「烏間先生、一体どうしたんですか?」
神崎と一緒に職員室に向かうと、烏間先生は神妙な面持ちで封筒を取り出す。
「実は先程、これが届けられた。届けたのは先日、君が言っていたロイミュード“チェイス”だ」
その名前に俺は驚いた。
チェイスが封筒を?一体何のために?
「それで、チェイスは?」
「中身は読んでないが、恐らく果たし状だろう」
「どうして分かるんですか?」
「戦いを行う時、果たし状を送る。それが人間のルールなのだろう」
「そう言ってたからだ」
意外と律儀だな!?
そう思いながら、封筒を受け取り、中身を見る。
『山の開けた広場にてお前を待つ チェイス』
「筆で書いてますね」
「ああ、しかもかなり達筆だ」
てか、そんなことはどうでもいいんだよ。
「先日のやり直しをするって言うのか」
「泊君………どうする?」
「……行きます。どの道、ロイミュードは倒さないといけないんだ」
神崎に鞄をお願いし、シフトスピードを手に取る。
「行くぜ!ベルトさん!」
『OK!START・YOUR・ENGINE!!!!!DRIVE!!!TYPE!!!SPEED!!!』
ドライブに変身すると、俺はトライドロンに乗り込み、指定された場所へと向かう。
「しかし、山道でもトライドロンはすいすい行けるな」
『トライドロンは私の作った発明では最高傑作と言ってもいい!』
「それにしても、ベルトさんいい趣味してるね。この車、結構いいデザインじゃん」
『おおっ!この良さが分かるとは!佑一、君は中々見どころがあるぞ』
「ありがとう。そろそろ、チェイスが指定した場所だ。ベルトさん、気を引き締めて行くぞ」
『ああ!』
指定された場所に着くと、そこにチェイスが立っていた。
俺はトライドロンから降りて、チェイスの前に立つ。
「来たか、ドライブ」
「果たし状、確かに受け取ったぞ」
「なら、始めるぞ」
チェイスはあの武器を取り出し、銃口を手の平に押し付ける。
《Break up》
チェイスはあの姿になると、攻撃を仕掛けて来た。
俺もハンドル剣を手に攻撃する。
武器同士がぶつかり合い、金属音を響かせる。
「果たし状を送るなんて、何処で習った?」
「知らん。気が付けば、既に頭の中にあった」
「なるほど。そう言う所、ちょっと好きになれそうだぜ」
「俺はそう言う趣味は無い」
「俺にだって無いわ!今のはそう言う意味じゃねぇよ!」
剣と銃をぶつけ合いながら戦う。
何故だが、妙にこいつとの戦いは心が躍るって言うか、なんか楽しい。
前回の時は、味方を破壊したことで、頭に血が上ってたから余裕が無かったが、今回は違う。
こいつの戦いは実にフェアプレイだ。
卑怯な手を使わず、正面から正々堂々と向かってくる戦い。
まるで戦士そのもの。
そう思った瞬間、突如背中に向かって攻撃が飛んできて、俺に当たる。
「ぐあっ!?」
「……なん……だと……」
チェイスも驚き、俺の背後に目をやり、驚く。
膝を地面に付きながら、俺も背後を見る。
するとそこには、腕が銃の形をしたロイミュードがいた。
「なっ……伏兵!?」
まさか………チェイスの奴、俺を騙したのか?
