暗殺教室~アサシン・ドライブ~   作:ほにゃー

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実に一年ぶりの更新です。

久しぶりのアサシン・ドライブ、どうぞ。

今回は戦闘はありません


彼らはどのように屈辱を晴らすのか

梅雨の六月

 

この時期はよく雨が降る。

 

そして、雨が降ればいやでも思い出してしまう。

 

半年前のグローバルフリーズ。

 

あの日も、こんな風に雨が降っていた。

 

いつもなら授業そっちのけでずっと窓の方を見ているのだが、今日に限ってはすごく気になることがある。

 

「なぁ、佑一。デカいよな……?」

 

「ああ、明らかにな」

 

隣の席の隼人がそう声をかけてくる。

 

そう、教壇に立つ殺せんせーの頭部は異様なまでに大きく膨らんでいた。

 

「殺せんせー、頭部が33%程巨大化したご説明を」

 

律が全員が思っていることを口にし、殺せんせーに尋ねる。

 

「これですか?水分を吸ってふやけました。湿度が高いので」

 

生米かよ………

 

「雨粒は全部よけたのですが、湿気ばかりはどうにもなりませんからね」

 

そう言って、殺せんせーは顔を絞り、水を切る。

 

それも仕方がない。

 

E組の環境は最悪だ。

 

夏は暑く、冬は寒い。

 

そして、梅雨の時期には雨漏りはする。

 

教室のいたるところにバケツが置かれ、雨漏りの受け皿になっている。

 

そんな中、倉橋が殺せんせーの頭がの帽子が浮いてることに気付く。

 

「先生、帽子がちょっと浮いてるよ」

 

「よくぞ聞いてくれました。実は先生、ついに生えてきたんです。髪が」

 

そう言って帽子をめくった殺せんせーの頭には確かに生えていた。

 

キノコが。

 

「「「「「「「「「「キノコだよ!!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下校時刻になり、俺は玄関へと向かうと、そこには神崎がいた。

 

「神崎?どうしたんだ?」

 

「あ、泊君。実は傘忘れちゃって……」

 

「そうなのか?この様子だと、今日は止みそうじゃないな」

 

「うん、それでどうしようかなって悩んでて……」

 

そう言って神崎は雨空を見上げる。

 

「………なら、入ってくか?」

 

「え?」

 

「どうせ、途中まで帰り道は一緒だろ?それに……いや、なんでもない。行こうぜ」

 

あの日みたいに不良に囲まれたら大変だろっという言葉を飲み干し、俺は傘を差す。

 

あの日のことは神崎にとっても不良に囲まれたっていう嫌な日だろうし、俺は言わなかった。

 

「じゃあ、お願いね」

 

神崎はそう言い、傘の中に入ってくる。

 

神崎が雨に濡れないように、傘を神崎寄りに動かし下校する。

 

山道を降り。舗装された道に出ると、神崎が俺の肩を見て気づく。

 

「泊君、肩濡れてるよ?」

 

「え?ああ、そうだな」

 

神崎寄りに傘を差してるため、自然と俺の右肩は濡れていた。

 

「教えてくれて、ありがとな」

 

神崎に礼を言って傘を間に置くように差す。

 

そして、歩き出すとさりげなく。また神崎寄りに傘を動かす。

 

「(あ、また傘がこっちに寄って来てる。……本当に優しいな、泊君)ふふっ」

 

急に笑い出した神崎にどうしたのかと一瞬、神崎の方を見る。

 

すると、神崎は俺との間を詰めてきた。

 

俺と神崎は、体がぶつかり合う様な距離になっていた。

 

やっぱり、わざと傘を動かしてたことに気づいてたんだな…………

 

男としてそこはさりげなく、そして、気づかれないようにやったんだがな………

 

『佑一、ちょっといいかね?』

 

すると、突如ベルトさんがシフトスピードを通して、俺に声をかける。

 

「ベルトさん。どうしたんだよ?」

 

『私としては、若い男女の楽し気な一時を壊すのは不本意ないのだが、教えとかねばと思ってね。後ろを見たまえ』

 

そう言われ、神崎と一緒に振り向く。

 

するとそこには、殺せんせーと渚、茅野に岡野、そして杉野がいた。

 

杉野は血走った眼をしているが。

 

「殺せんせー!?それにお前らまで!?」

 

「皆、どうしてここに?」

 

「いや、覗くつもりはなかったんだよ。ただ偶然に……」

 

渚が申し訳なさそうにそう言ってくる。

 

