ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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三か月ぶりの更新、平成最後の更新です。


第三話 血塗られた過去

地上世界の紛争地域―――。

 

 

銃弾、衝撃音、爆発音、人々の悲鳴が止む事がない。

大方の理由は"今の世界は間違っている"、というテロ組織が起こしたものだ。

しかし―――そんなテロ組織が風前の灯火の状態であった。

 

「撃て!!撃て!!撃て!!」

 

テロ組織のリーダーが指揮をとり、残り少ない兵士が砲撃していたのだ。

 

――――たった一人に。

 

それは突然現れた。

侵略しようと、現れてここまで追い込まれたのだ。

あれは、全てを喰らい骨すらも残すない嵐の化身、猛獣だ。

 

テロ組織が放った弾丸を全て、避けていた。

その人物は、左肩には教団のマークが彫られている入れ墨、背中に三連ガトリングを構え、ギラリッと睨んで―――。

 

「GO・TO・HELL!!!!」

 

言葉と共に弾丸を撃ち、テロ組織の兵士たちを次々と撃つ。

 

「ヒャ―――――ハハハハハハハハハ!!」

 

鋭い爪で次々と切り裂いて、兵士たちを血祭りにあげていく。

残った、指揮官の頭を掴んで、マグナムを取り出す。

 

「よぉ?これから戦火を広げようとしたマヌケさん。

 残念だが、天罰が下ったわ。

 来世で、良い子になりなよ?レッツ・ハッピーてな」

 

獰猛な笑みをして、引き金を引いて頭を撃ち抜いた。

死体を投げ捨てて、タバコを吸って一服する。

 

「レオンさま、生き残った兵士たちはどうしますか?」

 

複数のグリモワール教団の兵士たちが現れる。

そのうちの教団兵は男―――レオンと呼ばれた人物に話す。

 

「……適当に絞めて、ここの政府だっけ?その前においておきな。

 そいつらのボスの遺体も引き取ってもらえるよう手続きもな」

 

「はっ!!」

 

「それと、もう一つ……俺は、教祖の所に戻るわ。ここの布教活動は頼むぜ?」

 

「はっ!!どうかお気を付けてください。――――レオン・アマイモンさま!!」

 

タバコを消して、歯を覗かせるほどのニヤリッとするレオン。

 

「さて……大きな仕事が待っているのかね?クククククッ」

 

赤い目がギラリッと光らせて、獰猛な笑みを浮かべるレオン。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

=狩猟と闘技場の国 ノースタウン=

 

 

タオの故郷であるノースタウンへたどり着いた鋼弥、リオ、ドルキー、珠樹。

他のメンバーは地上にいる一誠たちと合流に向かっている。

まずはタオについて聞き込みをしていたが、街の人々は取り合ってくれない感じだ。

 

「ここの人たち、タオのことを話してくれない感じね」

 

「ああ、口を閉ざしているというか、はぐらかされているな」

 

珠樹の言葉に賛同するドルキー。

酒場なら、何か情報がつかめるはず。

 

「すまないが、タオについて何か知らないか?」

 

鋼弥が訊くと、人々は驚いて、話すべきか目線を配っている。

 

「あんたら、タオとどういう関係だ?」

 

「修行仲間だが……」

 

「じゃあ、知らないのか?タオって―――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――親殺しなんだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃の言葉を聞いた。

あのタオが……親殺し?

いつも、優しくて大喰らいな彼が、そんな恐ろしい過去を秘めていたのか?

ドルキーが発言した人物の胸ぐらをつかむ

 

「おい、いい加減な事を言ってんじゃねぇぞ。あいつが親殺しだと?」

 

「お、俺らだって、当時の事件を聞いただけで解らないんだよ。

 ただ……タオは弟さんを助けるために、父親を殺したんだよ」

 

「……母親は?」

 

「病気で亡くして父親が酒飲んでロクに仕事してない酔っ払いなんだよ」

 

酒場を出て、噴水広場に集まりこれまでの情報を整理する鋼弥たち。

 

「一体どういうことなんだ?タオが親殺しって……」

 

「信じがたい事だがな。……そもそも俺たちもタオの事について知らない事もあったな」

 

「リーザからも訊いたけど、タルウィの攻撃を防いだ時に水の障壁を出したって」

 

「……リオ。タオのライシェン家について何か知らないか?」

 

「古くから武を極めていて、分家がいくつもあると聞いたわ。

 本家の頭首はバルダ・ライシェン、恐ろしいほどの強さを持つと聞いたわ。

 最大の特徴は"水"を操る力を持つと言われている」

 

武と水を司るライシェン家。

だけど、タオの家族状況を考えると……。

 

【なぁ、あんたら……】

 

声のする方を見ると女の妖鬼ヤクシニーだった。

 

【あんたら、タオの事を調べているのかい?】

 

「ああ、行方不明になってて生まれ故郷に来たんだが……親殺しという話を聞いて」

 

【そいつは違うんだよ!!

