ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第十話 =黒猫と霊犬=

闇夜の森を歩く小猫と鋼弥。

鋼弥は何かの気配を感知して、警戒している。小猫はギュッと鋼弥の手を握って森の中を進んでいく。

数分歩くと、小猫が突然何かに気づいてキョロキョロと首を動かす。

 

「久しぶりじゃない?」

 

聞き覚えの無い声がした方向に視線をやる。

現れたのは黒い着物に身を包み、頭部に猫耳を生やした女性だった。

小猫は酷く驚いた様子で全身を震わせ、鋼弥は子猫の姉と悟った。

 

「君が小猫の姉か・・・」

 

「あら?名乗った覚えは無いのによく知ってるわね。そうよ。ハロー、白音(しろね)。お姉ちゃんよ」

 

流れから察して、白音とは小猫の本名のようだ。

それにしても、あの女はなんという恐ろしい気配を出しているんだ。

 

「黒歌(くろか)姉さま・・・!」

 

「黒歌、それが君の名前か。確かに≪はぐれ悪魔≫にしては強大過ぎる力を持っているね」

 

「会場に紛れ込ませたこの黒猫一匹でここまで来てくれるなんて、お姉ちゃん感動しちゃうにゃー」

 

「姉さま、これはどういう事ですか?」

 

「怖い顔しないで。ちょっと野暮用なの。

 悪魔さん達がここで大きな催ししているって言うじゃない?

 だ・か・らぁ、ちょっと気になっちゃってね、にゃん♪」

 

黒歌は手を猫みたいにして可愛くウインクをする

 

「ハハハハ!久しぶりだねぃ、シルバーハンター!」

 

今度は聞き覚えのある声が発せられる。

その正体はヴァーリの仲間で孫悟空の末裔の美猴だった。

 

「ヴァーリと一緒に居た孫悟空。今度は魔王主催のパーティを狙っているのか?」

 

「いんや、そう言うのは俺っちらに降りてきてないねぃ。

 ただ、冥界で待機命令が出ていてねぃ。俺も黒歌も非番なのさ。

 そしたら、黒歌が悪魔のパーティ会場を見学してくるって言い出してねぃ。

 なかなか帰ってこないから、こうして迎えに来たわけ。OK?それと――――――」

 

話し終えた美猴が突然、木の方に視線を向けて言い始めた

 

「気配を消しても無駄無駄。俺っちや黒歌みたいに仙術知ってると、気の流れの少しの変化だけでだいたい分かるんだよねぃ」

 

「・・・出てきた方がいいぞ。一誠、リアス」

 

美猴と鋼弥に言われ、一誠とリアスが木陰から姿を現した。

2人を確認した小猫は驚く。

 

「・・・イッセー先輩、部長」

 

「美猴、誰、この子達?」

 

「ああ、赤龍帝とシルバーハンターだ」

 

それを聞いた黒歌は目を丸くして、興味津々に見る

 

「本当にゃん?へぇ~、これがヴァーリを退けたおっぱい好きの現赤龍帝なのね。

 こっちがカテレア・レヴィアタンやゾロアスターを退けた銀色の魔人ね?中々の好みにゃん」

 

「黒歌~、帰ろうや。どうせ俺っちらはあのパーティに参加出来ないんだし、無駄さね」

 

「そうね。帰ろうかしら。ただ、白音はいただくにゃん。あの時は連れていってあげられなかったからね♪」

 

黒歌が小猫を見て目を細める、小猫はその黒歌の視線に怯えていた。

鋼弥は小猫を庇うように黒歌を睨む。

 

「小猫は俺達の仲間だ。姉だからって連れて行かせる訳にはいかない」

 

「いやいや、勇ましいと思うけどねぃ。流石に俺っちと黒歌相手に出来んでしょ?

 今回はその娘もらえればソッコーで立ち去るんで、それで良しとしようやな?」

 

一誠とリアスは憤怒の表情で前に出る。

 

「ふざけんなよ!そんな事、誰がするか!」

 

「この子は私の眷属よ。指一本でも触れさせないわ」

 

「あらあらあらあら、何を言っているのかにゃ?

