ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第二話 闇黒世界の宣戦布告

=涼刀事務所(魔界)=

 

 

 

「タオが行方不明!?」

 

鋼弥が驚きの声をあげるアルスは目を瞑って答える。

 

「ああ、イースロードで戦闘が行われていた跡があった。血痕も残されていた」

 

アルスがバサリッと投げた資料や現場の写真である。

 

「おいおい、アイツがそこらの悪魔にやられるわけないぜ?」

 

「それは解っている。しかし……」

 

「最悪の事は覚悟した方がいいというわけか……」

 

男性陣はそんな会話をしている中、珠樹たちが姿を現した。

しかし、二人ほど足りない。

 

「ねぇ、紫とカナンを見ていない?」

 

「紫とカナン?いや、調査報告書だって提出されてないが……」

 

「え!?じゃあ……二人が帰っていないという事!?」

 

「おいおい……、まさか、二人とも行方不明になったのかよ!?」

 

ドルキーだけではなく、鋼弥もアルスも驚く。

彼の発言に、珠樹も訝しむ表情をする。

 

「ちょっと待て、他にも連絡が取れなくなったのがいるの?」

 

「ああ、タオが連絡取れなくなったんだ……」

 

鋼弥の発言に女性陣達も驚く。

リーザはカナンと紫が最後に行った場所を告げる

 

「――――カナンは火山と温泉の国、紫は中央よね。こんな事になるなんて……」

 

三人も行方不明になる、これはあまりにも異常すぎる。

とにもかくにも、捜索隊を編成しなければならない。

 

 

◆◆◆◆

 

 

使われてない小屋に、傷だらけとなったタオは休んでいた。

持っていた回復道具でなんとか、止血し終えた。

 

「……ジェイ……」

 

頭を抱えて―――先刻を思い出す。

 

 

~~~~

 

道路に斬撃跡、岩を両断されていく。

雨が降る中、タオは襲いくる刃を昆で防ぎつつ、ただ払うだけしかしなかった。

いや防戦していたのだ。

それは、目の前にいる人物に攻撃なんてできないからだ。

 

「どうしたのさ、兄さん。反撃してきなよ!!」

 

刀から水の刃が放たれて、地面を奔る。

跳躍して、かわすが、其処へ行くのを読んでおり蹴り飛ばされるタオ。

上手く着地し、少年を見る。

 

「ジェイ、どうして……!!」

 

ヒュンっと刀の切っ先をタオに向けて、少年――ジェイは冷たく告げた。

 

「兄さん。ボクはライシェンの名は捨てた。

 ボクの名前は――――ジェイ・アリトン。

 偉大なる教祖に仕える西の魔王を襲名した」

 

「アリトン……!?」

 

それは四方を司る四大悪魔の一人、西を支配し水を司るデーモン。

弟がそんな悪魔を襲名したというのか!?

タオが驚く中、ジェイはジッと見ては、"あるもの"がないことに気付く

 

「兄さんは僕と同じように二刀流だったよね?

 どうして、昆を使っているんだい?

 ―――――あの時の後悔から、剣の道を棄てたのかい?」

 

ジェイの言葉にタオは目を逸らしていた。

 

「そんな弱くなった兄さんなんて、………死になよ」

 

ジェイの言葉と共に二刀を天に掲げて、水を集める。

 

「―――水鮫(すいこう)」

 

振り下ろすと同時に、水で形作られた鮫が出現しタオに直撃する

 

「うあああああああああああああああああ!!」

 

タオはそのまま崖へと、転落したのだった。

ジェイはタオが落ちた崖を見て、刀を収めて、その場を立ち去る。

 

降り注ぐ雨の中へ―――。

 

~~~~

 

 

崖から転落はしたが、なんとか生き延びていた。

これも修行の賜と言うべきか………。

 

「………まさか、ジェイがあの教団に入っていたのか。そうなると、魔界だけの問題じゃなくなる」

 

まだ、治り切って傷だらけの身体で立ち上がるタオ。

休むわけにはいかない、これから起こる事に急がなければいけない。

 

「今回の件、皆に迷惑をかけるわけにはいかない……」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

オカルト研究部へ足へ運んだ鋼弥、リアスたちにタオたちの件を話すと彼女たちも驚いていた。

 

「タオ、カナン、紫……三人が突然、行方不明になるなんて……」

 

「……現在、ドルキーたちが三人を捜索している。

 しかし、手掛かりがない上、広大な魔界を探すのは骨が折れる」

 

「冥界の騒動が落ち着いたのに、何が起きているんだよ」

 

一誠も三人が安否不明に心配をする。

突然、巨大なディスプレイが顕れ、映像に映し出されていたのは幼い感じが残る紫色の長髪をツインテールにし、蝙蝠の髪飾り、銀色の王冠、マントを羽織っている。

周りの一般人には見えていない、つまり……異種族だけが見れるタイプのようだ。

 

『―――私はディープホールを治める魔女王アナスタシア・ヴァルプルギス・ハトゥルム』

 

「ハトゥルム……!?」

 

その名を持つのは―――――。

驚く鋼弥たち、アナスタシアは演説をつづけた。

 

『私たちは長い長い時を待った。深い闇黒の世界、私たちは陽の光を見ることがなかった。』

 

これは駒王学園だけではない。

魔界、冥界、天界、あらゆる神話体系の組織たちが、この映像を見ている。

 

『私を闇へ閉じ込めたのは誰?

 他ならぬ魔界の者たちよ。これに加担する者たちよ。

 今ここに、私の復讐は始まる――――我が闇の軍勢"エンパイヤ"は戦いを始める!!』

 

この宣戦布告を告げて、ディスプレイは消える。

 

「グリモワール教団、ディープホールのエンパイヤ。一体何が……何が起きようとしているんだ」

 

 

◆◆◆◆

 

 

アナスタシアの宣戦布告の映像を見ていたミランダはギュッと手を握っていた。

 

「アーニャ……どうして……」

 

ミランダの視線の先には写真。

それは二人の姉妹が仲良く写っていたものだ。

 

「貴女が、何を想って宣戦布告したのか解らないけど、

 そういう恨み言は私だけに向ければいいのに……!!

 悪いのは、悪いのは私だけなのに……!!」


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