阿礼狂いに生まれた少年のお話   作:右に倣え

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キャラが……キャラが多い……(白目)

抜けがあるかもしれないので、その時は教えてくれるとありがたいです(吐血)


登場人物紹介

 火継信綱

 

 本作の主人公にして本作で一番ヤバい奴の称号を読者、登場人物双方からもらっているただの人間。作者からの愛称はノッブ。是非もないよネ! とは言わない。

 コンセプトは霊夢の才能+魔理沙の努力+隠し味の狂気。隠し味が隠れてない? アーアーキコエナーイ

 

 この世に生を受けて二十六年。機会に恵まれずとも腐ることなく磨き続けた武技は後に吸血鬼異変と呼ばれることになった霧の異変で披露される。

 それを境に彼の知名度は人間、妖怪双方の間で一気に高まり、幻想郷全体にその影響を強めていくことになる。

 結果として彼は人妖共存の道標となり、人里に妖怪が入ることを受け入れた人里のみならず幻想郷にとっての英雄へとなっていった。

 最終的に百鬼夜行をも退けた彼の実力は天井知らずに伸び続けており、今なお成長は止まっていない。恐らく幻想郷を見渡しても比肩するのは僅かだろう。

 公人としての彼は品行方正、公明正大、清廉潔白で情も理も解する好人物であり、その剣をひと度抜けば百鬼夜行さえも薙ぎ払い、妖怪とも対等に渡り合える智謀にも長けた――というまさにお伽話のような英雄である。

 

 ――転じて、私人としての彼は上記の事柄に殆どの価値を見出さず、あくまで周囲が求めて彼にもできたから英雄を演じているだけのただの狂人。

 あくまで彼が願うのは御阿礼の子の幸福であり、それ以外の物事は無価値とまでは言わずとも、御阿礼の子以上の価値があるとは思っていない。

 ここで無価値とは思っていないのがタチが悪く、私人としての彼も進んで悪事を成すような人物では決してない。優先順位が完全に定まっており、だからといって他も切り捨てるわけではなく可能な限り助けようとする。狂人でありながらどこか優しさを持つ人間。なんだかんだ言って面倒見も良いので、御阿礼の子が関わらない範囲ではそれなり以上の常識と良心を持っている。

 

 また、天与の才としか表現のできないほどの才覚の持ち主であり、一を聞いて十を知るどころか、人間にそもそも覚えられない妖術とかの類でないかぎり、見れば大体理解して覚えてしまう才能の持ち主。あらゆる分野で歴史に名を残せる才能がある。もしもにとりの機械に興味を持っていたら科学の力で幻想郷がマッハ。

 

 戦闘スタイルは椿からもらった長刀と刀の変則的な二刀流。本来なら片方の刀で守備、片方の刀で攻撃を担うのだが、信綱は攻撃面を重視して両方で攻撃に回る。

 これは妖怪を殺すための殺傷力を求めてのこと。突きに適した小太刀では再生の早い点攻撃しかできず、またリーチの短さから相手の出を狙った攻撃がやりにくいため。

 阿弥の側仕えとして室内戦なども考慮しているのだが、今さら人間相手に不覚を取ることはほとんどないため、だいたい素手でなんとかなる。動乱の時代終了時のノッブはモブ烏天狗ぐらいなら素手で無双可能。

 

 狂気の方向性が完全に定まっていること。そしてそれを刺激しない限りは寛容な方であり、頼られた場合の面倒見も良い。おまけに妖怪と比較しても隔絶した力を持つ信綱は不思議と妖怪に好かれる。

 多くの人間、そして妖怪。それぞれから少なからず影響を受けて、彼は阿礼狂いの在り方を一切違えることなく英雄へと変わっていった。

 

 阿七、阿弥との死別に悲しみはあるが、それでも彼は二人の約束を胸に前に進んでいく。

 すでに人里では長老にもなろうとする歳であっても、未だ彼に休むことは許されない。

 

 

 

 

 

 稗田阿弥

 

 ヒロイン二人目。阿礼狂いに恋をしてしまった阿礼乙女。

 生まれた頃よりずっと側にいた信綱を父と慕っており、子供らしい子供時代を送った天真爛漫な性格。

 無論、それとは別に御阿礼の子としての自分も持っている。妖怪を相手に幻想郷縁起の取材をする時などはそちらの面が出てくる。

 とはいえあくまで記憶であり、経験ではないのでおっかなびっくりにやっていた。隣りにいる信綱が何よりも頼もしいと感じていた。

 幻想郷縁起の編纂が始まる前までは信綱を何の隔意もなく父と呼び慕っていたのだが、天狗の動乱を境に彼に向ける感情が変化。紆余曲折を経てそれが恋であると自覚。同時に阿礼狂いに恋をすることの非情さも理解してしまう。

