天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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話は思わぬ方向へ・・・。

やっぱり暴走する、この話。広げた風呂敷は超光速で広がってゆく・・・。


樹雷から銀河へ10

柚樹とイツキも敵意丸出しである。二人(?)2樹とも隙あらば飛びかからん、ばかりだった。

 「・・・お、おまえ達が悪いんだぞ、こんなところに母様を繋いで。母様は、母様は・・・。」

おずおず、と言った感じだろう。さっきの思念波が語り始める。え?、母様?、で、なんで皇家の樹がこんなところに?思念波も比べものにならないくらい弱いし。

 「・・・わたしの・・・、子ども・・・達をいじめるのはだれ?」

今、眠りから覚めた、と言うような途切れ途切れの、やわらかではあるけれど強い思念波がそう語りかけてくる。

 「母様!・・・、生き返ったの?」

驚きと喜び。そばに生えている小さな方の樹がそんなリアクションで声をかけている。

 「・・・わたしは、初代樹雷皇にここに繋がれた樹。・・・名前がないから、ナナシと名乗れとあの御方はおっしゃった・・・。」

とつとつと語り始めた大樹だった。しばらく思い出すように樹の言葉が途切れた。

 ほどなく僕の上空に、遅れて梅皇が到着した。上空1キロ程度だろうか。さすがにでかい。射していた日が陰る。通信が入り、謙吾さんと水穂さんをこちらに、籐吾さんに輸送船と医療船、護衛の航空隊を率いて第4惑星の内側から4つめの衛星へ行ってもらうことにした。謙吾さんと水穂さんがわずかな電子音とともに転送されてきて僕の後ろに立った気配を感じた。もちろん、イツキや柚樹を通じて記録はとっている。

 「・・・ならば聞こう。我は現樹雷皇の命を受けこの地に来た、柾木・一樹・樹雷である。このような辺境の地で、あなたがいる理由は分かった。しかし、なにゆえ他の樹のエネルギーを吸い取るようなまねをする?」

背後で無言で立っている謙吾さんと、水穂さんだった。自分の余裕が出てきたと同時に、後ろからの気配もムッとした雰囲気が感じられる。もちろん僕に対してである。正直、しまった、とか一瞬後悔しながら思った。

 「母様は悪くない!」

そう言った、隣の小さな樹を制するように、ナナシと名乗った樹は再び語り始める。

 「・・・ほかの樹と違って、わたしは他の樹からエネルギーチャージを受けないと生きていけない樹・・・。そうして、ある一定量のエネルギー量を得られれば、津名魅様と同じくらいの攻撃力を持ちます・・・。でも、わたしは、そんな力はいらない・・・。他の樹・・・。そう、わたしとつがいだった第1世代の樹、吠舞羅(ほむら)は、わたしのために・・・、わたしを生かすために。エネルギーをチャージし続けて死んでしまった・・・。」

ごうごうと悲しみと後悔と、自己嫌悪がない交ぜになった思念波が僕に覆い被さる。重力が増えたような重ったるい想いに思わず膝をつき、しゃがみ込んでしまった。背後の二人の気配が慌てて僕の手を取ってくれる。

 「ぐっ・・・。さっきの思念波よりはマシだけど、結構きついな。」

二人が僕の腕を取って立たせてくれた。大丈夫ですか?と声をかけてくれるが、それどころではないくらいに意識を持って行かれそうだったりする。かろうじて頭を振りながら独りで立てた。

 「・・・ナナシとやら、おまえの事情は分かった。それでも、今より、そうこの惑星の自転周期で、何周期か前、いくつかの世代を重ねた樹のエネルギーをむさぼり尽くすようなまねをしたのはなぜだ?」

意識を持って行かれそうになりながら、今回の遠征の本題を声に出して問うてみた。そうしないと倒れそうである。

 「それは、・・・でもっ、母様は悪くないんだっ!」

さっきの戦闘中の思念波によく似た、思念波だった。もしかして、この小さな樹がやったこと?足下の柚樹を見るとうなずいている。

 「わたしは、第2世代皇家の樹、柚樹という。初代樹雷皇に仕えし天木日亜がマスターだった。ここから数万光年離れた地球という星で命を終わらせようとしたとき、マスターの天木日亜とよく似たこの者に助けられ、この場に居る。この者は先ほども、おぬしが投げた皇家の樹の種を助けたぞ。何か深い訳があるのだろう?・・・良かったら話してくれぬわけにはいくまいか・・・?」