 それは私の妹。私には可愛がる権利があるわ。上級悪魔さまにはあげないわよ」

 

場の空気が一変して、リアスと黒歌がお互いに睨み合う

一触即発の空気を帯びてきたが、先に睨みを止めた黒歌が言う

 

「ん~めんどいから殺すにゃん♪」

 

その瞬間、何か不気味な感覚が襲ってきた。リアスが苦虫を噛んだ表情で黒歌に言う。

 

「・・・黒歌、あなた、仙術、妖術、魔力だけじゃなく、空間を操る術まで覚えたのね?」

 

「流石に時間を操る術までは覚えられないけどねん。

 でも、空間はそこそこ覚えたわ。結界術の要領があれば割かし楽だったり。

 この森一帯の空間を結界で覆って外界から遮断したにゃん。

 だから、ここでド派手な事をしても外には漏れないし、外から悪魔が入ってくる事もない。

 あなた達は私達にここでころころ殺されてグッバイにゃ♪」

 

「リアス譲と兵藤一誠がこの森に入ったと報告を受けて来てみれば、結界で封じられているとはな・・・」

 

「タンニーンのおっさん!」

 

空を見上げるとタンニーンが飛んでいた。

どうやら結界が完全に張られるギリギリの直前に入り込んだようだ。

 

「ドス黒いオーラだ。このパーティには相応しくない来客だな」

 

美猴が空のタンニーンを見て歓喜し始めた。

 

「おうおうおう!

 ありゃ、元龍王の『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンじゃないかぃ!

 まいったね!こりゃ、もう大問題だぜ黒歌!やるしかねぇって!」

 

「嬉しそうね、お猿さん。良いわ。

 龍王クラス以上の首2つと魔界の少年の首を持っていけば、オーフィスも黙るでしょうね」

 

美猴は足元に金色の雲の筋斗雲(きんとうん)を出現させ、タンニーンがいる空へ飛び出して行くと如意棒(にょいぼう)を手元に出して、タンニーンに攻撃を仕掛ける。

タンニーンは巨体では考えられないほどの速度で回避し、大質量の火炎ブレスを美猴に浴びせていた。

 

『タンニーンめ、ブレスの威力を抑えているな』

 

「マジかよドライグ!あの威力で抑えてるのか!?」

 

「タンニーンが本気になったら、ここら一帯がすぐに焼け野原になる。それに、あの孫悟空は・・・」

 

鋼弥の言葉に一誠はまた上空を見ると、あの炎を喰らっていた美猴はまだ生きていた。

 

「アハハ!やるねぃ!元龍王!」

 

「ふん!何者かと思えば孫悟空か!このタンニーンの一撃を受けきるとは、なんとも楽しませてくれるわ!」

 

「俺っちの名は美猴ってんだ!よろしくな、ドラゴンの大将!」

 

「ククク。猿ごときが言ってくれる。豚と河童はどうした?仲違いか?」

 

「八戒(はっかい)と悟浄(ごじょう)の末裔の事かぃ?ハハハ!俺っちの一族の奴らも含めて、皆保守派さね!

 どいつもこいつも現状に満足なのさ!けど、俺っちは楽しい事が大好きでねぃ!

 だからこそ、カオス・ブリゲードの誘いも喜んで受けてヴァーリと行動を共にしてたりしてんだよねぃ!」

 

「フン!白龍皇と何を企んでいる?

 噂では貴様達の部隊だけ別行動を許されていると言うではないか!

