阿礼狂いに生まれた少年のお話   作:右に倣え

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稗田阿七という少女

「よくお似合いですよ、坊ちゃま」

「そうかなあ……」

 

 護衛役を継ぐことが正式に決まった翌日、信綱は護衛用の礼服に身を包んでいた。

 体格のある大人が着れば見栄えも良いのだろうが、信綱の年齢と身長では七五三の格好にしかならない。

 祝い事であることは確かだけれども、どうにも場違いな気持ちが否めなかった。

 

「ああ、あと悪かったね。勝手に道場に行ったりして。気持ちが抑えられなかった」

「しかし私がいてもいなくても、どちらにしても向かっておられたでしょう。あなた方はそういう一族ですから」

 

 トメという女中は長く火継の家に仕えている。信綱の乳母でもあるし、それ以前からこの家に仕えていたのだから、阿礼狂いと呼ばれる所以も知っているのだろう。

 

「それに何より、坊ちゃまは見事に力を示された。無事に帰って来てくれて嬉しゅうございます。ささ、こちらをどうぞ」

 

 差し出される小太刀を受け取り、腰に差す。木刀なら多少長くても良いのだが、さすがに鉄の塊である刀を大の大人と同じように持つことは出来ない。

 だが、これでも道場の者たちを全員打ち倒した猛者。小太刀一振りあれば人間に負ける気はしなかった。

 

「ふぅ……」

 

 しかし姿見に映る格好を見て、自分のことながら情けなくなる信綱。

 これではまるで七五三の子供が背伸びをしているようにしか見えないではないか。

 腕に自信はあるが、見た目というのも大事な要素である。この背格好に侮られて阿七に危害が加えられたとあっては、それこそ末代までの恥辱。

 とはいえ見目が変わるということもなし。侮られることは仕方ないと受け入れても、せめてこれから仕える阿礼乙女には絶対に指一本触れさせないという決意を、その少年らしい赤らんだ頬に浮かべる。

 

 

 

「これより阿七様の警護を務めさせて頂きます。火継信綱と申し――」

「わっ、可愛らしい子! 私、弟が欲しかったのよ!!」

「ちょ、ちょっと!?」

 

 

 

 出会い頭に思いっきり抱きしめられ、脳天を貫く多幸感と共に信綱は今後の先行きを不安に思うのであった。

 

 

 

 

 

 さて、晴れて正式に阿七の側仕えを出来るようになった信綱だったが、生活そのものが劇的に変わったというほどではなかった。

 確かに寺子屋に通える頻度は下がり、その代わりに道場への立ち入りを許されて頻繁に稽古に向かうようになった。そしてそれ以外の時間は阿七の側に控えるようになった。

 

 その事自体は手放しで喜ばしい。彼女の隣りにいることを願って、齢六歳で父を打ち倒したのだ。

 正直先走りすぎた気がしないでもない信綱だが、そこは息子が勝手に潰れることを願って小さな頃に御阿礼の子を見せた父親が悪いことにする。

 彼の誤算は息子の才覚がこの歳ですでに開花していたことと、その資質が元より強い人間が生まれやすい火継の家においてなお、天稟と呼ぶに相応しいものだったことか。閑話休題。

 

 さておき、信綱の生活があまり変化していないのは別の理由があった。

 阿七である。出会い頭に強烈な抱擁を受けたことは一生消えない記憶に残るだろうが、それとは別に彼女はあまり頻繁に外出する身ではなかった。

 

「阿七様、お体の具合は大丈夫ですか」

「ああ、ノブ君? 今日は調子いいからこっちおいで、抱っこしてあげる」

「……ぼくは護衛です。あと信綱です」

 

 彼女は病弱なのだ。ちょっとしたことで体調を崩し、長期間寝込んでしまうことも珍しくない。

 稗田の家に生まれなければ一年と年を越せなかったと確信できるほどだ。

 

 そんな時信綱に出来ることと言えば、こうして話し相手になることぐらいのものなのだ。

 どうにも阿七本人に護衛として認識されていないのが不本意だが、自分の存在が彼女の慰めになるのであれば望外の喜びである。

 