 

 火継信綱個人に愛して欲しいという願い。そしてそれを口に出したが最後、彼は存在証明のできない愛を探してどこかに行ってしまう。

 自らの恋心と暖かく感じている今の時間、そして信綱を困らせてしまうこと。諸々を天秤にかけ、少女は信綱と共に穏やかな時間を過ごすことを決める。

 

 女としての愛を伝えることは終生なかったが、それでも笑いながら信綱の腕の中で逝った彼女に後悔はなかったのだろう。

 

 信綱にとって二番目の御阿礼の子。生まれてから死ぬまで、ずっと仕え続けたただ一人の御阿礼の子であり、娘でもある彼女のことを信綱は永遠に忘れない。

 

 

 

 

 

 犬走椛

 

 信綱の相棒。お前ホント出世したな、というのが作者の感想。

 彼女が出るきっかけはノッブの稽古相手にオリ天狗出すかー、でもこいつ一人だけじゃなー、かといってあややや入れるとオリ天狗出す意味なくなるし、この天狗途中で殺す予定だしなー、椛辺り追加すっか! という身も蓋もないもの。

 しかし真っ当に信綱と付き合い、真っ当に好感度を上げていった彼女はやがて信綱から御阿礼の子を託しても良いと判断されるほどの信頼を勝ち取っていく。途中で殺すからかなり早い段階で出した椿と同時期に知り合い、なおかつずっと一緒にいれば当然の結果とも言える。

 

 椿と信綱の関係の結末を聞き、阿礼狂いである信綱を見抜けなかった自身への後悔と三人で一緒にいられた時間の結末がこんなものであって良いはずがない、と彼女は妖怪の山にこもるより人と妖怪は共存した方が良いと願い始める。

 その言葉を信綱が聞き届け、動いた結果が今となる。彼女が信綱に幻想郷共存の願いを与えた立役者である。彼女がいなければ信綱は阿礼狂いとして一個の機械に徹していただろう。

 千里先を見渡す程度の能力を持つ以外、何も特筆する部分のない白狼天狗だが――背伸びをすることもなく人間に迷惑もかけず、そして信綱は彼女と共にいた。

 たったそれだけで――それこそが幻想郷を変えるキッカケとなった。

 

 彼女が信綱に対して抱く感情は単なる友誼や尊敬に留まらず、椿を殺したことへのわだかまりや無邪気な信頼を寄せる彼への愛情など、様々なものが入り混じったものになっている。

 それでも椛と信綱は互いを信頼しており、無二の相棒であるとも思っている。

 現時点でIFエンドルート待ちの人。ノッブが迫れば受け入れる程度には好意を持っている。

 

 ちなみに信綱が鍛錬を最も施している存在でもあるので、本人の想像以上に近接戦闘では強い。泣いて手足を切り飛ばされながら行っていた修行は無意味ではなかった。

 

 

 

 

 

 椿

 

 信綱が殺した知り合いの妖怪。彼女のコンセプトは『妖怪らしく間違い、妖怪らしく報われない最期を遂げる』でした。もうメタ視点でバッドエンドが約束されている人。

 が、彼女が報われない最期を遂げることと、彼女の死が全くの無意味であることは別問題。彼女の死によって信綱は自身に適した戦い方を見出し、椛は幻想郷の共存を願った。

 そして信綱は彼女に対して辛辣な対応をしていたが、なんだかんだあの三人での時間は嫌いではなかった。それを聞いて壊す決心を付けてしまったのが彼女の決定的な間違いであり、同時に信綱の狂気を見抜けなかったことが最大の不幸。

 ちなみに彼女の長刀がなければ信綱は途中で死んでいた可能性が高い。それほどにあの刀は彼にとって有益なものになっている。

 

 

 

 

 

 博麗の巫女

 