 更にオーフィスの『蛇』も与えられていない唯一のチームとも聞いた!」

 

「聞きたきゃ俺っちに勝ってみなよ!」

 

「言うか!猿め!ここは『あの世』と呼ばれし地獄こと冥界だ!貴様ら雑魚が後悔するには最高の場所だと知れ!」

 

タンニーンと美猴が轟音を上げながら、空中で激闘を繰り広げ始めた。

孫悟空の邪魔はなくなったが、まだ黒歌が残っている。

妖艶な笑みを見せているが、全身からドス黒いオーラを滲み出している。

鋼弥は猫を後ろにいるリアスの所へ下がらせる。

 

「にゃん♪白音は随分とあなたの言う事に素直みたいだけど?あなた、白音の彼氏か何かにゃ?」

 

「違う、俺は小猫の仲間だ。一つお前に聞きたい事がある。何故、小猫の前から去り、苦しんでいる所を助けなかった?姉なのに何故、助けなかったんだ・・・」

 

「妖怪が他の妖怪を助ける訳ないじゃない。ただ、今回は手駒が欲しいから白音が欲しくなっただけ。

 あなたやそこの紅い髪のお姉さんより、私の方が白音の力を理解してあげられるわよ?」

 

鋼弥の怒りの問いに黒歌はただ、冷淡と答えを返す。

 

「・・・イヤ・・・。あんな力いらない・・・・黒い力なんていらない・・・。人を不幸にする力なんていらない・・・」

 

震えて涙を流しながら顔を振るう小猫を、リアスは一層強く抱きしめる

 

「黒歌、力に溺れたあなたはこの子に一生消えない心の傷を残したわ。

 あなたが主を殺して去った後、この子は地獄を見た。

 私が出会った時、この子に感情なんてものは無かったわ。

 小猫にとって唯一の肉親であったあなたに裏切られ頼る先を無くし、

 他の悪魔に蔑まれ、罵られ、処分までされかけて、ツラいものをたくさん見てきたわ。

 だから、私はたくさん楽しいものを見せてあげるの!

 この子はリアス・グレモリー眷属の『戦車(ルーク)』、塔城小猫!私の大切な眷属悪魔よっ!

 あなたに指一本だって触れさせやしないわっ!」

 

リアスの仲間を強く思い言葉に一誠は涙を流していた。

鋼弥はフッと笑っていた。

小猫は涙をふき決意の瞳で黒歌に言う。

 

「行きたくない・・・私は塔城小猫。黒歌姉さま、あなたと一緒に行きたくない!私はリアス部長と一緒に生きる!生きるの!」

 

今までに無かった叫びで、小猫は絶縁とも言える宣言を黒歌に放った。

それを聞いた黒歌は苦笑した後、冷笑を浮かべる。

 

「じゃあ、死ね」

 

黒歌の言葉と同時に黒い霧のようなものが出てきた。

 

「・・・あっ」

 

「・・・これは」

 

リアス小猫がその場で膝をつき、苦しみの表情を浮べた。

 

「ふーん、赤龍帝や様々な神魔を宿している少年は効かないのかしら?

 この霧はね、悪魔や妖怪にだけ効く毒霧にゃん。毒を薄くしたから、全身に回るのはもう少し苦しんでからよ。

 短時間では殺さず、じわじわっと殺してあげるにゃん♪」

 

更に、幻影を次々と作りだした。

 

「ど、毒霧!?」

 

「厄介な事を・・・一誠、お前はリアスと小猫を護れ!!」

 

「解った!!ブーステッド・ギア!!」

 

一誠の左腕に赤い篭手が出現するが、いつも鳴る筈の音声が聞こえず、宝玉も薄黒くなっていた。

 

「ブーステッド・ギアが動かねぇ!?」

 

「何・・・!?」

 

「あらら、赤龍帝の神器は動かずじまい?でも、私は撃っちゃうにゃん♪」

 

黒歌の幻影の1つが、体内に留まっている毒で苦しんでいるリアスと小猫目掛けて魔力を放つ。

鋼弥は腕をクロスガードして魔力弾を防ぐが、両腕がビリビリと痺れる。

 

「ぐッ!!」

 

「鋼弥先輩!!」

 

「動くんじゃない!!この程度で俺は負けはしない。一誠、お前は覚醒する事だけを考えろ」

 

