結局あれから二時間目、三時間目と射撃は続き、授業はまったく進まなかった。
おまけに、自律思考固定砲台が撃った弾は俺達が片付ける。
「掃除機能とか付いてないのかよ、固定砲台さん」
村松が固定砲台に聞くが、固定砲台は何も答えない。
「チッ!シカトかよ」
「機械に絡んでも仕方がねぇよ」
次の日、自律思考固定砲台は起動し、画面に姿を映す。
「朝八時半。システム全面起動。今日の予定、六時間目までに215通りの射撃を実行。引き続き殺せんせーの回避パターンを分析………」
だが、自律思考固定砲台は体をガムテープで拘束され、銃が出せないことに気付いた。
「殺せんせー、これでは銃を展開できません。拘束を解いてください………これは明らかに契約違反です」
「俺だよ」
寺坂がガムテープを見せながら答える。
「どー考えたって邪魔だろーが。常識位身に着けてこいよ、ポンコツ」
「ま、分かんないよ。機械に常識はさ」
「授業が終わったらちゃんと解いてあげるから」
「おはようございます!泊さん、神崎さん!」
翌朝、俺と神崎を出迎えたのは、自律思考固定砲台さんだった。
自律思考固定砲台の全身が表面に映し出され、昨日とは変わり、良い笑顔で、そして、明るい声で話掛けてきた。
俺と神崎は驚いたし、後から来た渚、杉野も口を開けて驚いた。
「親近感を出すための全身表示液晶と体・制服のモデリングソフト。全て自作で八万円!」
殺せんせーが後ろで騒ぐ。
「今日は素晴らしい天気ですね!こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです!」
「豊かな表情と明るい会話術。それらを操る膨大なソフトと追加メモリ。同じく十二万円!そして、まさかのタッチパネル機能付き!同じく十万円!」
「お、おお」
「先生の財布の残高………五円!」
「庭の草木も緑が深くなって春も終わり、近づく初夏の香りがします」
「たった一晩でえらくキュートになっちゃって……」
「固定砲台さんでいいのかアレ………」
「けっ!結局、全部あのタコが作ったプログラムだろ。どーせまた空気読まないで射撃すんだろポンコツ」
皆が自律思考固定砲台の変わりように驚いてる中、寺坂は苛立つように声を上げた。
「おっしゃる気持ちは分かります。昨日までの私はそうでした。ポンコツ………そういわれても仕方ありません」
そう言って自律思考固定砲台さんは泣き出す。
「あー、泣かした」
「寺坂君が二次元の女の子泣かせちゃった」
「なんか誤解される言い方やめろ!!」
すると竹林は眼鏡を直し言う。
「いいじゃないか、
「竹林!お前の初セリフそれだぞ!いいのか!?」
「けど、皆さん。ご安心を。私は殺せんせーに協調の大切さに気付かせてもらいました。なので、私は皆さんが好きになって頂けるように努力し、合意を得れるまでは単独での暗殺を控えます」
自律思考固定砲台はにっこりと笑い言う。
休み時間になると自律思考固定砲台の周りには人が集まる。
「私の体内で生成する特殊なプラスチックはデータさえあれば、多くのものを生みます。銃でも武器でもです」
「へえ~じゃあ、花は?」
「分かりました、データを学習しておきます。王手です千葉君」
「三局面でもう勝てなくなった」
「なんつー学習力だ」
自律思考固定砲台は殺せんせーの入れたソフトのお陰で、表情もやわらかくなり、人気が出ていた。
「まずい………先生とキャラが被ってる」
「被ってねぇよ!」
「このままでは先生の人気が奪われかねない。……………皆さん皆さん!」
何か勝手に危機感を感じとり、殺せんせーは皆の所に行く。
「先生だって人の顔の表示ぐらいできます。こうして皮膚の色を変えれば」
「キモいわ!」
キモいと言われた殺せんせーは落ち込み、泣き出す。
「ところでさ、この子の名前決めない?いつまでも固定砲台さんって言うのもなんだし」
「そうだな」
「なんて名前にする?」
「律はどう?」
「安直だな」
「お前はどうだ?」
「はい!嬉しいです!では、これからは律とお呼び下さい」
出された名前に律は嬉しそうに答えた。
「なぁ、佑一はどう思う?」
隼人が意味深に聞いて来る。
「俺はいいと思うけど、一番の問題は開発者があの律をどう思うかだろ」
「だよな。何事も無ければいいんだけどよ………」
「おはようございます、皆さん」
翌朝、律は前と同じに戻っていた。
「「生徒に危害を加えない」契約だが、今後は改良行為も危害に加えると言って来た。君らもだ。彼女を縛って壊れでもしたら賠償を請求するそうだ。開発者の意向だ。従うしかない」
「開発者とはこれまた厄介な………親よりも生徒の気持を尊重したいんですがねぇ」
殺せんせーはそう呟き、授業を開始する。
授業が始まって数分、律が起動音を上げる。
全員が教科書で頭を庇ったり、身を屈めたりする。
だが、撃ち出されたのは対先生用BB弾ではなく花だった。
「………花を作る約束をしていました。殺せんせーは私のボディーに…計985点の改良を施しました。そのほとんどは…開発者が暗殺に不要と判断し、削除・撤去・初期化してしまいましたが、学習したE組の状況から、私個人・・・は協調能力が暗殺に不可欠と判断し、消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠しました」
「素晴らしい。では、律さん。貴女は」
「はい。私の意志でマスターに逆らいましたました。殺せんせー、こういった行動を反抗期と言うのですよね。律は悪い子でしょうか?」
「いえいえ、中学三年生らしく大いに結構」
律がE組の仲間に入り、これから、この28人で殺せんせーを殺すことになった。
「泊君、帰ろう」
「ああ」
放課後になり、鞄を手に取って神崎と帰宅する。
隼人はいつの間にか倉橋と一緒に帰ってしまった。
それにしても、ここ最近神崎と一緒にいることが多いよな。
まぁ、協力者って立場上、神崎の身に危険がせまったら大変だしな。
「佑一!」
その時、隼人が行き成り教室に入って来た。
「隼人、どうした?」
「大変だ!千葉と速水がロイミュードに攫われた!」
「なんだって!?」
「追い掛けたんだが、下級のロイミュードに邪魔されて、倒し終わった頃には………!」
「助けに行こうにも………場所が分からないんじゃ………」
「私ならできます」
すると、携帯から律の声が聞こえる。
携帯を出すと律が映っていた。
「千葉さんと速水さんの携帯にハッキングし、居場所を探せます」
「……律、頼めるか?」
「はい」
「隼人、二人を助けに行くぞ!」
「ああ!」