ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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闇の覚醒、更なる絶望、そして―――帰還


第七話 帰還

ヘラクレスとジャンヌを退けた。残るのはゲオルグだけだが―――。

 

「強い。これが現若手悪魔と魔界の勢力か

 バアルのサイラオーグ、リアス・グレモリー率いるグレモリー眷属。

 先日会ったばかりだというのにここまで力を伸ばしてくるとは……。

 この調子ではそちらの雷光の巫女や、聖剣使い、猫又、ヴァンパイアも注意が必要のようだ」

 

ゲオルクは朱乃、ゼノヴィア、小猫、ギャスパーと視線を移していく。

 

「……すいません、皆さん。グリゴリの研究施設に行っても……強くなれなかったんです!」

 

――――っ!

 

ギャスパーの告白に再び眷属全員が驚愕する。

 

「皆さんのお役に立ちたかったから……強くなりたかったのに!

 今のままではこれ以上は強くなれないって言われて……。

 僕はグレモリー眷属男子の恥なんです……っ!」

 

ギャスパーはその場で崩れ落ちていく。

その姿を見てゲオルクはつまらなさそうに息を吐く。

 

「亡き赤龍帝と銀流星もこの後輩の情けない姿を見たら浮かばれないだろう」

 

その一言を聞いたギャスパーは顔だけ上げてきょとんとした様子で漏らした。

 

「……亡き……赤龍帝と銀流星?」

 

ギャスパーだけが一誠と鋼弥がここにいない理由を知らない。

 

「ふ、二人は?二人がここにいないのはあの大きな怪物を止めに行っているからじゃないんですか?」

 

「ギャスパー、イッセーと鋼弥は―――」

 

真相を知らない彼にリアスが告げようとするが、サイラオーグがリアスに視線を配らせ首を横に振った。

リアスもそれを確認して言いかけた口を閉ざした。

二人の『王』視線のやり取りに怪訝に思うなか、ゲオルクは口許を笑ましてギャスパーに話を始めた。

 

「そうか。君は知らなかったのか。赤龍帝と銀流星は戦死したよ。

 話に聞けばあの二人が最後に戦った旧魔王シャルバが怪物に変異した。

 サマエルの血を持っているのだ、赤龍帝がどうなったのか、何となくの予想はつくだろう?

 彼はサマエルの呪いを受け、銀流星は全身を貫かれたと聞く。

………そう考えるのが普通ではないだろうか」

 

ゲオルグの言葉に祐斗だけではなく、リオと彗華も悔しそうに歯を食いしばる。

 

「悔やむことはない。

 あのオーフィスと白龍皇ヴァーリですらサマエルに打倒されたのだ。

 いかに赤龍帝といええども、あの呪いには打ち勝てない。

 銀流星も強靭な肉体だろうが―――貫かれれば、死ぬのだからな」

 

ゲオルクがそう告げた後、軽く笑った。

ゲオルクの言葉を聞いたギャスパーは絶望しきった表情となる。

 

「…………イッセー先輩と鋼弥先輩が……死んだ?」

 

ギャスパーの頬を一筋の涙が伝った。

尊敬する二人が死んだと聞かされ、彼の思考は絶望に塗り変わっているだろう。

 

――――ギャスパーはふらつきながら立ち上がっていく。

 

徐々に伏せていた顔も上げていった。

そこにあったのは感情の宿らない生気の抜けたような表情。

それを見た瞬間、背中に冷たいものが駆け抜けていくのが認識できた。

彼は小さく口を開くと一言だけ呟いた。

それは低く、この世のものとは思えない呪詛めいたものだった――――。

 

《―――死ね》

 

その瞬間―――――全てが黒く染まった。

いや、黒ではない。

それを遥かに通り越した暗黒と言える空間。

暗く、冷たく、光すら消滅してしまうほどの闇。

闇がこの区域全てを包み込んだのだ。

ギャスパーの体から暗黒が滲み出ていき、周囲を黒く染めていく―――――。

 

「なんだ、これは……!暴走、禁手?いや、違う!