「すまねえ、鋼弥。でも、無茶はするなよ!!」

 

一誠はドライグと話すように篭手に集中していた。鋼弥は黒歌と向きあう。

 

「黒歌、貴様は俺の兄である嶺爾とそっくりだ。

 力を求めるがあまり、大事なモノを捨てたあの男と・・・。

 小猫に与えた悲しみと苦しみを、絶対に許す訳にはいかない!!」

 

鋼弥の脳裏に、兄の嶺爾の姿が過ぎる。

全てを飲み込む力を求めるがあまり、大事なものをすべて捨て去った。

だからこそ、小猫を見捨てた黒歌に対して怒りの炎が燃え上がっている。

 

(鋼弥、俺を出せ・・・アイツの身勝手ぶりに我慢が出来ん!!)

 

「解った。―――来たれ、ヘルハウンド!!」

 

召喚の陣を描くと蒼い炎が鋼弥の身を包む。

炎が消えると、群青色の魔犬のヘルハウンドが姿を現す。

 

【猫のお嬢ちゃんは絶対に護ってやる。鋼弥と同じ苦しい思いをする訳にはいかねぇ!!】

 

ダッと地面を蹴り黒歌の所まで駆け抜けて、噛み砕こうとするが黒歌は素早く避けた

 

「ウフフフ、そんな攻撃じゃあ、当たらないにゃん♪」

 

黒歌の幻影たちは動けないリアスと小猫に次々と魔力球を撃つ。

ヘルハウンドは身を呈して、二人を護る。

やがて、魔力球の嵐が収まるとボロボロになりながらも立っていた。

 

「ヘルハウンド!!」

 

「ヘルハウンドさん!!」

 

【心配するな、リアス嬢、猫の譲ちゃん。オレ様が絶対に護ってやる。この爪と牙と誇りにかけて!!】

 

すると、ヘルハウンドの身体から眩い光が奔る。更に膨大な魔力の渦が巻き起こった。

 

「何なの!?この巨大な魔力は!?」

 

一誠、リアス、小猫はあの光りを覚えている。

これはジャックフロストがジャアクフロストへとランクアップした光景。

つまり、ヘルハウンドにランクアップの時が来たのだ。

 

 

(イメージ挿入歌:Beat hit!)

 

 

【ウオオオオオォォォォォォッ!!!!ランク・アァァァァァァァァップ!!!!】

 

ヘルハウンドが雄々しい雄叫びをあげると、炎と雷が奔り飲み込んだ。

収まると、四足に風の様な渦巻き状の毛、銀色の虎毛、金色の目に黒い瞳、鋭い牙が並んでいる。

中国において神仏の乗り物、人を喰らいし妖霊の狗。その名は――――。

 

【我が名は神獣コウ!!恐れを知らぬならば、かかってくるがよい!!】

 

毒霧を一気に吸い込むと、白い霧を噴き出した。

しかも、驚く事にリアスと小猫の毒が治っていくのが解る。

 

【アムリタ。毒や麻痺などの状態異常を完治する魔法だ。これで、貴様の毒霧は封じたな】

 

「面白いわね。なら、妖術仙術ミックスの一発お見舞いしようかしら!」

 

黒歌の両手にそれぞれ違う力が集中され、そのまま二種類の波動を撃ち出した。

幻影達も同じ様に放った。だが、コウの口から雷と炎が迸っていた。

 

【ジオダイン×3・アギダイン×3】

 

呪文を呟くと二つの魔法が口の中で重なり、口を思いっきり開く。

 

【オウガブラストッ!!】

 

極閃光が放たれ、妖術と仙術の波動を破壊してそのまま付き進む。

 

「くっ!!」

 

避けるモノの何体かの幻影は消滅し、後ろで大爆発が起こる。

直ぐにコウを見ると、前足の両爪に禍々しい光が放っている。

 

虚空爪激(こくうそうげき)!!】

 