樹と話し合うには、樹が話した方がいいだろう。さわさわさわと風もないのに小さな樹の葉が揺れている。逡巡しているのだろうか。そんな風に見える。

「・・・ようやく、ようやく・・・・・・。自分の呪わしい運命にお別れができると思ったのに・・・。目を覚まさぬ方が良かったのに・・・、なぜ放っておいてくれなかったの・・・。」

大きい方のナナシと名乗った樹は、恨み言のように言葉を続けていた。

 「・・・吠舞羅が、僕の父が逝ってから、もうここの公転周期で200を数えたころ・・・もうすでに母様は意識もなく、僕の呼びかけにも応えなかった・・・。僕は、できる限り母様へエネルギーを送りながら、この地で静かに暮らしていた。母様をこんなところに繋いだ人間を恨みながら。」

小さな樹が、ゆっくりと観念したように語り始めた。

 「母様は何も応えてくれなかったけれど、僕は幸せだった。父様の吠舞羅は、この地に居る動物たちを操って、僕をここに植え替えてくれたんだ。」

小さな樹の思念波はそう言う。うまく柚樹が中継していて、背後の水穂さんと謙吾さんは、各々の端末越しに聞いているようだった。

 「一樹様、この形状は・・・、不完全ですがコアユニットの様式に沿った形になっています。」

謙吾さんがそっと解説してくれた。そう言われれば、この小さな樹の周りに水があり、複雑な文様のサークルに囲まれている。イツキや梅皇が生えているコアユニットに似ている。

 「そして、遠くから、この星に近づいてくる仲間の気配を感じた。いま第4惑星の衛星に隠している船団だよ。その気配とほぼ同時に、この星系に向け冷たいモノが近づいてきていたんだ。」

謙吾さんと顔を見合わせ、次いで水穂さんと顔を見合わせる。隠す?あの船団は、この樹に破壊されたんだよね?というアイ・コンタクト。

 「その、冷たいモノとは、何かのぉ。」

柚樹さんが珍しく口を挟む。結構沈思黙考タイプなのだ、この樹というかネコは。

屋外というか惑星上なので、ディスプレイなどないのだが、皇家の樹は僕らの目前に、自分の見ていたものを映像化して再生してくれる。

 「これは・・・。」

思わず、三人とも声が漏れる。そこには、色は、メタリックグレイの鋭い頂角を持った八面体が数億、いや、もっとたくさん群れをなしてこの星系の公転面に直角に、つまり上方から襲いかかってくる光景だった。小さな樹の言葉は続く。

 「この物体へ様々な方法で通信を試みたが、冷たい決まりきった信号しか帰って来なかった。この物体一つ一つが個であり、全体のような意思疎通のできない物体だった。信号解析の結果、目的は、この惑星と隣の惑星のマントルやコアだ。岩石惑星のコアやマントルを食い散らかし、自らの身体として、そして仲間を増やす材料として、次の惑星系に亜光速で移動するケイ素生命体だった。つまり、純粋に食欲しか感じられなかった。」

驚きは天を貫き、地を揺るがした。まさにそのような話である。ちなみにそのとがった八面体は、一個の大きさは、頂角から頂角までがさしわたし100キロ、中央部の一辺は20キロ程度の物体のようだった。これが数十億以上の群体でこの惑星系に襲いかかろうとしていた。

 「僕の力で、いくつかの物体へエネルギー弾を放ってみたけど、一個や二個破壊したところで追いつかない。僕だけでは、こいつらを撃退するには力が足りない・・・。そこで思いついたんだ、母様なら・・・。そう思って、別方向から近づいてくる仲間の気配に協力を頼んだんだ。・・・でも母様の力は大きすぎてみんな死んじゃった・・・。」