 アタイは見たんだよ、父親を殺した犯人は――――タオの弟、ジェイなんだよ】

 

 

――――!?

 

 

ヤクシニーの言葉に鋼弥たちは衝撃が走る。

 

「どういうことなんだ……?」

 

【雨が降っていたその日、アタイは二人の様子を見に行ったら――――】

 

 

◆◆◆◆

 

 

ヤクシニーは二人の為にお弁当を作っていた。

窓を覗いた、あの父親がいてタオに暴行していた。

タオの父は鉄パイプを取り、タオの頭蓋骨を割ろうとした時―――。

 

 

―――ザシュ!!!!

 

 

ジェイは背後から父親を突き刺したのだ。

蹴り倒して、何度も、何度も、何度も、突き刺したのだ。

 

「ジェイ!!ジェイ、やめろ!!」

 

止めに入るが……父親は息をしていない。

今の騒ぎを聞きつけて、街の人たちが入り込んだ。

血だまりに倒れる父親、凶器である剣を握っていたタオ。

 

「………父を殺したのは、僕です。弟を助けるために…………」

 

 

◆◆◆◆

 

 

【親殺しという烙印を押されたタオは街を出ていくことになった……。

 アタイがあの時、はやく止めに入っていたら二人は離れ離れにならなかったのに】

 

「……弟の方は?」

 

【ジェイもタオが出ていった一年後に街を出たんだよ。

 突然の別れも無しに……。

 いや、出ていく前日に変な連中と話をしていたのを見たんだ。

 

 ―――"黄金の単眼"が描かれていた連中に】

 

 

"黄金の単眼"……グリモワール教団がジェイと接触していた?

 

「これは、ただの行方不明という事態ではないかもしれん」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

カナンが目を開けると、薄暗い牢屋だった。

両手と両足は鎖で繋がれており、力を出そうとしても能力封じが施されている。

 

「……私は……そうだ、誰かに襲われて……」

 

火山の国で調査を終えて、帰還しようとした時に突然の風が吹き荒れて、何者かに腹部を殴られ気絶した。

 

「こんな強引な手を使うなんてね……」

 

牢屋の扉が開かれる音がし、誰か来る

 

「ようやくお目覚めしたのかしら?」

 

僅かな光でその姿がはっきりと見えた。

パイナップルヘアーに纏めて、首にはマフラーを撒いており、コートを身に着けている。

糸目でニコニコと笑顔を絶やさない女性だ。

 

「ごめんなさいね。手荒な真似して連れてきて」

 

「貴女が襲ったというわけね……。貴女は誰?」

 

「あたし?アタシの名前は、ルルカ・オリエンス。よろしくねー♪」

 

オリエンス。

それは東と風を司る四方の悪魔が一体。

 

「……貴女、襲名したのね。オリエンスという悪魔に認めるために」

 

「御名答。

 力で認めるか、代価を払うか、と色々あるけれど……私の場合は力で、ね。

 そーれーでー。貴女をここに連れて来た目的だけど。

 私たち教団が崇めている神様を呼ぶために生贄になってほしいんだ」

 

「生贄……ですって?」

 

「そう。カナンちゃんの事、よーく知っているもの。

 貴方のお友達から、よく聞かされているからね。

 でも……」

 

オリエンスはカナンに近づき、ガッと首を掴む

 

「貴女をどんな風に痛めつけて、気丈な顔から泣かせてあげようかと、考えちゃうんだよね~。

 水で攻める?腕とか足を折る?針で刺す?腹を思いっきり何度も殴る?

 アハハっ♪考えただけで、ゾクゾクしちゃう」

 

瞼をゆっくりと開眼し、カナンをジッと見る。

それは獲物を弄る表情をしていた。

 

「まぁ、それは後でのお楽しみという事で、ね。アハハハハハッ

 

そう言ってオリエンスは機嫌よくスキップして、牢屋を出て鍵を閉めてから立ち去った。

 

「……とんでもない奴に目を付けられたわね」

 

なんにせよ、助けが来るまでは耐えなければならない。

命を奪うようない事はしないし、生贄とかの準備もあるだろうから時間はある。

 

「……鋼弥、みんな……」

 

必ず助けが来ることを信じて、カナンは心を強く保つよう決心した。




(ED 真理の鏡、剣乃ように)

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