 では、ヴァンパイアの力か!しかし、これはあまりにも桁違いな!」

 

暗黒の領域と化した中央。

そこにはいっそう闇に包まれた人型が異様な動きをしながら、ゲオルクに近づいていく。

 

首をあらぬ方向に折り曲げ、肩を痙攣させ、足を引きずりながらゲオルクとの間合いを詰めていく。

 

その瞳を赤く、不気味に輝かせていた――――

 

《コロシテヤル!オマエラ全員、僕がコロシツクシテヤル……!》

 

発せられる声は既にギャスパー君とは別物。

呪詛、怨念、あらゆる負の感情が込められた、聞くだけで力を持つ危険な系統の声。

 

「ギャスパー・ヴラディの中で何か吹っ切れる事柄があればと思ったのだが。

 リアス、おまえは一体何を眷属にした?あれはバケモノの類いだぞ」

 

「……ヴァンパイアの名門ヴラディ家がギャスパーを蔑ろにしたのは、

 人間の血でも停止の邪眼でもなく……、これを恐れたから?

 あの恐怖から城と離れさせた……?」

 

ギャスパーの変異にリアスが声を震わせながらそう漏らしていた。

眼前で黒い化身となったギャスパーが手らしきものを突き出した。

ゲオルクがすぐに反応して魔法陣を展開するが――――その魔法陣は発動する前に闇に食われていった。

 

「魔法でも神器の力でもない!なんだ、この力は!?どうやって我が魔法を打ち消した!?」

 

ゲオルクはそう叫びながら距離を取ると、無数の攻撃魔法陣を展開した。

そこからありとあらゆる属性の魔法フルバーストがギャスパーに放たれる。

 

しかし―――――

 

「なに……!?」

 

その攻撃がギャスパーに届くことはなかった。

暗黒の世界にいくつもの赤い眼が縦横無尽に出現し妖しく輝いたと思うと、全ての攻撃魔法は停止させられてしまった。

つまり、この領域全てに停止の邪眼を出現させたというわけだ。

 

停止した魔法は闇に食われて消失していく。

それならばとゲオルクは霧を発生させ、それでギャスパーを祓おうとするが、霧さえも闇に食われていった――――。

 

《喰う……喰ってヤッタ。オマエの霧も魔法も……全て喰ってヤッタぞ……》

 

言動が完全にギャスパーのものとは違う。

もう別の存在と化していると思っていいのかもしれない。

上位神滅具の霧でもこの闇の力に抗えない。

これがギャスパーが内に秘めていた潜在的な力だと言うのか・・・・・・!?

もしそうだとすれば、彼の潜在能力は眷属の中でも一番なのではないだろうか。

 

ゲオルクが霧や魔法を駆使して攻撃を仕掛けるがその全てが停止させられ、闇に食われていく。

結界空間を作ろうと霧で魔法陣を展開させるが、ことごとく闇に食われていき、成形に失敗する。

 

すると――――。

ゲオルクの周囲に変化が訪れた。

闇が蠢き、獣のようなものが形作られていく。

それは狼、巨鳥、ドラゴンと様々だが、単眼、足が十本以上あったりとどれもまともな形をしていない。

闇の獣たちがじわりじわりっとゲオルクを囲う。

 

「くっ!一旦引くしかない!」

 

ゲオルクは正体と能力が測りきれないギャスパー君の相手を諦め、足元に転移魔法陣を展開した。

転移の光に包まれようとした瞬間――――ゲオルクの体から黒い炎が現れる。

黒い炎はゲオルクに絡み付き逃がさないようにしていた。

 

「なっ!?」

 

「逃がさねぇよ。ここまでやってくれたんだ。ただで済むわけねぇだろ!」

 

匙がヴリトラの炎でゲオルクを縛り上げたのだ。

黒き龍王の炎―――それを受ければ命を吸われて燃え尽きるまで絡み続ける。

 

「これはヴリトラの呪いか……!」

 

声を絞り出すゲオルク。

解呪に成功したと思われた黒炎は消えてはいなかった。

そして――――闇の獣が動けない彼を喰らっていった。

 

 

―●●●―

 

 