 文字通り。激動の幻想郷において、それでもなお自身の役目を果たしきった存在。

 まあ正直なところ異変の解決の主体である黒幕の退治は信綱がやっていたが、その他の人々の守護や不安に対する拠り所としては十全に機能していた。

 信綱とはお互いに二十歳前からの知り合いで、信綱がいざという時の避難場所に使い、巫女もまた彼に愚痴を言うという愚痴仲間。

 しかし博麗の巫女と呼ぶことはあっても、あくまで個人を見続ける信綱との付き合いは彼女にとって嬉しいものであり、それは彼が狂人であるとわかった後も変わらなかった。

 自分が役目を終えた時は信綱のもとに転がり込んで、余生をアイツと一緒に茶でも飲んで暮らそうと思っている。婚姻はそのために必要なプロセスの一つに過ぎない。

 

 現時点で愛情を持っているわけではないし、彼が別の人を選んでも良き友人としては変わらないのでいいかなぐらいにしか思っていない。だが、形だけとはいえ結婚をすれば多少は変化するかも……?

 

 

 

 

 

 霧雨勘助

 

 信綱の親友にして、霧雨商店の旦那。

 快活な性格はそのままに商人としての経験を積んでいき、その人柄も相まって霧雨商店をより大きくすることに成功した。農家出身だが、意外な才能は意外な場所に転がっているもの。

 火継の家とも契約を交わしており、その伝手である程度珍しい物が見つかるのが利点でもある。無論、ある程度でしかないので重要な部分は勘助の頑張りによるものである。

 そんな彼だが、幼なじみである伽耶と結婚をして息子も生まれ、息子である弥助に店を任せようとしている。役目が終わったら信綱や伽耶と三人で子供のように、とは行かなくてもあの頃のように過ごしたいらしい。

 

 

 

 

 

 霧雨伽耶

 

 勘助もそうだが、動乱の時代で妖怪との戦いや駆け引きが主だったため、あまり動かせなかったことがちょっと未練。でも満遍なく動かそうとするとキャラが増えすぎてて正直キツイというのが現状。長編を書くなら出すキャラは予め決めておこう! お兄さんとの約束だ!

 

 さておき、彼女は勘助を支える良き妻であり、弥助を優しくも厳しく育てる賢母であった。信綱とのつながりは勘助を通じてという形になるが、彼を英雄という色眼鏡で見ることなく友人として接し続けたため、信綱もその辺りに感謝している。

 また勘助には不得手な損得勘定の計算が上手くできるため、勘助と二人で店を盛り上げてきた。夫婦仲は今なお良好。

 

 

 

 

 

 上白沢慧音

 

 人里に昔から住んでいる半獣。信綱にとって頭の上がらない人でもある。

 やや頑固な部分はあるものの、それを差し引いても公明正大であり品行方正な模範的人間。大体この人を見習っていれば真人間に育つ。

 ただし本人の興味がある話になるとムダに長く要領を得ない内容になるという、最大にして唯一の欠点がある。遊びたい盛りの子供には眠りに誘う子守唄にしか聞こえないだろう。

 

 幻想郷全体を覆う動乱の中、英雄としてこの上ない活躍をしてみせた信綱を生徒として誇らしく思っている。そしてだからこそ、もう後のことは任せてくれと彼の幻想郷での役目にピリオドを打った。

 元より彼は阿礼狂いであり、御阿礼の子の側仕えこそが本来の職務なのだ。幻想郷のことはただ単に余力があったからやっているだけに過ぎない。それでもなお共存を成し遂げた彼の功績は認めるが――それにおんぶに抱っこではいけない。

 ここから先は自分たちの役目であると信綱の背を押した人。今の彼女の楽しみは彼らと自分たちで作り上げていく幻想郷を生きること。

 

 

 

 

 

 河城にとり

 

 名も無き河童からランクアップ。性格とかに変化はなし。

 相変わらず人見知りのくせに図々しく、好奇心旺盛でがめつい。羅列するとダメ人間感が出るが、実際結構ロクデナシの方。

 とはいえ小心者な一面もあり、あまり大それた悪事は働かない。そんなことをしたら天狗と人間を両方敵に回すからやってられないという部分もあるが。

 

 それとは別に人間のこともちゃんと盟友であると思っている。まあ思い込みだが、人間も敵対的よりは友好的の方が良いということで特に誤解は解いていない。

 青年の頃の信綱を知っている存在であり、あのままぐだぐだと適当に話して終わる関係であると思っていたらまさかの英雄に大出世という、信綱の素性に一番驚いた人物。

 目下の目標はあまり感情を表に出さない信綱を驚かせる機械を作ること。

 

