゃねぇよ。あいつは遅れて来るに決まってんだよ」
ドルキーはいつもの口調で話していたが、帽子を深くかぶり、身体を震わしていた。
ガンッと握りこぶしを壁に叩く
「死ぬわけねぇよ。あいつが……鋼弥が……。殺されたって死なないアイツがよぉ!!」
親友が死んだのを認めたくない気持ちでいっぱいだった。
きっと帰ってくるのを信じている。
そうでなければ、悲しみに押し潰されそうだからだ。
「鋼弥の死に感傷している間にも冥界は大変なことになっている。
ゾロアスターの死兵団の姿だってある。
恐らく連中もこの機を逃さず、冥界を侵攻し始めたんだ。辛いのは君だけじゃない」
その言葉にドルキーは激昂、タオの胸ぐらを掴む
「タオ、お前は悲しくないのか?鋼弥が死んで悲しくないのか!?」
「悲しんでいたって……彼が帰ってくると思っているのか!?」
「じゃあ、テメェは鋼弥の死に悲しんでいる暇は無いってのか!?この冷血が!!」
「そんなわけないだろ!!この単細胞の分からず屋!!」
ついには取っ組み合いになった。
珠樹と望紅はドルキーを抑えて、彗花と紫がタオを抑える。
「やめて!!仲間同士で争わないで!!」
「こんなことをしても、何も解決しねぇよ!!」
―――バンッ!!
リオは机を叩いて、立ち上がり、皆に告げる。
「…………前に進まなければいけないわ。
私たちは冥界の住人を救助しつつ、進軍している怪物たちを止めなければいけない。
だから、コーくんの死に悲しんでいる時間があったら、今の状況を打破しなければいけないわ」
あの場で鋼弥の死を、一番に知ったのにも関わらず戦う覚悟をしている。
「リオ、お前……」
「急いで!!時間が惜しいわ!!コーくんだって、今の状況を見たら、怒るわ!!」
リオの言葉に全員は驚くが頷いて、それぞれの準備に入る。
紫はリオの心境を察したのか残っていた。
「……紫。私……私……」
リオの目には涙が溢れていた。
幼い頃からずっと、一緒にいた鋼弥の死に堪えていたが、皆の前で絶対に涙を流さないようにしていた。
けど、それでも、堪えられなく限界だった。
「……いいのよ。今は私しかいないわ」
「うう……うく……うあああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!」
リオは紫の胸に埋めて泣いた。
紫はただ、リオの背中を何度も撫でる。
―――――――――
=火山と温泉の国・ドラゴンテルプルム=
玉座の間にて、オーフィスの件、冥界で起きている災害を話しているカナン。
険しい表情になるノア、彼女は立ち上がり告げた。
「皆、我は冥界へ赴く。その間に守護を頼むぞ!」
七門番将とそれぞれの武器を構え、片膝をつく。
外で待機しているドラゴンたちは戦いに向けて吼える。
カナンもまた、ノアと共に行こうとしたが―――。
「カナン、部屋で話がある」
ノアは自室でカナンと二人っきりとなる
「お前は魔界に残れ。鋼弥の死で戦える状態ではない」
ノアの言葉にカナンは顔を伏せる。
あの時……鋼弥の死を知って、涙が溢れそうになった。
「……母上……、私は……」
「お前はいずれ、竜族を治める立場に立たなければいけない。
心が安定してないお前では、足手まといになるだけだ」
酷な事を言うが、ノアの言葉は最もだ。
カナンは泣きそうになるが涙を拭く。
彼女はそれでも、それでも行かなければ、戦わなければいけない理由がある。
「母上、私は……。
鋼弥が守りたい世界を引き継がなければいけない。
彼の想いを無駄にしない為にも!!」
カナンの覚悟にノアは目を瞑り、フッと笑う。
「お前がそこまで言うなら、私は止めはしない」
ノアはカナンの頭を優しく撫でる。
母と娘は熱き心を持ち、冥界を救うために赴く。
「―――竜王の力と怒りを魅せつけるぞ」
ノアの目には怒りの炎が燃えていた。
それは逆鱗に触れた怒り狂う竜の姿だ。
―――――――――
=冥界 グレモリー城=
テレビには首都の様子が映し出された。
大勢の人々が冥界の兵隊たちによって安全な場所へと導かれていく。
レポーターが避難している子供に尋ねた。
『平気だよ!!だって、あんなモンスター、おっぱいドラゴンとギンガがきて、たおしてくれるもん!!』
その子の手には二人を模した人形が握られていた。
子供たちは不安な顔を見せずに二人のヒーローが倒しに来ると絶対に信じている。
その光景を見た祐斗は口元を押さえ、こみ上げてくるものを必死におさえた。
(見てくれているかい、イッセーくん、鋼弥くん。君たち待ち望む子供たちの姿……。
皆、不安な顔を一つ見せてないよ?皆、君たちが助けてくれると心から信じ切っているんだ。
だから……来ないとダメじゃないか!!君たちはこの子たちのヒーローじゃないか!!)
「俺たちが思っている以上に冥界の子供たちは強い」
突然の声、隣にはその漢(おとこ)がいた。
「……あなたは!」
「あの二人は大きなものを冥界の子供たちに宿したようだな」
かつて死闘を繰り広げたサイラオーグ・バアルだ。
◆◆◆◆
「入るぞ、リアス」
室内を進むと、ベッドの上で体育座りをしているリアス。
表情は朱乃以上にうつろで、目元は赤く腫れていた。
一誠を失った悲しみが大きく、ずっと泣いていたのだろう
「‥‥サイラオーグ、何しに来たの‥‥‥」
「――――行くぞ。冥界の危機だ。
強力な眷属を率いるお前がこの局面に立たずにしてどうする?