闇が晴れて、元の風景に戻るとギャスパー君は路面に倒れていた。

 

「ゲオルグは何処に?あの闇に呑まれてしまったの……?」

 

「あれはただの闇ではありませんね……。もっと恐ろしい何かのようですね」

 

リオと彗華はギャスパーの"闇"を見て、身震いしていたがそう発言した。術者だからこそ、あの闇が恐ろしかったのだろうか。

 

(けど、ギャスパーくんの力、まさかだと思うけど……)

 

一瞬だけ感じ取ったギャスパーの力の気配を感じたリオ。

リアスがギャスパーに歩み寄り、その体を抱き起こすと彼はすやすやと穏やかな寝息を立てていた。

先程の力を使いきって気絶したのだろうか、そこにいるのはいつものギャスパー君だった。

リアスはギャスパーの髪をそっと撫でる。

 

「この子についてヴァンパイアに訊かなければいけないわね。

 問題は吸血鬼は悪魔を嫌っているから、質問に答えてくれるかは分からないけど……」

 

吸血鬼は悪魔以上に階級や血筋を重んじる。

現悪魔政府のように人間からの転生悪魔にチャンスを与えるといったことは決してしない。

 

「ヴァルハラに戻った時、興味深い話が聞けました。

 なんでもとある吸血鬼の名家が神滅具所有者を保有したことで、

 吸血鬼同士で争いが勃発してしまったそうです」

 

ロスヴァイセがそう話してくれた。

吸血鬼の業界は未だ悪魔を含め他の勢力と交渉すらしない閉鎖された世界だ。

 

「……それも気になりますが、今はこの状況をどうするかを考えましょう」

 

回復して目覚めたソーナが言う。

想定外のことが起きてしまったが、こうして英雄派幹部の三名を退けることができた。

残る問題はこの何処かにいると思われる曹操と現在も首都リリスに侵攻を続ける"超獣鬼"とゾロアスター。  

"超獣鬼"の方はグレイフィア率いるルシファー眷属が戦ってくれているだろう。

それでもあの超巨大魔獣を退けられるかどうかだ、あれを退けない限り、冥界の危機は去ったとは言えない。

 

 

◆◆◆◆

 

 

【タルウィとザリチェが奴らと交戦、魔獣たちもガルガンチュアも押されています。いかがいたしましょう?】

 

戦況を聞いてたアンリ・マンユは口を開く。

 

【―――ゴライアスを解き放て】

 

アンリ・マンユの言葉にゾロアスターの悪魔たちは驚く。

 

【しかし、アレを解き放ってしまえば冥界が……】

 

【構わん。冥界を全て焦土にし、破壊の限りを尽くし絶望を与えるのだ。

 それで、思い知るだろう。自分たちがどれほど無力であることをな】

 

アンリ・マンユの言葉に部下の悪魔たちは頷く。

 

【了解しました。ゴライアスを解き放て!!】

 

離れている場所から巨大な方陣が描かれていく。

機械音が響く血の様に真っ赤な寸胴ボディ、300m級の巨神兵が魔法陣から出現した。

両目からレーザーが放たれ冥界の地表を薙ぎ払う。

 

――――ズゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

巨大な炎の壁と大爆発と衝撃波が同時に巻き起こり、冥界の空があっという間に赤く燃え上がる。

絶大な破壊力を目のあたりにして驚くリアスたち。

 

【ウッヒャー!!あれって、まさかゴライアスか!?】

 

【ヒヒヒヒヒヒッ!!アンリ・マンユ様が"超兵器ゴライアス"を冥界に放ったのか!!】

 

戦闘をしていたタルウィとザリチェが歓喜していた。

 

「超兵器ゴライアス?いったいどういう事よ!?」

 

【簡単に言えば、焦土にするまで暴れる兵器。

 魔界の最果ての遺跡から発掘、修復して俺たちの手ごまにしたのさ】

 

【あいつの有り余るパワーは都市だろうが国だろうが、廃墟と焦土にするんだぜ~。

 もう、お前たち悪魔どもには未来も何もないってわけだぁぁぁ!!】

 