 

 

 

 

 射命丸文

 

 奔放なようで真面目。アウトローぶっているが根っこは天狗社会の歯車。そんな感じの烏天狗。

 他の烏天狗のように何か役目を課せられているわけではない、という点ではかなり自由にさせてもらえている待遇のため、奔放というのもあながち間違いではないが、その実有事に際しては天魔の忠実な部下であることを課せられている。

 風を操る程度の能力を所持しており速度だけなら天魔に匹敵、ないし凌ぐほどの実力を持つ。が、出てくるタイミングが微妙に悪く、信綱が天狗の騒乱を収めた時には実力で抜かされていた。人間怖い。

 

 本人的にははっちゃけたいのに周囲がそれを邪魔し、なおかつ当人の気質もヤバい騒動はどうにかしなければならないと根っこも真面目なため、天魔の指示に動かざるをえないという本末転倒な状態。

 これでも天魔にはちゃんとした忠誠を誓っており、天狗全体にとっての悪影響を見逃すタイプではない。

 目下の悩みは自由奔放な天狗になりたいのに、周りからは真面目な烏天狗だと思われていること。悪ぶりたいお年ごろ。

 

 

 

 

 

 天魔

 

 男のオリ天狗なんて出してどうなるかと内心ビビりながら出した人。受け入れてもらえて安堵している。

 信綱が人間の英雄ならば彼は天狗の英雄。信綱と同じように武力に長け、智謀にも優れる天狗の頭領。

 特に政治的手腕は卓越しており、八雲紫とも対等以上に舌戦を交わせる。天狗の存続を第一義に考えているため、決して沈む船には乗らないなど時勢の見切りもできている。

 

 性格は飄々としてとらえどころがなく、有事の時以外は大体不真面目。あまり自分が働き過ぎて周囲の力がなくなることを恐れている――と言えば聞こえは良いが、本質的にサボり癖がある。文は彼のこき使える手足であり、同時に彼の目付役でもある。

 政治的な嗅覚に優れていることは前述したが、同時に先のことも見据えており、どこかで人間と妖怪は顔を突き合わせて話す必要があると考えていた。信綱はそんな時に現れた人間の英雄であり、彼にとっての奇貨でもあった。

 阿礼狂いという事前情報は持っていたが、その上で信綱を見極めて彼に肩入れすることを決める。一度肩入れを決めた後はかつての支配者である鬼にも歯向かうなど、自分が肩入れした相手にはそれなりに義理堅い。それはそれとして沈むとわかった船には乗らないが。

 最近の悩みは自分たちはかなり頑張ったはずなのに、未だに楽ができないこと。早く後進が育って欲しい。

 

 

 

 

 

 レミリア・スカーレット

 

 外の世界からやってきた吸血鬼。外の世界ではそこそこ悪逆も働いていた。

 幻想郷にやってきて最初の挨拶は派手にやろうという考えから吸血鬼異変を起こす。その頃は自分を退治できる人間がいるなど夢にも思っておらず、妖怪相手への挨拶のつもりだった。

 蓋を開けてみれば異変の黒幕に頭を垂れる天狗に、解決に来た僅か二名の人間と妖怪一人と、彼女にしてみればかなりの肩透かしを受ける。

 ――が、予想外のことはまだ続く。取るに足らない人間だと思っていた男が美鈴を瞬殺し、コウモリ越しの自分にすら殺意を向けてきたのだ。正直そこまでされるほど酷いことをしたと思っていなかったので、内心驚いていた。

 レミリアが直々に相手をしても彼はなお強く、しかも吸血鬼退治の名誉に酔うことすらなく淡々と屠殺されかけたところを紫と博麗の巫女に救われ、命拾いする。

 

 強い者と美しい者を尊ぶ彼女は世界で最も強い(主観)自分を打ち倒した信綱に惚れ込み、以来人里にちょくちょく訪れるようになる。

 彼に心底惚れこんでおり、しょっちゅう自分の元に来ないかと勧誘をするが、彼女が惚れ込んだのは何ものにも染まらず己の役目に徹する彼であるため、もし自分に傅こうとする時が来たら殺すつもり。チョロそうに見えて超面倒くさい仕様。

 

 自分以外の連中の大半を見下しているが、見下すことといじめることは同義ではない。飴玉の施しはありがたく受け取るし、親切にされればお礼も言う。何より信綱との約束があるため、人里に危害を加えるつもりはない。

