ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~ 作:Mr.エメト
次の日の放課後
オカルト研究部メンバーは旧校舎一階の「開かずの教室」とされていた部屋の前に立っていた
この部屋の中にもう1人の『僧侶(ビショップ)』がいるらしい
鋼弥、一誠、アーシアにとって今まで謎にされていた部員であり、新顔のゼノヴィア以外のメンバーは全員知っている
リアスの話によると、能力が危険視されており、リアスのレベルでは扱いきれないから封印をするように上層部から言われていたらしい
しかし、フェニックス家、コカビエルとの戦で高評価を得たので解禁された
扉には≪KEEP OUT!!≫のテープが何重にも張られていた
「一日中ここに住んでいるのよ。一応深夜には術が解けて旧校舎内だけなら部屋から出ても良いのだけれど、中にいる子自身がそれを拒否しているのよ」
「引き籠り過ぎると、身体も心も壊れてしまうな・・・。」
因みに、この引き籠り『僧侶』はパソコンを介して人間と契約を執り行っており、一番の稼ぎ頭なのだ
引き籠りなのに、納得がいかないのは気のせいだろうか
「さて、開けるわよ」
扉に刻まれていた刻印が消え、リアスが扉を開けた
その瞬間――。
『イヤァァァァァァァァァァアアアアアアアアッ!!』
「うわ!うるせーっ!?」
「盛大な絶叫だな」
中から耳を破壊するような絶叫が発せられた。
リアスは慣れているのか驚く事なく溜め息をつき、朱乃と共に部屋の中に入っていく
『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』
『な、な、何事なんですかぁぁぁぁ!?』
『あらあら。封印が解けたのですよ?もうお外に出られるのです。さあ、私達と一緒に出ましょう?』
『いやですぅぅぅぅぅぅ!ここが良いですぅぅぅぅぅぅ!外に行きたくない!人に会いたくないぃぃぃぃっ!』
「・・・大丈夫なのだろうか」
完全に拒絶してる様な声が響き渡る
その正体を確かめるべく、部屋の中に足を踏み入れる
中に入ってみると奥にリアスと朱乃がいて、更にその先に例の『僧侶』がいた
――赤い目をした金髪の美少女が床に力なく座り込んでいる
「おおっ!金髪の美少女!やった!『僧侶』は金髪尽くしって事か!ヒャッホーッ!!」
「一誠、あの僧侶は男だ」
「・・・・・・・・・え?」
鋼弥の言葉に一誠は固まり、そこでリアスと朱乃が言う
「鋼弥の言う通り、この子は紛れもない男の子よ」
「女装趣味があるのですよ」
「ええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」
「ヒィィィィィッ!ゴメンなさいゴメンなさぁぁぁぁぁい!」
二人の絶叫が合わさるから、物凄くやかましい
一誠は愕然とし、頭を抱えてしゃがみこんだ、残酷な現実を突き付けられてショックを受けていた
「こんな残酷な話があって良いものか!?完全に美少女な姿なのに男だなんて!×××がついているだなんてぇぇぇぇ!!」
「それにしても鋼弥、見ただけでこの子を男の子だと分かったわね」
「見た目が女でも、肩の骨格、声量、魔力の気質を感じ取れば解らなくもない。ところで何故、女の恰好を?」
「だ、だ、だ、だって、女の子の服の方が可愛いもん・・・」
「可愛いもん、とか言うなぁぁぁぁぁ!クソッ、野郎のクセにぃぃぃ!
俺の夢を一瞬で散らしやがってぇぇぇぇぇっ!俺はなぁ、俺はなぁ!
アーシアとお前のダブル金髪美少女『僧侶』を瞬間的にとはいえ夢見たんだぞ!?
返せよぅ!俺の夢を返せよぅ!」
そんな夢を一瞬、見ていたのか。見事に砕け散ったけどね。
「と、と、と、ところで、この方たちは誰ですか?」
「あなたがここにいる間に増えた眷属よ。
『兵士』の兵藤一誠、『騎士』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶』のアーシア、そして助っ人の涼刀鋼弥よ」
4人はよろしくと挨拶をするが、女装っ子は怖がるだけだった
「お願いだから外に出ましょう?もうあなたは封印されなくても良いのよ?」
「嫌ですぅぅぅぅ!僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁぁっ!