リアスたちはもう一度、巨神兵ゴライアスを見る、この冥界を何もかも全て焦土にする破壊兵器。

セラフォルー、アジュカ、ファルビウムの三魔王と眷属たち、マシンナリードライバーたちがゴライアスに向い、一斉攻撃をする。

煙が晴れると、あれだけの攻撃を受けてゴライアスに傷一つもつかない。

三魔王たちやマシンナリードライバーたちの攻撃を前にしても、進行を止めない。

 

―――絶望。

 

最早、冥界が焦土になるのを黙って指を咥えているしかないのか……。

 

「―――諦めませんわ」

 

朱乃は両手に雷光を纏わせて、タルウィとザリチェの方へと歩む。

 

「あの人が、鋼弥さんなら……諦めずに戦いますわ。

 だから、私も逃げずに最後まで戦いますわ!!」

 

朱乃は堕天使の翼を広げて、雷光を撃ちまくる。

しかし、タルウィはザリチェは避けて、ザリチェは植物の触手で朱乃を捕縛する。

 

「朱乃!!」

 

【助けようとするなよ。この嬢ちゃんの解体ショーが始まるぜ?】

 

【あー、でもさー。こいつを公開凌辱してもいいんじゃねぇか?

 どうせ、元カレはくたばっているしさぁ?】

 

タルウィとザリチェが嘲笑い、リアスもサイラオーグ、誰もが怒りを滾らせた。

その時だ、次元の裂け目が生じようとしていた。

 

――――――それは、誰もが待ち望んでいた、ヒーローの帰還だ。

 

◆◆◆◆

 

 

=異次元=

 

 

一誠は新たな肉体を得て、調整も完了したところだ。

 

「夢を見た?」

 

「ああ、子供たちが泣いててどうしたのかと聞くと、でっかいモンスターたちが暴れててな。

 それで……"おっぱいドラゴンの歌"を歌ったら、なんとか泣き止んでてさ」

 

『あれほど他者にやられて、嫌がってたお前がな……』

 

ドライグが嘆息する。

その歌はアザゼルが作った歌で、サーゼクスやセラフォルーも関わっていたとか。

 

「しかし、どうして一誠が子供たちの夢を?」

 

『グレートレッドは夢幻を司るからな。もしかしたら子供たちの夢とつながっていたのかもしれん』

 

「なるほど、祐斗にアスカロンを渡して助けることができたのもグレードレッドのおかげか」

 

あの時、ジークフリート戦の時に皆を助けることができた謎が解けた。

 

「鋼弥。この力を使う時が来たようだな。オーバードライブを完全に使いこなせたお前なら」

 

仁は鋼弥の頭に手を乗せて、気を送り込む。

鋼弥の身体に懸けられた"封印"が解かれたようだ。

 

「この力は魔王であり大天使である存在を鎧として身に纏う。思う存分、使え」

 

「ありがとう、父さん」

 

「じゃあ、行くとするか」

 

『ああ、帰ろう。グレートレッド、この男たちをあの子達のもとへと帰してやってほしい。頼めるか?』

 

ドライグがそう言うとグレートレッドが一際大きい咆哮をあげる。

すると、前方の空間に歪みが生じて、裂け目が生まれていく。

 

「オーフィス、俺たちは行くよ。皆が待ってるからな」

 

「そう。それは……少し羨ましいこと」

 

寂しげなオーフィス。

二人は頷き、オーフィスに手を差し伸べた。

 

「俺たちと来い」

 

その言葉にオーフィスは驚き目を見開いていた。

 

「おまえの居場所はこんな寂しい場所ではない。―――俺たちと一緒だ」

 

「一緒に行こうぜ。俺の友達、オーフィス」

 

その時、最強と称された存在―――オーフィスは微笑んだ。

 

「我とドライグと銀流星は友達。我、おまえたちと共に行く」

 

一誠と鋼弥とオーフィスは手を取り合った。




ゴライアスの姿は「MOTHER (ゲーム)」の"R7038XX"というボスから。
仁から鋼弥に渡された力とは……?

次回、お披露目!!
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