「いいじゃない。信義さんは優しい人だけれど、どこか一線を引いていたもの」

「いや、警護なのだからそれが当然――」

「さ、いらっしゃい?」

「…………失礼します」

 

 どうにも断れない。信綱は阿七の負担にならないよう気をつけながら、こちらに手を伸ばす彼女の身体に寄りかかる。

 背中に腕が回され、スリスリと頬と頬がこすり合わされる。

 

「んー、やっぱりノブ君はちっちゃくって可愛いねえ。私の家には君みたいな子、全然来なかったからとっても新鮮」

「…………」

 

 御阿礼の子に褒められているのだが、あまり嬉しくない信綱だった。

 これでは自分という存在の意味がない。彼女の可愛がりはたまたま近くにいた子供に対して行っているのであって、信綱自身が何かをしているわけではないのだ。

 もっと自分が大きければ、阿七に護衛として認識してもらえたのだろうか。そう思いつつ、されるがままになっていると唐突に彼女の身体が震える。

 

「っゴホッ! こほこほっ」

「大丈夫ですか、阿七様!?」

 

 すぐに背中に回り、少しでも楽になるようにとさすってやる。

 

「だ、だいじょう、ぶ。今回の咳は、ひどくなる感じがしないから……」

 

 阿七も自分の病弱さは理解しているのだろう。長年の付き合いからか、自分の体調の崩れる兆候というのをよく理解していた。

 しかし、それで信綱の心が休まるかと言われればもちろん否で――

 

「……白湯を持ってこさせます。少し話しすぎたのでしょう。どうかご自愛なさってください」

「あはは、ごめん、ね。お願いしても、いいかな……」

「お任せください」

 

 阿七の部屋から下がり、一人になったところで信綱は拳を握りしめる。

 

「……クソっ」

 

 忸怩たる思いとはこのことか。自分の未熟さを心底から思い知らされた気分だった。

 火継の家において、弱いことは罪である。しかし、本質はそこではない。

 御阿礼の子の力になれないことが火継における最大の罪だ。存在する価値すら認められない。

 

 今の自分は阿七の力になれていない。その焦燥が肚に渦巻き、信綱の顔をしかめさせる。

 

「……知らなきゃいけないことが山積みだ」

 

 彼女の病床を少しでも良くする手段が欲しい。万を打ち倒す武力よりも、今は阿七の身体を治せる一人の方が重要だ。

 父――火継信義(のぶよし)も何かしらの策を講じていたのだろうか。聞いてみたいところだが、それをする前に出来ることは多くある。

 とりあえず稗田の家にある蔵書を漁ろう。そう決心した時だった。

 

「阿七様は大丈夫かしらねえ。ここのところ雪が続いて寒さも酷いものよ。この冬を越せる……いえ、転生の支度まで間に合うのかしら」

「滅多なことを言うもんじゃないよ。そうならないように阿七様のおそばには私たちや、あの一族もいるんだし」

「でも新しいお付は子供でしょう? あの家はちゃんと優秀な人を付けてくれているけど、大丈夫なのかしらねえ……」

 

 女中の話し声が信綱の耳に届き、愕然とする。

 転生には長い準備が必要だと聞き及んでいる。それが志半ばに斃れたら――稗田の家が途絶える?

 

 それはあってはいけないことだ。信綱が、いや火継の家が全てを捧げてでも回避せねばならないことだ。

 

「――のんびりしていられない」

 

 一秒でも早くあの人の病床を改善させる。それが今、自分のなすべきことだろう。

 そう信じて、信綱は足を早めるのであった。

 

 

 

 

 

「父上、阿七様の病床について詳しく教えていただきたい」

「先日、俺の腕を破壊したお前が言うことか」

 

 父親を頼りたくないと言ったが、なりふり構っていられる状況でもなかった。

 それに息子に対する情がなくても、御阿礼の子に対する情は信綱に負けず劣らずある。

 御阿礼の子を守る役目を担うために競争相手は蹴落とすが、同時に御阿礼の子の危機には何も言わずとも一致団結する一族なのだ。

 

「ぼくに付き人が務まらない、というならこれが終わったら腹でも何でも斬ります。阿七様の体調をよく出来るなら安い」

「……ふん、それを決めるのは月末の総会のみ。そういう決まりだ。で、阿七様だな」

 