「もちろん、偶然ですよ。ただ三学期までに生徒全員の恋話をノンフィクション小説として出す予定なのでその取材を」

 

「相変わらず生徒のゴシップが好きだな、先生」

 

そんな先生に呆れていると、殺せんせーは手帳を取り出す。

 

「第二章なんかは、泊君の物語とかはどうでしょう?見てましたよ、神崎さんとの相合傘」

 

「別に、神崎が困ってたから傘にいれてやってただけだよ。他意はない」

 

「そうですか。では、さり気なく傘を神崎さん側に寄せてたのも、それに気付いた神崎さんが君に近寄って吐息も聞こえるような距離になったのにも他意はないと」

 

「どこから見てたんだよ!?」

 

そう怒鳴るが、すぐに殺せんせーだしと納得し、引き下がる。

 

しかし、クラスメイトと担任に、偶然とは言え女子との相合傘を見られるとは………

 

それに、渚と杉野は修学旅行の時、俺が気になる女子ということで神崎の名前を挙げたことを知ってる。

 

加えて杉野は神崎に好意を持ってる。

 

色々と最悪だし、恥ずかしい。

 

隣の神崎も恥ずかしいらしく俯き、顔を赤くしている。

 

その時だった。

 

「あれ?前原君だ」

 

渚がそう言い、渚の視線の先を見るとそこには陽斗が本校舎の女生徒と相合傘をしていた。

 

「ほうほう。前原君、駅前で相合傘………と」

 

こんな時でも、殺せんせーは小説のネタをメモする。

 

「一緒にいるのって、C組の土屋果穂でしょ?」

 

「前原君って、モテるからね。しょっちゅう一緒にいる女子変わるし」

 

「そりゃそうだ。アイツは顔も良いし、スポーツ万能。成績だって本校舎に居た時はそれなりに良かったんだ。椚ヶ丘じゃなかったら、もっと上の成績でもおかしくない程だ。モテない方がおかしいだろ」

 

俺は渚にそう言い、陽斗を見る。

 

しかし、本校舎にも俺たちのことを差別しない人間もいるんだな。

 

「あれェ?果穂じゃん、お前何してんの?」

 

「……!!瀬尾君!」

 

そんなことを思っていると、突如、本校舎の男が現れ、土屋は驚いた顔になり、陽斗を突き飛ばし、その男に近づく。

 

確か、あの男って………

 

「生徒会の瀬尾だったか?」

 

「うん。本校舎じゃ、五英傑って呼ばれてる人だよ」

 

「五英傑?」

 

「本校舎の成績上位五人のこと」

 

神崎がそう言って来て「へ~」っと呟いた。

 

五英傑なんて初めて知ったな。

 

「あー、そゆことね」

 

前原は何かに納得し、そう言う。

 

「最近電話しても出なかったり、チャリ通学から電車通学に変えたのも全部そういうことか。で、新カレが忙しいから俺もキープってわけ?」

 

どうやら、あの女、陽斗とあの瀬尾って奴に二股仕掛けてたみたいだ。

 

酷い女だな。

 

そう思ってると、突如土屋は、陽斗の方を向く。

 

「あのさ、自分が悪いってわかってる?努力不足でE組に飛ばされた前原君」

 

攻撃的になったその女に、陽斗は少し驚いた顔をする。

 

「それに、E組の生徒は椚ヶ丘好悪工に進めないし、遅かれ早かれ私たち接点なくなるじゃん。E組落ちてショックかなって思って、気遣ってハッキリ別れは言わなかったけど、言わずとも気付いて欲しかったなぁー。けど、E組の頭じゃ、わかんないか」

 

「お前なぁ、自分のこと棚に上げて」

 

陽斗が何か言おうとした瞬間、瀬尾は行き成り陽斗を蹴り飛ばした。

 

「陽斗!?」

 

俺は思わず傘を放り投げ、陽斗のもとに駆け寄る。

 

「陽斗!?大丈夫か!?」

 

「佑一……ああ、平気だ………」

 

「お前ら……!」

 

俺は陽斗の前に立ち、瀬尾を睨み付ける。

 

「なんだよ?E組が俺たち本校舎の人間に盾突く気か?」

 

「……謝れよ」

 

「あ?」

 

「陽斗に……謝れって言ったんだ」

 

「はっ!E組如きに頭なんか下げれるかよ。てか、俺なんか悪いことした?俺は果穂にしつこく言い寄る虫を追い払っただけだぜ。な、そうだろ?」

 

瀬尾は後ろにいた仲間にそう尋ねる。

 