俺とお前は若手の最有力として後続の者に手本を見せねばならない。
それに今まで俺達を見守ってくださった上層部の方々、魔王さまの恩に報いるまたと無い機会ではないか」
サイラオーグは尤(もっと)もな意見を口にする
普段のリアスならそれを聞いたら奮起するが、彼女は顔を背けた。
「……知らないわ」
「自分の男が行方知れずと言うだけでここまで堕ちるか。お前はもっと良い女だった筈だ」
サイラオーグの一言を聞いたリアスは激昂する
「彼がいない世界なんて!イッセーがいない世界なんて、もう……どうでもいいのよ!
私にとって彼は、あのヒトは、誰よりも大切なものだった……。
こんな世界……無くなってしまえばいいのよ!!」
リアスは一誠を失った悲しみに再び涙を浮かべて表情を落ち込ませようとするが、サイラオーグが大きく言い放った
「赤龍帝の兵藤一誠が愛した女は、銀流星の涼刀鋼弥が認めた女は、この程度の女ではなかった筈だ!
あの男達はお前の想いに応える為、お前の夢に殉ずる覚悟で誰よりも勇ましく前に出ていく強者だったではないか!
主のお前が、あの男が愛したお前が、その程度の度量と器量で何とする!?」
サイラオーグの一喝を聞いてリアスは驚き、サイラオーグは言葉を続ける
「―――――立て、リアス!!
あの男達はどんな時でも立ち上がったぞ!!前に出て、ただ、前に出た。
この俺を真っ正面から殴り倒した男達を、お前は誰よりも知っている筈だ!!」
あの二人と死闘を繰り広げたライバルだからこそ解る
「それに……おまえはあの二人が本当に死んだと思っているのか?」
その言葉に一瞬、言葉を失う。
「……それこそ、滑稽だ。あの二人が死ぬはずがない。
俺は先に戦場で待つ。必ず来い、リアス!グレモリー眷属!
あの男達が守ろうとしている冥界の子供達を守らずして―――。
何が『おっぱいドラゴン』と『銀流星』の仲間か!」
そう言い残して、サイラオーグは立ち去った。
◆◆◆◆
グレモリー城内で保護されているヴァーリチーム。
サーゼクスとアザゼルの進言もあってグレモリー当主は彼らを秘密裏に匿っていた。
初代孫悟空がサマエルの毒に侵されたヴァーリの治療をしていた。
口から黒い塊が出て、瓶に入れてフタをして封印の呪符を張る。
「身に潜んでおった呪いは仙術で取り出せたわい。これで体も楽になるだろい。
大馬鹿もんが珍しく連絡なんぞ寄越したと思ったら、白い龍の面倒を見るとのぉ」
「うるせぃ、クソジジィ。……で、ヴァーリは治るんかよ?」
「こやつ自身が規格外の魔力の持ち主だからのぉ。ワシが切っ掛けを与えてやりゃ十分だろうて」
「礼を言う、初代殿。これで戦える」
「呪いが解けたら、すぐに戦いの事に考えるなんぞ、どうしよもない戦闘狂じゃい。
――――さての、ワシもそろそろ出かけさせてもらうぜぃ。バカの顔を見られたことだしのぉ」
「ジジィ、どっか行くのか?」
「ワシはこれでも天帝の先兵じゃからのぉ。
冥界で暴れ回っているテロリスト駆除ってやつよ。
年寄り使いの荒い天帝じゃしのぉ」
初代孫悟空も今回の一件に力を貸してくれるのだが……天帝について引っかかる所がある。
ヴァーリが問いかける。
「その天帝は曹操と繋がっているのだろう?
京都の一件―――妖怪と帝釈天の怪談を邪魔した曹操という図式は、
天帝の中でどういう位置づけになっている?」
「さーての。ワシはあくまで先兵兼自由なジジイじゃてな。
あいつがどこまで裏で企んでいるかなんて興味も無いワイ
……ただ、天帝は高みの見物だろうよ、今回はハーデスがやりすぎたんだろうぜい」
初代孫悟空はそう答える。
「初代殿。サマエルの毒に触れた貴方に訊きたいのです。
この呪いを受けたドラゴンが生き残るとしたらどのような状況になるのか」
祐斗の問いに、初代は顎に手を添えて答えた
「肉体が滅びるのは確実。次に魂が呪いに蝕まれて消滅するだろうよ。
……だが、悪魔の駒は何故、呪いを受けなかったかだ。
おそらくだが、魂は無事という僅かな可能性があるわけだ。
赤龍帝は案外ひょっこりと漂っているかもしれんぜ」
「だけどよ、ジジィ。銀流星の方は‥‥‥‥」
「母親の証言だと、全身を貫かれて出血多量。
半分が人間だからか、そうなると死は免れないという事かねぇ」
鋼弥が生きている可能性は――――0%
だけど、それでも……二人が生きているという僅かな希望を信じなければと、祐斗は強く思う。
「ヴァーリ・ルシファー、君はどうするんだい?」
「兵藤一誠と涼刀鋼弥の仇討ちといえば、君は満足するかな」
「いや、ガラじゃないと吐き捨てるだけださ。
それに……仇がいるとするなら、それは僕たちの役目だ。
いいや、僕が討つ」
「なるほど、その通りだな。……俺は出し切れなかった力をぶつけたいだけだ。
俺が狙う相手と俺を狙う相手は豊富だからな」
ヴァーリは戦意に満ちた不敵な笑みを見せる。
その瞳の奥には白い炎が静かに燃えていた。