 添え木と布で腕を固めた信義は、ゆったりとした動きで立ち上がると部屋の隅に積まれている巻物を一つ、信綱に手渡す。

 書かれているものは滋養強壮、阿七の好きなもの、嫌いなもの、などといった情報だった。

 事細かに書かれており、信綱にとってはまさに宝の山に思えるものだ。

 

「俺も色々と調べたのだが、あの方の虚弱体質は生まれついてのものだ。先代の阿夢様はそうでもなかったと聞く」

「…………」

「どの道、御阿礼の子というのは転生して記憶を引き継げる代わりに短命。それは変えようがなかった――何代もの火継がそれに挑んだがな」

「……それは今はどうでもいい。だけど転生の儀が行われなければ阿七様で代が終わってしまう。ぼくたちの仕える人がいなくなってしまう」

 

 仮に稗田の一族が潰えたら――火継の者たちは皆、自害して果てるだろう。必ずまた会える――転生してくるとわかっているからこそ、彼らは今まで生きてこられたのだ。

 

「わかっている。対処療法にしかならんが滋養強壮のつくもの、薬湯などで騙し騙しやっていくしかない」

「……父上は、自分が無力であると思ったことがありますか?」

「何をそんな――」

 

 

 

 ――それを感じない火継など、火継にあらず。

 

 

 

 握り込んだ左の拳からは、血が流れていた。

 

 

 

 

 

 信綱はとにかく知識を重要視した。

 阿七はどのような部位が悪いのか。どういった処置をすれば改善ができるのか。その処置に必要な材料は何か。

 とにかく父の記録を読み漁り、他に必要と思われる医学の知識を修めていく。

 

 現時点で護衛としての役割などあってないようなものだ。ただでさえ大きな稗田の家の、その一番奥で静養している彼女に何かしようなどという不逞の輩はいない。無論、いたら死なせてくださいと懇願するまで痛めつけるが。

 

 さておき、今の信綱には結構な時間があった。それこそ――冬の山に一人で特攻するぐらいには。

 

「ちょっと……無謀だったかもしれない」

 

 最近の阿七は咳がひどく、かといって薬湯に使う薬草は山奥にしか生えていないときた。

 普段は猟師が山に入ったついでなどで時折手に入っていたようだが、冬場の今はそれもなくなっている。

 それを聞いた時、居ても立ってもいられず思い立ったが吉日と走り出してしまったのが先ほどの話。

 

「まあ、失敗しても死ぬだけか。安い安い」

 

 阿七の助けになれる可能性が一縷でもあるのなら、そこに全てを懸けられるのが阿礼狂い。

 

 最初はバカ正直に雪道を歩いていたが、子供の足では無理がある。そのため木から木へ飛び移った方が移動が楽だった。

 こういった常人とはかけ離れた運動能力を発揮できるのも、火継の家の特徴と言えよう。道場内で壁や天井を利用した三次元機動とか朝飯前な一族である。

 

 そうやって通常の猟師とは一線を画す勢いで山奥まで来た信綱だが、そこで無事に薬草を見つけて万々歳、というわけにはいかなかった。

 

「そこの人間……子供!? いや、止まりなさい!」

「……参ったな」

 

 妖怪の山の方まで来てしまったようだ。

 哨戒と思われる女の天狗が木の上にいる信綱の前に現れる。

 修験者を連想させる装束に身を包み頭巾を乗せた姿で、脇差しを携えて空に浮かんでいた。

 

「なんで真冬のこんな場所に子供がいるのよ? 捨て子? だったら木の上になんて登らないわよね」

「……薬草を探しているんですけど、気がついたらこんな場所まで来てしまっていたんです。申し訳ない。すぐに戻るから見逃してもらえないでしょうか」

「ふぅん、まあどうでもいいわ」

 

 信綱の言葉に対し、天狗は興味がなさそうに相槌を打つ。

 その時点で空気が変わっていたのを、信綱は直感で理解できていた。

 

「――天狗は子供をさらう。親の言うことを聞かなかったことを後悔しなさい」

「うちの親は諸手を上げて褒め称えるだろうさ!」

 