さもありなん。第1世代の樹にエネルギーを与えるには、第4世代とか第5世代の樹ではとうてい無理だろう。

 「それに、向かってくる群体の一部は、別方向から来ていた、おまえたちの仲間の艦隊に気づいて、進路を変え、襲いかかっていった。」

一部の群体が、雨木開拓団らしい艦隊へ進路を変えて突進していく。

 「僕は慌てて、光應翼を張って、その艦隊を今の場所へ隠したんだ。でも一部しか助けられなかった・・・。」

そこまで聞いたところで、輸送船や航空隊、医療船を指揮していた籐吾さんから連絡が入った。携帯端末をタブレット形状に変化させる。

 「一樹様。少数ですが、生存者を確認。さらにクローニングおよび生態復元技術により修復可能な生命反応を有する人体を発見。急ぎ阿知花殿と菊乃看護師長、上木晴信、彩矢、愛優と医療行為に移ろうと思います。了承いただけますか?」

了解した。医療行為について了承する、救出を急げと命じた。

 「一樹様、開拓団長ほか十数名が話ができる状態でした。どうしても急いで伝えたいことがある、とのことですが・・・。」

 「わかった。つないでくれ。」

そう言うと、携帯端末がさらに大きめのディスプレイ形状に変化して、パッと見、僕と同じくらいの年格好の男が映る。息が荒く、痛みに耐えているようだ。ちらちらと手早く治療する晴信の姿が見える。バックミュージックのように開拓団の船から治療行為に奔走する菊乃さんやら、阿知花さんの様子が聞こえてきた。

 「わたしは、天木家からこの星系の開拓を命じられた天木家の眷属、雨木香澄(かすみ)と申す者です。柾木・一樹・樹雷様に急ぎ伝えたいことがあります。」

そこまで一気に言うと、大きく顔をゆがませる。晴信の声だろう、だめです、腹腔内の出血が止まってないのです、と聞こえてくる。

 「わたしは、柾木・一樹・樹雷です。大丈夫ですか?」

ニカッと顔を一瞬ほころばせた、雨木香澄だった。

 「我々は、未だかつて相まみえたことのない、敵にやられました。無数の金属か岩石のような八面体の物体が襲いかかってきたのです・・・。さらに、あなた方の到着する一日前に到着した、天木の救助艦隊もほぼ全滅。我らと同様に謎の光應翼に包まれこの星に降ろ、され、ました・・・。」

そこまで言うと気を失ったようだった。慌てて、上木晴信が介抱している。上木晴信には、用件は分かった、治療を優先してくれと伝えると、上木晴信は肯き、そこで通信はいったん切れ、籐吾さんに切り替わった。救助および艦隊の回収は終わったようで、梅皇に帰還するとのことだった。

 「・・・すまない。話を続けてほしい。」

話を遮ってしまったのを詫びて、話を続けて聞いた。結局のところ、開拓団の第4世代や第5世代から吸いとったエネルギーと、この小さな樹のエネルギーを合わせナナシの力を40%程度開放して敵をほぼ壊滅、粉砕したらしい。一部は索敵範囲外の深宇宙へちりぢりに逃げていったようだった。そうなるまでに、この星系の第3惑星は破壊され、この星も表層に、あの八面体の着弾をいくつか許してしまい、地殻はめくれ上がり、この星特有の岩石蒸気に包まれあの深い青色に見えていたようだった。この小さな樹は、我々をも、母樹のエネルギーチャージの材料にしようと思い、攻撃してきたようだった。

 「・・・でも、あなたの力ですか?この星は何もなかったように蘇った・・・。そして、母は話ができるまでになって、僕はこんなに小さくなった。」

 ここからは、梅皇やらイツキやら阿羅々樹やらがいろいろ話してくれた。柚樹がこっちに顔を向けてニッと笑って言う。

 「エネルギーのお漏らしというか、大量投棄というか、そんなものかのぉ。」

ちょっとだけムッとする。そんなにダダ漏れみたいに言わなくてもいいじゃん。まあ、実際そうだけど。

 「で、最初に戻るけど、この種たちをどうして攻撃に使ったんだよ。かわいそうでしょ。」

 「だって、あなたの力に驚いたんだ・・・。母様の種と僕の種、二つ急にできて、僕の種は未熟で爆発しそうになって、で、怖くなって二個とも投げちゃった・・・。」

ごめんなさい、と謝罪の意思が感じられる。

 

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