 誇り高い吸血鬼としての性質と見た目通りのお子様な性質を併せ持っており、性格は割りと愉快。信綱に冷たくあしらわれて涙目になることもあれば、彼の前で渾身のギャグを披露して滑ることもある。

 ――そしてまた彼女も大妖怪の一角であり、天狗の騒乱の折に人里へやって来た天狗を退治し、鬼退治にも一役買うなど並大抵の妖怪は歯牙にもかけない実力を持つ。

 やって来たばかりの頃の幻想郷も信綱を中心に面白いことが起こっていたが、今の変わりつつある幻想郷もそれなり以上に好きな模様。きっとこれから先の未来も面白おかしく生きていくのだろう。

 

 余談だが、墓場からスケルトンを作らせて人里を襲い、混迷の坩堝と化した人里を嗤い愉しむというルートもあった。その中には阿七の遺体も含まれており、事態の対処に当たった信綱がそれを発見し、全てを理解した彼が全火継を投入して紅魔館を滅ぼしに行くストーリー。妖怪殺すべし、な色合いが強まった信綱が幻想郷を血と混迷渦巻くものに変えていたことだろう。レミリアの運命? そら死一択よ。

 

 

 

 

 

 紅美鈴

 

 レミリア・スカーレットの従者にして紅魔館の門番。まだ咲夜さんがいないので屋敷内の雑事もやっている。

 脳天気でお気楽な性格をしているが、レミリアへの忠誠は本物。有事の際には彼女の忠実な下僕として働くが、普段は彼女の気まぐれと無茶振りに涙目になっている。

 妖怪としての格はさほど高くなく、再生力と武術が持ち味。かなり凶悪な組み合わせではあるのだが、いかんせん信綱とは相性が悪かった。おまけに阿礼狂いとして全てを灰燼にする気だった信綱の殺気と目を間近で見てしまい、彼にトラウマがある。

 それでも主人が信綱にご執心なためちょくちょく会いに行かされる悲しい人。でもなんだかんだレミリアに付き合う辺り、健気である。

 最近ようやく苦手意識程度になってきたが、百鬼夜行異変の折に彼の姿を見てしまいトラウマが再燃した模様。

 

 

 

 

 

 星熊勇儀

 

 百鬼夜行の主。語られる怪力乱神。かつて大江山にて覇を唱えた鬼の一角。

 豪放磊落、天衣無縫、鬼に横道なし。何事も正面から突き進み、罠があろうと策があろうと正面から食い破る生粋の鬼。

 吸血鬼異変の際に力を見せた信綱を萃香より聞きつけ、彼がもっと強くなるのを待って百鬼夜行を起こす。唯一にして最大の誤算であり最上級の幸運だったことは、信綱は本気の自分さえも退ける強者になっていたこと。思い立ったが吉日と動かれていたら信綱は死んでいた。

 およそ霊力がなければ刃を通すことすら難しい肉体に、よしんば通したとしてもすぐさま治ってしまう再生力。そして振るわれる豪腕はかすっただけで人間をひき肉に変える。

 強い、固い、しぶといの三拍子揃った悪夢のような妖怪。鬼か、鬼だった。

 要するに霊力を使わずに彼女の腕や首を落としただけでも、信綱の技量には目を見張るものがあったということである。よもや霊力も自在に操れるとは思っておらず、鬼を相手に切り札を隠していたという信綱の策にハマって敗北。

 しかし極論を言ってしまえば手札の切り合いである戦闘において、鬼の首魁を相手に出し惜しみをしたという胆力に勇儀はむしろ感心していた。そのため勝敗がついた以降も信綱と勇儀の間に隔意はなく、人里で会ったら普通に話もする仲に。

 

 レミリアのように表にこそ出さないものの、彼女も本気の自分を打倒した信綱に惚れ込んでおり、彼の死後も人間に手を出さないことを自分に課している。

 

 

 

 

 

 伊吹萃香

 

 小さな百鬼夜行。見た目が小さくても秘める力は八雲紫に匹敵する大妖怪。多分読者の間ではやらかした方の鬼という認識がある(推測)

 

 大江山で人間に騙されても人間を愛する勇儀とは対照的に、彼女は若干人間不信の気があった。しかし内心では自分の不信を覆す気持ちの良い人間が現れることを望み続けており、勇儀はそれを見抜いていた。