「貴様………これはなんのつもりだ?」
チェイスは怒りを露にしながら、そのロイミュードに尋ねていた。
「決まってるだろ。仮面ライダーを倒す手助けさ」
「そんなものはいらん。仮面ライダーは俺一人で倒す」
「人間の乱入で戦いをを止めちまうテメーがか、死神?」
どうやらコイツの登場はチェイスにとっても予想外なんだろう。
しかし、まずいぞ………
チェイスに加え、進化態ロイミュード。
この二体を相手にするのは厳しい。
チェイスが気が削がれたとか言って退散してくれたらいいんだが………
「言っておくが、もし戦いを放棄する様ならハートたちにお前が裏切ったと伝えるぜ」
「………わかった」
チェイスは短くそう言うと、俺の方を向く。
「やっぱ、そう都合よくはいかないか」
覚悟を決め、ハンドル剣を構えると、バイクのエンジン音が聞こえた。
「この狙ったかのようなタイミング………覚えがあるぞ……」
『奇遇だね……私もだよ』
俺とベルトさんの予感は見事的中し、隼人がバイクに乗って現れた。
「よう、佑一。援護はいる?」
「悪いが頼めるか?」
「OK!」
バイクから降り、隼人はマッハドライバーを取り出し、腰に付ける。
《シグナルバイク!!》
「LET'S………変身!」
《ライダー!!マッハ!!》
「追跡!撲滅!いずれも………マッハ!仮面ライダー…………マッハ!」
マフラーをなびかせ、隼人はポーズを取り叫ぶ。
「進化態は任せな。佑一はあのスクラップの寄せ集め野郎を頼むよ」
俺の返事を聞かず、隼人は銃のロイミュード、ガンナーロイミュードへと向かって走り、ゼンリンシューターで攻撃をする。
「さて………これで邪魔者はいなくなったぞ。さぁ、前回のリベンジマッチと行こうぜ!」
「ふん!言われなくとも」
そして、俺とチェイスは戦いを再開した。
第三者SIDE
「こんな所かしら」
裏山のに作られた簡易射撃場で速水はハンドガンを鞄に仕舞い、下校の準備をしていた。
最近、射撃のスコアが伸び悩んでおり、ここ数日は一人で射撃の特訓を速水はしていた。
伸び悩んではいるものの、クラスでは遠距離暗殺女子一位の成績。
それでも納得が居ないのは速水の性格でもあるのだろう。
訓練を終え、速水は一人下校準備に取り掛かっていると、遠くで何かの金属音が聞こえた。
「今のは……」
そして、金属音に続き、銃声。
ただ事ではない。
そう直感した速水は、鞄を手に、音がしたところへと向かった。
そして、音が聞こえた場所で、速水が目にしたのは、ドライブとマッハがチェイスとロイミュード相手に戦っている光景だった。
「な……何よアレ……」
速水は目の前の光景が信じれず、思わずそう言う。
「……あ、あの人は!」
その時、速水はドライブを見てあることに気付いた。
グローバル・フリーズが起きた半年前。
あの日、速水は雨が降る中、一人下校していた。
クラスメイトの仕事を代わりに頼まれ、断ることが出来ず引き受けて、帰りの時間が遅くなってしまった。
早く家に帰ろうと、普段は通らない裏道を通り、自宅へと向かう。
そして、速水はロイミュードを遭遇した。
重加速の所為で身動きが取れず、ロイミュードは速水に襲い掛かろうとした。
速水は何も出来ず、ゆっくりと倒れて行く。
その時、速水の背後からシフトカーが数台飛んできて、そのロイミュードに攻撃を仕掛けた。
エネルギーの手裏剣を飛ばすシフトカー“ミッドナイトシャドー”。
炎を纏ったシフトカー“マックスフレア”。
棘を飛ばし攻撃するシフトカー“ファンキースパイク”。
そして、そのシフトカーを従え、ロイミュードを倒す仮面の戦士“ドライブ”。
ドライブはロイミュードを倒すと、倒れて気を失い掛けてた速水を抱き上げた。
速水が覚えているのはそこまでだった。
次に目が覚めた時、速水は自宅近くの公園のベンチに横になっていた。
「似ている……あの時、私を助けてくれた人と…………」
佑一SIDE
「はぁ!」
「ぐっ!?」
隼人の方は心配なさそうだな。
ガンナーロイミュードを追い込んで、確実にダメージを与えている。
やっぱり問題はチェイスだな。
さっきから攻撃してるけど、全部防がれてる。
このまま行けば、隼人の方が先にガンナーロイミュードを倒すだろう。
それなら、それまで粘って、隼人と一緒に倒すのが一番だけど…………それはしたくないな。
「どうせなら………正々堂々戦いたいしな」
《Gun》
チェイスは持っている武器の銃口を手の平で押し、俺に向かって撃ってくる。
「おっと!?」
地面を転がるようにして銃撃を躱し、ハンドル剣を手に斬り掛かる。
《Break》
武器同士がぶつかり、また金属音を響かせる。
「おらぁ!」
俺はハンドル剣で、チェイスの武器を抑え込み、足蹴りで武器を蹴り飛ばす。
「しまっ!?」
すかさずハンドルを回し、チェイスの脇を切りつける。
『TURN!UTURN!』
二度切り付けられ、チェイスは脇を抑えながら後ろに下がる。
「これで決めるぜ!」
鍔のスロットにシフトスピードをセットし、ハンドル剣を回しクラクションを鳴らす。
『ドリフトカイテーン!!』
「はあああああああ!!」
「ぐああああああああ!!?」
チェイスの身体から紫電が走り、大ダメージを与えたのが一目でわかった。
「これで!」
俺は剣を振りかぶり、チェイスにトドメを刺そうとする。
その時だった。
「そこだぜ!」
ガンナーロイミュードは銃を隼人ではなく、森の方へと向けていた。
そして、銃口の先には……………
「速水!?」
第三者SIDE
「はっ!」
「ぐあっ!?」
ガンナーロイミュードは隼人の事を侮っていた。
侮っていたからこそ、隼人に追い詰められていた。
視界の端ではチェイスが佑一にやられているのが見えた。
(死神の野郎の助けは期待できねぇ………!)