そのまま、10の刃を振り下した次の瞬間、周りの木々が斬り飛ばされた。

黒歌の幻影達は全て切り裂かれて消滅した。

 

「うおおっ!?あぶねぇー!!」

 

「恐ろしいほどの切れ味を誇る爪だな・・・」

 

上空で戦っていた美猴とタンニーンは吹き飛んできた木々を避けたり破壊していた。

周りの木々が降ってくる中、コウは本物の黒歌と対峙する。

 

【幻影を斬り飛ばすだけだったが、これで見通しが良くなったな】

 

「無茶苦茶な奴だにゃん!!」

 

黒歌は落ちてくる木々を空中で掴み、それを次々と投擲する

コウは一気に駆け出し、木々の上に跳び乗ったり爪で破壊しながら黒歌の所まで辿り着く。

黒歌はその場を離れようとするが、コウが早く、黒歌の腹に左前脚で抑えつけた。

 

「にゃん!!」

 

【捕まえたぞ、黒猫め】

 

これから、どう落し前付けようかと考えていると一誠達の方へ向いた

 

「おっさん!大変だ!右のおっぱいと左のおっぱい!どっちをつついたら良い!?」

 

乳房を晒け出したリアスと、それをつつこうとしている一誠の姿があった。

一体何をしているんだ、この状況で!?

 

「バカ野郎ォォォォォッ!!右も左も同じだ!!さっさと乳をつついて禁手に至れェェェェッ!!」

 

「ふざけんなっ!!右も左も同じ訳ねぇだろォォォォッ!!俺の人生がかかってんだ!!真面目に答えろォォォォォッ!!!!」

 

一誠とタンニーンが胸について口論になっていた。

禁手に至る方法をしているんだろうが、本当に何をしているんだよ。

 

「もう!!それなら両方共つついたら良いでしょ!!」

 

リアスの言葉に衝撃を受ける一誠。そして、一誠はリアスの乳房をつつく。

 

『――――至った。本当に至りやがったぞッ!!』

 

≪Welsh Dragon Balance Breaker!!!!≫

 

ブーステッド・ギアの宝玉に光が戻り、膨大な量のオーラが一誠の全身を包み、赤い鎧と化した。

 

「禁手、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』ッ!!

 主のおっぱいをつついて、ここに降臨――――――――――!!!!」

 

禁手(バランス・ブレイカー)に至った一誠の全身から力が吹き出す。

更に、一誠の周りにクレーターができる。

まさか、胸で禁手に至るとは、本当になんてコメントをすればいいんだ・・・

 

『相棒、おめでとう。しかし酷い。俺はそろそろ本格的に泣くぞ』

 

ドライグが賛辞を送るも、それは涙声だった。

コウはため息を吐いてから、アギダインを一誠目掛けて放つ。

 

「ぶべらばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

アギダインが赤龍帝の鎧の顔面に直撃して、吹き飛ばされる一誠。

焦げ跡が付いていなく、本当に完璧に禁手に至った証拠と言う訳か。

 

「いって~~~!!何すんだよ!?」

 

【黙れ小僧ッ!!命がけで戦っているというのに、何をしているんだ!!大バカモノが!!】

 

2人(一人と一匹)が言い争っていると、空間に裂け目が生じる。

その裂け目から背広を着たメガネの若い男が現れる。

彼の手には極大なまでに強い聖なるオーラを放つ剣が握られている

 

「全員そいつに近づくな!手に持っている物が厄介だぞ!」

 

タンニーンが叫ぶ。そして、その剣を見て苦笑をしたのだ。

 

「聖王剣コールブランド。またの名をカリバーン。地上最強の聖剣と呼ばれるコールブランドが白龍皇のもとに・・・」

 

メガネの若い男が握っているのは地上最強の聖剣。更に腰にも一本の剣が存在している。

 

「そこまでです、美猴、黒歌。むっ・・・黒歌が捕まっている?」

 

「この狗と戦っていたら、追い詰められちゃってね」

 