 そんな折に見つけた火継信綱という名の英雄に目をつけ、地底で百鬼夜行を画策し引き起こす。

 

 彼女にとっていくつかの誤算があったとすれば、目当ての存在である信綱は意外なほど方方の妖怪に好かれており、地上の勢力である殆どが彼の味方をしたことと、当の信綱は真っ当な英雄などとは程遠い狂人のくせに、星熊勇儀をかすり傷のみで倒してしまうほどの強者であったこと。そして――阿礼狂いとなった彼の強さは常軌を逸していた。

 鬼の大将を屠殺のように殺す信綱に彼女が抱いた感情は異様であり、悔しさであった。全力を尽くしてなお届かない理不尽。本来ならば人に理不尽を与える側である妖怪が、人間に理不尽を感じてしまったのだ。

 そしてそちらと同時に戦ったとある白狼天狗の願い――彼女の願いをより一層尊く感じることになる。

 あれ以来、萃香は人間に対する感情を割り切ることにした。彼らの大半は弱く脆く小賢しいが――中には彼のような規格外も現れる。

 信綱は阿弥を危険な目に遭わせた萃香を蛇蝎の如く嫌っているが、萃香は理不尽に斬り刻まれてもあまり信綱を嫌ってはいない。彼女も鬼だけあって、強い存在は好きらしい。

 

 

 

 

 

 橙

 

 信綱の腐れ縁にして悪友。信綱は右肩上がりの成長をずっと続けていてどんどん力の差が開いているのが最近の悩みな妖猫。

 お調子者で誰に対しても調子よく接するが、意外と人見知りな面も持っていて天狗などが相手だと萎縮してしまう。

 信綱との付き合いは子供の頃に遡り、彼との付き合いは長いため彼が英雄になろうと鬼を倒そうと全く態度を変えずに子分扱いを一貫している。

 すぐ調子に乗るわ、何かと信綱を子分にするわで信綱はよく彼女の耳を引っ張っている。手入れがされていて結構さわり心地は良いらしい。

 

 実は萃香との戦闘では橙の関わるルートが草案として存在し、その時は萃香との戦闘中で壊れた武器の代わりを椛が投げ、それを取ったけど攻撃が間に合わない信綱のために橙が妖術で炎を出し、一瞬だけ目のくらんだ萃香の隙を信綱が突いて倒し切るというもの。

 信綱の昔なじみと一緒の友情パワーだ! という王道な流れを構想していたのだが、いざ実際に書いてみたら鬼がうじゃうじゃいる場所に阿弥たちを連れてきた時点でノッブマジ切れ不可避だよね、と気づいてしまいああなった。許せ。

 

 

 

 

 

 八雲紫

 

 信綱の天敵にして、色々考えているようで実はあまり考えていない、けど全く考えていないこともないスキマ妖怪。

 ほぼメタ視点の情報量を誇り、読者と殆ど情報の差異がない稀有な存在。あまり下手に動かすともう全部こいつ一人で良いんじゃないかな状態になるお人。今回は誰も彼もが彼女に対して不信感を抱いているからこそ動けないという理由をつけた。

 

 少年の頃は適当におちょくれる相手程度の認識だった信綱が、吸血鬼異変を境に急速に知名度と腕を上げていく過程を眺めていた。

 無闇な争いは好まず、敵を増やすより味方を増やした方が良いという合理的思考を持つ彼が、共存を願い始めたことにより彼女は見守ることを決断する。

 下手に自分が手を出して物事をこじれさせるよりは、彼の手に任せた方が上手くいく――紫は紛れもない狂人に何かを感じ取り、全てを賭けた。

 その賭けは見事に成功し、幻想郷は紫が長年夢見た人妖の共存する理想郷への道を確かに歩み始めた。

 全てを成し遂げてみせた信綱に対して侮る気持ちはもはやなく、己と対等の存在として認めている。

 なお当の信綱は彼女のことをあまり好ましく思ってはおらず、面倒なことを押し付けてくれたババア程度の認識。そのため彼女がやってきても対応は結構辛辣。

 

 例え信綱が死んでも彼女は幻想郷に多大な貢献をし続けた彼のことを終生忘れず、胸に刻み続けることだろう。




ワチャワチャと書くことが多いキャラと少ないキャラがいますが、お話の中で大体語ったキャラは比較的少なくなったり、出番のないキャラは減っていきます。

次回からは阿弥のいなくなった幻想郷を書いていく予定です。

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