その時だった。
隼人の背後の森から人の姿をガンナーロイミュードは見た。
(チャンスだ!)
隼人の足元に銃を発砲し、隼人の攻撃のタイミングを遅らせると同時に、銃口を速水の方に向ける。
「そこだぜ!」
「しまった!?」
隼人も佑一も、ガンナーロイミュードが偶然にも現れた速水を狙っているのに気付く。
(人間は人間を助けようとする愚かな奴等だ!奴等もあの人間のメスを守ろうと動くに決まってる!それが貴様らの敗因だ!)
そして、ガンナーロイミュードは引き金を数回引く。
放たれた弾丸は速水に向かって音速の早さで飛ぶ。
佑一も隼人も間に合わない。
それでも二人は走った。
その瞬間、佑一の前をある影が通った。
それはチェイスだった。
チェイスは一瞬で速水の前に立つと、両腕を広げ、速水を銃弾から守った。
佑一SIDE
「ぐあっ!?」
チェイスが速水を庇った。
全身に銃弾を浴びたチェイスは膝を付く。
「死神!?テメー……一体何のつもりだ!?」
チェイスが何故あんな行動を取ったのかは分からないが、今がチャンスだ!
「隼人!決めるぞ!」
「え?…あ、おお!!」
俺はイグニッションキーを回し、必殺技を繰り出す。
隼人も俺の意図を理解し、必殺技を出す。
『ヒッサーツ!FULLTHROTTLE!SPEED!』
『ヒッサーツ!フルスロットル!マッハ!』
俺と隼人は同時に飛び上がり、ガンナーロイミュードに向かって必殺技を放つ。
「ぐあああああああああああああ!!!?」
蹴りはガンナーロイミュードを貫き、コアを破壊して、爆発する。
俺と隼人はガンナーロイミュードを貫くと同時に、空中で交差し、地面を滑るようにして止まる。
『Nice Drive!』
ベルトさんからねぎらいの言葉を賭けられる。
だが、俺は返事をせず、チェイスの方に走る。
「俺は……一体……何故……」
チェイスは変身が解け、自身の手を見つめ呟いていた。
「なんでコイツがはや……人間を庇ったか知らないけど、弱ってるし倒すチャンスだよね」
隼人はゼンリンシューターを手に、チェイスに近づく。
「待て」
俺は手で隼人を静し、チェイスに声を掛ける。
「チェイス。今回は見逃してやる」
「は!?」
「…………俺を助けるのか?」
「勘違いするな。こんな決着の付け方、俺もお前も望まないだろ。それに、お前は前、無関係の人間を傷つけないと言って、俺を見逃した。その時の借りを返してるだけだ」
「………後悔しても知らんぞ」
チェイスはそう言い、立ち上がるとフラフラの身体でバイクに跨る。
「あ、ちょっと!」
その時、速水がチェイスに声を掛けた。
チェイスは何も言わず、速水の方を振り返る。
「その…………守ってくれて……ありがとう……」
「………………」
その言葉にチェイスは言葉を返さず、そのままバイクで走り去っていった。
「いいのかよ?アイツはロイミュードだぞ」
「分かってる。見逃すのは今回だけだ。次会ったら………容赦はしない」
俺はチェイスが走り去った方を見つめ、拳を握る。
出来ることなら、……………アイツとは戦いたくないな………………