放課後
授業中ずっと寝ていた俺は起き、欠伸をする。
「泊君、また寝てたの?」
隣の席の神崎が教科書を片付けながら聞いてくる。
「いいんだよ。どうせ、俺達E組なんだから、今更勉強したって、人生終わってるんだし」
何も入ってないペラペラの鞄を手に立ち上がる。
すると、ちょうど教室の扉が開いた。
入ってきたのは烏間さんだった。
烏間さんは防衛省の人間で、俺達にあのタコ、通称殺せんせーの暗殺を依頼した人だ。
「泊君、丁度良かった。ちょっと付いて来てもらってもいいか?」
「……分かりました」
行き成り呼ばれて少し驚いたが、烏間さんの後に続いて、山の下に停めてある黒塗りの車に乗る。
車に乗ること数十分、俺が連れてこられたのはある施設だった。
「ここは?」
「防衛省が作ったとある組織だ」
「そんな所に俺なんか連れて来ていいんですか?」
「構わない。むしろ、君だからこそ連れて来た」
施設に入るとそのままエレベーターに乗り、地下へと降りて行く。
かなり深くまで降りるんだな。
「着いてきたまえ」
最下層と思われる場所に着き、通路を歩きながら烏間さんが話す。
「君は重加速、どんよりと呼ばれるものを知ってるか?」
「…………ええ、知ってます」
知らないはずがない。
俺がE組に落ちるきっかけとなったもので、俺から大切なものを奪ったものだ。
「その重加速を発生させているのが、人工生命体、いや、機械生命体“ロイミュード”だ」
「ロイミュード?」
「詳しい話は彼からしてもらおう」
そう言って、ある部屋に着き、烏間さんは電気を付ける。
そこには一台の赤いスポーツカーが止まっていた。
いや、車にしては形が変わってる。
なんだこれは?
「クリム、例の彼を連れてきたぞ」
『ご苦労、カラスマ』
急に誰かの声が聞こえ辺りを見渡す。
だが、この部屋には俺と烏間さん以外誰もいない。
「泊君、紹介しよう」
そう言って烏間さんはテーブルに置かれたやたらごっついベルトを指差した
「我々の協力者のクリム・スタインベルトだ」
『Nice to meet you!ハジメマシテ、泊佑一君。私はクリム・スタインベルト。よろしく』
驚くことにそのベルトは喋り、そしてテーブルの上でガタガタと動いた。
「べ………ベルトが喋った……………」
「泊君、驚くのは無理もないが取り敢えず彼の話を聞いてくれ」
「………別に驚いてませんよ。うちの担任と初めて会った時と比べれば」
そう言い、俺はベルトの方を見る。
『では、最初に私の事を説明しよう。私はこれでも元科学者でね、中々に優秀だったと自負している。だが、十五年前にロイミュードによって死んでしまった。だが、私は事前に記憶と意識のみをこのベルト、ドライブドライバーの内蔵メモリにインストール・保存することで擬似的に命を繋く準備をしていた。だから、今こうしてここにいる』
「なぁ、烏間さんがさっき言ってたけどロイミュードってなんだ?」
『ロイミュードとは。「機械生命体」とも呼ばれている総数108体におよぶ増殖強化型アンドロイだ。それを作ったのは蛮野天十郎と言う科学者だ。彼は優秀な頭脳の持ち主であり、15年前に自己増殖型アンドロイドとしてロイミュードをほぼ完成させた。だが、エネルギー源の問題を解決することが出来ず、彼の発明は頓挫しかけた。だが、そのエネルギー源を解決できるものがあった。それは超駆動機関『コア・ドライビア』。私が開発したものだ』
それを聞き、俺はベルトを両手で掴み揺さぶりながら尋ねる。
「それどういう意味だ?要するに、お前もそのロイミュードの開発に関わっていたってことか?」
『………蛮野と私は友人だった。私は彼自身の危険性に懸念を抱きながらも、友人としての情からコア・ドライビアを彼に譲った。だがその結果、初期型ロイミュード達の反逆に遭い私も蛮野も死んでしまった。そして、半年前に大規模な重加速現象とロイミュードによる破壊活動、グローバル・フリーズが起きた』
「なんだよ、それ…………烏間さんはこのこと知ってたんですか?」
尋ねると烏間さんは無言で頷いた。
「知ってるならどうしてそれを発表しないんですか!」
「こんなこと、発表した所で誰が信じると言う。発表したくとも発表できないんだ」
『更に、ロイミュードは強くそして、頑丈だ。人間の持つ兵器では太刀打ち出来ないだろう。さらに重加速の中では人間はまともに動くことが出来ない』
「じゃあ、このまま放っておくのかよ?半年前みたいなことがまた起きるかも知れないんだぞ!」
俺は怒りに任せてベルトに怒鳴り散らす。
『いや、一つだけ方法がある』
「………あるのか?」
『ああ、私はコア・ドライビア以外にもある物を開発したのだ。それがドライブシステムだ。それを使えば、ロイミュードと互角に渡り合う事も出来るし、システムに内蔵されたコア・ドライビア-Nの力で重加速現象の影響を受けない。ロイミュードに唯一対抗できる手段と言ってもいい』
「だが、これを使うのは誰でもいいというわけではない」
そう言うと烏間さん俺の前に立ち、俺を真っ直ぐ見つめる。
「泊君、君に頼みたい」
「え?」
『本来なら私がやるはずだったのだが、ある理由でそれができなくなった。私以外にこのシステムを扱えるのは君だけだ。頼む、悠一。ロイミュードの撲滅の為に、力を貸してくれ』
「俺からも頼む。本来なら君のような子供に頼むべきではないことなのだが、仕方がないんだ」
烏間さんは頭を下げて言う。
「ふざけんなよ」
俺は唇を震わせながら言った。
「要するに、俺にそのベルト野郎が犯した過ちをそいつの代わりに償ってくれってことだろ。…………………ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!」
拳をテーブルに叩き付け、ベルトが僅かに跳ね上がる。
「こっちはあのタコの暗殺まで依頼されてるのに、それに加えてロイミュードの撲滅までやれとか…………正気じゃねぇよ。…………それに、もう何かの為に何かをするってのは嫌なんだ」
そう言い残し、俺は部屋を去った。
「泊君!」
『待て!カラスマ!』
部屋を出て行った彼を追おうとしたら、クリムが俺を止めた。
「クリム…………」
『少し急ぎ過ぎてしまったみたいだ。もっと慎重に行くべきだった。それに………彼の言ったことは事実だ』
そう言う、クリムの声は悲しみを帯びていた。
次回辺りで変身するかな