怖い!お外怖い!どうせ僕が出てっても迷惑をかけるだけだよぉぉぉぉぉっ!」
朱乃が優しく諭すが、全く効果が無い
鋼弥が女装っ子に近づいて、同じ目線の高さで話しかける
「一緒に外に出ないか?仲間として歓迎したい」
「そ、そ、そんなのいいですぅぅぅぅ!!ここが一番、落ち付くんですぅぅぅぅ!!」
困ったな、一向に出る気配がしない。
イッセーが少し怒ったのかその子の腕を少し強引に引っ張った。
「部長が出ろって言ってるだろう!?」
「イヤァァァァァァァァァァアアアアアアアアッ!!やめてーーー!!」
女装っ子の絶叫と共に時間が止まった、鋼弥とリアスを除いて。
「む・・・?周りの気配が変わった?」
「ええええええっ!?な、な、な、何でこの人は動けるんですかぁぁぁぁぁぁっ!?」
「動ける?まさか、時間停止の能力者なのか?」
「その通りよ。
その子は興奮すると、視界に映した全ての物体の時間を一定の間停止する事が出来る神器(セイクリッド・ギア)を持ってるの。
でも、その子自身は神器を制御出来ないから、今まで封印されていたのよ。
私は高い滅びの魔力のお陰で、鋼弥は魔力が強大過ぎるから通用しなかったのね」
「時間停止の神器か・・・。それで、この子は一体何者なんだ?」
「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属『僧侶』。一応、駒王学園の一年生なの。
そして、転生前は人間と吸血鬼(ヴァンパイア)のハーフよ」
◇◆◇◆
「『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』?」
一誠の問いにリアスが頷く
「そう。それがギャスパーの持っている神器(セイクリッド・ギア)の名前。とても強力なの」
「時間を止められたら何にも出来ないし、反則に近い能力じゃないですか?」
「あら、イッセーの『倍増の力』と、白龍皇『半減の力』、鋼弥の『業魔化身』だってかなり反則よ?」
「そうなのか?」
ここで祐斗が割って入った。
「確かに、力を十秒毎に倍増させるブーステッド・ギアや・・・」
続けて朱乃が喋る
「あらゆる悪魔に変身して能力を使いこなす、業魔化身も反則クラスですものね」
「そうか?俺は一度もそんな事は感じてはいないが・・・」
「・・・それでも反則クラスの能力です」
子猫がそう言う。そういえばと思った一誠はリアスに訪ねた
「それでも、部長。
時間停止なんて強力なセイクリッド・ギアを持った奴をそう簡単に下僕に出来るんですか?
ビショップって二つなのにどうして『悪魔の駒』を一つしか消費してないんですか?」
「それは『変異の駒(ミューテーション・ピース)』のお陰よ」
「ミューテーション・ピース?」
「イービル・ピースとは何が違うのか?」
疑問の声を発した一誠と鋼弥に、祐斗がリアスの代わりに『変異の駒』の説明を始める。
「通常の『悪魔の駒』とは違い、明らかに駒を複数使うであろう転生体が、1つで済んでしまったりする特異な現象を起こす駒の事だよ」
「部長はその駒を有していたのです」
朱乃も説明に参加し、祐斗が更に続ける
「だいたい上位悪魔の10人に1人はひとつぐらい持っているよ。
『悪魔の駒』のシステムを作り出した時に生まれたイレギュラーやバグの類だけど、それも一興としてそのままにしたらしいんだ。
ギャスパーくんはその駒を使った1人なんだよ」
なるほど、一誠の場合は『兵士』を全て消費して済んだが、ギャスパーは『変異の駒』を使って済んだという訳だ。
冥界の『悪魔の駒』のシステムは面白いものだ。
「話を戻すけど、彼は類希な才能の持ち主で、無意識の内に神器の力が高まっていくみたいなの。
そのせいか、日々力が増していってるわ。上の話では将来的に『禁手(バランス・ブレイカー)』へ至る可能性もあるという話よ」
「危険な神器の上に制御ができない。さらに禁手に至ったりしたら手がつけられない・・・。止む負えず封印するしかないか」
「そう、とても危うい状態なの。
けれど、私の評価が認められたため、今ならギャスパーを制御出来るかもしれないと判断されたそうよ。
私がイッセーと祐斗を『禁手』に至らせた事のお陰かしらね」
イッセーは未完成とは言え、『禁手』状態で鋼弥と共にライザー・フェニックスを倒した。
祐斗も聖魔剣『ソード・オブ・ビトレイヤー』を発動させることが出来た。
それらのお陰でリアスの評価がグンッと上がり、その褒美がこれなのかもしれない。
「能力的には朱乃に次いで二番目なんじゃないかしら。
ハーフとはいえ、由緒正しい吸血鬼の家柄だし、強力な神器も人間としての部分で手に入れている。
吸血鬼の能力も有しているし、人間の魔法使いが扱える魔術にも秀でているわ。
とてもじゃないけど、本来『僧侶』の駒1つで済みそうにないわね」
「ところでヴァンパイヤは太陽の光の下では生きられない筈なのに、何故、平気なんだ?」
「ギャスパーは太陽でも活動できるのは『デイウォーカー』と言う、日中でも歩くことが出来る能力があるの。
それに彼は人間の血も引いているから無闇に血を吸う必要もないのよ」
「ヒィィィ!!血はダメですぅぅぅ!!レバーも生臭いからダメですぅぅぅ!!」
「・・・へたれヴァンパイア」
「うわぁぁぁん!!小猫ちゃんがいじめるぅぅぅぅ!!」
子猫の容赦ない追い打ちで更にへこむ、ギャスパー。
(・・・やれやれ、先が思いやられそうだな)