「泊君、修学旅行の班、決まった?」
修学旅行間近になり、班活動で何処を周るかで盛り上がっていた。
「いや、まだ決まってない。それに、今更誰かの班に入れてもらうのもなぁ~」
「ならさ、私の班に来ない?」
「神崎の?」
「うん。渚君とか茅野さん、カルマ君に杉野君、奥田さんがいるよ」
そのメンツなら大丈夫か?
渚と赤羽、茅野ならそこそこ話すしな。
奥田さんとも別に仲が悪いわけでもないな。
杉野は…………ちょっと面倒だな。
ま、いっか。
「なら、頼めるか」
「うん」
そして、俺は神崎に連れられ、神崎たちの班に混じる。
「お、泊も一緒なの?」
「よろしくね、泊君」
「泊……」
杉野、そんなに睨むな。
別に神崎を取ったりしねぇよ。
てか、お前のでも無いけどさ。
「泊君、よろしくね」
「えっと、よろしくお願いします!」
茅野と奥田さんも挨拶してくれた。
取り敢えず、班はこれで大丈夫だろう。
今回の修学旅行は暗殺を兼ねた物だ。
殺せんせーは班ごとに付き添いをする。
そこを国が雇った狙撃手が、狙撃を行う。
俺達は狙撃手の手伝いをする。
成功したら貢献度に応じて、百億円の中から分配される。
狙撃手にとって殺り易い環境を整えるのが、俺達のすることだ。
「ふん。まだあんたらも餓鬼ねぇ。世界各国を渡り歩いた私から言わせてもらえば、国内の旅行なんて………」
「それじゃぁビッチ先生は留守番な」
「花壇に水あげといて」
「ここなんてどう? 」
「暗殺の兼ね合いを考えると………」
ビッチ先生そっちのけで、ルートを決め始めると。
「何よ! 私抜きで楽しい話しないでくれる!? 」
叫びながらデリンジャーを抜く。
「行きたいのか行きたくないのかハッキリ口で言えよ! 」
めんどくさい人だな。
「一人一冊です」
今度は殺せんせーが手に大量の本を持って入ってくる。
「重っ!」
「何これ、殺せんせー?」
「修学旅行のしおりです」
辞書だろ、コレ!
何処に千ページを超えるしおりがあるんだよ!
「イラスト解説の全観光人気スポット、お土産人気トップ100、旅の護身術入門~応用。昨日徹夜で作りました。初回特典は組立紙工作金閣寺です」
「どんだけテンション高いんだよ!?」
本当に重いな、このしおり。
人殺せるぐらいには固い。
「てか、先生なら京都まで一分で行けるでしょ」
「ええ、そうです。ですが、旅行と移動は違います。皆で楽しみ、皆でハプニングに会う。先生は皆さんと一緒に旅できるのが嬉しんです」
そう言う殺せんせーは本当に嬉しそうに語る。
修学旅行当日。
ここでもE組差別は起きる。
修学旅行恒例の話が始まり、いつも通りのE組弄りを受け、新幹線に乗り込む。
A~D組はグリーン車で、E組は普通車。
他にも、ビッチ先生が過激な服で着てきた事に烏間が怒り、普通の服に着替えさせたり、殺せんせーが駅中スイーツを買って乗り遅れたりなどがあった。
そして旅館に着くと、殺せんせーは酔っていた。
「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは……」
岡野、片岡、磯貝の三人は殺せんせーに声をかけながらも、ナイフを振り下ろすが、全て躱される。
「殺せんせー、部屋で休んだら」
「いえ、この後、すぐに東京に戻ります。先生、枕を忘れてしまって」
そんな中、神崎は鞄の中にしまっておいた手帳が無いことに気付き、探していた。
その手帳には修学旅行の予定が纏めて書かれている。
「どう?神崎さん、日程表見つかった?」
「ううん……」
「神崎さんは真面目ですからねー。独自に日程を纏めているとは感心です。でもご安心を、先生の手作りしおりを持てば全て安心」
「それ持ちたくねぇから纏めてるんだろ」
「確かにバックに入れた筈なのに……どこかで落としたのかなー……」
結局、神崎の日程表は見つからず、そのまま一夜が開けた。
修学旅行二日目
俺達四班は殺せんせーを暗殺するためのコースを歩いていた。