「ああ、そうだな」

 

「本当、E組は礼儀を知らない野蛮な奴ばっかで困るよな」

 

そう言って俺たちを見下すように笑う。

 

「てめーら……!」

 

「やめなさい」

 

拳を握り、今にも殴ろうとした時、俺たちの前で止まった黒塗りの車から、理事長が現れる。

 

「り、理事長先生……!」

 

瀬尾たちは理事長の登場に驚き、一歩下がる。

 

「泊君、その拳を解きなさい。暴力はよくない。暴力は、人の心を、今日の空模様の様に荒ませる」

 

その言葉は正論だった。

 

正論だったのに、俺はまるで心臓を掴まれた様な気分になった。

 

「……はい、すみません」

 

理事長に思わず謝った。

 

「それでいい」

 

理助長は笑みを浮かべると、陽斗の前に立ち、雨に濡れたアスファルトに膝をつく。

 

「これで拭きなさい。酷い事になる前でよかった。危うく、この学校にいられなくなる所だったね。君と、彼が」

 

そう言い、理事長は立ち上がる。

 

「じゃあ、皆さん。足元に気を付けて。さようなら」

 

理事長は笑顔でそう言い、車に乗り込む。

 

「人として立派だよな、理事長先生は。膝が濡れるのも気にせずハンカチを差し出すなんて」

 

「あの人に免じて見逃してやるよ、間男」

 

「感謝しろよ」

 

「嫉妬してつっかかって来るなんて、そんな心の醜い人だとは思わなかった。二度と視線も合わせないでね」

 

そして、瀬尾たちは笑いながら去っていった。

 

「前原!大丈夫か!?」

 

「お前ら……見てたのかよ……それにしても、上手いよな、あの理事長。事を荒立てず、かと言って差別も無くさず、絶妙に生徒を支配してやがる」

 

「そんなことより、あの女だろ!とんでもねービッチだな!まぁ、ビッチならウチのクラスにもいるけど………」

 

「違うよ」

 

渚が杉野の言葉を否定する。

 

「ビッチ先生はプロだから、ビッチの意味も、する場所も知ってる。でも、彼女は、そんな高尚なビッチじゃない」

 

「いや、俺は別にビッチでもいいんだよ」

 

「いいの!?」

 

陽斗は二股かけられたことを気にも留めずに、立ち上がる。

 

「好きな奴なんて変わるモンだし、気持ちが冷めたら振りゃいい。俺だってそうするし」

 

「中三でどんだけ達観してんのよ」

 

岡野は呆れ気味に、そう言ってタオルを渡す。

 

陽斗はそれを受け取り、頭を拭きながら言う。

 

「さっきの彼女見たろ?一瞬罪悪感で言い訳しようとしたけど、その後すぐに攻撃的になった。「コイツはE組だった」「だったら何言おうがわたしが正義だ」ってさ。後はもう、逆ギレと正当化のオンパレード。醜いとこ、恥ずかしげもなくまき散らして…………なんかさぁ、悲しいし、恐ぇよ。人って、皆ああなのかな?俺も、相手が弱いと見たら、ああいう事しちゃうのかな…………」

 

陽斗は悲しそうにそう言う。

 

俺は陽斗がそう言うので、思わず、もし自分がE組ではなかったらと考えた。

 

もし、まだ本校舎に居たら、俺は皆をどういう風に見てたんだ………

 

そんなこと考えていると、俺たちの隣で頭を今朝以上に膨らませてご立腹な殺せんせーがいた。

 

「殺せんせー!膨らんでる、膨らんでる!」

 

「仕返しです。理不尽な屈辱を受けたのです。力無き者は泣き寝入りする所ですが、君たちは違う。気づかれず、証拠も残さず標的をしとめる、暗殺者の力を持っています。屈辱には屈辱を。彼女たちにはとびっきり恥ずかしい目に遭ってもらいましょう」

 

殺せんせーはヌルフフと獰猛に笑い、渚たちも獰猛な笑みを浮かべていた。

 

それを見て、俺も思わず笑った。

 

「やっぱ殺せんせーは最高だよ。俺も、ひとっ走り付き合うぜ」

 

俺は、ネクタイを締め直し、今度は渚たちみたいな獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~おまけ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あれ?」

 

『ん?どうかしたのかね、佑一?』

 

「そう言えば、朝から雨降ってたのに、傘忘れたって神崎の話おかしくないか、ベルトさん?」

 

『…………やれやれ、そこまで女心に鈍感とは呆れるよ』

 

「え?何が?」

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