 伸びて来る手を払い、反転して逃げ出す。木から木へ飛び移り、およそ人間とは思えない速度で山を駆け下りていく。

 

「すごいすごい、あなた本当に人間? さらったら他の子に自慢できそうね!」

 

 しかし、妖怪からすれば人間にしては出来る程度のもの。特に信綱はまだ子供であり、未だ完成は遠い器。苦もなく併走できる速度でしかない。

 これはよろしくない状況だ。信綱は内心で自らの未熟に歯噛みしつつ、状況の打開策を考え始める。

 

(遊ばれてる。その気になれば向こうはいつだってぼくを捕まえられるんだ。――乗ってやるさ)

 

「……ハッ、ハッ、ハァッ!!」

「お、息が切れてきた。そろそろ限界かな?」

「うる、さい……っ!」

 

 面白そうにこちらを見る天狗を威圧するように睨みつける。

 無論、そんなことをしても相手の天狗を楽しませるだけだ。それはわかっている。

 実際、相手を子供と侮っている天狗には、信綱のそれは怯えながらも精一杯張っている虚勢に映った。

 

「ああ、たまんない……! もう捕まえちゃってもいいよね、ね!」

 

 手が伸びる。今度は確実に捕まえようとする意思の乗ったものだ。

 

「――」

「え――」

 

 小太刀を抜刀し、一息に手首を斬り落とす。

 断面から血が出るのは人間と同じなんだな、と思いつつ天狗の胸に自分から飛び込み、何が起こったか把握ができていない双眼に短刀を奔らせる。

 

「ぎっ――」

「じゃあ、ねっ!」

 

 胸を蹴り、距離を離してそのまま背を向ける。

 後ろからは苦痛に悶える悲鳴が聞こえ、これで一時の安全は確保されただろうと振り返り――

 

 目を潰されたままこちらに迫り、脇差しを振りかぶる天狗を見た。

 

 天狗は風を操る妖怪。故に風の流れで動体を探ることなどわけはなく、それは信綱の眼前にいる盲目の天狗も同じだった。

 全身が総毛立つ。父を打ち倒したあの時より――否、生まれてこの方一度も感じたことのない驚愕が信綱を襲う。

 なんということだ――自分にはまだ打倒出来ないものがいたのか!

 

 よく考えなくても当然のことだ。自分はまだ十にも満たない子供であり、この幻想郷は閉じた世界であってもそれなりに広い。

 しかし、これまで人里の中にある僅かな家と、稗田が全てだった彼にとってそれは多大な衝撃だった。

 秒とかからず、刀は自分を両断するだろう。しかし、彼の目に絶望はなかった。

 

 これが妖怪。あの方はこれらと相対して、その在り方を書にまとめる宿命を背負っている。ならば――

 

 

 

 この程度の障害、越えられずして何が阿礼狂いか。

 

 

 

 視界が開ける。細胞が活性化する。迫り来る凶刃の刃紋までしっかりと目に映る。

 ――どこに剣を奔らせれば、どのような結果が生まれるかも、視界から流れる情報を完璧に処理する脳が教えてくれる。

 振るう刃は一太刀。これで十分。力も技も必要ない。ただ、刃の軌跡に沿って――

 

 

 

 ――刃を斬れる場所に置けば、それで全てが事足りる。

 

 

 

 鉄と鉄の触れる硬質な感触は一瞬。キンッ、という軽い音を立てて、天狗の振るった刃は根本から断ち折られていた。

 軽くなった刀に驚愕する暇は与えない。返す刃で喉を斬り裂き、噴き出す血が自らを汚す前に今度こそその場を離脱する。

 

 次は振り返らない。自分があの天狗を相手に命を拾えているのはひとえに不意を突けていることと、目を潰しているという理由が大きい。

 どちらも妖怪ならしばらくすれば立ち直る。そうなった時に自分が近くにいたら、勝ち目は限りなく薄くなるだろう。

 

 今は逃げても良い。しかし、自分の弱さを存分に心に刻みつけてからだ。

 薬草一つ満足にとれない自分が惨めで、涙すらこぼれない。瞳から零れる液体は、自らの怒りを表すような血の雫。

 