「ここなら、狙撃には持って来いかもな」
「狙撃手の人に見えるかな」
「でもさぁ、京都に来た時ぐらい暗殺のこと忘れたかったよなー。いい景色だし、暗殺なんて縁の無い場所でさぁ」
杉野がそう言って来た。
「そうでもないよ、ちょっと寄りたいコースがあるんだ。すぐそこ」
渚に案内され全員が着いた場所には、石碑があった。
石碑には坂本龍馬・中岡慎太郎遭難之地と刻まれていた。
「坂本龍馬って……あの?」
「あ~、1867年龍馬暗殺。「近江屋」の跡地ね」
「ここから歩いてすぐの所にも本能寺もあるよ。当時と場所はズレてるけど」
「そっか、1582年の本能寺の変も暗殺の一種か」
「それだけじゃない。京都は当時日本の中心だった。それだけに多くの人間が狙われた。有名なものから知名度の低いものまで数えたら数えきれない。まさに暗殺の歴史が刻まれた街だ」
「なるほど、確かにこりゃ、暗殺旅行だわ」
杉野が納得し、俺たちは、次の目的地へと向かう。
次の目的地は祇園。
「へぇ~、祇園って奥に入ると人気ないんだね」
「一見さんお断りの店ばかりだから目的もなく来る人はいないし、見通しが良い必要もない、だから、私の希望コースにしてみたの。暗殺にぴったりなんじゃないかって」
流石は神崎だな。
良く調べてある。
だが、少々問題があるようだな。
「なんでこんな拉致やすい所来るかねぇ普通」
いかにも不良っぽい恰好をした奴等がぞろぞろと現れてきた。
「何? お兄さんら。観光が目的っぽくないね」
赤羽が挑発をする。
「男に用はねぇんだ。女置いて帰れ」
そう言った瞬間、赤羽が男の顎に掌底を撃ち込み、そのまま頭を電柱に叩き付けた。
「ほらね、渚君。目撃者がいなければ喧嘩しても問題無いでしょ」
赤羽が渚の方を見ながら言う。
「赤羽!」
俺は赤羽の背後から接近する男に向かって走り、蹴り飛ばす。
「サンキュー、泊」
謝り、次の不良に喧嘩を挑もうとした時背後から女子の悲鳴が聞こえた。
見ると、神崎と茅野が男に捕まっていた。
「チッ!」
赤羽が舌打ちをした瞬間、リーダー各と思われる男が、赤羽の頭を殴る。
「しまっ!」
「何処見てんだよ!」
倒れた赤羽に気を取られ、俺は背後からスタンガンを食らう。
「あがっ………」
意識を奪われ、俺はそのまま地面に倒れ込む。
そして、渚と杉野もやられ、神崎と茅野は連れて行かれた。
「皆さん!大丈夫ですか!?」
意識を取り戻した時、奥田さんの声が聞こえた。
「奥田さん、無事だったんだね」
「すみません、思いっきり隠れてました」
「いや、正しいよ。向かって行って、捕まるよりずっといい」
謝る奥田さんに赤羽が声を掛ける。
「彼奴等、車のナンバー隠してたし、きっと盗難車、それもよくある車種。犯罪慣れしてやがる。通報してもすぐには捕まらないよ。てか、俺に直接処刑させて欲しいんだけど」
「でも、何処に向かったのか分からないんだぞ。どうするんだ?」
「大丈夫だ。渚、しおり、持ってないか?」
「え?持ってるけど」
「殺せんせーのことだ。こういう状況の時のマニュアルが書いてあるかもしれ」
俺の言葉に従い、渚は分厚いしおりを開く。
「いや、いくら殺せんせーでも、そこまでは」
「あった!」
「嘘!?」
杉野に続いて、俺達もしおりを覗くとやっぱり書いてあった。
「流石殺せんせーだ」
「こんなしおり見たことねぇーよ」
「色々書いてあるよ。『京都で買ったお土産が、東京で売ってた時のショックの立ち直り方』」
「何手先まで想定してるんだよ!?」
「『鴨川の縁でイチャつくカップルを見た時の寂しい自分の慰め方』とか」
「大きなお世話だ!」
「だが、これで少しは落ち着いただろ」
俺が言うと、杉野は俺の方を見る。
「冷静じゃない時ほど、人間は本来の力を発揮できない。殺せんせーのしおりのお陰で大分落ち着いたはずだ」
「泊君の言う通りだ。これで、今何をすべきが分かったよ。行こう、茅野と神崎さんを助けに」
次回、あの彼が登場。