「なるほど、周りの木々が吹き飛ばされているのはそこの者の仕業でしたか・・・」

 

眼鏡をかけた男は聖王剣を抜こうとするが、コウは黒歌を抑えている方の脚をグッと力を入れる。

 

【動くなよ、孫悟空と聖剣士。貴様等が助ける前にこの女を八つ裂きにするのは容易い】

 

鋭い牙と爪を光らせていつでも、黒歌を殺せる態勢に入っている。

美猴と聖剣士は、迂闊に動く事が出来ない。

 

【小猫、こいつの処遇はお前が決めろ。自分の捨てた姉を生かすのも殺すのもよい。

 殺す方を選んだ場合は俺が直々に食い殺してやる。

 こいつは≪はぐれ悪魔≫だから殺しても文句を言う奴はいない。そうだろ、リアス?】

 

「・・・確かにそうなるわね」

 

はぐれ悪魔は見つけ次第、同族の悪魔、堕天使、天使が討伐しても良いというルールがある。

つまり、はぐれ悪魔の中で危険な存在の黒歌をここで殺されても誰も文句は無いという事だ。

だが、ヴァーリ、孫悟空、聖剣士は黙っている訳にはいかないだろうけど。

小猫は目を瞑って、判決を言い渡した。

 

「・・・私の事を捨てた姉さまを許さないけど、それでも、私の大事な姉さまだから・・・殺さないでください」

 

捨てられて敵同士になっても、大事な姉である事は変わりない。

それでも、それでも、自分と一緒に居た大好きな姉だから。

 

「白音・・・貴女・・・」

 

【・・・そうか】

 

コウは黒歌を解放した。後ろに飛んで、小猫たちと合流する。

 

【小猫の優しさと涙に免じて見逃してやる。次に小猫に手を出そうとした時はその生命(いのち)を喰らうからな】

 

「・・・解ったにゃん」

 

黒歌は美猴と聖剣士の所へ向かう。

鋼弥は元の姿へと戻るが、少し呼吸が荒くなっていた。

ランクアップした直後に使ったのか、疲れが出ているようだ。

 

「二刀か、鞘に収めている方も聖剣だな?」

 

タンニーンの問いに男は腰の帯剣を指差した

 

「こっちは最近発見された最後のエクスカリバーにして、八本中最強のエクスカリバー。名は『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』です」

 

行方不明になっていた最後のエクスカリバーだった。これで事実上、鋼弥達は全てのエクスカリバーを目撃した事になる。

 

「そんな事を話して平気なの?」

 

「ええ、実は私もそちらのお仲間さんに大変興味がありましてね。赤龍帝殿、魔界のハンター殿。

 聖魔剣の使い手さんと聖剣デュランダルの使い手さんによろしく言っておいてくださいますか?

 いつかお互い、いち剣士として相まみえたい、と」

 

騎士道精神を兼ね備えているのか。

目を見れば本当に騎士としての誇りと魂を感じる。

コールブランドを抜きいざ、空間を斬ろうとするが黒歌が制止する。

 

「ちょっと待つにゃん。ねぇ、貴方も一緒に私達と来ないかしら?歓迎するにゃん♪」

 

「俺はこっちの方が居心地がいいんだ。愛している人を置いてお前たちの仲間になる気は無い」

 

「残念ねぇ~。でも・・・」

 

黒歌は両腕を鋼弥の首に回して、キスするギリギリの所まで寄せる。

 

「そう言う所もカッコいいニャン♪」

 

「さっきまで、殺されそうになったのに余裕があるね」

 

「ウフフ、恋するネコマタはそんな危険な事にも燃えるにゃん♪それじゃあ、バイバイね♪」

 

黒歌は抱擁を解き美猴と聖王剣使いの所へ走っていき、男が聖王剣で空間に裂け目を作り、消え去った。

結界も消滅して、騒ぎを聞き付けた悪魔達が集まり、保護された。

禍の団の襲来によってパーティは中止になったのだった。

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