 火継の家において弱さは罪である。それは嫌というほど、この世界における一つの側面を適切に表しているのだと、信綱は思い知らされた。

 

 強くなりたい。阿七に降りかかるであろう万難を笑って排除できる。そんな人間になりたい。

 

 悔しさと何かに急き立てられるような焦燥感。二つを得て、信綱は人里への道を駆け抜けていくのであった。

 

 

 

 

 

「……あー! もう、いったいなあ!」

 

 信綱が完全に人里に到着した頃、女天狗はようやく視力と手が再生し始めていた。

 子供と侮った結果があれだ。いや、あれを侮るなというのが難しいのだが。羊の皮を被った狼よりタチが悪い。ただの子供が刀の刃だけを狙って斬るような絶技を行うだろうか。

 

 ――だが、それがなんとも愛らしい。

 

「うふふふふ……あの子、ちょっと本気で狙いたいかも……」

 

 天狗は子供をさらう。さらった子供をどうするかは好みによって変わるが――少なくとも、不意打ちとはいえ天狗に痛手を負わせられる少年をさらってくるというのは、この女天狗の自尊心を大いに満足させられるものになることは確かだった。

 

「おーい、椛ー!!」

 

 となれば話は早い。さすがに人里で手を出したら博麗の巫女に目をつけられてしまうが、あの少年の言い分を聞く限り再び山に入ってくる可能性は高い。

 

「はいはい、なんですか。不審者でも居ましたか?」

 

 名前を呼んでやってきた白狼天狗――犬走椛に女天狗は親しげに話しかける。

 

「いたっていうか、逃げられたっていうか。まあ元々ギリギリ妖怪の山ってぐらいだったんだけどさ」

「この時期に? 妖怪か何かですか?」

「うんにゃ、子供。見た感じ十にも達してない」

「……今度、飲みに行きましょうか。大丈夫、私のおごりですよ。あと、今日はもう疲れたでしょうから、早く上がって暖かくして休んでください」

「わーい事務的対応。でも本当なんだよねー。私も言ってて信じられないけど、本当に人間。で、話はここからなんだけど」

「はぁ。言っておきますけど、私の千里眼ではあなたの見た幻覚は見えませんよ」

「幻覚じゃないから安心して。それに見るって言っても人里まで見るんじゃなくて、山に入ってきた子供を見ていればいいから。多分、ひと目でわかると思う」

 

 確信を持っている様子だった。椛は不思議そうに首を傾げ、その疑問を口に出す。

 

「そんなに特徴的なんですか?」

「うん。だって――」

 

 

 

 ――あなたが見ていれば視線に気づくだろうし。

 

 

 

「むむ……?」

「ま、それっぽいのが見つかったら教えてよ。それまでは真面目に哨戒任務やるからさ」

「はぁ、冬場の哨戒なんて誰もやりたがらないんでそれはありがたいですけど。あまり人間にちょっかいは出さないでくださいよ、博麗の巫女が来たら手出しが出来ないんですから」

「わかってるって。とにかくお願いね」

「はいはい、わかりましたよ――椿さん」

 

 椿と呼ばれた天狗は、先ほど追いかけた子供に思いを馳せて、うっとりと顔を歪めるのであった。




NGシーン
「なに、妖怪に絡まれて薬草を取れなかった? それでも火継か、今すぐもう一回行って来い」
「わかりました、父上」

いれなかった理由? 身も蓋もないのと話が切れないからです。



阿七と信綱の二人の関係はおねショタもとい姉弟みたいな感じです。但し信綱は護衛として扱って欲しい。阿七は弟のように接したい。

阿七はこの頃大体十代後半です。そろそろ転生の準備を始める頃。なおそれが終わるまで身体が持つか怪しいレベルで病弱な模様。
ということで現時点での大目的は阿七の身体をどうにかすること、です。根本的な改善策はないので薬草を採ってきたり、魚を採ったりといったことになりますが。

なお次話辺りからゴリッと年代を飛ばす予定。二、三年どころか御阿礼の子がいない次代なんて十年単位で飛ばすこともあるかもしれませんので、ご容赦をば。

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